2019年5月21日 (火)

ルート・ブリュック 蝶の軌跡(東京ステーションギャラリー)

フィンランドのセラミックアーティストの個展だす。当初は2階3階全作品撮影可能だったそうだが、GWに結構人が押し掛けたようで、シャッター音だらけになって苦情が多数入ったため、3階を撮影不可としたそうな。シャッター音イヤイヤのオレからすれば、そもそもなんでそんな全作品撮影可などというバカな大盤振る舞いをしたのか気が知れねえが、思うに、そんなたくさん人が来るとは思ってなかったんじゃなかろうか。知名度もあるとは思えんしな。撮影についてだけじゃない。なぜか細い通路で映像を流していて、そこに人が溜まってしまって通りづらいのです。これも人数少ないと読んだところかと思うのです。しかし内容は大変いいんですよ。ここはいつだっていい着眼でいい企画やるから、とうとうパスポート買っちゃったよ。この先も全部行くと思う。

なもんで、最初の3階はシャッター音で気が散って(たかがシャッター音ごときで集中できなくなるの~? とかヌカしてる御仁もいるが、てめー基準でモノ考えるんじゃねーよ。ヘッドホンステレオのシャカシャカ音もそうだが、音量の問題じゃねーんだよ。気になる感覚は人それぞれなんだぞ)、ソシャクに時間がかかる、というかあんましてない。最初のところに遺された陶板(モザイク)で新しく作った「心のモザイク」という大作があるが、思えばこれ最後の方がよかったねえ。というのも晩年の作品に近いもんでね。最初は絵を描いて焼いたものが多くて、絵画に近い。でも質感が焼き物なわけです。やっぱり単なる絵よりも、建物とかの形状に切って彩色したヤツの方がいいね。家とか、教会とか、ノアの箱船もあるぞ。あとポスターになっているのは「ライオンに化けたロバ」というもので、文字通り動物。それから「鳥」という置物っぽいものや、「母子」という立体作品もおもしろい……いや、全部写真に撮っているヤツいるけどさ、陶の作品って、キネティックっていうのかな、鑑賞者が動くに連れキラキラする、そこも楽しからずやなんだがね。写真に撮って満足してどーする。それから……作品タイトルに、出品リスト番号が載ってねえ。作品のところにメモるには、タイトルを探さないといかん。面倒なんであまりメモってねえ。

階を降りて2階に。シャッター音が聞こえなくなり一気に環境がよくなったぜ! ……なに? 違いが分からない? なんでこの環境の差が分からんのだ! まあいい。蝶を描いた器(?)の作品多数。一つに一匹。なかなかリアルな感じでいいよ。作り方の簡単なアニメがある。2度焼いてるんですって。六角形のブロック状のものを積み上げた「ヘキサゴン」も面白い。それから初期にはなかった金色の作品が登場。ちょっと神秘的な、「ムー」に出てきそうな感じ。このあたりから絵ではなくて、抽象的な立体が増え始める。「レリーフ」なんていうシンプルなタイトルだったり。それから今度は黒い作品が出始めた。「泥炭地の湖」抽象っぽい。黒でも光沢の黒と艶消しの黒が入り乱れ、これが結構面白い。あと、横の方から見ると異星人の都市みたいじゃないかい。「木」は黒い陶タイルで木の形を作ったもの。黒といえばねえ、ラウル・デュフィの晩年、黒い船のあのインパクトを思い出すな。アーティストは晩年になると黒を使いたくなるのかねえ。あと、白だけのもある。小さい陶タイル……モザイクか、を組み合わせた抽象。もはや初期の絵本みたいな世界じゃなくてバリバリ現代アート。公共アートの映像があって、アーティスティックに終了。

うん新鮮だ。いい作品群だ。3階のシャッター音が気にならなければ。
http://www.ejrcf.or.jp/gallery/exhibition/201904_rutbryk.html

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2019年5月19日 (日)

印象派への旅 海運王の夢(Bunkamuraザ・ミュージアム)

ウィリアム・バレルというスコットランド生まれの英国人のコレクションだす。写実から印象へという手堅い人気のテーマですな。

最初にいきなりゴッホ「アレクサンダー・リードの肖像」バレルとかかわりもあった画商ですって。うむ、原色の点描というか短線というか、その描きっぷりもなかなかいいじゃないか。いやそれより諸君、このゴッホ、なんと「照明が明るい」のだよ。ここんとこゴッホ展はことごとく照明が抑えられててチクショーメイ暗いじゃねえかとか思っていたが、これはちゃんと明るい。「あの日見たゴッホ」じゃなですか。ナイスだ。えー次、「身の回りの情景」というコーナー。フランソワ・ボンヴァンとかいう人「スピネットを弾く女性」ほう、後ろ向きで一人で、ちょっとハンマスホイ風だな。テオデュール・リボー「勉強熱心な使用人」もわっとした光に浮かぶのがいい感じで、ヤーコブ・マリス「クジャクの羽根持つ少女」ええー、もーちょっと成長してくれりゃあ萌える絵なんだがね、イマイチガキンチョだな(そんな視点で見てんのかよ)。この人「姉妹」とか「若き芸術家」という水彩も出ているが、いずれも子供ですな。カミーユ・コロー「耳飾り」人物とは珍しい。おおトップレス……ってほどでもないか。写実的。アンリ・ファンタン・ラトゥール「入浴する女性」、おお、巨匠だけど絵は小さい。

次は「静物」コーナーだお。クールベさん「アイリスとカーネーション」リアルか。暗い絵だな。ファンタン・ラトゥールの「春の花」これは写実っぽい。うん、普通にうまい絵だ。あと「桃」が2つ……しかしなんだな、ここまでほとんど小さい絵が多いな。三菱一号館なんかで見た方がいい感じのもんが多いのだが。ボンヴァン「狩りの獲物のある静物」でたぜ死んだウサギ。カワイソウ。♪ウサギ美味しかの山~ですな。ええとクールベさん「リンゴ、洋なし、オレンジ」、セザンヌ「倒れた果物かご」、ルノワール「静物-コーヒーカップとミカン」という小さいのが3つきれいに並んでいる。小さいながらそれぞれに画家の個性がちゃんと出ておる。ほう、もしかしてコレクターバレル氏の好みか? なるべく小さいところに個性が凝縮されてるのが欲しいとか。あるいはたまたまそういうのも持ってきているだけかな。

「戸外に目を向けて」ということで、「街中で」というコーナー。アーサー・メルヴィルのシミのような技法が個性的だ。うん、シミみたいだもんなあ。印象派的ではある。「グランヴィルの市場」なんて人物の顔が顔がそれでいいのか。そんで目玉のドガがある「リハーサル」うむ、なかなかいい絵ですよ。光の感じよしですよ。いやここまでの展示が小さいとか地味とかいうのは、これを引き立たせるだめじゃね? なんて思ったりしてな。なんかいろいろ説明も書いてあるんだけど、私は「怖い絵」のドガんとこ読んだら、あまり素直に見れなくなったお。セレブなキッズのバレエ教室とは違うんですなあ。ええそれから「郊外へ」というコーナーになり、アンリ・シダネル「雪」おお、このぶわっとした画面(……って書いたって分かんないよな)。この強力な個性いいじゃん。雪の町。暖炉のオレンジが見える窓一つ。ニクい演出ですな。前にシダネル展があって、まとめて見るとどうということはないと思ってしまったが、いろいろな絵の中でシダネル見るといいですな。それからマティス・マリス「蝶」女性像だが、顔ちょっと怖いね。アドルフ・モンティセリ「庭で遊ぶ子どもたち」ロココあたりの雅宴画(貴族が遊びほうけてる絵)の雰囲気で印象派をやったとか。はあ、なるほど。オノレ・ドーミエ「ヘラクレス」どう見てもおっさんだが。あとはどってことない絵が多いが。ジョルジュ・ミシェル「嵐雲」小さいながら上半分が雲でまずまずの雰囲気で。ドガがもう1枚「木につながれた馬」うむ暗いな。

そして「川から港、そして外洋へ」ってことで川辺からドービニーの「ガイヤール城」いい風景画だなあ……ってメモってあるがどんなんだったかな。おっとピサロがある「水浴の女」これも小さいのう。で、なんとここから最後まで撮影可能なコーナー。10点以上ある大サービス。やったー! ……バッキャロー俺はシャッター音がキライなんだ(クレームねじ込むほどではないが)。最近の潮流でSNSでの拡散を当てにされ、インスタ蠅ばかり優遇しやがる。しかも量があると片っ端から撮ってくだけのシレモノが現れるしな。そのうち静かに見たい組は喫煙者みたいに肩身が狭くなっちまうよな。で、ここにいい絵が2枚、クールベさん「マドモワゼル・オーブ。ドゥ・ラ・オルド」さすがクールベさん、目力のある人物像じゃん。しかし日傘が気になるな、傘の柄が円形の中心じゃなくないか? 半球形を斜めから見たんでずれている? いやー、なんかそうは、見えないんだがねえ。あとは最後のシダネル「月明かりの入り江」青い画面が実にいい雰囲気じゃねーか。なんでこれ撮影コーナーにあるんだよっ。

小品が多いが個性はちゃんと出ている。手堅く楽しめる。撮影もできるしな。
https://www.bunkamura.co.jp/museum/exhibition/19_burrell/

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2019年5月12日 (日)

キスリング展(東京都庭園美術館)

全体でキスリングだけという、なかなか贅沢な感じなんだけど、土曜の朝一で行ったら結構すいてた。エコール・ド・パリの有名人だけど、生まれはポーランドだって。出品リストをもらったが、リストが展示順じゃないのでメモが面倒。最近よくあるのが、リストは年代順で、実際の展示はテーマごとにバラバラってやつでな。近頃の流行りかね。

最初のホールにはいると絵が2つ「肖像画」うむブロンドの表現がいいね。おでこにリアルなしわが……と思ったら絵の具のひびではないか。それから「花」なかなか大きな絵ですよ。いろんな花があるが得意のミモザは含まれていないな。最初の部屋に入り、ここにも「花」というタイトルの絵。これにはミモザが一部。うん、やっぱりいいだろキスリングのミモザ。「カーテンの前の花束えーと、「強コントラスト」ってメモってあるが……どんな絵だったかな。「牡丹」のメモは「フォーヴ風若描き」ですって(ありゃ覚えてねえ)。「赤い長椅子に横たわる裸婦」これのメモは「モディリアーニかマティスか」これも覚えてね……いや、たぶん見れば思い出す。なんでこう忘れているのかボケたか。そうそう、花とか横たわる裸婦とか、同じような画題の絵をいくつも描くもので、ここにあったものが、そのどれだか思い出せない&この辺にあったのはどうも初期の方でキスリングらしくなくて、あまり個性が感じられなくて印象が薄いんだな。「サン=トロペでの昼寝」これも「感じが違う」んだって。何の? 次の「ベル=ガズー(コレット・ド・ジュヴネル)」これは覚えているよ。キスリングらしい女性像だし、ポスターにもなってるしな。廊下を渡って次の部屋。ここにも「花」しかし、これは明らかに凄い。記憶に残る。絵の具を盛った凹凸で花を描く。すげえ立体感だ。しかも鮮やか。今回の全展示で一つ選ぶならコレだね。「ツーロン」風景画。近代風の船がある港。へーこういうのも描いてたんだ。「カサゴ」魚の絵。珍しい。へーこういうのも描いてたんだ。ちなみにこの部屋で客は俺一人。あと監視の人一人。

階段を上がって2階へ。2階のホールに「赤い長椅子の裸婦」それにしても尻のデカい裸婦ですな。この絵は影がポイントなんだって。そういえばベッドの後ろに大きな影が。それから部屋に入って、ここからなんとなく年代順。「水差しと果物のある静物」セザンヌ風かと思ったが、これは普通の静物っぽい。「ルシヨンの風景」キュビズム風。へーこういうのも描いてたんだ(こればっかし)。「青い花瓶のある静物」これもセザンヌ風だが……いや、これは普通の静物ではないぞ。思いっきりセザンヌ風味。セザンヌの、あのアンバランスでありながら全体ではまとまって見える妙な静物画をやろうとしているではないか。キスリングはここまでセザンヌのエッセンスを真似できたのかとしばし驚く。ピカソはここからキュビズム等のデフォルメの世界を生んでいったのだが、キスリングもエッセンスを吸収している。「ブルターニュの女」「女の肖像」と進んでだいぶおなじみの「キスリング風になってきた」……ってメモってあるがまた忘却してるな。「座る若い裸婦」「座る裸婦」お、カメラ目線ではありませんな。左の方見てる。キスリングの絵はだいたいそうか。部屋進んで「緑色のスカートの女」これはオランダの衣装。「ル・ベック氏の息子」半ズボン男の子。いずれも手堅い肖像。

新館に移動。まだ肖像画が続く。「ジプシーの女」ほほー、こういうエキゾチックなのを描いてもやっぱりキスリングですな。ここにも「花」こまこましたやつはいいですな。またここにも「長椅子の裸婦」そうですね、ここにあるのは、乳白色にしたら藤田嗣治みたいな感じになるやつ。ちなみに同時代の藤田とは仲良し。「漁師」背景が色だけの肖像画が多いところ、これは風景の中の男。ちょっと珍しい感じ。「ミモザの花束」出ました得意のミモザ。でもこれはちょっと小さいかな(小さくもないのだが)。なもんで、あまり「おおっ」とはならない。「ブルターニュの女」……そうか同じタイトルのが前にあったんだ。ここにあるのはいいですよ。キスリングらしさ全開で。目の感じもいかにもだ。ラスト近く「果物のある静物」木のテーブルへの写り込みがおもしろい。

ミモザの大型のがほしかったが、「花」のいいやつもあるし、長椅子の裸婦も普通の肖像もあり、これだけ見れりゃ十分ではなかろうか。
https://www.teien-art-museum.ne.jp/exhibition/190420-0707_kisling.html

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2019年5月 8日 (水)

クリムト展(東京都美術館)

かつての激混み若冲展で、いつ行っても長蛇の列だったが、GW最終日だけは比較的少なかった。そう、長期連休の最終日は狙い目なのである。なので、行ってきたよ混んでそうだから。そして案の定、入り口で待つこともなく、中もそんな混んでなかった。
しかし、奇妙なことが起きてしまった。なんと、メモを取った出品リストを紛失……っていうか、家の中で行方不明に。なんで? あんな大きなものを? いや、あり得ないでしょう。なぜだ? どこを探してもない。神隠しにでもあったみたいだ。

なもんで、記憶とチラシなどが頼りだ。入ったら、そう、まず修業時代あたりで、そうだ写真があったな。うん、どうでもいい感じ。そして油彩の「ヘレーネ・クリムトの肖像」ええ、なかなかきれいですよ。横向きで普通に描かれています。胸がなかなかあるようですな(そんなところ見てるのかよ)。それから合作で、金属板を……なんだっけ、彫金だっけ、浮き彫りみたいにしたやつが並んでいる。また、学校では思いっきりアカデミックな絵を描いていたりする。そうそう、男性ヌードがあったんだけど、フルチン全開のポーズでは、ありゃあモデルもこっぱずかしいよなあ……って、そんなこと考えてないか。それから習作とか下絵とかが続いて、ティツィアーノを模写したのがあったな。うまいけど模写だからねえ……って、なんかぜんぜんテンションが上がらないんですけど。この調子で大丈夫か? 私生活のコーナーがあって、クリムトは独身だったがなんと子供が14人! ……って、あかんでしょそれ。出しっぱなしじゃないですか。愛人の肖像とかあったかな。でもそんな注目すべきものはなかった。
それからウィーンにもジャポニズムのブームがあったそうで、クリムトも日本美術をヒントに作品を作ったりする。「おんな友達(姉妹達)」が縦長の浮世絵風だ。「赤子(ゆりかご)」は錦絵風の色合いの衣装? 布団? まあそのなかの一番上に赤ちゃんがいる。目立たないが。色合い悪くない。うむ、やっとエンジンがかかってきた感じだぞ。

階を上がって、「分離派」の活動へ。そこで一気に目玉二つ。「ユディトⅠ」と「ヌーダ・ヴェリタス(裸の真実)」、金箔を使った上に、装飾的。「ユディトⅠ」は首を手にして恍惚の表情。怪しく魅せる傑作だ。「ヌーダ・ヴェリタス」は、これも装飾的背景がいい。手に持っているのはペロペロキャンディーじゃなくて鏡だと(キャンディーなんか持たねえよ)。しかしこの2点を見ると、それまでのに比べていかにズガッと画期的かが分かりますなあ。やっぱずげえよクリムト。それから「ベートーヴェン・フリーズ」という部屋の壁一面の35mの巨大壁画作品……の模写。模写なんだけどちゃんと金箔も使っているし、本物と印象はほとんど変わらんだろう。見応えあるじゃん。芸術の神ミューズの衣装がちょっと浮世絵風。それから「分離派展」チラシとかがあり、次は風景だったかな。「アッター湖畔のカンマー城Ⅲ」。印象派風で点描も使っているが、新印象主義の分析的点描のインテリっぽいイヤらしさはないですな。「丘の見える庭の風景」では、独特な花が画面を埋め尽くす。

それからまた階を上がって肖像のコーナー。「オイゲニア・プリマフェージの肖像」衣装がカラフルでありながらクリムト的カラフルさだ。そして最後の円環のコーナーで目玉の一つ「女の三世代」やっぱり注目してしまうのは老婆の裸体ですな。衰えも容赦なく描いてしまっている。手を見ると血管が浮き出ている。そういえば、他の人物画でも、手の血管がうっすら描いてある感じなのだが。なかな写実的なのだ。これでなおかつ装飾的要素を失わないんだからさすがクリムトではないか。よく見ると輪郭がうっすら緑で、これも普通でない印象のポイントって感じ。それから鉛筆の素描みたいなのがあったが、薄くてじぇんじぇん見えない。そんで最後の絵は「家族」。黒い布(服か?)に包まれて、顔だけ見える3人。暗示的。

結構習作や他人作ので薄まっている感はあるが、それでもクリムトの傑作がいくつも見れるってことでは行きでしょう。
https://klimt2019.jp/

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2019年5月 4日 (土)

ジョゼフ・コーネル(DIC川村記念美術館)

時は今から約100年後、地球から0.6光年の位置に謎の天体が発見された。観測されたその姿から、その天体は「ヤヨイ」と呼ばれた。そして有人探査船が向かう。その宇宙船の名は「コーネル」。そしてその天体の衝撃の正体とは……ってなSFを書いてここで読めるんですけど、原稿用紙にして数百枚を読むほど暇な人もおらぬよ。ただ、草間彌生を特別なアーティストとして認識している私にとって、彼女の元恋人であるジョゼフ・コーネルをまとめて見る機会は、大いに待ちこがれていた次第です。特に「コーネルの箱」と呼ばれる一連の作品、これがお目当て。

この美術館に行くのは2年ぶり2回目。入ると、最初にコレクション展を見ることになる。何がよかったかな。前も多分見てるがね。キスリングの「姉妹」いいね。シャガールの「ダヴィデ王の夢」こりゃ大作だぞ。レンブラントの「広つば帽を被った男」これ自画像じゃないんだな(前も同じこと書いてると思うが)。あとこれは初めてかな。ジョージ・シーガルの「ガートルード(ダブル・ポートレイト)」家の壁とテラス……ベランダ(?)ごと作ってあるじゃん。そうそうこの部屋はポップアートが集まっていて、ウェッセルマンや、ウォーホルもある。ラウシェンバーグの「深掘り井戸の噴出」も大作。前はこの部屋日本美術だったかな。それからマグリットの「冒険の衣服」と再会。この絵は好きですよ。マグリットの裸婦ってあんましない……よな。エルンストのドアを使った「入る、出る」もなかなかだ。それからロスコルームへ。ん? 照明が色付きじゃん。本来の色じゃないじゃん。なんで? ……と前も全く同じことを思っていて、前の記録を見たら、絵の具がデリケートでこれ以上明るくできない、そうです。そうか、画家の意図じゃないんだな。ステラとかあるデカい部屋でオレしか客がいない。監視員が二人。ド赤字じゃん。でも別にいいんです税金じゃないし。そもそも、ここ客が多いんだけど、みんな無料の庭の方に行ってしまってな、美術館はそう混んでないのですよ。企画もマニアックだしな。すげえなDIC。金があってうらやましい。

いよいよ企画展。ジョゼフ・コーネルだ。箱だけじゃない。コラージュもやってるし、映画も撮ってるんだって。初期のコラージュは、エルンストのコラージュ作品の影響を受けていて、古い書籍の絵を切り抜いて作ってた。ずらっと並んでます。モノクロです。「無題」なんてのが多いです。エルンストはバキバキのシュールレアリストなんで、意外なものを組み合わせる衝撃をよくやったそうです。「デペイズマン」って手法だったかな。コーネルはそんなに意外な組み合わせじゃなくて、割と違和感の少ないもので不思議な画面を作る。例えは悪いがエルンストが覚醒剤ならコーネルはコカインみたいなもんですかね……って例えが悪すぎだろ(自己ツッコミは虚しいな)。さてさて、コーネルにゃお気に入りの女性がいて(草間の前に)。ロシアのバレエダンサーのトマノヴァである。コラージュ作品を捧げたりしているし、トマノヴァからも手紙もらったりして。「踊るタマラ・トマノヴァのコラージュ」これがポスターにもなっている。それからコーネルは雑誌の表紙のコラージュで活躍し、会社勤めをしなくてよくなったんだって。さすがの才能ですな。その雑誌「ヴュー」とか「ダンス・インデックス」なんぞが出ている。確かにコラージュだ。

そしていよいよ箱のコーナー。うおおおおっ各地からかき集めて十数個も並んでいるではないか。偉い。凄い。よくやった。鼻血ものだぜ。何がいいか? 全部いいんだが。まあ例えば、昔の建物とかで、壁が傷んでいるけど非常に風格があるってのがあるでしょ。あれを箱の内側に封じ込めるということをしている。壁とか床(?)とかが、腐食していたり剥がれそうになっていたり(運搬大丈夫なのか?)、繊細にして風格があり見て沸き上がるノスタルジイよ。床から古い釘が出ているとかもニクい演出。あと可動部がある(展示品に触れないから動かせないが)。上の方にシャフトが2本走っていて、その上に球体が乗っている。転がる。あるいはシャフトにリングが付いている。動かせる。楽しそう。もっと凝った奴は「ピアノ」という内装に楽譜を使っていたり、楽譜の小箱があったりのもんなのだが、なんとオルゴールを積んでいる。箱の後ろにネジがあって回せる。オルゴールの音は、ヘッドホンで聴けるよ。私の好みは「カシオペア」床の痛み具合がイイ。アンティークだ。壁の星のデザイン、レールと球体、背面に全展図(背面も見ろよ)素晴らしいですな。詩情ですな。「鳥たちの天空航法」も崩れた壁での演出がイケる。「ホテル」のシリーズでは、顔のついた太陽さん、そう、この顔。ちょっと濃いツラ。ニコニコ太陽じゃない。芸術作品の太陽はこうでなくちゃねという顔。この顔のピンバッチがあったんで買っちゃったよ。「無題(ラ・ベラ[パルミジャニーノ])」はパルミジャニーノの絵(印刷物)を使っているが、それにしても壁にゃひびが入っていて、ポロッといっちゃいそうなのが実に危うい。しかし、これがコーネルの箱の世界だ。堪能した。先日没後十年を迎えた清志郎じゃないが「ご機嫌だぜベイビー!」。

後半のコラージュ。モノクロからカラーになった。ポップアートっぽいのもあるかな。まあ、こういうコラージュになると、先日庭園美術館で見た岡上淑子なんぞもいい勝負してるから、コーネルの独壇場って感じでもない。それから交友関係のコーナーがあって、エルンストとの交友とか……おい、なんで草間彌生との関係について一言も書かれていないんだっ! 結構有名な話だと思うがね。こりゃあナニか裏事情がありそうだぞ。コーネルサイドにとっちゃあまり草間に触れたくないとか? まあ元恋人だったとはいえ、ホームレスみたいとかマザコンだったとか、電話攻撃がひどいとか散々な言われようだしなあ。あるいは先のトマノヴァを目立たせたいので、草間に触れたらトマノヴァものを貸さないとスミソニアンがゴネたとか。いやいやいやそんなこともないよな。まあいいや。よくないが。それから映画コーナーがあって少し見たけど、特に驚異的というもんでもなかった。全部見たわけじゃないけどね。

外に出て庭も散策。広いな。手入れも行き届いて噴水もある。芝生の広場にゃ、キッチンカーが出ていた。ショップ、レストランもあって、レストランは満席のようで人が結構待っていた。佐倉駅から往復無料送迎バス。さすがDIC、金が……まあいいや。

これだけ箱が集まることは、まずないと思います。あの閉じこめられた完成度の高い世界を、いくつも目にできる機会は今しかない!
http://kawamura-museum.dic.co.jp/art/exhibition/

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2019年5月 2日 (木)

バンクシー作品らしきネズミの絵(東京都庁)

港区の防潮扉の一部で見つかったバンクシーらしき絵である。この騒動がなかなか面白いことになっていて、小池知事が一緒に写真を撮り、その後扉は取り外して保管して、現在5月8日まで都庁で展示されている。
意識高い系のアート好きが、あれはバンクシーを冒涜してるとか、無効化してるとか、アートをよく知らないで並んでいるのは愚民の群だとか、なんでバンクシーはよくて、普通のグラフィティアートは消したり逮捕したりするんだよとか、それを含めてバンクシーなんだよとか、まあ百人いりゃあ百通り言いたいことが出てくるが、それを含めてバンクシーで……なに? あれがバンクシーじゃなかったら? ふふん、それでもこの騒動そのものがバンクシーの名によって起こっているから、これもバンクシー作品の一部になっちゃうんだなぁ……ってなこと言ってるときりがありませんな。

この騒動に「乗る」ために都庁に行ってみた。ツイッターとかでよく見る案内の紙を見る。これもなんとなく作品みたい。「バンクシー作品らしきネズミの絵」そう、あくまで「らしき」。それが権力の中枢の建物の中で客を呼び込んでいて、実際、客も押しかけていて並んで見ることになる。「グラフィティアート(アートレベルのストリートの落書き)」なんだから、現場からここに持ってきたら絵が死んでしまう……とは私は思わん。バンクシーはこれまでも騒動を起こしていて、有名なのは知ってると思うが、絵画がオークションで落札の瞬間に仕掛けられたシュレッダーが絵を半分刻んでしまった。現場は騒然となったが、その作品はさらに価値が上がってしまったのだ。ただのグラフィティアーティストではない。なもんで、バンクシーの絵は現場を離れた瞬間に別の価値を持って動き始める。コンセプト・アート(こんなヘンなことやったらアートっぽいだろ)の位置になるのだ。これは普通のグラフィティ・アーティストには無理。

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並んでいると、何となく有名っぽいから来ている人が多いようで、ほぼ全員スマホなんかのカメラを準備していて、誘導する職員も写真を撮りに来ているものとして誘導し、「詰めて並ぶと早く写真が撮れますよー」なんて言ってる。全員まとめて「この愚民どもがぁっ!」と言いたい人もいるかもしれない。あるいは「小池の人気取りに乗せられやがって」と苦虫を噛み潰している人もいるかもしれん。でも私思うに、芸術家は常に反権力でイキっていないといけないって誰が決めたんだい? いや、反権力は結構だけどさ、それをイキって押しつけて、その行為が「アートを分かっているヤツ」ってことになるなら、それ権力そのものじゃん。バンクシーがオチョクるとしたら、よく分からんで来ている善良な市民ではなく、権力者みたいに偉そうに反権力こそ芸術とか言ってる玄人じゃなかろうかね。そうなると、この展示は実に痛快ではないか。ついでにバンクシーから小池にサンキューレターが送られ(それも思いっきりベタなヤツ)、真に受けた小池が満面の笑みで自慢でもしたら完璧である。ハナモチならない意識高い系がこぞって「バンクシーには失望した」と嘆く様を見てみたいねえ。まあそうはならんだろうけど。

そんなわけで、私もミーハーっぽく写真を撮った。絵そのものは、型紙を使ってスプレーで吹いたものなので、特にどうというものではない。ネズミは普通にかわいいところはあるが。スプレーの使いかたがうまいとか、そういうもんでもないし。展示は美術作品らしくなく通路に置かれていて、一応説明のパネルはあるが、バンクシーがどんなアーティストかとか専門的なことは書いてない。確定していないからかな。

私が都知事だったらどうするか? うん、現場にあった時にアーティストに消させる。一応落書き禁止という決まりなのでね。かといってバンクシーらしきものをただ消すのももったいないし、やっぱり権力者は価値が分からねえとかバカにされるのもイヤなので、「バンクシーらしき絵を消す」というパフォーマンスを誰か他のアーティストにやってもらいます。Chim↑Pomあたりやってくれないかな。もちろん「権力の犬」と書かれたTシャツを着用して。その様子は記録され、東京都現代美術館のコレクションにして常設展で流そうぜっ。

しかし素朴な疑問として、なぜ都の美術館じゃなくて、都庁に展示してあるんだろうか? これも思うに、美術館側が突っぱねたんじゃなかろうか? まだバンクシーと決まったわけではないし、そもそも現場にあるべきグラフィティを外して持ってきて展示するなんて、そんなみっともないことできねえよ、というところであろうか。
http://www.metro.tokyo.jp/tosei/hodohappyo/press/2019/04/19/09.html

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2019年5月 1日 (水)

百年の編み手たち(東京都現代美術館)

長いこと閉館していたが、この度リニューアルオープン。アクセスが悪いんだからカジノにでもしちゃえよという陰口(誰が言ってたんだ? ……オレだ)をよそに堂々の再開。日本の、特に東京にある美術館は狭いと思っていたが、ここはデカい。いや、無駄にデカい。クソ暑い日でも、ガラガラの常設展は冷房ガンガンで、それってなんか税金もったいねーよなあ(別に気にせん人もいるだろうけど)。そんなわけでこのデカい施設、先々客が来る企画やるのかね。前はジブリとかディズニーとかやってたけどさ。
この「百年の編み手たち」は企画展示室3フロア全部使用の企画です。出品リストがないから、適当なメモでいくぞと。

3階からスタート、1914年から始まる。最初に有島生馬の「鬼」。次の部屋にロダンのスフィンクス女と、岸田劉生がいくつか。おや、岸田ってゴヤの影響受けてる? って感じのものも。河瀬通勢って人。次の部屋、版画でおなじみ恩知孝四郎、ヴィクトル・パリモフ「手術」なんかヤバい。機関誌「マヴォ」。部屋を移動。牧野虎雄の草木の絵。中原實、人物、壁一面に並ぶ……しかし高さがあるよなここの壁。中原は抽象もできる人で「乾坤」はなかなかイケる(オレ好み)抽象画じゃん。次の部屋、おお吉田博。風景版画。帆船だ。損保ジャパンで見たな。あん時は混んでたな。版画雑誌いろいろ。次の部屋、桂ゆき、オノサトトシノブ。次の細長い部屋に、藤巻義夫の隅田川両岸絵巻。長い、全部展示、壮観だぞ。近代の両岸なんで、鉄橋とか電柱とかあるんだぜ。あとは都市版画とか。次の部屋も中原實、うーん、この人知らなかったな。なかなかシュール的表現と日本風と使えてイイじゃないか。それから鶴岡政男「重い手」手が人物。シュール的傑作。岡本太郎もあるよ。

3階終わって2階に少し。

1階、中村宏のルポ絵画、中村宏好きだけどな。一つ目女子高生みたいな妖しいヤツのがいいな。朝倉摂いろいろで「1963」という機械みたいなのがいい。人物も描くけど。次の部屋にも桂ゆきがいくつか。ほほう、注目してますな。「馬」がいい。写実の新聞で馬。あと「宇宙」おっと先日アウトサイド・ジャパンで見た「ゆびふし」に似てるぞ。有機的なものが集積した円形。次の部屋からアンフォルメルで、ちょっと苦手になってきた。白髪なんとかとか。次の部屋、光り物。多田美波の(鏡みたいな)ピカピカ立体。電動のヤツもあるぞ。これキネティックじゃん。次、横尾忠則ポスター(好みじゃないが)、ウォーホルのマリリン。柏原えつとむの、「方法のモンロー」とかいうもの。次の部屋、河原温の日付と、オノ・ヨーコのこれも活字っぽい字で単語が書いてあるだけのもの、日付ではなく指示だったりする。通路に出ると田中千鶴子の卵が脱皮するようなもの、地下1階の吹き抜けが見える。磯部行久の何か環境もの。横尾の油彩。

地下1階へ。白川昌生……赤いな。おっと杉本博司、自然のジオラマを自然風に撮ったヤツだ。舟越桂の人物彫刻。会田誠の空の絵だ。福田美蘭……おお。嫌いじゃないんだけどなあ。全部何かしらのパロディなんだよなあ。森村泰昌、マネの少年の真似。パンツダウン。次の部屋、珍しく村上隆の手作り風絵画。ヤノベケンジのデカいヤツ。奈良美智のおなじみのもの。毛利悠子の電子制御インスタレーション。おっと出た。加藤泉、相変わらず不気味人物だなあ。これがカワイイって人もいるようだけど。名和晃平のガラスビーズ鹿。Chim↑Pomが国会前にカラスを呼ぶパフォーマンス映像。普通にカッコイイ。風間サチコのデカい木版。311の指差し作業員、そう、ここでもう現代だ。大きな吹き抜けに来た。泉太郎のインスタレーションがなかなか面白い。狭いところを這っていく。ぬいぐるみが顔にペイントしてくる。会田誠の屏風2つ。日韓女の子対決、セーラー服対チマチョゴリの。梅津庸一の知・感・情のパロディ(っていうか仮設移動ですと)。最後に写真いろいろ。100年が終わった。

昼にレストランにも入ろうかと思ったら混んでいる。サンドイッチ屋があるのでそっちに行く。サンドイッチはともかく飲み物がそこそこお高い。まあ、そうでもしないと利益出ないと思うが。

コレクション展「ただいま/はじめまして」も行ったが既に力つき何もメモっていない。コレクション展は小さいパンフレットがあって、それに写真付きで全部解説が出ている。今時の人がほとんど。ここのシンボル、リキテンスタインの「ヘア・リボンの少女」も出ている。

まともに見ていると一日がかりだぞ……というか一日楽しめるのだ。
https://www.mot-art-museum.jp/exhibitions/weavers-of-worlds/

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2019年4月28日 (日)

櫛野展正のアウトサイドジャパン展(ギャラリーAAMO)

櫛野展正は日本唯一のアウトサイダーアートのキュレーターなんだそうだ。これまでアウトサイダーアートというと概ね心身にハンディキャップのある人のアート作品とかで、その内容も玉石混淆。技術もインパクトもあるヤツもいれば、うまくもおもしろくもないものもある。という感じ。この方面のキングであるヘンリー・ダーガーがかなりメジャーになったので、つまらんものは淘汰されて全体にレベルアップしたかもしれない。結局競争はあるのだ。
で、今回の展示は、単にハンディのある人だけじゃない。また、美術教育を受けていない人、とも限らない。チラシに曰く「人生をかけるほど熱狂するものを見つけた人たち」だそうだ。普通の美術展には出てこない「かなりのヤツラ」に出くわせる。

コーナー別に分かれている。数が多いもんで全部は書けないが、印象に残ったのを適当に選んで書くと(当然他の人が見れば他の人なりの感じ方がある)、最初に「憧れ」コーナー。けうげけんって人の架空のお笑い世界。お笑い芸人とそのネタを全員作っているというスゲエもの。映像もあるか面白いんだかよく分からない。伊藤輝政はデコトラの工作。レベルは高いよ。「異形」コーナー。ラーテルさん(あなぐまハチロー)。こりゃムンクレベルのパワーがある絵画だ。精神にハンディがあったかな。稲村米治。昆虫(甲虫)びっしりの立体像。げげっ。八木志基、怪獣の絵。ストレンジナイト、仮面世界。人生も仮面っぽかったそうで。工藤千尋。女体のオブジェみたいなもの。どこかで見たかな。いわゆる現代アート風。「描く」コーナー。岩崎風水、刑務所の絵。割と普通。戸谷誠、女性を描いた巻物とか。普通にうまい。大竹徹祐、テレビの画面とかを小さい絵にする、あと芸能人とか。凝ってるね。菅野武志、似顔絵コインランドリーだったかな、似顔絵は普通にうまい。原夕希子。「ゆびふし」とかいう指の一部みたいなのがびっしりの絵。キモいがよくできてる。あと小さい丸でびっしり埋めるヤツも狂ってて見事じゃ。ガタロ、雑巾がいっぱい。世那覇俊、あのうなんかカラフルで細かくてね、ブツブツみたいな顔の人がいるの。次は新子、いろいろハンディがあるようだが、線描画のパワーは相当なものだ。特に大きい絵。これは普通の現代美術展でもイケると思うぞ。この企画で誰か一人を選ぶとすれば、俺はこの人だな。

「家族」コーナー。深沢佳那子の家族4人の凝った年賀状。やるな。国谷和成・みよ子、折り紙のブロック折りとかいうのがあるそうで、外装をそれで埋め尽くした動物とかの立体。きめが細かい感じでよくできてる。「楽園」コーナー。遠藤文裕のスクラップブック。うむ楽園だ。「廃材」コーナー。椿八郎。紙パック帽子、楽しいねえ。今井豊一、手作り風車。動いてるよ。ここで18禁コーナー「エロス」、マキエマキ、エロ自撮り、なんと山頂で貝ビキニとかやってる。スゲエなオイ。糸井貫二、具体あたりアーティストらしいが、脱いじゃうパフォーマンス。泥沼毒生、サディズム画、稚拙なテクが返って怖い。塙興子・河合良介これがナイス親子(当人は大変みたいだが)、河合良介が人物を激痩せにした絵を密かに描いていて、それを見つけた娘の興子がショックを受け、自分もエロと細密の絵を描くようになる。どっちもヤバい。親子共演。城田貞夫、からくり人形、なかなかエグい顔してる。エロオブジェもあり。向井東冥、性研究だそうだがよく分からない、研究本ともエロ本ともつかんものが置いてある。

18禁を抜けて「過剰装飾」コーナー。宮間英次郎ド派手帽子。しかしなんたって、みやび小倉本店。貸衣装屋、金ぴか、何か? あの悪名高きド派手成人式御用達だっ。おお、ここが総本山だったのか。写真がある。気分はもうドキュン。しかしここまでキメて並んでいると一種の様式美がある。スゲエなこの店。よくやるなあ。次に「老人芸術」このコーナー以外にも結構年輩の方の作品は多い。一つ栁恋路、蝉の抜け殻ビッシリアート、ここも虫ですかい。秋月聖徳太子、名前はアレだけの木の立体(そういや秋山祐徳太子ってアーティストがいたな)。「フェイク」コーナー。松崎覚、蝋人形。うわそっくりじゃん。スギノイチヲ、おっさんが芸能人とかに変装してる写真……こ、これ似てるじゃん。藤田嗣治なんてのもある。あっ!きのこ(という人)、B級かぶり物……うん。オモローだ。三浦和香子、フェルトで作る食品サンプル。うまいがフェルトだ。最後「ヘアサロン」コーナー、結構ヘアサロンの人が多いとかで、藤堂正之、踊りながら髪を切る面白パフォーマンス。黒滝武蔵、提灯、大きい、普通にうまい。一ツ柳外史春、海上と海中が一緒にあるジオラマ。見応えがあるね。それから会場を出て杉作J太郎……ううんと、名前は聞くのだが、思いついた言葉をサクッと書くカジュアル書道。あ、オレも書き初めやってたがそのパターンだな。楽しいよな。「ゲロ温泉」とか書いたりした。

表現の幅は広い。行けば何かしらインパクトを受けるものに出くわすであろう。
https://www.tokyo-dome.co.jp/aamo/event/kushino2019.html

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2019年4月24日 (水)

ユーモアてん(21_21 DESIGN SIGHT)


アートディレクター浅葉克己ディレクション。ユーモアっていうぐらいなんで、笑えるのがあるのかな? まあ笑えるだけがユーモアではないのだが、概ねそういう方向な感じで。

入るといきなり卓球の音が聞こえる。見ると何かケッタイな色を塗った卓球台がある。ダミアン・プーランって人の。やりたい人は自由に遊べる。浅葉は「一人ピンポン外交」というのをずーっとやっていて、世界のいろんなところで、いろんな人と卓球をやる。そのレポートが卓球の雑誌に載っていて、それも展示している。ボリュームがあるんで全部は読み切れん。この企画での卓球大会もある模様。オレは元卓球部だ……もう何十年もやってねえが。しかし場所柄外人客多いな。浅葉氏、南京玉すだれもやっている模様。南京玉すだれって、名前は知っているが見たことないような。おっと動き出しそうな人形がある。それからクリヨウジ(九里洋二)のアニメ。「LOVE」は女が「アイ」と言いながらひたすらシュールに男を追いかける。60年代風。あとコレクションみたいなのがいろいろあって。壁にポスターがあって、目立つのは巨匠、福田繁雄。けったいなコーヒーカップ、文房具、不可能な図形の立体化。分かるかい「ネッカーの立方体」。あと平行四辺形に歪んだテレビ。さすが巨匠。やっぱアートとユーモアではキングの風格がある。

「ネッカーの立方体」 撮るの難しいな>
P_20190421_143715  

広い空間に入る。ジョン・ウッド&ポール・ハリソンって人達……なんか妙な名前だな。ジョン・リンゴ&ポール・ハリソンじゃねーのかい(なんのこっちゃ)。それはさておき、その二人のベースとドラム。妙に単調にやってるやつ。あ、シモン人形があるぞ。機械少女。もうちょっと機械が複雑だと萌える。金子國義の少年。またクリヨウジのアニメ。部屋でいろいろ起こる。これもシュールなやつ。この人のアニメは浅葉のツボのようで、クリヨウジアニメはもう一ヶ所ある。概ね大人向けで、深夜番組なんかで流れていたものっぽい。コラージュを使っているヤツは、ちょっとモンティ・パイソンのアニメにも似てるな。川上典李子の「ルーペの節穴」ルーペの中にルーペの形の穴がある。うむ、これは面白いな。18禁の部屋あり。ユーモアといえば笑い、江戸時代の「笑い絵」とは春画のことだ。なもんで春画が並んでいる。江戸のすっきりした男女の絵の局部んところだけ何かグロい生き物がいる感じでハハハ……春画を絶賛する人もおるが、オレは正直これ美しいとは思えんのだがね。あとシモン人形の全身のやつ。あと誰だっけ……覚えてねえ(出品リストがないもんでな)。18禁の部屋を出て、立石大河亞。ユーモア油彩。大きいぞ。シュールレアリスムコーナー。瀧口修造……なんかただのシミみたいなんだが。ロン・アラッドの、ポスターにもなってる。めがねをかけたガラスの器。めがねめがね。和田誠描く似顔いろいろ(あまり見てない)。おっとアンティークみたいな椅子があるので疲れた座ろうと思ったら展示作品だと。みんな座って注意されてる、何の何だか分からんが。そしてまた福田繁雄、傑作「アンダーグランドピアノ」どう見てもピアノ風のガラクタが、鏡に写るとなぜかちゃんとしたピアノに見えるトリックアート。どうなってんだがサッパリ分からぬよ。最後にまたジョンとポールの映像作品……部屋を移動していく……どっかで見たんだよね。どこだったかな。

「アンダーグランドピアノ」 最強>
P_20190421_145218  

あえていろいろごちゃごちゃな感じで展示しているので、堅くならずに見ていける。ほぼ撮影できる。普段撮影やらないけど今回はやっちまったい。ま、この内容ならいいだろ。
http://www.2121designsight.jp/program/humor/

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2019年4月16日 (火)

ギュスターヴ・モロー展(パナソニック汐留美術館)

パリのモロー美術館には行ったことあるんですよ。元住居だから広くはないんですね。でも絵がっぎっしりで。パンフレットに日本語があったが、左右逆で、あれはもう直ったかな。で、その所蔵作品から出ている。
「サロメと宿命の女たち」ってサブタイトルだからよ、こりゃもう期待大ってもんでしょ。モローお得意の女性像ですぜ。
が、しかし、オレの経験上、モローは傑作とそうでないものの差がデカい、なんていうか、駄作は雑なのか、いや雑と言っちゃ悪いな。ラフすぎるのか。でも、ラフでも雰囲気が感じられるんで、かえってタチが悪い。この雰囲気のままアナタバッチリ描けるでしょうに、とか思うと見ていてフラストレーションが溜まってくるのです。

最初に24歳の自画像とかあり、結婚はしなかったが30年つきあってたとかいう、アレクサンドル・デュリューのスケッチとかあり、まーでもこのあたりはなんかどうでもよくて、やっぱし次の油彩の「パルクと死の天使」それこそラフで顔も判別せんが、厚塗りで雰囲気もある。いや、いいですよこれ。それからいよいよサロメもの登場。「洗礼者聖ヨハネの斬首」という別に女性がいる感じでもない絵があり、「踊るサロメ」これは下絵っぽいが、これも雰囲気がいい……んだけどよ、これの完成作の写真が小さく出ているのだが、なんだ、すげーじゃねーかよ。下絵でこれを察してくれというつもりなのか、あるいは完成に至る源泉をありがたく見よというのか、いずれにしても完成作が見れないっていう時点でフラストレーションが大いに溜まっちまう。あーそうそう、だいぶ前にBunkamuraだったか、「アンドリューY.S.」展があってだな、あれも下絵&完成作写真の大量展示だった。美術展に罪はないし、下絵集めてくるのだって十分労力はかかっているだろうけどフザケンジャネーヨとしか思わなかった。客はワガママなのだ。まあいいや、「踊るサロメ」は一応それ単体のやつがある。あと目玉作品の一つ「出現」。首が浮いているやつね。背景の線描は最晩年に描き加えたんだって。でもちょっと余計な感じだなあ。あとサロメもの下絵いろいろ(割とどうでもいい)。さすがに下絵ばかりで申し訳ないと思ったか、ここで思い切ってババーンとサービス。「サロメ」油彩、全裸、全身、正面向いている。肌白い。きれい。うひょ~♪ ……いいんだけどね、なんか通俗的でモローらしくねーよ。サービスしすぎじゃねーか(文句が多い客だな)。

サロメ以外の宿命の女たちのコーナー。「トロイアの城壁に立つセレネ」空を背景にしたセレネね、いいですよね。ラフでなけりゃ。これも下絵だって、完成作は行方不明だって。探してくれ。「メッサリーナ」も雰囲気だけ感じられるラフなヤツと、あと、ありがたいことに水彩がある。実はモローは油彩よりも水彩に向いていると思っているんですがね。ラフさと繊細さと色彩が、水彩にぴったり合っている感じ。「死せるオルフェウス」竪琴を弾くイケメンが無惨すぎ。顔ないし。「ヘラクレスとオンファレ」ちゃんと描いてある油彩。でも若描きだそうで、言われてみればそんな感じ。「セイレーン」あーこの夕日がいいですねえ。そして3人のセイレーン。モローは空を使った演出が冴えているよな。「レダ」うむっ、白鳥とキスしてるヤツ。色も深く妖しくキマっている。ヤバさ満点。ナイスな絵ですよ。でももうちょっと顔をちゃんと描いてくれ。いや、雰囲気があるから顔など適当でいいと思っているのか、顔をちゃんと描くとかえって雰囲気が壊れると思っているのか知らないが。やっぱ人間顔だよなあ。「セメレ」なんかこれもラフだなあと思ったら。モロー美術館にある「ユピテルとセメレ」の下絵……というかそれ以前の構想絵じゃないか。映あとの像で「ユピテルとセメレ」が出ていたが、超スゲエ絵だ……現地で見たっけ?(覚えていない) 「エウロペの誘拐」これもちゃんと描いてる。そこそこ。「デイアネイラの誘拐」うーん、水墨画でも見たのか? 「サッフォー」サッフォーが身投げしてるところ。サッフォーはLGBTのLだと思ったら実はBだったらしく。最後は男にフられて身を投げたんだそうです。にしても竜宮城の乙姫様みたいな感じだな。なんか東洋風。

最後は一角獣のコーナー。「一角獣」はさすが代表作的雰囲気。丁寧だしちゃんと描いてある。でも未完らしい。そうは見えないが。次の「一角獣」も乙女とツーショットな。顔は普通。「妖精と具グリフォン」これも水彩があって水彩の方がいい。

いやー会場は小さいし大きな期待はできないが……でも、そんなに悪くないぞ。モローはラフなヤツでもそこそこイケるんで。あと入場料も1000円とお手頃だしな。
https://panasonic.co.jp/ls/museum/exhibition/19/190406/index.html

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