ドガはそう好みでもないのだが、話題の規模のため行ってみたのだ。開館ほぼ同時に行って既に入場制限。チケットを買うにも20分ほどかかる。うええええ、こういう目に遭うと内覧会ご招待組への煮えたぎるジェラシーがいやが上にも高まるというものだ。
ドガがアングルを敬愛していたというのは初めて知った。冒頭の「画家の肖像」からして肖像画がうまい。「エドモンド・モルビッリ夫妻」は、確かこれ再会だよな。ドガもこんなきちっとした肖像を描くのかと感心した記憶があるが、その手合いの味のある肖像がいくつも見れるのは嬉しい。「画家の従姉妹の肖像」もいいね。「マネとマネ婦人像」なんて妙なのもあるぞ。これは横向きのマネが婦人像が気に入らなかったので、どうやらマネがキャンバスを切って婦人の半分を切っちゃったって。マネのくつろいでんだか偉そうなんだか、そんな格好がいい。
その前の、サロンに出たという「障害競馬 落馬した騎手」って、こりゃうまいのか? まず馬の足はこれでいいのかって気がするが。あと、通好みのデッサンもかなりあって、多分ドガ好きにとってはこのデッサンこそが相当な魅力であろう(オレはなんかどうでもいい)。
次にいよいよバレエもの。最初に「14歳の小さな踊り子」の彫刻。こりゃ傑作。胸が出てないのがいいよな。何書いてやがると思うかもしれないが、これでオッパイが大きかったら踊り子じゃなくなるような気がするぞ。それから見たぜ目玉の「エトワール」……背景(踊り子じゃない部分)とか結構とラフなタッチなんだな。うちにある複製(印刷の)とあまり印象は変わらんかった。「バレエの授業」なんてきちんと描いてあるのはなかなかいい。ドガはパースのかかった部屋の描き方がうまいね。「バラの踊り子」というのがあり、一見普通にキレイなんだけど、上半身が妙にデカい。うむっ、このプロポーションは「?」だ。いやしかしこれは、リアルなのかもしれん。全身鍛えているからなあバレリーナは。あと、マツコ・デラックスの肖像があり、ほほー当時から活躍してたんだ……いやいやいや「女性の肖像」だ。マツコの鼻はこんな高くないな。
次に浴女の山。当時主流のキレイキレイな女神像が嫌で、覗き見風の行水女を描きまくる。なんかこう、本来アングラ気分でウヒヒヒムフフフ的鑑賞物だと思うが、こうして堂々と大美術館に展示され、老若男女が喜んで鑑賞しているってのはいとおかし。いやーオレはこれ当時のアングラだと思うね。「浴後(体を拭く裸婦)」の下半身は生々しく、上半身はねじれてどうなっているか分からない(試験に出るマニエリスムか)、なんてのを見ると、もう少し時代が進めば、ドガはベルメールみたいにパーツフェチになったんじゃない? ……んーまあならないか。部屋を出るところにバレリーナに関する歯の浮くようなドガのポエムがあり、えー? お前本当にそんなこと考えて描いてたのか?
最後の部屋には彫刻があり、ドガさんはバレエのコスプレフェチかと思ったら、おおこりゃ違うんだな。衰えても全身像を見事に作っている。顔は目鼻とか全然作ってないが、全身像はきちんと作り込む。つまりそういう嗜好なんだね……うーん普通じゃん。
出たら昼前で空いてて入場制限もしてなかった。なんだよ。
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