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2011年4月30日 (土)

五百羅漢 (江戸東京博物館)

幕末の絵師、狩野一信による増上寺の五百羅漢図。去年板橋区立美術館で二枚だけ見たが、そのインパクトは相当なもので、今回それがあるだけ全部出る。一枚だけでも濃いヤツがなんと百枚だぜっ。こりゃあ見ずにおれんでしょう。幕末の狩野派なんて死んだも同然かと思ってたが、こんなナイスなヤツがいたのだ。

んで期待外通り見応え十分。以下は目に付いたとこのメモで意味不明なところもあるがすまん。

3アクビしてる童子、5波の表現、8龍、9と10ほのぼの浴室風景。髭を剃られてる羅漢がイイ顔、13後ろの仏(~天ってヤツ)、17これから僧になる頭を剃られてる奴、19右上の笑っている羅漢。

ノリノリで六道を描く一信。ここ見どころ。21と22地獄のモンスター特に百目がイケる、24救い出されてもまた地獄に落ちてく奴。羅漢ビーム(解説にも「ビーム」と書いてあって「光線」とかもっと和風のうまい言い方が無いかと思ったが、やっぱりビームだとあとで思った)。25食い物が火に変わって泣く、27猿とかの動物、31赤い阿修羅がいるぞ、37天女飛ぶ。

「十二頭蛇」という修行、45妙な陰影表現が冴える、49と50の夜の様子がよい(板橋で見たのはこれだったかな)。

「神通」という超能力。51頭から水ピュー、53リアル首吊り死体(ヤバいぜ)と必殺羅漢ビーム(!)、55象、57怖い顔の布袋、59大蛇、60下から見上げている降参悪鬼。

空想動物ものいろいろ。63鳳凰、64ガラス器の中の龍、67白いカエルはどこかな、68白虎(ちょっと変だが)、69白澤(はくたく)って生き物スゲエ、70獅子とお戯れ、71~74竜宮ツアー、77~80羅漢の大工仕事(北斎漫画好きならこれはイケる)、81~90七難、自然災害と悪い奴が襲ってくるもの。悪い奴にはもちろん羅漢ビーム発射。

そろそろおしまい「四州」シリーズ。92空の車輪。

他にも巨大仏画とか、下絵とかある。濃いぜっ。ヤバいぜっ。これ混むぞ。早めに行くべし!
http://500rakan.exhn.jp/

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2011年4月24日 (日)

ヘンリー・ダーガー(ラフォーレミュージアム原宿)

ダーガーは日本に初めて紹介された時から知っている。世田谷美術館の「パラレル・ヴィジョン」ではアウトサイダー・アーティストの一人に過ぎなかったが、そのインパクトは傑出していて、世界的にも巨大化し、日本でもその後ギンザ・アートスペース→ワタリウム→原美術館、ときて今回とうとうラフォーレ原宿。場所が妙にメジャーなのと、事前にブレンゲン(ダーガーが作り出した異世界生物)の絵はがきセットが出るとか知ったので、なんかヌルい内容を予想していたが、なかなかどうして、大画面作品はいくつも堪能できるし、何より「ノーマ・キャサリンの虐殺」として知られる彼の最凶作品に再会できたのが嬉しい(小学生以下無料とか書いてあるが子供にゃ見せられんよ)。この絵はワタリウム以来だ。非常に残虐で気分の悪くなるようなモノだが、彼の極北として諸君も目撃されたい。原美にゃ無かったのだ。

「最新の研究成果」となっている通り、彼の生涯や「非現実の王国にて」の内容についてかなり情報が増えている感じだ。絵の展示は時系列ではないのでちょっと混乱するが、そもそも発見時にどの絵がどの場面でいつ描いたのかも不明なので、これはいたしかたがない。それに表裏使っているのも多いしね。あと、ブレンゲンだけ集めたコーナーもあるが、うーむ、あんましかわいくないんだね。あと、有名人の彼へのオマージュ(文章)など、読みどころが多い。

美術的内容では、トレース手法が独自なのだが、そこらの広告を無理無理使っている感があるので、どうにも不自然さに目が行ってしまう。だいたい7人の美少女戦士なのに、なんか萌えない(まあそもそも両性具有だもんね)。しかしそれでも画面構成のうまさは光る。線路でパースペクティブを表現するのもかなりイケる。いや何より諸君、人物はさておいて、その雲と木々を見よう。絵が描けなかったわけではない。これは純粋に天才の描写だ。特に雲などは、彼が天気オタだったこともあろうが、これが無かったらダーガーはここまで評価されたのかとちょっと思ってしまううまさだ(まあ、雲なんて彼の作品中ささいなもんかもしれないが)。……雲の話は原美の時も書いたな。

多少なりとも創作をしている人間にとって、独り人知れず巨大世界を築いたダーガーの存在は驚異であり特別である。美術鑑賞というより、その身震いするような存在そのものを間近にビンビンと感じるのがダーガー展の魅力ではなかろうか。創作世界に埋もれた彼が幸せな人生だったのかそうでないのか、これは謎のままだ。世界に没頭できたダーガーは実は幸せだったのではないか、いやいや、彼は現実を呪っていただけでは、しかし…… いずれにしても人はいかなる状況でさえ「生き」ようとする。天才ならなおさらだ。

http://www.lapnet.jp/event/event_l110423/

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2011年4月18日 (月)

フレンチ・ウィンドウ展(森美術館)

原発事故の最中で放射能チョイ高めの東京に外人観光客などいるはずもなく、ついでに西の方からも来ないので、休日午前だけどめっぽうすいている。ついでに、放射能汚染を嫌がったヘタレアーティストがいくつか貸してくれないぜっ。

フランスに「デュシャン賞」という現代美術の賞があるそうで、その受賞作品が中心なんだって。デュシャンが好きなら、この企画も大いに面白い。いや、べつに好きじゃなくても面白いぞ。最初にデュシャンの作品いくつか。今回の企画タイトルの元となった「フレッシュ・ウィドウ」も出ているよ(意味はいちいち書かない)。

で、いよいよ今どきの展示開始。ブリュノ・ペナドの褐色のミシュランとか。ミニマルアートみたいだけど一部凹んでいるヤツとか。マチュー・メルシエのフレンチ・ウィンドウの透明なの。窓際にあるから向こうのTOKYOが見えるという粋なヤツ。

フェステル「エグゾトゥーリスム」は部屋一つを使って暗くした映像作品で大がかりだけど、内容は普通(というか時間がかかってあまり見てない)。それよりローラン・グラッソの鳥の群映像が凄い。アートというか鳥の生態というかだけど、パリ(?)の上空に無数の鳥の群が描く驚くべき模様。あと、森を車で進んでいったら鳥の群に追い越されるのを繰り返す、という映像。

ニコラ・ムーランの写真も面白い。多分、実際の建造物の風景なんだろうけど、幻想絵画みたいな雰囲気がある。「ノヴォモンド」「アスキアタワー」「ブランクルーデルミルク01」……うーん、これあとで調べてみたが、どれも作品名としてしか検索で出てこない。とすると架空の建造物イメージなのか。それはそれで面白いが。それからヒルシュホーン「スピノザ・カー」は、ゴテゴテとした妙な装飾が目立つ車。それなりの意味はあるんだろうけど調べてない。フィリップ・ラメットの人物を使った超現実的写真はチョイ地味ながら面白いぞ。圧巻はサーダン・アフィフ「どくろ」いやいやいや、こうきましたか。これは傑作だ。こうやってドクロの群を作るか、と唸ってしまうぜ。これはぜひ実物を見ていただきたい。

放射能を嫌がって途中撤収しないうちにGO。
http://www.mori.art.museum/contents/french_window/

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2011年4月13日 (水)

れべる7

そうこうしているうちに原発事故が最悪の「レベル7」だと。あー、もうこれで東京にも外人観光客は当分来ないよなあ。以前、ロシアのツアー旅行に行ったんだけど、その前にテロがあって、その場所ってのが確か500キロ離れてたはず。それでもツアー客半減だもんね。福島原発からは約250キロ。諸君、観光地がチェルノブイリから250キロで、今も事故おさまってないったら行きますかい? いやーもう、これ、誰も行かんよ。世界地図で見ると、日本は小さいし、原発から東京はもちろん、京都だって大阪だって目と鼻の先みたいな感じだもんね。

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2011年4月 9日 (土)

アーティスト・ファイル2011―現代の作家たち(国立新美術館)

いつもいつも混雑したメジャー企画ばかりを見ている君も、たまにはこういうのに行ってみよう。今どきのものが分かるし、すいてるし、驚異的な力技の作品にも出食わせるぞ。(もっと通になるとギャラリーめぐりとかするみたいだけど)

クリスティン・ベイカー……抽象画系(とくくってしまっていいものか)。カンティンスキー中期のパクリみたいにも見える。

松江泰治……鳥瞰の写真。10年ぐらい前に見たヤン・アルテュス=ベルトランみたいだけど、視点がもっと細かいようで、人にクローズアップとかもある。ヘソ出し女の子のクローズアップなんて、今時なら盗撮でつかまっちまわないか。あと、静止画みたいなだけど、車や動物だけが動いているビデオ作品はなかなか面白いぞ。

タラ・ドノヴァン……壁一面にふわふわした雲みたいなもの、はて材料は何だろうと思って説明を見ると「透明プラスティック製ストロー」……なにっ? 近づいてみると確かにストローがもうびっしりだ。こりゃすげえ力技だ。もうひとつの壁一面にマイラーテープで模様ってのもおもしろい。それにしても、これをどうやって持ってきたんだろうか。

中井川由季……ごつごつした陶のデカい塊がいくつも。布にも見えるな。

鬼頭健吾……部屋に入って思わずうぉっ! 驚きたい人は、ここから読まないでね。部屋一面に布団が敷いてある……と思ったらこれスカーフなんだな。扇風機で風を送ってふかふかに見せている。いやいやいやこういうのに出会えるから、この手の企画はやめらんねえな。ああ、現代美術館にも行きたいねえ。

ビョルン・メルフス……タイトルは「夜番」。文字通り夜を番するデカいフクロウ人間に見下ろされている。光る箱の中で人間の声が響くが何をしているのかな? ちょっと怖い作品だぞ。隣の部屋は別作品だけど、ほとんど連動している。

岩熊力也……抽象画系(なんてくくっちゃっていいのかな)。この手の作品を見るといつも書いていることがあるが、いつも書き過ぎたんで今回は書かない。

バードヘッド……うううみゅ、漢詩のような字が書いてあるのと写真がいっぱい。壁にも筆ででっかくメッセージ。アウェーだごめん。

そんなわけで、スペース十分。異空間体験としても楽しめる。

http://www.nact.jp/exhibition_special/2011/af2011/index.html

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2011年4月 3日 (日)

ヴィジェ・ルブラン展(三菱一号館美術館)

ルブランだけでなく、当時の女性画家にもスポット。おフランスの女性のロココのとくりゃあ、もう四十男が萌え萌えで狂っちゃうようなフレンチ美女の肖像とか頼むぜとか思うが、まあ、そういうもんでもない(まあ、男が喜ぶ美女を描くのは概ね男だったりする)。

とはいえ最初の方のマリー・ルネ……あーもう写すのめんどくせえや、の「ヴォルテールの死を嘆く詩のミューズ」なんてのは美女セミヌードですぜダンナ。あと、エリザベト・ソフィ・シェロンの自画像も美女。そうそう当時の女性画家の自画像ってルブラン含めみんな美女なんだが、これはなんだ、美化して描いてるのか、あるいは世に出るにゃあルックスも大事だったってか。

マリアンヌ・ロワール描く「フルリー公爵夫人」や「ジヴリ男爵」はいかにもロココの、毎日いいもん食ってそうな平和ボケヅラが楽しめる……んだけど、近くに当時のギロチン処刑の話とか出てるんで、実は連中は戦々恐々で、せめて肖像ぐらいはハッピーに描いてくれってことだったかもしれんね(時代がどうだったかはよく分からん)。

マリーレクジンスカの「中国風居室」の絵は見物。オリエンタルパラダイスな空想の中国が炸裂。うん、いいよ。それからデカい部屋に出て、巨匠フラゴナールの妻、マリー・アンヌの小品が注目らしい。

それからしばらく普通の絵(?)が続き、いよいよヴィジェ・ルブラン女史登場。同時期にラビール・ギアールというライバルがいたそうな。そのギアールの「ショワズール公爵」は、質感バリバリの描写力で迫る。反射や光沢でキメキメ。見たところ、ルブランはこういうことをあまりやらなくて、小物はそう目立たせずあくまで人物中心で描いてるようだ。まあ、それがルブラン人気だと思うよ。ギアールの弟子のカペの自画像もあり、これも美女じゃ。ルブランとくりゃおなじみマリーアントワネットの肖像。まあ、これは普通。貫禄あるぜ。それより「ポリニャック公爵夫人」が非常に今風にも見える美女ですな。いやいやいやこりゃこりゃこりゃ。まあ、ホッペが赤いのがご愛敬で。えーそれから階段を下りて「プゼ公爵夫人とルーゼ公爵夫人と二人の息子アレクシとアドリアン」が傑作。ファミリーものではないが、子供がいりゃあこう描かれたい。まあ、息子が女の子に見えるがの。それからおなじみルブランの自画像一つは損保ジャパン以来の再会。微妙に年を感じさせるところが美化ではなく実はマジ美女だったのかと思わせる。あと初めて見る自画像2点あり。うーん、これもう年齢分かんないや。ルブランは革命後亡命生活を送っていたが、アントワネット一緒に処刑されたりしなかったし、結局は祖国に帰れたし、恵まれてたと思うよ。あと、見たところルブランはロココではないな。ちゃんと人物をいい感じで描いていて、ロココの貴族貴族した感じが無い。

近頃の印象派展もオランダ絵画にも飽きちゃった人にゃ、ちょっと新鮮な感じだぞ、きっと。
http://mimt.jp/

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