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2011年6月27日 (月)

アンフォルメル(ブリヂストン美術館)

幾何学的抽象やらシュールレアリズムの後に、フランスで出てきた「形の定まらない」者達。試験(美術検定)に出そうな内容いっぱい。今まで、あまりこのあたりは紹介されなかったので、勉強にもいい。

まずはアンフォルメルの前に、印象派から後期印象派など。マネの「オペラ座の仮装舞踏会」で既に抽象っぽいのは驚く。モネの「睡蓮の池」なんてのもあったが、モネなら晩年の方がアンフォルメルに近い。

それからメインに突入。評論家のタピエという人が「アンフォルメル」と言い出したそうで、その対象となったのが、フォートリエ、デュブッフェ、ヴォルス。

フォートリエ「黒の青」は、厚塗りに引っかきという、存在感のあるヤツ。やはりみどころはジャン・デュブッフェ。「愉快な夜」「暴動」「都会生活」は、一見幼児が描いたように見えるのだが、これを描くのは恐らく相当難しい。「素朴派」の絵よりも相当困難だ。デュブッフェは、アールブリュット(アウトサイダー・アート)の発見者の一人でもある。ヴォルスは、有機的な描線で、引っかき傷というかインモーというか毛虫みたいな版画集「ヴォルス」がいいよね。
次のコーナーからアンフォルメルいろいろ。スーラージュの極太描線、アルトゥングの奥行き感がいいね。カレル・アペルの太赤裸婦が目を惹く。おなじみサム・フランンシスも色彩が楽しいが、だいぶ前に「サム・フランンシス展」に行ったら似たようなのばかりで飽きた記憶がある。そうそう、この手合いの抽象画家達は、一つデキ上がると似たようなものをいくつも作るので、個展などでは飽きてきたりするのだ。

しかし、巨匠は最後にやってくる。ザオ・ウーキーの絵にいくつも再会が嬉しいじゃなあいか。確かにアンフォルメルの影響というかその延長の表現と言ってもいい。おお、ザオ・ウーキーこそ、抽象画では右に出るものはいない、というほど私の評価が高い画家なのだ。人により、感じ取り方は色々だと思うが、「24.02.70」では光を感じ、「10.06.75」では青い海を感じる。その他の絵も、どれも色彩は深く、表現は自在、心に直接響く絵画が素晴らしいではないか。我々は、この絵と同じ感情を巻き起こす物を知っているはずだ。何かは具体的には言えずとも、それは心のどこかに眠っていて、絵画により目覚めるであろう。ブリヂストン美術館は、このザオ・ウーキーの絵をいくつも持っているらしい。うらやましい。ぜひまた個展をやってくれ。
http://www.bridgestone-museum.gr.jp/exhibitions/

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2011年6月21日 (火)

すうじにゃつよくありたい

こないだからやっと放射線の本とか読んでいるが、とにかく「ドタマに血がのぼってないヤツ」の本を探している。さしあたって「放射線のひみつ」。あっという間に読み終わったが。

ツイッターを見ていると、ロクに根拠も無くヤバそうな情報を【拡散希望】とかやっているのを見かける。見たところ、そういう人は数字や科学に弱い。数字に弱いと放射能より先にデマにあっという間に汚染される。

うーん、例えば、次はある記事を元に作った文章だが、恐らくこれは事実である。

「チェルノブイリ原発事故では、事故現場の100キロ圏内で500人以上の障害児が産まれた。それらの子供の浴びた放射線量は年5ミリシーベルトである」

これをみて、「うわっ!」と思うか、「ん?」と思うかで弱さが分かれる。

・何人中の500人なのか
・何年間の値なのか
・事故前と比べてどうだったのか

このあたりが全く気にならないとヤバい。それはもうデマ拡散人間である。障害児は事故前でも一定以上いたはずで、問題はあくまで、それと比べてどうなのかということ。この手の記事で、もし分母を押さえていない場合、それは記者がアホなのか、誘導するため意図的に隠していると考えられる。

政府やら東電は事故を小さく見せようとしているかもしれない。しかし、最悪の情報が真実ではない、ということ。数字には強くありたいものだ。

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2011年6月19日 (日)

森と芸術(東京都庭園美術館)

文字通りの森と芸術を探る企画。評判がいいので行ってきたぞ。

入ってすぐアンドレ・ボーシャン。草木なんだけど刺繍っぽくてなかなかいい。アンリ・ルソーの絵もある。森といえばアレだな。ルソーの独特の森は記憶に残るはずだ。

神話コーナーにはドレだのジョン・マーティンの版画だの。遠近表現がイケる。ドレの遠くの山にいる天使なんかいいねえ。こっちにもボーシャンがあるが、人物はちょっと冴えないぞ。風景画のコーナーでは理想風景のロランVSリアリズムのクールベさんの対決が楽しめる。理想風景系ではコローもあるが、作品はイマイチ。ロランももう少しイケる絵はあったはずだ。対して、どんな絵でも容赦無く「リアル」を感じさせてくれるクールベさん、さすがだぜ。また会えて嬉しいぞ。バルビゾン親方のテオドール・ルソーもいるよ。象徴派の部屋にはバーン・ジョーンズ版画あり。エミール・ガレの花器3つはどれも名品、特に「草花文花器」、この黄色ベースに飛ぶ蝶は素晴らしい。やっぱ「ガレ工房」とは一味違うと感じるのはオレだけか。上に行く階段にボンボワ。素朴派のちょいデブ専。風景メインはちょっと珍しいかな。

2階ではシュールレアリスムと森。マグリットで出迎えが手堅い。「再開」は初めて見た。ジェームス・アンソール「愛の園」。おおアンソールの油彩は嬉しい。マチエールがいいだろ。マニエリスムの造園家リゴーリオの作品をピラネージが描いた「ディヴォリの滝」、うむ見事だね。あったんだなこういうの。隣の部屋にゃリゴーリオのいわゆる「怪物庭園」の写真を川田喜久治が撮影。おお、ここは一度は行かねば。メルヘンと絵本は適当に見て、シュールの続き、やはりエルンストは外せないよな。代表的な「灰色の森」があるぞ。ジャン・アルプの部屋……なんか試験勉強で名前が出た気がするが忘れた。それからおなじみデルヴォーの作品。裸女群は森と親和性が高いが、今回版画しか出てなくてちょっと残念。ああ、大作「森の中の駅」がまた見た~い。岡本太郎コーナー「森の家族」……うーん、ここは「森の掟」を出してほし~いって、何度も見たけどさ。付近の森が紹介され、最後にジブリの「もののけ姫」の森原画でおしまいなのだ。

各画家が若干パワー不足な感じもあるが、いい感じにまとまっている。行って損はしない。
http://www.teien-art-museum.ne.jp/index.html

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2011年6月13日 (月)

パウル・クレー|おわらないアトリエ(東京国立近代美術館)

評判が良さそうなので、早速訪問。竹橋駅で当日券を売っている、というのは初めて見た。十分期待に応える内容。なんとなくとらえどころがない感じのクレー作品を、手法ごとに分けてバシッと分類。目玉の超大作があるというわけではないが、多彩な表現の数々は見ていて楽しいぞ。

入るとまず自画像いくつか。次にアトリエの数々を写真入りで紹介。この辺では小さい部屋を次々通っていく感じ。おや、これが最後まで続くのかな、と思いきや。次の手法での分類では一気に空間が広がる。この演出はなかなかやるね。

作品としては、ミュンヘンアトリエの「北の国の神」がキュビズム系か、でもキュビズムには無い叙情性がある感じだ。「破壊され村」も同じく、タイトルに反して、しっとり(?)いい感じの雰囲気があるね。ヴァイマールアトリエの「花ひらく木」と「花ひらいて」は目玉の一つかな。「花ひらく木」を90°回転して2倍拡大したのが「花ひらいて」なんだって。絵はタイルのような色分け系(「なんたら系」は私が勝手に付けている)、「花ひらいて」には裏の絵があり、これは太線象形文字系。ベルンアトリエには、「山への衝動」など、この太線象形文字系が多い。

次は手法での分類。「写して/塗って/写して|油彩転写の作品」これは下描きの絵の裏に油絵の具を塗って、下餓鬼の線をなぞって転写する方法。クレーの絵は、よく線が浮かんでるような感じのものが多いが、この手法を使っているせいなのね。「船の凶星」なんかでは大量にある下描き線から選ぶ感じで。「バルトロ、復習だ、おお! 復習だ!」はタイトルは何だがカワイイ人物系。「住人のいる室内透視図」は文字通り室内透視図。描線は直線ながら味がある。「蛾の踊り」は青い背景画に線が浮かび上がる傑作。「淑女の私室でのひとこま」はピンク背景画、「上昇」も先浮き上がり系。絵の中の矢印がおもしろい。

次は「切って/回して/貼って|切断・再構成の作品」。「E付近の風景(バイエルンにて)」が代表的に分かりやすい。色分け系だが間に灰色のラインを入れて再構成することでまたにいい感じになっている。

「切って分けて貼って|切断・分離の作品」これは、できた絵の一部を切り出して別の独立した作品にした、というもの。ある要素がクローズアップされ、切り出し前とは別の表情を見せるぞ。池田学の大作からは、これで100枚ぐらいできるかな。さてクレーは、「縦の木のある赤い風景」が色分け系で分かりやすいかな。「熱帯の薄明」は珍しい白描線(珍しくもないか)。「マネキン」「なおしている」と「別れを告げて」「夜のための目印」も分かりやすいね。「別れを告げて」は太描線のカワイイ人物系。

「おもて/うら/おもて|両面の作品」で導線がちょっと混乱。1からすぐ6に行ってしまった。「鉛直」のちょっと寂しい風景みたいなのがいい。「子供の肖像」は陰影写実系といったところか。

最後の「過去/進行形|"特別クラス"の作品たち」は傑作が多い。「幻想的なフローラ」「襲われた場所」とか。「プルンのモザイク」は文字通りモザイク。ベルンのアトリエの再現で終了。うーんアトリエに絵がほしかったな。

クレーがぎっしり堪能できる好企画。これは「行き」だねっ。
http://klee.exhn.jp/index.html

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2011年6月 4日 (土)

ジパング展(日本橋高島屋)

村上隆が、西洋美術の文脈から見た立ち位置を必死に研究、プレゼンして世界に発信したのが「スーパーフラット」という一方で、日本独自のガラパゴス的面白さを見つけだしていったのが、ミズマアートを中心とした面々。去年見た「ジャラパゴス」と同じようなメンバーなんで、チト飽きたかなと思ったが、やっぱり見ると面白い。スーパーフラットが「ふーんそういうもんか」という感じに対し、こっちは「おおっ、こいつぁスゲエ」と、パッと見で誰でも分かる面白さがある。簡単に言やあ、和風の表現、高いテクニック、愉快な遊び心だ。

今や巨匠の会田誠は代表作の一つ「大山椒魚」。ま、場所が上品なマダムも来る高島屋じゃ「ジューサーミキサー」は出せんわなHAHAHA。一方おなじみ山口晃は鏡を使って見る「歌謡ショウ圖」と左側に解説マンガを入れた「山乃愚痴明抄」。しかしいずれも日本風表現なんだけど、キャンバスに油彩なのね。もう一人おなじみ鴻池朋子は、個展で見た巨大ドクロ襖。ジャラパゴスでもドクロもんだった。不気味さ全開。

森淳一という人が木で細かく作った……なにこれ、レース編みみたいなの? はとにかく見て仰天。まさかこれ一本の木から彫り出したんじゃないよな。見て仰天ならやっぱり池田学、最近この手の展示でちょくちょく名前を見るが、作品が「興亡史」だけだったので他のを見たことがなかった。今回「ブッダ」という作品が出ている。これまた高密度大画面という驚異のシロモノで、絵のごく一部を切り出しても普通の絵と同じくらいの濃さがある。他にも4点ばかり出ている。小物だが十分濃いのと幻想性が高いのが嬉しい。具象シュールレアリズム好きなオレ好み。

近藤聡乃のアニメ「てんとうむしのおとむらい」と再会。山本太郎という人、一見普通の日本画なんだけど、よく見るとクリスマスツリーだったり能演者が掃除機持ってたりという愉快もの。それから藤田桃子、名前が桃子だなんてカワイイくせに作品は妖しく不気味な「午後三時の訪問者たち」。左に横たわる巨大な象、人とも怪物ともつかぬ者達、うむむむっこれはヤバいぜっ。指江昌克の「MOON」は球体になって浮いている……なんだこれレトロ建物? まあこれも見て面白い。

とまあ他にもいろいろ。いずれも分かりやすくインパクトもあり、ちょいと立ち寄った人でも楽しめるぞっと。
http://zipangu.org/index.html

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