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2011年11月27日 (日)

ザ・ベスト・オブ山種コレクション(山種美術館)

この美術館、千鳥ヶ淵にあった時はほとんどノーマークだったんですが、広尾に移転してからちょっと気にしてます。ベストなんだってさ。評判がいいので行ってみたです。

出だしで俵屋宗達と本阿弥光悦の最強コラボ「四季草花下絵和歌短冊帖」登場。下絵なのか? 「萩」や「千羽鶴」がいい。しかしどうも銀の変色で黒くなっているところがあるのではないか? と思う。あるいは元から黒いのかな。伝俵屋宗達「槙楓図」に唸る。宗達は琳派以前の感じだと思っていたが、これを見ると琳派の樹の表現などは既にできあがっていたのですな。それから酒井抱一の「秋草鶉図」これは明らかに銀からの変色月。図録の見本にその言及がないようだが。まあ、それよりも鶉の描写がいいぞ。

下村観山の「老松白藤」は近代画の立体感で迫る。三井記念美術館の丸山応挙「雪松図屏風」風か。横山大観はあいかわらずわけわかんねーが、どうも正統的日本画描きだと思っていたオレが間違っていたかもしれん。実は「朦朧体」を推進したりと結構アヴァンギャルドだったようだ。でも晩年近くの富士とかは認められん。そうそう岡本太郎が言っている「八の字文化(だっけか)」そのものじゃんねえ。松岡映丘が2点。練馬で個展やっていたが、えええとこれあったかなあ……時期がかぶるからないよなあ。ま、それよりもだ、村上華岳の「裸婦図」はヤバい。これ目玉。有名なんで知ってたけど本物は初めて。本物を見た方がいい。顔が命。これなに、アルカイックスマイルってやつ。あるいはモナリザを意識したか、あるいはバルテュスか、仏画か、ともあれ「何かある」顔に注目。それから速水御舟「名樹散椿」これもヤバいぜ。一瞬ルソーかと思ったが、うねうねの木の幹、濃い花の描写。他にこういうのは見ない。

前期と後期があって、来年から後期。全部入れ替えだって。
http://www.yamatane-museum.jp/

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2011年11月19日 (土)

ぬぐ絵画 ―日本のヌード 1880-1945―(東京国立近代美術館)

だいぶ前に「ヴィクトリアン・ヌード」という企画があり、それは大盛況で、というか普段絵なんか見てないやろって人が、女の裸じゃウヒヒヒって感じで来ていたのも記憶に残るが、今回も似たようなもんかなあ、と思ったが、金曜夜に行ったら客は少なかった。

ヨーロッパじゃヌードなんてごく普通の絵画のテーマなんだけど、この日本ではそうではなく、洋画家達は、日本で普通にヌード絵画を、美術ジャンルとして認知させるのに四苦八苦した。昼間の展覧会でそう簡単に展示できるもんじゃなかったんだって。

ってことは浮世絵ではありふれた、というか芸術性が高いとされる春画ってのも、しょせんはエッチなアイテムだったってことか。いや、でも歌麿が女性のヌード掛け軸を、特に春画目当てでなく描いたりしていたんだけどな。

まあいいや、明治時代に留学してた(よな?)五姓田義松も「西洋婦人像」できっちりヌードを描いている。

最初の美術学校である工部美術学校のトルソやら裸体デッサンもあり、やっぱなんだかんだ言っても人間を描く基本なんだよね。人体は骨と筋肉で構成されているってことを手で覚えなくちゃいけないんだぜ。

ここで日本のヌード認知に大きく貢献した黒田性器もとい清輝の登場だ。下半分を布で隠されて展示されたいわくつきの「裸体婦人像」。まあ、今見ると普通の絵だけどね。しかしなんたって超有名な「智・感・情」が出ている。これは見てないヤツは見ておくべし。ヌードを展示したものの鑑賞者のスケベ目線にブチ切れた黒田が、こうなったら芸術性の高いヌードを見せてやるぜって気合い十分に取り組んだ3枚組大作。人物は理想化された八等身、意味ありげな仕草と何もない背景、緊張感の高い傑作である。他のでは師のラファエル・コラン風のユルユルフワフワな感じの「野辺」や「花野」なんてのもある。

次は萬鉄五郎特集。フォーヴみたいなおなじみ「裸体美人」は卒業制作だったんだって。そのデッサンからの制作プロセスも分かる展示。なんかマティスの課程みたいだな。抽象っぽく裸婦をやっつけるのもあり。

次が「濃い」。村山槐多がいくつか。特に最高傑作の一つ「尿する裸僧」うむっ、これが来たか。松濤で見たっけな。でも見てないヤツは見ておけ。あとデブ専といってもいい甲斐庄楠音が2つ。これも練馬で見たな。デロリンではなかったが。それから古賀春江がいくつか、そうか彼はごくまっとうなシュールレアリストじゃん「涯しなき逃避」の形而上ぶりがいい。熊谷守一が並ぶ。「夜」はいいがあとはあまり好みじゃないな。

最後の部屋、梅原龍三郎。「裸婦」って言葉を考えたのは彼ですってよ。流行語だったんだって。ここでは、安井曽太郎の「画室」が傑作。水浴裸婦なんて嘘っぽからもう描かない、と言った安井が、普通の家の中に横たわるヌードモデル(理想化せず)と自分の家族を描いちゃう仰天作。妙な感じが新鮮だぞ。

「智・感・情」だけでも見ておこう。
http://www.momat.go.jp/Honkan/Undressing_Paintings/index.html

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野見山暁治展(ブリヂストン美術館)

こないだの日曜に行った。

ブリヂストンがおすすめする抽象画家なら期待できる。なんたってザオ・ウーキーを見いだしたのもここなのだ。

「芸術は爆発だ」と言ったのは岡本太郎なんだけど、じゃあ何が「爆発」なのか、というと、私が思うにそれはありきたりの現実の殻を破る「爆発」なのだ。画家が具体的なものをあれこれ描き続け、ある時抽象という表現を身につけると、水を得た魚というか、絵が生き生きしてくるものだ。今回の野見山暁治もそんな感じで。初期から展示してあるので爆発する様を見ることができるというわけ。

初期の「妹の像」なんて見ると、普通にうまい。あとは、セザンヌを暗くしたような絵が並ぶ。これだけじゃあ並の画家で終わってしまう。戦後に欧州に行って、抽象に突っ込み始めたあたりから面白い。絵が生き生きしてくるってわけ。「人間」や「冬の樹」なんてのがそうですな。形の分かるものとして、人物がいくつかあるが、んーまあ普通に面白いよ。

日本に戻ってきた時の絵が並ぶ。もう抽象で何でもありみたいな感じで、こうなるとむしろある程度形を保って描かれた「並に打ち上げられた水筒」みたいな方が面白さが分かりやすい。あと「タヒチ」という作品も、何となくボリューム感がある感じで、エルンストのシュールレアリズムっぽががあるようなないような。「ぼくの生まれた川オンガ」で、ちょっと自然風景っぽいものになると、私の鑑賞基準がザオ・ウーキーになるので、あの神ががった領域まで行くのは難しい。

水彩・版画のコーナーがあり、最近の作品群。もはやどれがどうというものではないんだけど、エネルギッシュに爆発を繰り返す様はなかなかいい。タイトルが付いていて「いつかは会える」とか「かけがえのない空」とか意味ありげなんだけど、何かタイトルはあって無いようなもの。うーん……むしろ無い方がいいかもしれん。最後に今年の自画像。一応顔と分かる。

http://www.bridgestone-museum.gr.jp/

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2011年11月12日 (土)

ゴヤ - 光と影 -(国立西洋美術館)

この秋の本命。混むだろうから会社休んで行きたいなあ、と思っていたが、今の状況じゃどうも休みが取れん。今日はシトシト雨で、なんとなく出足鈍そうだったんで会社帰りに行って来たよ。金曜は夜8時までだぞ。

入ってすぐに天井の高い地下にご案内。自画像から。あと油彩。有名な「日傘」もここでいきなり出会える。この絵の女性の顔ね、凄いねこの描写と光の加減が。他の部分が何となく雑なのね。それから「猫の喧嘩」という面白い絵がある。猫だけ描いてある。背景がほとんど空でなかなかいい絵だ。

上に上がって、いきなりある「アルバ女公爵と"ラ・ベアタ"」小さいが、この不気味で薄ら寒い感じがいい。目玉「着衣のマハ」もこの近く。「マハ」って人の名前じゃなくて、着飾った庶民の女性だとか、つまり今で言う「イケイケギャル」か……いや、今そんなこと言わんな、何て言うんだ? まあそんなもんだ。目玉なんだけど、私はピンと来なかった。「裸のマハ」と並んでないからかな。そういや「胸でけーな」とか思った。あと穿いてるもんが柔らかそうでいいな、とか。そんな程度だな。それより隣の「洗濯女たち」こっちの方がゴヤらしい。何気ない風景っぽいが、羊を囲んだ妙に妖しい雰囲気に、洗濯女たちが魔女にも見えてくるのさ。そう、魔女はゴヤがいっぱい描いてたんだよね。「魔女の飛翔」これも小ぶりながら凄くイイ。闇の中に浮かんでいる絡み合う人体が、シュールレアリズム絵画のような雰囲気を出しているぞ。

その後はほとんど版画と素描。いや、中盤からもう版画素描多いけどね。「ロス・カプリーチョス」という版画の傑作からが多いね。うん、これは面白いけど、一度見りゃいい感じだな。油彩ではあと肖像画ね。宮廷画家がそつなくこなすお仕事。でも私にゃこれらは魅力的ではない。普通過ぎる。版画集「戦争の惨禍」は文字通りの内容だけど、これも普通。あー、もう普通の版画ばかりかねえ……と思いきや。

「闘牛技」という仰天の版画集からの作品が並ぶ。これはオレ的に今回のクライマックス。「闘牛」なんだけど、華麗で美しいとか、そんなものは描いてなくて、牛にやられて死んでるとか、そんなのばかり。売れなかったらしいが、こりゃ売れんわ。でも、絵としては凄い。完成品は西美も所蔵していてそれを出しているが、今回その中にプラド所蔵の準備素描が混ざる。これがまたいい味付けをしているんだな。完成された版画は主題も明確で画面もスッキリしている(心地よいというわけではない)が、素描はまさに混沌とした描いたまま状態で、なんとなく生々しい。しかしそれがいい。「トレホーン市長の死」なんかその比較で味の違いが明確だ。それにしても、この一連の、惨劇というか、無残な状態というか、それが見世物である空間で行われていることの妙、さらには、それが描かれているということ。この落ち着かない印象はなんだ? ふと私が思いついたのはフランシス・ベーコンだ。あの何も無い部屋で破壊された人体があるというのが、何となくこの「闘牛技」に似ている。そうだベーコンはこの無残な絵を描くゴヤが好きで影響を受けたに違いない、とか思った。

あとの版画もそこそこ面白かったが、やっぱこの「闘牛技」には及ばなかった。あと晩年の油彩が一枚でも欲しかったもんだが、やっぱ来日は無理か。

油彩ずらずらには期待せず、でもいいから行ってみよ。
http://www.goya2011.com/

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2011年11月 9日 (水)

しょうせつ

10年ぐらい前は長編小説も書いていて、再び書きたいと思ってはいたのだが、なかなか時間が取れない、というかモチベーションが上がらない。最後に書いた小説は2010年1月で、おバカ系ケータイ小説で短編連作。あれから2年近く、長編を書こう書こうと思いつつ、構想をノートやポメラに書くも、ことごとくテンションが落ちる。困った。何も書けない。そこで私は考える。短いのだったらテンションが落ちる前に書けるはずだ。前の短編連作は書けたんだから。つまりだ、構想やキャラや人間関係は短編を書きながらやっていくことだ。周囲を短編で埋めるようにして、中心となる長編に必要な材料を揃えていくのだ。これでいけるのではないか。というわけで1話書いたのだが、まあこれは他人に見せるもんでもないな(何話かまとまったらどこかに置くかも)。

最後の短編連作は以下で読めるけん。暇な人はよんでみてね。
http://ip.tosp.co.jp/BK/TosBK100.asp?I=tkino&BookId=1

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2011年11月 1日 (火)

ヴェネツィア展(江戸東京博物館)

目玉であるカルパッチョの「二人の貴婦人」が来るってんで、他にもヴェネツィア派絵画がゴロゴロ来てるであろうと期待したアートファン、というのがどのくらいいるか分からないが、いや、概ね見当はついていたがやっぱりというか、歴史と工芸と風俗も併せて紹介するもんで、絵は少ない……いや、少なくないんだけど、どってことのないヴェネツィア風景とか、貴族風俗とか、おお、これは絵画を見た気になるぞ、ってのは終盤の十枚ぐらいかなあ。まあ他の絵もモノは当時のだけどね。まあ歴史に興味ありって人にはいいし、鳥瞰図も衣装もヴェネツィアングラスも地球儀も見れるべって欲張りな人にもいいし、企画者ががんばって持ってきて展示してくれているなら何でもイイです嬉しいですって人は大いに喜んでくれ。がんばってるからさ。

入ってすぐヴェネツィアのシンボル。羽の生えた花魁じゃなかったライオンの木のデカいのがいる。おいおいどこから持ってきたんだよこれ。一応美術館か。どこかの寺院から剥がしてきたんじゃないのね。それからヴェネツィア地図、デカい地球儀。有名なマルポ・コーロじゃなかったマルコ・ポーロの紹介。

そういえば一枚「ヴェネツィアに到着するフェッラーラ公」が形而上絵画のデ・キリコが描く「イタリア広場」に雰囲気が大変似ていて驚く。そうかキリコのアレはヴェネツィアなのか? 後ろの海のところがキリコじゃ壁になっているんだ。あと、絵では「横顔の女性像(クレオパトラ?)」がなかなかいい感じ。

ベネツィアンガラス工芸(こないだサントリーで見た)あり、「羽毛飾り」模様がいいよ。デカいシャンデリアもいいね。衣装があったけどほとんど見てないや。ピエトロ・ロンギって人の風俗画が山ほど。うん、絵は普通。

最後にやっと「美の殿堂」コーナー。ヴェネツィア派などの絵画紹介。でもビデオルームが近くて声がジャマで落ち着かねえよ。「誕生」なんていうイタリアンな感じ(?)の絵やら、「レダと白鳥」や「ヴィーナスとサテュロスとキューピッド」を見て、ああこれ女の裸を描く口実だよな。ヴィーナスの顔ちょっとヘンだなとか。目玉の「二人の貴婦人」は絵そのものより解説が面白かった。カノーヴァの「驚き」に驚く。なんだこの妙な女体のプロポーションは。東郷青児が失敗した感じか。カッリエーラの「春」はこれロココかな。いい雰囲気だね。ティントレットと工房の「天国」は大作っぽい感じだがイマイチか。ティツァーノは? ヴェネツィア派のティツアーノはおらんのか?

http://www.edo-tokyo-museum.or.jp/exhibition/special/index.html

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