« 2012年2月 | トップページ | 2012年4月 »

2012年3月31日 (土)

「開館60周年記念 あなたに見せたい絵があります。」(ブリヂストン美術館)

開館60周年記念。ブロガーの内覧会に応募したらめでたく招かれたので、うまうまと出向く……なもので今回のブログはひと味違うぞ。美術館側もこの企画は初めてで、新しいメディアの発信力を重視だそうです。これでうまくいけば次回もありそうですから皆さんブリヂストン美術館に行きましょう。
091_s_6(※写真はすべて主催者の許可を得て撮影しております)

さて、展示内容は石橋財団の所蔵品で構成されている。画家ごとでも年代ごとでもなく、テーマごとに10のセクションが分かれている。そして11番目に現代美術という構成。ここのコレクションは、久留米で青木繁と坂本繁二郎の作品を集めることから始まったそうです。うむ、どうりでこの二人の代表作を持っているわけだ。あと日本近代と西洋近代がメインで、最近現代美術もやりはじめた。

内覧会では30分ほど、今回の企画の説明がありました。全員参加を勧められたのは、やっぱり見た印象だけで適当なことを書かれちゃ困るからかな? 今回の展示は厳選した109点で、11のセクションは、11の小さい展覧会が続くと思ってほしいとのこと(こういう話をちゃんと記録できているのはポメラ使用のおかげさ)。どういう感じかというと、通常、同じ壁に並んでいるセザンヌ3点が今回は「自画像」「山」「静物」コーナーへそれぞれ分かれて展示される。それで、以降はその説明でのおすすめの内容と、実際見た印象とで書いていきましょう。

1.自画像、最初にある青木繁がいきなり赤系の色でいい顔つき。美術館おすすめはセザンヌの自画像で、晩年らしい味がある。意外と注目されないがピカソの晩年の荒っぽい作風である「画家とモデル」がある。これも見ておきましょう。

2.肖像、ルノワールの普通にいい感じの油彩少女「すわるジョルジェット・シャルパンティエ嬢」、その近くになんと岸田劉生の「麗子像」うむ、この対比。これ麗子8歳だそうです。デロリほどはいってないが、妖しい感じが出ている。黒田清輝の「針仕事」も代表作的な感じ。美術館おすすめは藤田嗣治「横たわる女と猫」。これブラジルで描かれたそうです。あー、でもこの手なら西美にある方が好きだな。

3.ヌード、美術館おすすめは安井曾太郎「水浴裸婦」ルノワールの裸婦の影響を受けたんだって。しかし私としては岡田三郎助「水浴の前」がいい、思いっきりラファエル・コランだけど、キレイキレイでいいだろ。マティスの「画室の裸婦」これは19世紀中に、フォーヴィズムの前に描かれたそうです。なんかボナールに似た感じの無かったっけ?

4.モデル、美術館おすすめはコロー「森の中の若い女」これはモデルにわざと普通の衣装を着せて描いたフィクションでの人物画だそうです。あと、マティスがお気に入りのモデルを描いた「青い胴着の女」。強調と省略がポイントだそうです。しかし私は黒田清輝「ブレハの少女」がいい。これ表情がいいな。

5.レジャー、美術館おすすめはブーダンの「トルーヴィル近郊の浜」海遊びは当時の最新モードだそうです。あとマネの「オペラ座の仮装舞踏会」。黒の使い方がいいそうです(「そうです」なんて書いてあるのは、私はあまり何とも思ってなかったりして)。あとピカソの「腕を組んで座るサルタンバンク」道化師を新古典主義というルネサンスっぽいので描いた時期のもの。ここで面白いのは絵の展示方法ね、次の展示室に移動する時に、正面にこのピカソが見える。逆に移動すると正面がルノワールなのだ。おすすめがパッと目に入るわけ。あと、このコーナーでの私の好みはデュフィの「オーケストラ」。まさにこの人の絵は音楽だ。
089_s_4移動して正面がルノワール

6.物語、このコーナーは小さいながらも一番よかった。美術館おすすめはまずレンブラント「聖書あるいは物語に取材した夜の情景」ただ、かなり小さい。あとルオーの「郊外のキリスト」キリストといってもなんと舞台が近代の街だ。まあ、それはさておき深い色がいい。藤島武二「天平のおもかげ」は重要文化財。青木繁「わだつみのいろこの宮」これは西洋のギリシャ神話のような絵を描きたくて、では日本にとって何だろうか、と考えた結果「山幸海幸(古事記)」を選び出して描いたもの。これもいいが屈指の代表作「海の幸」も出ている。
087_s_3物語絵画のコーナー

7.山、久留米にある雪舟「四季山水図」は6年ぶりに東京に来たそうです。これでも若描きだって。部屋ではそれに面してセザンヌの「サント=ヴィクトワール山とシャトー・ノワール」を展示(東西対比だそうです)。この山はおなじみなんですが、シャトーノワールも入っているのは珍しいそうです。しかしここにあるクールベさんの「雪の中を駆ける鹿」を忘れないでね。ゴーギャンやルソーもある。

8.川、ここでは主にセーヌ川のこと。つまり印象派。美術館おすすめはシスレーの川辺とモネのジヴェルニーで描かれた池。ヴラマンクの「運河線」という工場地帯と船を描いたもの……ヴラマンク好きなんだけどなあ。これはちょっと…… あと私としてはここに佐伯祐三があるのが嬉しい「テラスの広告」おなじみ佐伯のパリだ。
090_s川や海は壁の色も水色

9.海、美術館おすすめはモネと青木繁の海の絵で、なぜか表現がよく似ているそうです。あとクレー「島」は点で塗り分け一筆描きを使った表現、シチリア島の思い入れで描いたそうです。この絵は結構とマチエールがいいので、実物をぜひご覧いただきたい。

10.静物、美術館おすすめはセザンヌとピカソを並べたことだそうです。セザンヌの「鉢と牛乳入れ」について、見たままとは違う歪みを含める実験的な表現は分かりやすい、何ていうか静物二個しか描いてないもので、それがたくさん結集しても統一感があるというセザンヌの驚異を感じるにはちょっと物足りない。ピカソのは典型的キュビズムだそうで……おっと待てこれ見落としたぞ。あと美術館おすすめは坂本繁二郎の「能面と鼓の胴」と、藤田嗣治の食材もの「猫のいる静物」。藤田の線描画は神業で、説明で「玉子の輪郭線がどこから描き始めたか分からない」と言われたが、実物を見て確かに分からない。これは凄い! みんなは分かるかな?

11.現代美術、美術館おすすめはフォートリエとポロック。ポロックは近代美術館の帰りに5月29日から展示予定。ここでジャン・デュビュッフェ「暴動」に再会。エキサイティングな絵が嬉しい。美術館おすすめ存命中の作家として、野見山暁治とザオ・ウーキー。ザオ・ウーキーの「07.06.85」は海とも宇宙ともつかないが、とにかくすばらしく魅せる青い色を持つ。小学生にも人気だそうで。様々に見えてくるんだって。私は、ザオ・ウーキーは最も好きな抽象画家で「あなたに見せたい絵がある」とすればまずこの作品。これですよ! ああ、またザオ・ウーキー展やらないかなあ……学芸員の方に、ザオ・ウーキーをたくさん見たい場合はどうしたらいいか訊いてみたところ、台湾にコレクターがいるのだが、美術館を作る予定はないとのこと。残念だ。日本ではこの石橋財団が最も所有しているそうです。だからここに来るしかない。

そんなわけで……こうして書いてみたら主観じゃない情報の方が多いな。私は仕事で議事録とかよく取ってるからなあ……
あー、あと土曜講座があります。それから各作品に150字の解説。小学生にも分かるようになっているって。みなさん行きましょう。
http://www.bridgestone-museum.gr.jp/

|

2012年3月26日 (月)

難波田史男の15年(オペラシティアートギャラリー)

難波田龍起の兄弟かと思ったら次男ですって。昨日の最終日に駆け込み鑑賞(ってことはもう終わっとります)。この人の作品をちゃんと見たことはなかったが、今回たくさん見たぞ……なんだけど、うーん、全編ほぼオートマティズムというか、思いつくままに描いていく感じの絵がほとんど。最初の方から、なんかこう、何かを見つけたい苦悩感みたいなのが感じられる。あと、精神を病んだ人の絵みたいに、大きな目がにらんでくるとか、そんなのがある。

先日見たポロックなんぞもそうですが、こういう個人の年代順の場合、どこかの段階で「開花」が分かったりするのが楽しみなのです。その画家にしか出せない個性というのが、まとまった様式のようにバッと展開する。それまでは苦悩と試行錯誤の時代であって、まあ、作品的には既に誰かがやっているものの真似とか、そんな感じだったりするのです。本人は、独自のものだと思っていても。それで、史男の場合なんですが、誰かの真似ではなくて、自分の中の混沌をひたすら描いていくスタイル。うーんクレーのようでクレーでもない。
小さめサイズで自由奔放に描いた作品が多かったが、私的には、大きめサイズで描いたものの方が、抑制されていて、つまり、本人がある程度まとまったものを描かにゃあ、という緊張感があっていいと思う。あと、ぐちゃぐちゃした線の中に、たまにカワイイ女の子とかいたりする。ふふふふ、自由に描いたらいかにも自由な絵ができあがるのではなく、実はちょっとカワイイ女の子描きたいんだよねえ、というボンノーが現れているみたいで楽しかったよ。

規制概念にとらわれず自由奔放に描きたい、というのは、先日の中村正義もそうであった。でも、この史男と違うのは、自分がどうであるかを冷静に見る目も持っていることだと思う。どうも史男は突っ走り型で、自分がどうであるかってのをそんな気にしてないように見えます。実際どうだったかはよく分からないが。

船から落ちて早逝し、活動はわずか十五年だった。惜しい。でも常設展の龍起を見たら、やっぱ龍起の方が完成されていていいなあ。
http://www.operacity.jp/ag/

|

2012年3月17日 (土)

ユベール・ロベール -時間の庭- (国立西洋美術館)

こないだのゴヤもそうなんだけど、チラシにゃフルカラー油彩の画像をバシバシ載せて、行ってみたらモノクロの素描ばっかしという感じのが多いんじゃないすか西美。

フランスの十八世紀の画家で、廃墟萌えで、感じとしちゃクロード・ロランみたいな理想風景で、自らも国王の庭園デザイナーで、一見普通の風景っぽいけど、実はデザイナーに演出されている英国式庭園を造り、それをまた自ら風景画とする再生産なヤツ。

それにしても今回、出品リストが無いんだよね。タイトルメモるの面倒じゃった(っていうかほとんどメモってねえし)。最初にロベール以外の画家が並んでて、かのロランが一枚。あらためて見るとロランはうまいですな。何がうまいって木がうまい。幹から葉の一枚一枚が生き生きしてるよな。それからロベールにも影響を与えたというパニーニって人、見るとこの人も廃墟萌えのようですな。こういう演出された風景を描くことをパックンチョじゃなかったカプリチョーサじゃなかったカプリッチョ(奇想画)っていうんだって。あと、この手じゃ右に出るもんがいないピラネージがあるぞ。ピラネージは常設の版画コーナーに「牢獄」シリーズが出ているから身逃さんように。それからいよいよロベール君登場。モノクロながらイケてる凱旋門の廃墟の絵があり、おおおっとなるも、それ以降はほとんど「サンギーヌ」という赤チョークの素描が並ぶ。建物とか風景とかあとちゃんと見てないけど……ううううむ、いや、素描の価値を認めんわけでもないし、眼力がありゃあ素描から画家の生のこだわりや思想を読みとって、フムフムと感心する向きもあろうが、私は表面上のインパクトしか見ていないので、つまりようするに、あんまりおもろない。企画側も多分、そういう表ヅラしか見てない愚か者がつまらんとか言い出すと困ると思ったようで、たまにポッとフルカラー油彩画が展示されている。サン・ピエトロ寺院の開口部とかいう油彩画は、巨大な開口部に人が座っているんだけど、そういう、デカい構造物とちっちゃい人の対比に萌えちゃう雰囲気がいいだろ。いいかね諸君、絵というものはだね、テクニックとかテーマとか歴史とか思想とかで見るんじゃないのよ、「画家が何に萌えているか」で見るのが一番面白いんじゃ。まあいいや。またサンギーヌ連発だぜ。せめて木炭ぐらいのコントラストがありゃあ、まだいいかもしれんなあ。お、また油彩があったよ「ティボリの滝」だと。その隣がジャン・オノレ・コンニャロ・フラゴナールぢゃないか、ロココ三兄弟(私が勝手にそう言っている)の一人だな。あまり美術展に出ないもんで珍しや。それから今度はフラゴナールのサンギーヌが並ぶ。見たところロベールとほとんど変わらんのだが。それからピラネージもチラホラ。だんだん油彩も増えてきて、概ねサンギーヌ5に油彩1ってところか。やや大型の油彩も登場。チラシの「古代遺物の発見者たち」はさすがになかなかいい。開口部の外の明るさと、そこからの光がいいでしょう。次の油彩が、スフィンクス橋の眺め、とかいうのだけど……これは、あんまり、なんか岩とか石の質感がイマイチじゃね? 空気遠近法みたいな感じはいいんだけど、いかんせん質感がなってないじょ。それから縦長の大型の絵が二枚ばかりあって、一つが空想のローマとかで、他の人の絵もあって……あーなんか同じような古代都市廃墟風景画ばかりで飽きてきたっちゃ。いや待て、風景画じゃないヤツもあったはずだが忘れた。そうそう、古代都市を描いた低い箪笥とやらもありました。それからさらに地下へ。うむ、天井の高い地下には大作があるに違いない。おっとブーシェが二枚。これもロココ三兄弟の一人。ロココっぽい絵じゃないけどね。それから……待てよもう一人ヴァトーもどこかにあったような。まあいいや、さすがクライマックスでロベールの大型油彩をバシッと展示。自ら設計して造った英国式風景庭園を、また自ら絵画作品にしたもの。うむ、まさにこれがロベールの真骨頂でありましょう。それから大作「アルカディアの牧人たち」。理想郷にも墓(死)があったってテーマらしいぞ。うん、理想風景の中で人が何人か墓らしきものを見ている。それから上に上がって、何枚かあっておしまい。

素描が多くてどうかと思ったが、そこは西美。クライマックスも盛り上げて、普段見れないヤツラをきちんと見せるっていう手堅さがいいぞ。
http://www.nmwa.go.jp/jp/index.html

|

2012年3月12日 (月)

ジャン=ミッシェル オトニエル:マイ・ウェイ展(原美術館)

最終日に駆け込み。従って、これを読んで行きたいと思っても行けません。この企画は前にポンピドゥーセンターで開催され、大量動員したそうで、日本でも大いに話題になっていたのたが、ううむ、そんなに凄いかな。

最終日のせいか、客も結構多かった。それにしても、この企画写真撮影可能なんだけど、これはよくないねえ。そこらじゅうでケータイのカシャカシャいう音がするのだ。おめーら作品と対峙してんじゃなくて、作品の印象をかすめ取って自慢しようとしているだけじゃねーかバカ者どもがあっ! なんて思いつつ自分も撮っちゃう小市民。いや、だって、ここ読んで行きたいと思っても行けないんじゃ、せめて写真だけでも載せたいじゃん。あと、子供向けのワークショップをやっていたもので、会場内は子供も多いんだけど、問題は展示は決して子供向きに作られてないの。だって、触っちゃいけないものが床に置いてあるとかマズいでしょ。階段からダイブするガキがいるが、そのすぐ脇にガラス作品とか、子供向けに企画したい気持ちは分かるが、あまり展示を考えてねーな。それで必然、親は神経を使う上に「それ触っちゃダメ!」「そこに入らないでー」とか言わなきゃいけないもんで、会場内を飛び交う怒号罵声悲鳴絶叫咆哮爆笑殴打乱闘惨劇いやいやいや違うってそんなひどくないですけどね。それで……ああちょっと待って、腹の中で昼食ったラーメン中本品川店のカプサイシンが暴れているので気絶しそうだ。中本は私の行ってた高校のすぐ近くにそもそもの店があって当時から有名でしたよ。うん、もう三〇年ぐらい前かね、一度だけ行って食ったのは一番マイルドな味噌ラーメンだったけど、それでもかなり辛かった。今、その「味噌」と「蒙古」と「北極」があるが、確かもっと細かく分かれてて北に行くほど辛くなるんよ。「樺太」とかあったはずだな。しかし一番標準の「蒙古タンメン」を食べたけどやっぱ辛いね~、水なしじゃキツいね~ 「うまから」とはいうけどもね、陳麻婆豆腐とか、赤から鍋とかは辛くてもうまいと思うが、なんかこのラーメンってただ辛いだけじゃね? いや、でも、タンメンというん名の通り、半分溶けたような野菜はなんかあの辛いのに合いますね。ちょっと甘みがかっててねうふふふ……って、いやまてなに書いてんだ、原美術館だったな。Dsc_0023_2
1階はガラス作品がメイン。ガラスの玉(拳の大きさぐらいかな)でできてるタイトル文字があったり、ガラスで装飾されたベッドがあったりします。その先の大きい部屋がガラスのメインですな。ガラス製のヒトデとか釣り針(?)とかが入ったガラス瓶がたくさん並んでいるのが、これやっぱりいいね。見た目も壮観。Dsc_0020_4
あと、ガラス玉が線状にうねっている作品とか(結構大型でダイナミック)、上から吊ってあるのとか、外にも作品がありましたな。中から見るだけだけど。

2階はガラス以外の蜜蝋とかの素材のものがあり、こっちの方が見慣れない素材ということもあり面白い。Dsc_0024_3
ここは常設作品がいろいろとあり最後の部屋の奥に奈良美智の部屋がある。ドア開けないと入れないので、気がつかない人は気がつかない。この部屋は奈良の展示の中でも雰囲気があって非常にいい。奈良作品はこういう部屋っぽいのに向いてるよね。あー、あと宮島達男のデジタルカウントダウン作品の部屋があり、暗くて狭いからカップル向きだな(何が?)、あと、ここに森村泰昌のトイレ装飾作品もあるんだけど、これはイマイチ。あと、今回初めて見たが、コインを入れて募金する作品があったぞ。
http://www.haramuseum.or.jp/generalTop.html

|

2012年3月 5日 (月)

中村正義(練馬区立美術館)

うむむむ、これは凄い。いや、ポスターになっている三島由紀夫のケッタイな色合いの顔は好みじゃなかったので、そう期待していなかったのだが、行ってみたらまあなんというかマジヤベエ、こりゃ行かにゃ損じゃ。

前回、アーティストは変化があっても統一した個性云々とか書いたが、あえてそのぶち壊しに挑む者もいる。この中村正義がその最たるもの。

年代順だが、まずは手堅い、いかにもなおとなしい日本画。でも「風景(跨線橋)」の硬い近代的題材の感じで早くも何かをやる予感。闘病の苦しい自画像を経て「夕陽」これはいかにも日展好みの非常にいい感じの絵なんだだけど、毒もないところが満足できなかったであろう中村、次に「舞子三部作」が登場。異様な肌と幼い感じの体型で着物をはだけていたり、目が朱だったり、着物も朱だったりと挑発的な作品。これはもちろんお上品な日本画への挑発もあろうが、祇園井特などの京都系に対する挑発もあったんで舞子なんじゃないかと思うけど違うかもしれない。つまりですね「これも日本画だよ」と言って喜々として紹介される京都デロリン系舞子に対して「それがどうしたそんなこと分かってるわい」ということでまた違うインパクトのヤツを描いたわけ。その隣に荒ぶる「八大童子」のデカい絵で、次がいきなり児童画風の「空華」。うわ、こう来るかよ。不思議な雰囲気の少女が立っているものだが、解説にある「児童画」というより、今時の絵を描くお子達がやりそうな「ちょっと不安なアタシを描いてみました」という内面的な感じで、中にはそれしか描けんヤツもおろうが、中村にとってはほんの一つの作風なのが驚異だ。ここまでまだ一階なの。

二階の途中階段に今度はマジ児童画風のがあり。二階入り口に「頭でっかちの自画像」というおっとこれインパクトありもの、やっと二階の展示室に入って「太郎と花子」なる男女のからみもの。ここまででもかなりの変化だが、ここで一気に自らをぶち壊しにかかり、今まで使わなかったド派手でケバい色を使って荒々しく描くようになる「妓女」ワハハハハハこの変貌ぶりはもう笑っちゃうしかない。曰く「私は私を破壊することに成功した」。大丈夫かこれ凄すぎるぞ。これが続くのかと思いきや、「颯爽」という派手ながらケバくはない琳派みたいな風景。そして次が「源平海戦絵巻」五部作。映画のために描かれたらしいが大画面細密描写でええええマジこれ船の数と人の数がハンパねえ。絵ごとに基調となる色を変え、見応えがある。

次の部屋では「キッチュ」と解説にあるようなこれもハデハデ作品、うむまたこれか。しかしここで、描写は荒いものの色調がガラッと変わった「瀟湘八景」。自画像がいくつか。この辺で日展系の画壇からシカトされるようになる。雑誌に使われたハデな似顔がずらっ。三島もここにあるが……うーんでも、私は横尾忠則とか好きじゃないからこの色合いは苦手だ。しかし次、いきなり「ネオ・リアリズム」なるエアブラシとかも使ったえらい透明感のある風景画が並んで仰天。それかた一気に作風が暗くなって水俣病告発の、闇に浮かぶ骸骨と顔の大作。曽我蕭白へのオマージュ作品、次の部屋にいって顔を描きまくって並べた展示空間。

いやーこれ全部違う人なんじゃねーかと思うくらいの変化。全編完成度も高く常にエネルギッシュに攻める爽快感がある。近頃山口晃や松井冬子など日本画流行りだが、これを行かずにどうするよ?
http://www.city.nerima.tokyo.jp/manabu/bunka/museum/

|

2012年3月 3日 (土)

野田裕示 絵画のかたち/絵画の姿(国立新美術館)

マイナーな画家なもんで金曜夜だとほとんど人もいない。別会場の「文化庁メディア芸術祭」にはうじゃうじゃ人がいたのだが。

全て抽象画と、彫刻とのコラボ。抽象画も、自分の内部を探るかのように、慎重かつ地道に描き続けるタイプ。感情爆発とか客を挑発とか、そういうタイプではない。色彩は抑えられ、原色は使っていないようだ。

80年代から新たな作風になったそうで、この企画はそこからの展示。最初は壁に貼り付けた薄い箱の中に、いろいろ立体物を並べていく感じのもの。解説にジャスパージョーンズの名が出てきたが、うん、色合いは全然違うがそんな感じで。少しすると箱ではなく、木片とかを使った立体感のある抽象画が並ぶ。同じ形の小片を使って運動感を表現している作品はなかなか分かりやすい。あと、あくまでキャンバス地にこだわり、立体の上にキャンバスを貼り付け、そこに着色。凹凸の凹の部分が穴ではなくキャンバスであるところが「おっ」という感じの印象。あとそうだな、暗い中に雨が降っている感じのもあるが、これなども分かりやすいというか感じやすいですな。

90年代になると、凹凸も減ってきて、質感分けとか、キャンバスを畳んだ感じとかで作成。ここで、彫刻家の岡本敦生とのコラボがあって、これがなかなか面白い。石の造形物に野田が着色。石の入れ物みたいなのに着色された板がサンドされている作品がいいね。
00年代になり、ほぼ凹凸も消失し、平面で勝負。三日月みたいな形やら、藍染に浮かぶ草花みたいな形やら、白地に一点描いたキャンバスを五つ並べてリズム感のあるのとか、人体っぽい形状が浮かんだ絵が並ぶとか、いろいろ変化があるが、それでも統一した個性がちゃんとあるのだ(まあこれはアーティストとしては基本だが)。最後の方にまたコラボがあって、石の箱を使っていろいろ演出。これもなかなか楽しめる。

それにしても客がいなくて、絵に囲まれて自分だけ、というシーンも多い(監視の人はいるが)。空間としても楽しめる。インパクトを求めるよりも、地道に創作していく過程を見に行くのだ。
http://www.nact.jp/exhibition_special/2011/noda/index.html

|

« 2012年2月 | トップページ | 2012年4月 »