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2012年5月25日 (金)

大エルミタージュ美術館展(国立新美術館)

16世紀以降のヨーロッパで迫る企画。金曜の夜でまあまあ空いている。19世紀、20世紀は数点除いてイマイチながら、16世紀から18世紀はバッチシだ。

16世紀:ルネサンス
最初はティツァーノ「祝福するキリスト」ヴェネツィア派の巨匠なんだけど、何をもってヴェネツィア派かってのがよく分からなかった。輪郭描かずにいきなり色で描いちゃうらしいんよ。この作品はまさにそんな感じですな。ヴェロネーゼ「聖会話」顔が魅力。当時の人体描写の未熟さをカバーできて普通にいい。なお、このコーナーはちょっと離れて全体を見ると、あっちの美術館っぽくていいぞ。しばらく行ってダ・ヴィンチ派「裸婦」ん? これはBunkamuraで見たのと同じだぞ。こっちに持ってきたのか?いや、まだあっちやってるから同じのがいくつもあるのか。しかし男顔に太い腕に出たおっぱいって、同じすぎるな。それからスケドーニ「風景の中のクピド」の甘い顔に癒されよう。

17世紀:バロック
最初のマンデル「愛の園」小さいけど思い切り「バロック」している。胴長裸祭りだ。オースト「ゴリアテの首を持つダヴィデ」の美少年、デカい刀、生首の組み合わせがいいね。巨匠ルーベンス「虹のある風景」ほほー、こういうのも描くのか。遠景が蠢いている感じがいい。隣の「ローマの慈愛(キモンとペテロ)」も傑作。餓死刑の苦しい父に母乳を与える娘。解説ではそれがキリスト教の「慈愛」であるとして、何度も描いたらしいが、ルーベンス君、嘘ついちゃ困るなあ。後年牛乳が出そうなホルスタイン女を山ほど描いてたんだから、ここでもやっぱりオッパイをちゅーちゅーしたかったんじゃないのぉウキキ…… セーヘルス「花飾りに囲まれた幼子キリストと洗礼者ヨハネ」縁の花飾りがだまし絵風でいい感じだ。おおっ、ジョルジュ・ラトゥールじゃないかと思ったら、ホントホルスト「幼少期のキリスト」だって。まあ、言われてみればラトゥールの方が徹底している。背景の薄暗いとこにいる天使(?)がジャマ。巨匠レンブラント「老婦人の肖像」自画像で見られる微妙な表情。レンブラントは、人間の思考や感情が単純ではないことを知っていたに違いない。

18世紀:ロココと新古典派
ブーシェ「クビド」2つ。今回ロココ御三家(ヴァトー、ブーシャ、フラゴナール)ではこの人だけが出てた。ヴィジェ・ルブラン「自画像」がある。これルブラン展で見たよな。確か結構晩年のじゃなかったっけ? 自分で自分を美女に描いちゃう美女画家。ジョセフ・ヴェルネ「パレルモ港の入り口、月夜」手堅くいい雰囲気。レノルズ「ウェヌスの帯を解くクピド」ポスターにもなっている目玉ながら意外と隅っこにある。クピドだから帯を解いていいが、普通に男が解いちゃダメ。でもカメラ目線で誘惑してるんだから、画家が誘惑されているつもりで描いてるんだな。ユベール・ロベール「古代ローマの公衆浴場跡」なんだ西美の特別展のより分かりやすくていいじゃん。ナルシス・ゲラン「モルフェウスとイリス」うわーおフランスアカデミックなキレイキレイ系だな。裸の女が乗っている雲がスポンジみたいだ。オラース・ヴェルネ「死の天使」象徴的で不気味でお気に入り。顔の見えない黒い天使が女性を死へと運んでいく。誰か、この絵の前でデカい声で「あ、これ貞子やん!」って言ってくれ。オレあの映画見てないんだ怖いんだもん。

19世紀:ロマン派からポスト印象派
ジェイムズ・ティソ「廃墟(内なる声)」これも象徴派っぽい。緻密な描写。傷だらけのキリストが痛々しい。ジュール・ルフェーブル「洞窟のマグダラのマリア」何がどうだからマグダラのマリアだか分からないが、女体を描きたかったというのは分かる。ヴィンター・ハルター「女帝マリア・アレクサンドロヴナの肖像」この肖像、なんか迫ってくるぞ。それから印象派はボチボチ。ルノワールとか、あるので一応持ってきましたって感じ。でもセザンヌ「カーテンのある静物」はおなじみセザンヌでいいぞ。ヴァロットンの「水」水面が面白い。

20世紀:マティスとその周辺
ここも大したことナないんだけど、何たって名作マティス「赤い部屋(赤のハーモニー)」があるぜっ! …………あーなぜオレはマティスが分からんのだ? ヴラマンクもルオーもデュフィもその良さが実感できるし好きなんだが、マティスだけはどうしても分からん。美的につかむことができない。多分マティスのやり方と合わないのだ。

ボストンやフェルメールの方が目立つので、休日でも意外と空いているかもしれん……そうでもないか。
http://www.ntv.co.jp/hermitage2012/

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2012年5月20日 (日)

ボストン美術館 日本美術の至宝(東京国立博物館)

やはり平日に仕事休んで来るのだった……というぐらい混んでいる。会場が第1と第2に分かれていて、別にどこから見てもいいので、第2から見た。

刀剣と染織が最初にある。文字通り刀と着物です。どっちもアウェーなんでざっと見て、近世絵画のコーナーへ。
出だしで珍しく(伝)狩野永徳があるが、まあそんな印象は強くなくて、次の長谷川等伯「龍虎図屏風」。虎が若干にゃーにゃーしてるが、なんたって等伯だからありがたい。狩野派がかなり出ていて、その表現の幅の広さに驚く。狩野なんたらといっても一括りにできない個性の強い奴が結構いるのだ。狩野山雪「十雪図屏風」の定規できちんと描かれたような建物、山水表現、空間の空きがキマっている。狩野永納「四季花鳥図屏風」の妙な木の幹や、雪積もる枝の表現。しかも着色。ううむ個性の強い近代的だな。伊藤若冲が二つ「鸚鵡図」これは地味だけど結構いい。鸚鵡が乗っているところの、デザインがシンメトリーで、これも近代的。しかし隣の「十六羅漢図」うむっ、これはイケる。この鮮やかな筆さばき。コケコッコだけでなく、人物も描けるのかこの人は。そして次、宗達派を一つ挟んで尾形光琳が降臨だー。「松島図屏風」おおっ、このデザインだか等高線だかで密集する波の表現よ。宗達の元絵があったらしいが、宗達ではここまで行かんのでは。
しかしお楽しみはこれからだ。簫白ショックがここにもあるぞ。なんと蘇我簫白コーナー。特徴的なのが一通り見れる。奇面フラッシュの「虎渓三笑図屏風」、濃い山水「楼閣山水図屏風」、渦巻きと奇面がインパクトの「風仙図屏風」、イッキ描きが爽快な「商山四皓図屏風」、それと対照的に写実的な「鷹図」、クライマックスは巨大な「雲龍図」。襖絵なんでかなり横長。でも、実際は胴体もあったんでもっと長いんだって。でも、確かにデカくて驚くが、簫白の凄さはちょっとこれと違うなって感じがする。

えー第1会場へ。フェノロサがどうたらという解説があるが、まあいいや。狩野芳崖とか橋本雅邦という近代ものの絵があるよ。そこから仏画がずらっ。菩薩像とかいくつかある。あと目玉の絵巻ね「吉備大臣入唐絵巻」と「平治物語絵巻 三条殿夜討巻き」全然見てないけど、貴重品みたいよ。長いよ。
中世の水墨画と初期狩野派、ということで、水墨好きにも多分納得の品が並ぶ。「布袋図」という結構いい感じのがあって、これが狩野派初期らしい。あと試験に出る狩野元信(開祖正信に次ぐ二番目ね)がいくつか。ここでいいのは(伝)狩野雅楽「松に麝香猫図屏風」と「松に鴛鴦図屏風」。水墨樹木と花鳥着色の、いかにも正統的狩野派だぞ。

それにしても年輩女性が多いのと、よく勉強しているんだか、そこらじゅうでウンチクをしゃべっているのがまた多いこと多いこと。場内うるせえなあ……
http://www.boston-nippon.jp/

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2012年5月 4日 (金)

簫白ショック(千葉市立美術館)

千葉市立美術館は言い企画を数多くやるんだけれど、いかんせんちょっとうちから遠い。でも、今日は行ってきたのさ。なんたって簫白だもん。
一度見たら忘れないエグい顔のインパクト大な絵を描く簫白は江戸時代中期の京の絵師。

最初の方の展示は、簫白に影響を与えたというような絵師の面々……なんだけど、前座みたいでどうでもえー感じ。解説が面白く書いてあるから楽しめるよ。

次にいよいよ御大登場。最初は「李白酔臥図屏風」。水墨だよ。李泊が自然の中で寝ているところ……なんだけど、速筆というか、筆さばきが見事で太い線でザザッと描いても見事。しかしその後、「鷹図押絵貼屏風」で驚く。ううっ、一転してこれは緻密じゃねーか。鳥の羽の一枚一枚を生き生き描く。しかも鷹なんで力強い。そうか、この手を描くのは北斎ばかりではないのだな。次の「鳥獣人物図押絵貼屏風」は一転してユルい描線になってこれもいい。「桃蝦蟇図」の木の上のガマガエル、「鷲図屏風」のド目立ちな鷲の顔。うーむ、いいね。それから「牧童群牛図屏風」でいよいよ簫白フェイス登場(といってもこれは中国のなんとかの描き方のようだが)。まずこれは子供たちの顔じゃ。あと面白いのが「蹴鞠寿老図」。頭のデカい寿老人が見上げているから、その頭がおなかにも見える。「獅子虎図屏風」も愉快だ。チョウチョに怯えている獅子、応挙のにゃーにゃー虎みたいなちょっと情けない虎の絵。「波濤鷹鶴図屏風」は、波の上を鷹と鶴が飛ぶ。この波がなんとも北斎の大波を彷彿とさせる。北斎はこのっを知っていたかな。しかし、ここまで水墨のモノクロなんだが結構魅せてくれます。

そんで色も付いて、速筆と緻密な描写を両方使った超傑作が「群仙図屏風」。これ見るのは初めてではないが、あらためて見るとスゲエ。風になびく服の異様な表現、龍の爪の質感はどうだ、衣装の色が派手だし、波の表現もイケるし、なんたって簫白フェイス。解説にも「これぞ簫白ショック!」とある。ここがクライマックス。

それからまた水墨に。「竹林七賢図襖」のフェイスと雪をかぶる笹の葉の描写を見たり、水墨で描いた孔雀を見たり、だんだんおとなしくなっていく感じ。「竹林図屏風」は筆の荒っぽい描写で描いた傑作と見る、あと山水図がいくつもあり、確かに深みがあって優れているのだが、私の見たいいわゆる「簫白」ではないんだな。

最後にその後。影響受けた人とか。伊藤若冲が何枚か出ていて嬉しい。「月夜白梅図」って、これ色といい雰囲気といい、シダネルみたいだな。応挙の「鉄拐蝦蟇仙人図」は簫白風のエグい顔これ「顔輝」と書いてあったが何だろう。なんとこれ中国の絵師の名前なんだって。この人がそういう顔を描いてたようだ。そうか顔の描き方の一般名詞かと思った。それでも不自然ではないな。なんか「奇面フラッシュ」ってあったよな。懐かしいな。

展示品の入れ替えがしょっちゅうあり、次に行ってもこれの通りとは限らない。ホームページに出品リストがあるよ。
http://www.ccma-net.jp/exhibition_end/2012/0410/0410.html

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2012年5月 3日 (木)

バルビエ×ラブルール展(練馬区立美術館)

アール・デコ時代のイラストの二人展。去年のグランヴィルに続くフランス文学者鹿島茂氏のコレクションだそうです。グランヴィルは風刺画っぽくてイマイチピンとこなかったんだけど、今回はなかなかよかった。今回も挿絵とか絵本とかなんだけど、バルビエの色彩センスと、人体というか肢体というか肉体描写が光る。なんたってニジンスキーのダンスとかも描いてるけん、ダンス好きなのね。あと傑作の「ビリチスの歌」という木版のシリーズでは、エジプトの色彩やら、日本の浮世絵みたいなのやら、クリムトみたいなのやら、要するに恐らくそういうものからの影響が伺える。特に相合い傘があるんだけど、どっかで見たような感じだなあ。写楽になかったっけか。海外で日本の浮世絵がブームになった時、しぐさとか真似した絵なんか時々あるんだよね。

バルビエを見て思い出すのは蕗谷虹児。こういうの描きたかったろうなあ。描きたかったろうねえ。それにしてもファッション関係の絵やら舞台衣装の絵やらで、出点数がえらい多い。

一方ラブルールは全て線描モノクロ。冒頭の「アンドロメダ」お海の生物いろいろでおおっ、と思うも、あとはちょっと入ってこない(というか、バルビエで疲れちゃった)。あーちなみに何をもってアンドロメダかっていうと、上に岩に繋がれている女の人がいるでしょ目立たないど。あれがアンドロメダ姫じゃ。でもラブルールは海の生き物が描きたいだけなのじゃ。他にも「海洋生物」シリーズが出ているぞ。

http://www.city.nerima.tokyo.jp/manabu/bunka/museum/

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