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2012年6月28日 (木)

バーン=ジョーンズ展(三菱一号館美術館)

見たいねえ象徴派。ラファエル前派、ロセッティの弟子でし。無駄に部屋と導線が多い三菱一号館だけど、小部屋めぐりもまた面白い。

最初は自画像から、神話やら伝説やらの絵が多い。あんまり大した絵がねーなと思っていたら、鉛筆画「プロセルビナ掠奪」おおっ、鉛筆でこの繊細さはちょっと凄いぞ。人々が大勢描かれているし。プロセルビナってペルセフォネのことでデーメテールの娘で冥界の王(誰だっけ、ハデスか)にさらわれたんだったよな……その奪回の絵だよな。いや逆だ。冥界の王が掠奪するんじゃないか。絵からはよく分からん。次の「侍女たちの習作」これもいいね。私は素描や習作ってあまり好みじゃないんだけど、これはむしろ色付きのより無駄を削ぎ落としている感じでいい。大部屋に行って、連作「ペルセウス」から二枚。どっちもいいぞ。「メドゥーサの死」は珍しく躍動感あふれる(という表現は陳腐だが)画面がいい。「大海蛇を退治するペルセウス」はポスターにもなっているが、やっぱ本物だよな。戦っているというより大海蛇がちょっとしたアートオブジェになっていて、ベルセウスと裸女(誰?)がそれに象徴的に付属して描かれている感じ。同様に「運命の車輪」も傑作で、人々は車輪に物理的にくっついているのではなく、象徴的(装飾的と言ってもいいでしょうな)な位置で描かれている。この辺のさじ加減がバーン・ジョーンズの味わいどころではないでしょうか。「ステュクス河の霊魂」も体を寄せ合う死者達が妙な雰囲気で描かれる。隣の「三美神・習作」ヌード×3の無駄のない表現。これももしかすると色付きよりいいかもしれないぞ。

廊下を移動。次の間で「フローラ」は小豆色の衣装がなかなか。「ピグマリオン」の連作4枚は……私的にはイマイチ。こだわって描いているし、何かモデルが好きだった女性みたいなんだけど、ちょっと画面が普通過ぎる感じ。

階段を下りて、「いばら姫」シリーズ。ここがヤマですな。そうか、こうきたか。やったぜジョーンズ! 眠っている女性に萌えて、というか美しい女を眠らせてガンガン描く。眠ってりゃあ年取ることも、なんかごちそうしてくれとか言われることもないもんねえ。美女の美を鑑賞し放題じゃけん。習作6枚もいいし、油彩の「眠り姫-連作『いばら姫』」も素晴らしい。おお美女達よ、そなたらは時を止めて人形のごとく。これと同じことを、美女を裸にして、眠っているけど目を開けて動いている夢遊病みたいにしてやったのが我がポール・デルヴォー。魂を抜いた美女をはべらせて愉快じゃのう。

あとはそこそこ。眠っているのがチラホラ。「夢見るチョーサー」とか「聖杯堂の前で見る騎士ランスロットの夢」など。階段をまた下りてタペストリ大作「東方の三博士の礼拝」うーん、後ろの天使(?)が観音様に見えるな。「東方」だからかな。

ヴィクトリアンな美の世界に浸れるぞ。すいてるのはもったいない。金土だけでなく、木曜日も夜8時までやってるよ。
http://mimt.jp/bj/

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2012年6月22日 (金)

クライドルフの世界(Bunkamuraザ・ミュージアム)

スイスの絵本作家だって。Bunakmuraは外れが少ないんで、とりあえず行ってしまうな。

絵本原画なんで、ほとんど水彩とか墨なんですが、最初のところは初期からの肖像と風景というもので、油彩もあります。中でも「牧歌的な朝」というのは、バルテュスが描いた窓際の美少女の絵みたいで明るくていいな。それから「初期の絵本」コーナー『花のメルヘン』原画は印刷向きらしく、色は水彩だけど墨の輪郭線がちゃんと描いてある。『眠れる木』原画は「人面樹」という感じが面白い。『フィッツェブッツェ』は「糸引き人形」という意味らしいがよく分からん。まあでもこの辺までは並。次は「くさはらの中の生き物たち」コーナー。まずトンボやらバッタやら昆虫の水彩スケッチ。かなり正確だぞ。ここで「走るバッタ」というのがあり、擬人化が始まる。『くさはらのこびと』はおなじみトンガリ帽子の古典的こびと達。バッタを馬のように乗り回しているところが面白い。そういや子供に受けてる「こびとづかん」のこびとどもとはずいぶん違いますな。次、『バッタさんのきせつ』原画。これがいいね。かわいくはないけど面白い。なんたってバッタを写実のまま擬人化してる。つまり人面とか人間風手足とかは付けてないの。そうそう河鍋暁斎のね、カエルと同じだな。カエルの方がカワイイけどな。バッタはいかにも昆虫だしな。

次は「アルプスの花の妖精たち」コーナー。最初に花の水彩スケッチいろいろ。黒い背景が冴えている。しっかりボタってるぜ(ボタニカルアートしている、の意味)。次『詩画集 花』原画。女性がチラホラ。『アルプスの花物語』原画。今度は墨の輪郭線は無い。しっかり水彩。「アルプスの」というのがミソですな。アルプス高山に生息する実際の草花を正確スケッチ。でも絵本だから擬人化しちゃう。擬人化し過ぎると、ボタレベルが低下するので、いかにアルプスのこだわりを低下させないか、というガンバリを見るのも一興。それにしても美しい青年であるはずのアドニスがあまり美しくない。単なる花をかぶった野郎だ。それから時々作品と同じ草花の写真も展示されてるよ。次「妖精と小人-メルヘンの世界の住人たち」コーナー。『ふゆのはなし』。オリジナルストーリー。7年ごとに7人のこびとに会いに来る白雪姫……に会いたくて、旅をする3人のこびとの話。無事に白雪姫に会えたら雪遊びとかエンジョイ。最後白雪姫は天に帰って行く……ってことは故人かよ。ここでは「雪おばけの下で」の隠し絵っぽいのが面白い。『花を棲みかに(春の使い)』原画。これもアルプスものだから擬人化しつつも結構リアルにこだわる。「毛虫のダンス」がちょっとキモいので微妙。このあたりで低い椅子のある子供ようの絵本コーナーがある。クライドルフの絵本を手に取って読めるってわけ。でも、見たら結構文章が多く漢字にふりがなも無かったりして、子供がエンジョイできるかというと微妙ですな。そういえば会場出たところに、観光地によくある顔だけ出して写真撮れるヤツがあるよ。さて展示は『妖精たち小人たち(小人と妖精達のところで)』原画、なんかこの辺からだんだん疲れてきた。数も多いもんで。「子供たちの教育」コーナーに入り『昔の子供の詩』原画、『古い俗曲』原画、『庭の赤い薔薇』原画と続く。うーん、この辺よく覚えてないや。昆虫擬人化が一つあったはずだ。最後の「エピローグ:夢の世界」コーナー。『夢の人物』原画の暗い感じがいい。「夢の王」の妙な生き物みたいなところも好きだね。「運命の夢と幻想シリーズ」といういくつかの絵。ここには油彩もある。「人生は夢」の、手前から奥に向かって生から死へと描写するのは凄いよね。

単に草花昆虫メルヘンではなく、アルプスに生きる種にこだわるところで楽しみたい。
http://www.bunkamura.co.jp/museum/exhibition/12_kreidolf.html

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2012年6月16日 (土)

アラブ・エクスプレス展(森美術館)

今日行ったら「ONE PIECE展」の最後二日にぶちあたってしまい。えれえ人だ。
確か去年はインドだったが、森美術館の異国ものは結構いい。「今」が分かる。エキサイティングだ。アート好きたるものこういうものを大いに見るべきである。アラブ事情を反映させたもの、他の国のアラブのイメージを茶化すもの、アラブの生活を映すものなどなど。フェルメールだけがアートじゃないぞ。アーティスト名を並べても分からんので目についたものを書きます。いや待てよ。事前に何も知らずに行った方が多分面白いと思うので、読みたくない人のために少し改行。

エジプトで貧しい(?)人々を四つん這いで歩かせるという社会的パフォーマンス映像。結局アーティストは逮捕されたらしい。あー我が国のChim↑Pomもこのぐらいやってほしいな。観光地に自分が入っちゃって行った気分の合成写真。写真とはなんだ? 思い出とはなんだ? と鋭く迫ってくるぞ。黒い噴水がある。この意味は何かな? ドバイに住んでたら俺んちの近所にすげー高層ホテル立てちゃってよー、という戸惑いの写真。メッカ巡礼の人々を四角い磁石と砂鉄で表現。これすごいよ。顔を出せないアラブ女性の仮面を今風に創作。砂だけじゃない多様な砂漠の空撮。アラブ人が銃を目の前に置いて、カメラに向かってテロ宣言風に話しかける。さて何を? これがなんと……あーこれ書かない方がいいや。イラクにやってきたアメ公がやたらと「I'M SORRY」とか言いやがってなんなんだよ。じゃあ「I'M SORRYキャンディー」作っちゃうぞ(売店でも売ってるよ)。ピラミッド=神秘? HAHAHA違うね。エジプト人にとっちゃあ日常風景。だから映画にだって普通に出てくるんだぜ、というのを集めて、我らのステレオタイプなピラミッド感を笑う映像作品。一見人のいない街中の写真。でもこれ公開処刑の行われた場所を、公開処刑が行われた時間に写したもの。あまりに普通な場所にちょっとショックだぞ。観光地の写真を絵ハガキにして売っていたが、爆撃されて使えなくなった。だから爆撃された観光地のフィルムを焼いて、それで絵ハガキを作った。その絵ハガキは1枚もらえるよ。これもちょっとショック。戦争、テロ、暴力をやめろという映像作品、パレスチナにかつてあった空港の再現。他いろいろ。

アラブがちょっと近くなる。おすすめ。
http://www.mori.art.museum/contents/arab_express/index.html

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ベルリン国立美術館展(国立西洋美術館)

サブタイトルが「学べる-ヨーロッパ美術の400年」ですって「学べる」なんてヤラシーのう。もしかして「学べる」=「解説が多い」=「大した絵が来てない」んじゃないかと思ったりするけど、そこは西美。別にフェルメールだけじゃないんだぞっと。

最初に「宗教と日常生活」ということで、聖母子とかキリスト教もんがいろいろ。結構彫刻も多く出てるのね。ベルナルディーノ・ピントゥリッキオって人のマリア様美人ですな。フランチェスコ・モローネって人のマリア様はお面みたいですな、とか、学びたくない人の感想はこんなもんじゃ。あーそうそうエルコレ・デ・ロベルティって人の「洗礼者ヨハネ」これはいいですな。ガリガーリですな。苦難の道を歩むですな。やっぱ聖人はこういう感じがイケますな。ふくよかでニッコリ笑っているなんておかしいですな。それから、おお、大天使ミカエルがいると思ったら「龍を退治する聖ゲオルギウス」ですって。そうか、背中に羽を付けたらよくあるミカエル像なんだが。もしかして、ミカエルを作ってたらうっかり羽折っちゃってしかたなく……とか、そんなこたーないよな。

次は「魅惑の肖像画」あんまし数はない。(画家が)有名どころのクラナッハの「マルティン・ルターの肖像」がなかなか。あとヤン・サンデルス・ファン・へメッセンって人の「金貨を量る若い女性」なかなかカワイイですな。部屋に飾ってもいいですな。

次「マニエリスムの身体」あーここ期待しちゃうぞ。マニエリスム好きな方なんで。でも彫刻が多いの。ちょっとアウェーだな。クラナッハの評判の裸婦「ルクレティア」がある。いかにもクラナッハな……いやもうちょっと洋なし風の方がクラナッハらしいかな。あとはうむう、彫刻か……バルテルミ・プリウール(?)とかいう人の「入浴する女性」。股間に手。えー? これもっとヒワイなもん作ってたんじゃないのかね。あくまでこのタイトルだって言い張っているだけで。

いよいよ「絵画の黄金時代」。ヴェラスケスの「3人の音楽家」ヴェラスケスにしちゃイマイチだと思ったら初期だって。ルーベンスの「難破する聖パウロのいる風景」おお、さすが。でもこないだ見たのに似てる。虹も出てるしな。カラッチとかロイスダールとか、名前の聞いたことあるやつも出とるよ。ヤン・ステーンの庶民風景「喧嘩するカードプレーヤー」うむ。レンブラント御大の「ミネルヴァ」はキレイ系だがなんかレンブラントのよさとは違う感じ。むしろ隣のレンブラント派による「黄金の兜の男」の方が微妙な表情を描けるレンブラントらしい。絵はがきにもあるしな。いよいよ目玉「真珠の首飾りの少女」。ううううむ、やっぱフェルメールの絵って「変」だと思う。いや、他には無い妙な個性を持っている。なぜ人物だけシャープに描かないのか。この絵も窓のある左側と人物のいる右側で別の絵みたいなんだよね。フェルメールはカメラ・オブスキュラを使っていた説があるけど、それで映し出すと人物だけ動くもんだからどうしてもシャープにならないじゃん。それでなんかこう、生きる者の像を固定させると生命感を失う、とかなんとか考えてたんじゃないかねえ……まあ、そうでない絵も見たことあるけどね。でもほとんどフェルメールの人物って「ちょっとピンぼけ」なんよ。あー真珠の耳飾り楽しみだなあ。めちゃ混むだろうなあ。

「啓蒙の時代へ」ですって。セバスティアーノ・リッチって人の「豆シバ」じゃなかった「バテシバ」が美女だなあとか考え啓蒙されない。

地下に行って「素描」いっぱいあるのう。あくまで完成品が好きなんでちゃんと見てないや。でもボッティチェルリとか有名どころが来てたのね。美術通はちゃんと見てね。それにしてもいつもはデカい絵を並べる天井の高い地下階を小さめの素描で使うんかい。

フェルメールの一点豪華、というほどではないものの、そう大作があるわけでもない。でもちゃんとテーマ分けのある展示なんて「学びたい」人にはおすすめですな。
http://www.nmwa.go.jp/jp/exhibitions/2012berlin.html#mainClm

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