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2012年8月18日 (土)

アール・デコ 光のエレガンス(パナソニック汐留ミュージアム)

午後2時に行ったらかなりの人で、ギャラリートークの時間だった。聞くともなしに聞いていたら、最初に、展示に使われているLED照明や有機ELをちゃっかりPR。そりゃパナソニックだもん。白い色が引き立つLEDと面で光る有機EL使用中。

それだけじゃない入って驚く。今回は照明が多いんだけど、ちゃんと照明として使って展示してあるよ。今までもこうだったっけ? 照明器具であってもケースに入って外から照明当ててなかったっけ。ともあれ、パフュームランプという小さいガラスの照明が並んでいるテーブルは見事。アマルリック・ワルターという人の「髪切虫文蓋物」は蓋についているのが一見ゴキちゃんに見えるぞ。丸亀製麺所もとい国立セーヴル製陶所の「テーブルランプ」は白地の凹凸が内側からの照明で変化がついて見事だ。「蓋付壷《ラパンNo.21》」は模様が無いのだが、海王星のような青い色がいい。「結晶釉花器《オベールNo.62》」は、花のような結晶模様がついている。描いたんじゃないぞ。結晶ができておるのじゃ。ジャン・デュナンの球形花瓶は漆っぽい。

それから白いローゼンタールの「聖母子像」のデコ母子っぷりにプチ驚き、これも国立セーヴル製陶所の「天井灯」は横からと、あと下からの状態も見れるように鏡が置いてある。下からのフラクタルみたいな模様がいいね。それからデコサロンがあり、ラリック作品で作られたデコテーブルセットがある。「トウキョウ」なんてタイトルが付いた燭台とか。ラリックは他におなじみ花瓶とか出ているが、ここで有機ELを使って上からと下からで照らすという展示方法を取っている。よけいな影が出ないんだって。あとラリックの「テーブル・ランプ《ノルマンディー号》」がシンプルでよかった。あとおなじみカーマスコットとかもあるぞ。

いやーガラス工芸はいいねえ。夏はやっぱりガラスだよな。
http://panasonic.co.jp/es/museum/

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与えられた形象―辰野登恵子/柴田敏雄 (国立新美術館)

辰野登恵子の抽象画と、柴田敏雄の風景写真。いずれも形象にこだわったアーティストということで二人並べている。結果的に、私には写真の方が面白かった。抽象画はずいぶんあれこれ見ちゃったもんで、というのもあるかもしれない。私は写真をあまり見ないし見てもよく分からんので、常々アウェーだなと思っていたが、この柴田敏雄は面白かった。

一応展示順に行くと、最初に2人の作品が並んでいて、次に辰野80年代作品。草模様みたいなのや、四角みたいなものを取り入れて構成。それから柴田「日本典型」というタイトルで様々な屋外、ダムとかを撮っているんだけど、写されている形が面白い。思い出すのは北斎の「諸国名橋奇覧」や「諸国瀧廻り」いずれも北斎が橋や滝の形の面白さを絵の要素にしている。あれを写真でやっている感じ。次は辰野「丸と円から」の部屋。まるまるもこもこな感じ(適当だな)。次、柴田「シカゴ現代美術館の25点」ダムの写真なんだけど、ダムだか何だか分からないのがいい。妙な形のものが浮遊して見えたり、浮かび上がるきれいな曲線が道路のガードレールだったり。そういえば、私のPCの壁紙と、スマフォの壁紙が「フレンチ・ウィンドウ展」で知ったニコラ・ムーランの写真なのです。やはり奇観の写真だけど、人工的に作っている。でも、好きなんだな。

次も柴田で、圧巻の「堰堤」の連作。様々なダムの水を止める部分(?)を、概ねどれも同じ角度から撮って並べている。いくつも見ているうちに、これが何の何だか分からなくなってくるが、これでいいのだ。ゲシュタルトを崩壊させて形の連発として愉快に見る作品。

次はそれぞれの初期作品。柴田も絵を描いている。以外といい。次に辰野の70年代作品。光でも空間でも生々しさでもないところで、うーん、色も派手派手しくなく普通な感じだが。やはり私はいろんなものを見過ぎたらしい。

柴田「ナイト・フォト」という夜のパーキングエリアとか。エドワード・ホッパー風のあるが、ホッパーの、人間不在の寂寞感とはちょっと違う。それから柴田「三角形」。三角形(を感じさせる宇風景)を写した写真。展示室全体、上の方まで写真があり。レイアウトも三角形になっている。抽象画以上に抽象画を感じさせるといってもいい。次は辰野の90年代作品。形が浮き出る感じになった。次は辰野の版画。唯一「April-1-1995」これが赤く生命感があってよかった。それから辰野の2000年代。抽象からちょっと形の分かるものへ。棚とか、箱とか。それから柴田カラー作品。これも、いったい何を写したんだ? と思えるような作品がいい。そして二人の新作で終了。

作品数も十分。導線が長くて楽しめる。柴田の「奇覧」がおすすめできる、というか好み。
http://www.nact.jp/exhibition_special/2012/given_forms/index.html

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2012年8月14日 (火)

レーピン展(Bunkamura ザ・ミュージアム)

ロシアには観光で行ったことがあるのだがレーピンって知らなかったし、肖像画が多いってことで、さほど期待してなかったんだけど、これがまあ傑作ぞろいよ。どうでもいい絵がこれほど少ない美術展も珍しい。「鬼気迫る肖像」なんてのもあまりお目にかからないが、ここにはあるぞ。

最初の方にある「老女の肖像」はレンブラントの模写で、レンブラントの相当いいのをきっちり写している。レーピンはレンブラントの影響をかなり受けている。それからロシアの人々の生活を描いた傑作「ヴォルガの船曳き」は習作だけ来ているのがちょっと残念。パネルの完成作はかなり凄い絵なんだが。で、この時点では、あーまたBunkamuraが習作だけ並べて企画してるんじゃね、とか思ってた。

レーピンはパリに留学して、その時の作品「祈るユダヤ人」。レンブラント風に光と影をうまく使って、いわゆる「人物がにじみ出る」感じ。他にも印象派には結構刺激を受けたらしい。

ロシアに戻り、庶民を描く。「夕べの宴」のコサックダンス。小品だが「故郷へ-過ぎ去った戦争の英雄」は人物からその背負うものを彷彿させるいい感じの絵だぞ。それから傑作「トルコのスルタンに手紙を書くザポロージャのコサック(習作)」。隣に完成品パネルがあるけど、なんかこの習作の方がいい。トルコの臣民になれという命令に対し嘲笑する手紙を返すコサック。バカ陽気にアヒャヒャモードで手紙を綴る反骨。全員生き生きしているぞ。「皇女ソフィヤ」これも凄い。使用人が拷問された時の怒りの表情を描くレーピン。これほど鬼気迫る肖像はあまりない、目力(めぢから)たっぷりの顔に驚くぞ。「あぜ道にて-畝を歩くヴェーラ・レーピナと子どもたち」はフランス印象派風。外光を見事に描いている。隣の「休息-妻ヴェーラ・レービナの肖像」椅子で眠っている様子。うーむ、いいんだけど、他のを見ちゃうとむしろ普通。なんでこれが広告に使われているのかな。まあ広い層に来てほしいので、あまり個性の強い顔ではなんだからといいうことか。「作曲家モデスト・ムソルグスキーの肖像」ボサボサ頭にヤバい目つき。「工兵将校アンドレイ・デーリヴィクの肖像」は貫禄十分。「懺悔の前」も小品ながらも深い。

サンクト・ペテルブルグに移り、「思いがけなく」はドラマチックな場面。「集会」も緊迫感あり。次の「キャベツ」が唐突で面白い。そう、キャベツの絵。でもうまい。「ピアニスト、ルイーザ・メルシー・ダルジャントー伯爵夫人の肖像」これ病気かなと思ったら、死ぬ前の病気の時の肖像だった。「ピアニスト、ゾフィー・メンターの肖像」これも目力の傑作。すげえ。あー、こういう人がピアニストになれるんだなあ。「文豪レフ・トルストイの肖像」これも表情は普通だが深い。

最後の美術アカデミー関係のコーナー。「ゴーゴリの『自殺』」自分の本を燃やしちゃうゴーゴリの狂気の目が冴える。「決闘」と「負傷者」では、敗者の諦念を描く。「日向で-娘ナジェージダ・レーピナの肖像」これも外光を使った印象派風か、でもこの微笑はうまい。モナ・リザをちょっと彷彿させる。これが広告の方がいい感じだが。

レンブラントが好きなら行くべし、肖像画なんてーとか思っている人も行ってみよう。
http://www.bunkamura.co.jp/museum/exhibition/12_repin/index.html

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日本美術デザイン大辞展(三井記念美術館)

東京都現代美術館の特撮博物館に行こうと赴いたが、めちゃくちゃ混んでる上に入るのに五十分待ちとかでテンションが一気に落ちる。なので、木場から日本橋に移動してこちらに。

あるようで無かったこういう企画。古美術用語を解説と現物を鑑賞しながらお勉強。美術鑑賞に勉強はいらねーんだよ、ただ己の感じるままに観ればいいのじゃ、というオレだって、たまにゃあ用語に感心しながら観たっていいじゃないか。

展示というか用語はあいうえお順。私の関心を惹いた用語は次の通り。まず「葦手絵(あしでえ)」これは絵の中に字が隠れているってやつね。蒔絵の箱とかで出ていたが、有名なのは鈴木春信の絵暦でよく使っていますな。それから「鱗文(うろこもん)」、これは三角形を組み合わせた模様。衣装では蛇体や鬼女に使うんだって。「雲龍(うんりゅう)」は文字通りなんだけど狩野深幽の「雲龍図」が出ている。あっさり系の深幽にしてはダイナミック、というか手堅いというか。「大津絵(おおつえ)」大津あたりから出てきた民芸風の鬼とかの絵。ここで河鍋暁斎の「浮世絵大津之連中図屏風」が強力。鬼がノリノリで三味線弾いてるぞ。なんかエレキギターを弾くロッカーみたいですな。「屈輪(ぐり)」これは木工などのぐりぐりの渦みたいな模様。「牙彫(げちょう)」これは象牙なんかの加工品。三点出ているがいずれも仰天もの。竹内実雅作「牙彫田舎家人物置物」。これは象牙一本から彫り出した家と人物。あまりに細かいのでビックリだす。それから安藤緑山作「染象牙果菜置物」と「染象牙貝尽くし置物」これがもう本物そっくりの果物と貝。色の出し方は秘密だったんで、一代でおわっちゃったらしい。「歳寒三友(さいかんさんゆう)」これは寒さに強い木でいわゆる松竹梅だって。これが二友になると菊と梅だそうだ。「獅子(しし)」のところで、百獣の王が獅子ならば、百花の王は牡丹だそうだ。だから唐獅子牡丹は最強なんだな。展示は「獅子牡丹蒔絵硯箱」。「外隈(そとぐま)」は、周りを塗って形を浮き出させる手法「富士山」とかで。「梨子地(なしじ)」これ蒔絵の箱とかで地がキラキラの細かい点でできているのをよく見るけど、あれのことね。梨の表面みたいだからだって。作り方も書いてあるよ。「吹抜屋台(ふきぬけやたい)」源氏物語絵巻なんかの家屋の屋根をとっぱらって斜め上から見下ろした、そう、あの絵の形のことね。「蒔絵(まきえ)」のところに出ていた「桜花・桐花車紋蒔絵硯箱」は梨子地のえらいキレイな箱ですな。「楽焼(らくやき)」これはろくろを使わず手びねりで作って焼いたもの。観光地とかにある手軽にできるから「楽焼」ってだけじゃないんだな。

以上の用語はほんの一部。涼しい美術館で夏の勉強だー
http://www.mitsui-museum.jp/

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2012年8月 3日 (金)

藤田嗣治と愛書都市パリ(松濤美術館)

そんなに期待していなかったが、結構よかった。なにげにここは優れた企画が多い。フジタは結構挿絵本をやったそうで、その、あまり目にしたことのないヤツラが見れる。本はホンの一部だったりするが、版画のシリーズなんかは何枚も出ていたりするし、バラせるもんはバラして展示。これがいいね。あと油彩や水彩も厳選して展示。少ないながら満足できる。それからフジタだけでなく、おなじみエコール・ド・パリの面々の挿し絵本もあれば版画もある。

展示室に入って最初に目に入ってくるのが意外や油彩の「目隠し遊び」ちょっと雰囲気がゴージャスなのはこれ金粉なんか使ってんだな。それから挿絵本の紹介いろいろ。なんか、感じとしては解説が多くて弥生美術館の展示っぽいな。目に入ったのは「エロスの愉しみ」タイトルはナンだし絵も一応男女の裸の付き合いっぽい感じもあるが、そこはおフランスだから上品にまとめている……ってこの場合の「エロス」ってギリシャ神話の羽の生えたガキンチョでしょ。別名キューピッド。そうえいば解説に「表紙にかわいい天使が云々」とか書いてあったが、キューピッドと天使は別物なんだぞっ(ドヤ顔で)、このぶぁ~か。なんて、天使だったりしてな。

あとエッチングの絵があって「自画像と猫」「裸婦と猫」どっちもいいな。色彩使ってなくてもさすがだな。「海龍」という銅版画が出ていて、日本の芸者とか、そんな感じのを洋版画でやってるのね。ビュランという彫刻刀で銅版を直に削っちゃうナイスな手法なんだけど、職人が彫る描線がきれいで驚くぞ。ベタ塗りも線でやっているからその点はイマイチなんだけど。それから「しがない職業と少ない稼ぎ」これはレオノールになったあとの作品だけど、子供がいろんな職業している。それからリトグラフ作品「青春」冊子の表紙用かなんかだっけ、「三美神」みたいでいい。うまい。世界のフジタすげーな。

上の階に行くと、今度は同時代の人々。シャガールの「ダフニスとクロエ」の色が美しい。パスキンが結構出ているが、うーん、もう一歩な感じだな。危なく美しい娘っ子の絵が見たいな。私の好きなヴラマンクも一つ。ピカソの「フランコの夢と嘘」これどこかで見たことあるんだけど、ハッチャケぶりがいいですな。ラ・フォンテーヌの「寓話」でいろんなヤツが描いてるってコーナー。おなじみのメンバーの中にレオノール・フィニがいるのが嬉しいぞ。

印刷ものが多いが満足できる。穴場としておすすめだ。
http://www.shoto-museum.jp/index.html

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