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2012年9月24日 (月)

Chim↑Pom展(渋谷パルコ)

おなじみ広島の空に「ピカッ」と描き、渋谷の「明日の神話」に原発事故の絵をくっつけた「アーティスト集団」Chim↑Pomの個展。著作「芸術実行犯」を読んで出撃。

「広島の空をピカッとさせる」は結果的にあらゆる部分で傑作であったと思う。空に書かれた脱力的文字、シャレにならない反応を巻き起こし、謝罪しちゃう稚拙さを含め、彼らの言う「REAL TIMES」を鮮やかにアートとして事件にした。私は原爆なんて実は風化しているんだと思っている。その象徴的出来事が、紅白歌合戦で吉永小百合が原爆の詩を朗読したこと。直前までキャーキャーやってて、その詩のとこだけしんみりして、その直後にまたキャーキャー、そんなのいいのか? それ原爆なんだぞ。こいつらは分かっているのか? 目の前にあるのがただのゴミなのに、見て見ないふりでさも美しい花があるかのように言い合っている気持ち悪さがそこにはあった。Chim↑Pomのピカッはまさに目の前にそのゴミを出現させたのだ。見たくもなかったゴミ、でもそれが現実だ。お前等だそして俺達の姿だ。

……ってな連中なんできっと何かやってくれるぜっ……と思った。事前情報でこの個展のためにPARCO看板のPとCを撤去したのを知っていたのだが……うーん、まさかその程度で悦に入ってるんじゃあるまいな。しかしまあ現地に行くと、この文字看板が意外とデカいのね。ほほーこれだけのものを外させたのか。ワタリウムでも壁を燃やすことができたりして、結構信頼されているのね。

展示会場の最初の絵はパルコで暴れ回ってるような絵、それから中にはいると、パルコのこじゃれた店が荒らされた跡。アハハハハやりてーっ! 壁がきたねーっ! このマネキンは何だ、ドナルドにしたかったのか? それから次の部屋に行こうとするが……(ここはネタバレしない方が面白いから略)……次の部屋は暗い部屋で大音響で何があるかというと撤去されたCとPがある。なるほどこう使ったか。ネオン管が音楽に合わせてチカチカしている。屋外用のやつだから部屋の中で見るとちょっと光がキツい。そうか、これがまあ目玉。普通に面白いが……なんかもっとバカな使い方を期待してたんだ。それからバリ島で手に入れたゴミの山展示、台北で排気ガスを排気ガスとして出しちゃうビデオ、新宿あたりのゴミに原子力マーク(?)をスプレーで描いちゃうイタズラビデオ……そうかゴミシリーズか……いや待て、原子力マークのはこの程度でいいのか? 明らかにイタズラだからゴミ収集の人も何とも思わず捨ててるではないか。あの広島の事件から比べるとスケールダウンしすぎじゃなかろうか。モノホンそっくりの放射性廃棄物ドラム缶を置いちゃうぐらいしてほしい。それから次もゴミの山だったが意図がイマイチ分からなかった。最後に今回の構想ドローイングと、店舗荒らし作品の映像。

まあ入場料五百円だしこんくらいで。晴れた日にはパルコ前に巨大ゴミ袋が出るらしい。
http://www.parco-art.com/web/museum/exhibition.php?id=504

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2012年9月15日 (土)

ポール・デルヴォー 夢をめぐる旅(府中市美術館)

デルヴォーは絵も好きなのだが、自分が創作する上で影響を最も受けている一人でもある。デルヴォー作品をテーマにした詩や小説も少なくない。最近では「描きたいものしか描かない」というスタイルも魅力だ。
で、今回の府中の展示にも大いに期待をした。なんたって遠藤彰子展をやった府中だもん。大作がガンガンガンだぞ……と思ったが、そうでもなく、かつて佐倉市美術館で衝撃を受けたスケールには及ばない。コピーの「夢にデルヴォー」もなんだかなあ、夢幻的作品には違いないんだが、なんか違う感がある。あと習作の展示も多い。ただ、知られざる初期作品と最晩年作品が見れるのがポイント高い

最初にある「夜明け」は、まずまずデルヴォーらしくすっきりした画面に女がおる。そんな大きくないが、なかなかいい。それから時代を追って初期から。なんちゅーか初期は印象派そのもので、「グラン・マラドの水門」なんぞほとんどシスレーだ。「森の小径」印象派バリバリ。「サント・クロワ広場」のようなちょいしっとり系もあり。それからいろいろ表現手法を模索。「カエルのいる沼」のムンクみたいな暗さ。「森の中の裸体群」はタイトルまんま作品。でも例のデルヴォー裸女群ではなく野郎も混じっている。顔がモディリアーニみたいな(?)感じ。「若い娘のトルソ」は後の裸女を彷彿とさせる。女友だち(ダンス)はダンスというか女同士が裸で抱き合ってるだけだろこれ。でも理想化させて描くのは照れくさいのかサブカルっぽく(?)崩してある。そういえば18年ぶりに再会した恋人タムへ向けた「タムへの手紙」でも女同士が裸で寝そべったりしている絵をくっつけているが、いいのかこれ。まあ、いいんだよ描きたいものしか描かないんだから、それでとやかく言う人は恋人ではありませんっ。「行列」でやっとデルヴォーらしい大型油彩登場。ちょっと顔つきがナンだけどね。それから「キャロルの習作」でキャロル嬢が裸なのはいいとして、胸から腹の貧相な感じを容赦なく描いている。すげえ写実。そうだよデルヴォー先生、現実はつまらねえなあ。「リーデンブロック習作」にちょっと感動。おなじみリーデンブロックが生描きされとる。それから「会話」で骸骨と仲良く会話。油彩大作「トンネル」ああ、これはいいね。いいですな。いかにもデルヴォー。若い女しかいないぞ。鉄っちゃんだから電車もあるぜ。神話好きだから古代都市もあるぜ。「夜の使者」これもデルヴォーらしい。結構服着てる。一人習作では胸出してたんだけど、完成作では着てるの。衣装が結構品がよくてな、裸じゃなくてもいけるじゃんねえ。「エベソスの集い」はい、これもお約束作品ね。しかし完成作はこの3つだけで、あと並んでいるのはほとんど習作だったりしてな。
でも最後の油彩「カリュプソー」には要注目。視力が低下して描けなくなってきた(89歳だが)デルヴォーが到達した境地はやっぱり女の絵だわ。でもシャープな画面ではなく、もはや絵そのものが夢と化す寸前。その後の水彩ではもう夢の中……

そんなわけで、最近私は絵を読み解いたり人間ドラマを読みとったりって行為がウザいと思うようになってきてな。そういう観点で絵を見ている人が多いし、そう見るべきだと言う人も多い。でもさ、読み解けたからといって絵としてつまらないものが絵としておもしろくなるわけじゃないでしょ。それは絵のおもしろさとは別のおもしろさなわけだよ。デルヴォーの絵には解釈もドラマも必要ないのだ。まあ、この建物はどこだとかこれは神話の何だとか言えなくもないだろうけど、どうでもいいじゃん。現実と切り離したこの世界こそが魅力なのさ。そういうものを私も創りたいと思うわけです。
http://www.city.fuchu.tokyo.jp/art/kikakuten/kikakuitiran/delvaux/index.html

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2012年9月10日 (月)

ジェームズ・アンソール展(損保ジャパン東郷青児美術館)

よく知られている&私が知っているアンソールというのは仮面とか骸骨とか死神とか、ちょっと不気味な感じに満たされていて、またそれが魅力なんだけど、今回はそれだけじゃない、もっと写実や光を追求してたんだぞって話。あと同時代の人もそういう方向で創作していったんだすって話。意地の悪い見方をすると、アンソールの大して魅力的でない絵と、他の大して有名でない画家を集めた企画だな……いやいやいやそんなことない面白い絵もあるよ。

最初に美術アカデミー関係。アカデミックな手法(理想化)や題材(歴史画)に反発していたアンソールの鉛筆画とかがあるが、いかにもやる気なさそうで。こんなの展示していいのかみたいな。それから外光主義のコーナーでクールベさんが一枚。アンソールは「灰色の海の風景」がいかにもクールベさんの影響。「帆船」もパレットナイフでガシガシ描いている感じがいい。それから静物画と肖像画で、いくつかあるがアンソールが他と比べてどうというものでもない。でも「花と野菜」は色遣いがいかにもアンソールでいいよ。肖像はあまり印象がない。いや、下手ではないですよ。でも後の仮面のインパクトに比べると普通。

近代生活のイメージ、というコーナーで「牡蠣を食べる女」という大作を展示……ううむ、他にも割と大型の油彩があるが……ううみゅ、アナタの良さはそこではない感が強い。こういうのは通向けなんだよね。オレは「ゴッホならひまわり」みたいな浅い鑑賞しかしないから。それより、貧しき人々の尊厳コーナーのヤン・シベレヒツの「臭い雄牛」の妙な雰囲気がいい。人物の顔がね、独特だよね。それから私の好きなレオン・フレデリックが一枚。「ふたりのワロン地方の農家の子ども」目力で魅せる絵だぞ。この人はもっと我が国で評価されるべきだす。誰かレオン・フレデリックの個展やってくれよっ! 今はなき小田急美術館で見た天使の絵がもう一度見てえっ! えーそれから線の感受性コーナーのルーベンスの版画がいいよな。ジャポニズムのコーナーって、コーナーにアンソールの武者絵の模写が一枚だけってか。ここらでやっとおなじみのアンソールがやってくる。死の舞踏のコーナーで、「首吊り死体を奪い合う骸骨たち」は期待通りだ。「絵を描く骸骨」は画面下の女の顔がいい味付けてるよ。仮装のコーナーの「愛の園」は象徴派っぽいかな。でもいいよな。カリカチュアなどのコーナーでブリューゲル(子)のいくつかがいける。アンソール「陰謀」が目玉。おお見事だ。これぞアンソール。これが見たかったアンソール。やっと会えたぞアンソール。この雰囲気は、前半で見た静物なんかの色遣いにその原点があることを見れば、確かに今回の展示はアンソールがいかにしてああなったか、が分かると言える。それから「悲しみの人」も傑作という解説があって確かに地味に傑作。

なんだ結構イイ絵あるじゃん。
http://www.sompo-japan.co.jp/museum/exevit/index.html

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2012年9月 8日 (土)

誕生100年 船田玉樹展(練馬区立美術館)

行くのを忘れていた。明日最終なのだった。ちなみに今の時点で今年一番の美術展は、ここでやった中村正義で決まり。去年のグスタボ・イソエもベスト3に入る。なにげに凄い練馬。

で、船田玉樹って知りませんで。1912年生まれで最初の絵の師匠がそおっ、あのっ、地底人じゃなかった速水御舟! 山種で見た衝撃作「炎舞」の絵の人だ。期待できるだろ。期待違わないのはまず「白蓮」の黒い水面(?)に浮かぶ花。「花の夕」というポスターに使われている桜とも何ともつかない花の絵は、遠目ではふーんって感じだけど、近くに寄るとアヴァンギャルドな花と琳派風(?)の幹の対比が目を惹く。それから「紅葉」だっけな、ちょっと「炎舞」っぽいとか思ったの。最初の部屋では船田だけではなく、先の速水御舟など他の人も出ているが、「原爆の図」でおなじみ丸木位里の抽象っぽい日本画もいい。「不動」や「雨乞」なんか。それから船田に戻り「暁のレモン園」のまるでヴァン・ゴッホの夜みたいな雰囲気の絵。

上に上がる階段のところに「広島にて」。これ原爆ドームに入れた時に内側から見たところ。

上の階に行き、「残照」がまるでエルンストの森そのもの。「竹林」の細かさはどうだこれ。遠目では抽象画。それからデカいのいろいろ。次の部屋で水墨の絵が並ぶ。なんか一時期クモ膜下出血で倒れて半身不随になって筆も持てない状態だったというが、どの時点でそうなったのか、絵を見ているとそう分からない。水墨で小品をたくさん作っていた時だと思うが、にじんだ水墨を使った扇形を並べた「山の家」とか見ても、そういう作品かと普通に見てしまう。「山嶺」なんかもきれいに完成されているし。
あと河童マンガみたいなシリーズがあり、ちょっとキモい水墨の「仮面」があり、最後の方でも「深山紅葉」というびっしり松の向こうに黄色く染まった木々が見えるなんて見事な絵がある。

変化もあるが一つの筋が通っている感じ。とにかく行ってよかった。
http://www.city.nerima.tokyo.jp/manabu/bunka/museum/tenrankai/hunada2012.html

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2012年9月 2日 (日)

特撮博物館(東京都現代美術館)

夏休み中に一度行って、あまりの混雑と五十分待ちに呆然として撤収して二度目の挑戦。雨も手伝って待たずに入れた。特撮映画の歴史から始まって、結構知らない名作があったりする。うん、私が生まれた翌年に作られた「マイティジャック」とか。あとウルトラマンあたりだと私もおなじみ。ウルトラセブンのウルトラホーク一号の模型、いいよな。ウルトラマンタロウのメカ群も当時からカッコいいと思っていた(なんか話とか覚えてないんだが)。やっぱりメカ造形って「萌え」なんだよなあと思う。それから特撮もののマスクの展示や壊される建物のミニチュアとかがある。

それで次に、いよいよ今回の本命、新たに作られた短編映画「巨神兵東京に現わる」。私はこれを見に来たようなもので、これが無ければそもそも来ない。見たよ。やるね。巨神兵の巨大さの表現が萌える。ナレーションが少々ウザいのと、巨神兵の角(?)がチカチカ点滅してるなんてのが、ちょっと昭和センスな感じがするが、CG禁止で作られた映像は味がある……いや、私は「味がある」って表現あまり好きじゃないんだけどね。やっぱりCGじゃないアナログな手法は意外さと「これCGじゃ無理感」があると思うよ。ビームで建物が壊されて「建物が熱で溶けた」表現のドロっとしたヤツが噴出とかは、なんじゃこりゃ的ではあるけど。でもビームで切られて溶けかかってしばらくして爆発ってのは、萌えるね。ちょうど昨日、ラピュタの一部を見ててそんな表現あったのね。やっぱり宮崎駿凄いね。萌えの人だね。ちなみにこの短編映画、最初に例の「スタジオ・ジブリ製作」が出るよ。ファミリー向けブランドだと思いきや、こういうのもやるのが嬉しい。あーそれでナウシカ製作当時、巨神兵のデザインをやったのが、今回の企画のプロデューサーで、あのエヴァンゲリオンの庵野秀明なんだって。

映画のところを出ると、この短編映画で何をどう作っていったか、絵コンテとか現場での映像とかを見ることができる。この現場がまた、楽しそうなんだよねえ。爆破がうまく撮れた時とか、舞い上がっちゃうのが伝わってくる。

地下階に降りると、ミニチュア倉庫みたいなのがあって、いろいろごちゃごちゃ並んでいる。軍艦とか戦車とかの先にキングギドラがドンといる。それから特撮の偉人の説明とか、もちろん最初は円谷英二。それから……あー、まあいろいろ。撮影技術の説明。そこにも先の短編映画の映像と解説があるよ。

それから街のセットとか。ここは撮影できるんだって。一人で行ったから、自分が写った写真は撮れなかった。ミニチュアの部屋の中から風景を見るとかいうのもあったけど、並んでたんで見なかったい。それからミニチュア玩具が並んでいるところがあって、売店でおしまい。

巨神兵東京に現わる」のDVDがあれば買いたかったが無かった。というか高いと買わないんだろうけど。豪華解説本はあった。
萌える特撮の世界。
http://www.ntv.co.jp/tokusatsu/

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