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2013年2月25日 (月)

超然孤独の風流遊戯 小林猶治郎展(練馬区立美術館)

こういう攻めのタイトルなら行きたくもなる。なんたって去年のベスト1展覧会は、ここでやった中村正義展だもんね。というわけで、名前知りませんでしたが行ってきました。肺を病んで早死にすると言われてたんだけど、結果的に九十何歳まで生きたんだって。

絵は、んー別にそう過激な感じはないですな。手堅いですな。風景のね、ゴーギャンとか、あの、ポン・タヴェン派っていったっけね、平面的な感じが多いかな。「岩」なんかは、シュールレアリズム風に迫ってくる。「梅」が暗目の背景に浮き上がってなかなかいい。「擡頭(たいとう)」という絵がポスターになっているもの、頭をもたげてるのは奥さんだって。顔の陰影が際だっているので男かと思ったら女だね。顔が際だっている作品が多くて、この人の絵の面白さは顔。濃い顔。「人間No3」とか「人間 No11」とか「唄」とか。あと、あまり目立たないのだが冴えてる作品が「雲」これは雲だけを描いてあり、近くで見ると普通の絵だが、遠目で見るとなかなかいいね。まさに雲広がる空だね。猶治郎は子供向け絵画教室でも人気だったそうだが、「童心双六」という子供の絵をアレンジした作品が強力。中央の二人の子供の顔が濃すぎて可愛くないがそれがまたよし。周囲は子供の絵そのままが双六のマスになっている。これは猶治郎が子供っぽく描いたんじゃなくて、元ネタがあるみたいだけどね。ちなみに会田誠展では、会田がネタ的に描いた傑作群があるよ。それから、「踏路者」というカッサンドルのパロディみたいなのが面白いな。ガキがションベンひっかけてるど。うむ童心だ。終盤の実験的作品もなかなかいい「タイトル不詳(螺旋)」とか「悲しき幸福」も抽象的ながら雰囲気がある。「達磨さん旅に連れて行ってあげよう」や最後の「一杯」「一服」「一睡」の連作で和んでおしまい。

下の階では猶治郎の孫の富田有紀子展もやってるよ。花一つをキャンバス一杯に描く作品群があるが、どうしてもオキーフと比べてしまい、やっぱオキーフってすげえんだなとか思っちゃう。んーなんていうか、普通なんだよね、もちろんうまいんだけどね。穴とかニョロっとした変な形のとかは面白かった。
http://www.city.nerima.tokyo.jp/manabu/bunka/museum/

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2013年2月16日 (土)

飛騨の円空(東京国立博物館)

鎌倉時代で出尽くした感のある仏像だったが、江戸時代にいきなり有名どころが二人出現。それが円空と木喰(もくじき)で、今回は円空展。私は木喰はあまりピンとこないのだが(というか仏像全般ピンとこない)、円空はなんとなくいい。私の好きなフォーヴなんかの近代美術に近い感じがする。展示は1室にまとめてある。

最初の方にある「護法神立像」が目を惹く。2メートルを越すのが柱みたいに並んどるのです。左右の荒削りな鋸の刃みたいな衣装の裾(?)がなんかカッコイイ。これは他の仏像にもある。あと木目だな。木目に沿って筋を入れてるのや木目そのものがいい。簡素な仏像ながら、やっぱりいいものはいい。あといろいろあり、三十三観音像というので、できかけみたいなのがどさっと並んでいるのです。ううむ……この「民芸品じゃない感」が不思議だと思いませんか。やっぱり神とつながる何かがある。あと目を惹くのは巨大な「金剛力士(仁王)立像」木の切ったやつのまま、顔だけ彫った感じ。顔がデカくてイケる。「柿本人麿座像」も小さいながらいい顔してるね。存在感あるね。それから面白いのは「歓喜天立像」お寺では7年に一度だけ公開されるのを今回大サービス。小さい像で、顔が象の神が二人抱き合っているというもの。うむ、象というか……アリクイ? みたいだな。あと抱き合っている姿は抽象的で、クープランじゃなかったプランクーシの「接吻」を彷彿とさせる。あとは意外なところで「千手観音菩薩立像」かな、こういうちょっと手の込んだものも作ったんですねえ。生涯に12万点作ったとかで、確認されてるのが数千点。でも、これちょっと作れそうで、贋作とかも多そうだよね。
http://www.tnm.jp/modules/r_free_page/index.php?id=1556

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2013年2月15日 (金)

奇跡のクラークコレクション(三菱一号館美術館)

クラーク美術館というのがアメリカにあり、そこのコレクション展。何が奇跡かというと、ここが建て直し中なもんで、普段来ないものが来る。「ルノワールとフランス絵画の傑作」という印象派中心で日本人好みの直球ジャンル勝負。今まで山ほど開催されてるからよっぽどのもんじゃないと驚かないけんね。それより三菱一号館の床がカーペット敷きになったぞ~ 評判の悪かったあの足音カタコトが無くなったぞ。それにしても開催早々の平日十時でそこそこ混んでいる。

最初はコローが並ぶが、この程度じゃ驚かん。ミレーも一応ある。テオドール・ルソーの「ランド地方の農園」仕事きっちりみたいな感じはいいな。ウジェーヌ・ブーダンの海上の波の感じはちょっと新鮮だ。なんだ今回はちょっとマイナー系がいいのかなと思いつつ、広い部屋に入るとモネとルノワールが並んでいる。ルノワールの「シャトゥーの橋」おお、珍しく風景画ですな。この色はいいですな。ルノワールの美女が風景になったみたいですな。モネもいくつかあるが「エトルタの断崖」がいいね。いかにもモネ、よりも、いかにもになりかかっているモネ、あたりが面白い。「カオスの縁」みたいなもんで(関係無いか)。シスレーの「籠のリンゴとブドウ」は珍しく静物。ここでルノワールの人物がずらっと並ぶ。特に美女四人「若い娘の肖像(無邪気な少女)」「うちわを持つ少女」「かぎ針編みをする少女」「劇場の桟敷席(音楽会にて)」これらはどの一枚でも目玉になっておかしくない高レベル。うむむむ、や、やるじゃないかクラーク。ルノワールの絶頂期を好んだコレクターだって。好みは「かぎ針編み」かな。滲む光と明暗のコントラストがいいよな。次の「テレーズ・ベラール」も肖像だけど、これは「オレだって深い内面描けるんだぜ」という感じの傑作だ。

このルノワールで盛り上がりすぎたのか、しばらくクールダウンでよく知らん人の絵が並ぶ。ファンタン・ラトゥールの花は定番だが。ジャン=レオン・ジェロームって知らんかった。アラブの風俗画みたいなのを描く人。「奴隷市場」え? いいのかこんなん展示して。女奴隷を裸に剥いて値踏みしてるところじゃないか。あと「蛇使い」は一見アラブの雰囲気タップリなんだけど、小道具や衣装とか画家が適当に組み合わせて描いたんだって。つまり富士山のふもとに浅草寺があって芸者と侍が歩いているみたいなもんか。

下の階へ。シスレーとかピサロ。悪くはないが驚かんレベル。ピサロの「エラニー・サン・シャルル」の点描がキマっていますな。ドガは踊り子ものがあるがまあ普通。ロートレックの油彩「待つ」が背中で語る感じでいいぞ。ルノワール「シャクヤク」うむ静物もいけるんだな。さて、そろそろ終わりかの、と思ったら最後にまだルノワールがある。「金髪の浴女」キタ――――――――(゚▽゚)――――――――――っ! ルノワール好みの腰肉タップリのぽっちゃり裸婦。胸もデカい。顔もきっちり美女。こ、これは上物だぜ。「鳥と少女」もいい感じだね。最後まで十分魅せる。

ほとんど「ルノワールとその周辺」みたいにルノワールに気合い入った内容。ルノワール好きなら即行き。そうでなくても早く行かないと混むぞ。
http://mimt.jp/clark/top.html

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2013年2月 2日 (土)

アーティスト・ファイル 2013(国立新美術館)

そんなわけで先週に引き続き新美へ。何かズガッとくるものないかいな。これといってテーマを決めずに、内外問わず今時の人を集めているそうな。

最初はヂョン・ヨンドゥ。韓国の人。子供の描いた奔放な絵をそのまま現実の写真で再現した、明快にして驚きの作品。人が飛んでいたり、変な格好していたり、変な部屋だったり。幻想写真みたいだけど、子供の感覚を通してどこか現実とつながっている感じがイケる。これでつかみはオッケーだ。隣り部屋の老人の思い出語りを再現するビデオも面白い……んだろうけど、時間かかるのであまり見てないのだ。次、東亭順。使い古しのシミを目立たせたシーツを使ったデカいインスタレーション。シーツには使った人だけのドラマがある……んだけど作品としては微妙だ。それからシミのついていない部分の模様を無数のピンで壁に描くのもある、これらは意図が分からないとなんとなくデカい展示なあで通り過ぎちゃう。うん、解説読んだの後だったから通り過ぎちゃったんだボクは。次、圀安孝昌。陶ブロックと木材を使った巨大インスタレーション。入って思わずうぉおおっ。うん、好きだよこういう仰々しいの。入っただけでそこはもう異空間さ。次、中澤英明。子供の顔がいくつも並ぶ。カワイイと言えばカワイイけどちょっと不気味でもある。なんか味がある作品群だね。次は利部志穂……ボクの苦手な雑多に色々置いてある系。ワイヤー張って天井が低くなっているから空間としては面白いが。とにかく足元注意。何を蹴っ飛ばしていうか分からない。隣に映像作品もあったよ。

次はナリニ・マラニ。インドの人。えー……絵があります。あと、透明な円筒形4つに絵を描いてぐるぐる回して壁にアニメーションの光で投影する、という大型インスターレーションあり。アジアテイストがいいよな。次は再び中澤英明。また子供の顔の絵……おおっと、なんと一つ目小僧がいるではないか。唐突すぎて面白い。この一つ目小僧、ちゃんと立体視ができるように、目立は二つあるんだよ。それが真ん中でくっついているのだ。次の志賀理江子は住んでいる北釜海岸というところで撮った写真。展示が迷路みたいで面白い。最後はダレン・アーモンド・最初に大きなインスタレーションがあったが、母親ものだったんでイマイチ(母親への想いを使えば人の心の琴線に触れるのは割と簡単。ただ、逆にちょっと安直に見えちゃうもんでね)。次が風景写真で普通っぽいのでスルーしちゃったんだけど、なんか月光写真だったみたいね。もっとちゃんと見ればよかった。

かような鑑賞にならぬよう、解説をよく理解し、意図を汲んで見ましょうね。
http://artistfile2013.nact.jp/

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