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2013年3月29日 (金)

ルーベンス(Bunkamuraザ・ミュージアム)

そんな大したものがなかった。そんなバカなーと思うでしょう。いやしかし「バロックの神髄」とかいう売り文句なんだから、さぞかし「バロック」をビンビン感じられるんじゃなかろうかと思ったですよ。いやそもそも「バロック」ってなんぞや? 語原は「歪んだ真珠」なんだぜ(試験に出る)。過剰な演出とか過剰な装飾とか、そんなものみたいなんだけどねえ。

しかしなんかデブの赤ん坊が出てくりゃバロックってのはどうよ。いや、そこの君にぜひ訊いてみたい。今回のルーベンスで心の底から感動しとるのかお前は~? ルーベンスだから感動してるふりをしているだけじゃないのかお前は~? ねえねえなーんかルーベンスって「大味」じゃね? いや時々緻密で巧みなのもあるんだけど、大型作品になると、どうも大味になるんよ……ってうか、大味じゃないすげえ作品はきっと日本に来ないんよ。今回のポスターになっている「ロムルスとレムスの発見」これそんなすげえ絵か? すごい? ほんと? ほんとーにそう感じる? ならば、私が今回一番「バロック」だと思った作品を挙げましょう。版画の「ライオン狩り」これがバロックです。神髄です。この血沸き肉踊り入り乱れて大騒ぎになってるのが。これを基準にしてさっきの「ロムルス……」を見てみよ。どうじゃ大味じゃろ。単にワン公とデブガキが目立つってだけじゃねーかHAHAHA。

さーて順番通り行くかあ。最初は肖像いくつかね、それからさっきの「ロムルス……」があって、眠るデブガキ2匹「眠る二人の子供」いや、悪い絵じゃないよ。いい絵だけどね、収蔵が西美じゃあるがたみが薄いねえ。それより隣の「天使からパンと水を受け取る預言者エリヤ」が面白いね。左右の柱のねうねっているのがバロック。しばらく行って「復活のキリスト」なんかこれ……腹に槍の傷はあるけど肌もきれいで妙に健康的だな。ヘルシーなのはあまり似合わないよ。一つ前の「キリスト哀悼」のクタバっている方がキリストらしいしバロックな感じがする。隣の工房もの「アッシジの聖フランチェスコ」これいいね。写実的で色も落ち着いている。バロック云々より作品としてうまい。それからギリシャ神話ものがいくつか。小品ながらいずれもアクションあふれる演出が冴えている。

それから版画コーナー。版画ったってコントラストの強い結構キマっているヤツら。原画だけルーベンスで作品としては他人の、というのが多いんだけど、ある意味シャープな描線と強いコントラストはルーベンスの大味をカバーできる。よって、結構いいのありますぜ。「奇跡の漁り」なんてなかなか大作。「キリスト磔刑(槍の一突き)」や「キリスト降架」もバロックな感じが出ている。うーんしかし、パネルで小さく紹介されていた、アントワープ大聖堂の「キリスト降架」はやっぱ凄そうだなあ。あと「聖母マリアの被昇天」もアクションもの。それから例の「ライオン狩り」見落とすなよ。最後の方だ。

さてまた油彩に戻り、工房の画家達だって。名前はよく聞くヴァン・ダイク「悔悛のマグダラのマリア」一見お色気路線かと思うが顔はちゃんと涙を流して悔悛してる。瞼腫れてるし。あとはディーペンベークの「黙示録の女」とか、まあ面白かったな。モノトーンみたいで。あとは、共同製作とかで「マルタとマリアの家のキリスト」の、右の方にあるオッパイがいっぱいくっついているヘンな像に誰かツッコミを入れてくれ。

ルーベンスは日本じゃあまり見れない大家だが……これで1500円かあ……微妙だな。
http://rubens2013.jp/

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2013年3月25日 (月)

ミュシャ展(森アーツセンターギャラリー)

ここんとこ家引っ越してて、美術展行ってないの。ひさびさであったがや。

ミュシャ展といえば、最近は展示即売みたいな筋の悪いのが多いようだ。まあそういうのは概ね入場無料だったりするんだけどね。今回のは千五百円も取る(しかも展望台は行けんの)んで、今まで見たこと無いようなもんが展示されているに違いないと期待もしたり、いやあ今更ミュシャかよと思ったりもする。で、行ってみました。出品リストが無いんだって(メモ帳も忘れたんで余ったレシートにメモった)。手荷物預かりもロッカーも無いやんけ。ケチいですな。

最初に珍しく家族の肖像とか。中でも「ジリの肖像」という息子の肖像画があってね、普通に可愛いよ。それから定番の芝居のポスターとか広告とかがずらずら。だいたいこの辺が一番混んでいる……んだけど、この辺はアール・ヌーヴォー展とかでも普通に見とるんよ。サイズのデカいのもあって、珍しいといえばまあそうなるが、ここは一つ美女ポスターは軽く見ておいて、「悪魔とトゥワルドフスキー」みたいなダークな挿し絵原画に注目。あとは「装飾資料集」の習作などがあり、描線を楽しんでみたい。やっぱミュシャみたいな印刷系は完成作がしばしば見れる分、習作の方が新鮮。

広告ポスターだけでなく「四季」なんておなじみ美女作品も展示。中でも「四芸術」は習作と完成作が並んでいるけど、習作がイケる。「絵画」や「ダンス」なんぞは習作の方がキレのある表情をしている感じだ。それから描写の参考にしたのか裸婦の写真がいくつか。ほほう。

だんだん展示内容が民族化してきて、パリでウケていたミュシャもスラヴ民族愛に目覚めて、そのための芸術を生み出すべく活動するようになる。絵画では「百合の聖母」なんかでチェコの民族衣装が出てきて、「ヤロスラヴァの肖像」も、これ娘だったかな。スラヴスタイルだよね。あと戦場とかのスケッチで暗い絵が並んでてね、うん、気持ちは分かるんだけど、これはミュシャの良さじゃないなあ。噂の民族愛大型絵画連作の「スラヴ叙事詩」は映像だけ。おいおい千五百も金取っておいて一枚も来ておらんのかい。まあ来ないよな……いやでも以前1枚だけ来てるの見た気がするが。まあそれでも「スラヴ叙事詩」関連コーナーは充実。習作もあるでよ。あと、民族愛とミュシャの技法の双方が冴えるポスター関係はおすすめ。「モラヴィア教師合唱団」とか「脅威」の習作とか。甘いだけじゃないミュシャが楽しめる。

会田誠展と併せて二千五百円で行った方がいい気がするな。
http://www.ntv.co.jp/mucha/

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2013年3月 9日 (土)

フランシス・ベーコン展(東京国立近代美術館)

一人暮らしのとある日にベーコンとほうれん草の炒め物を作ったが、ほうれん草一把にベーコン150グラムを使ってしまい、それを一度に食おうとしたが、エグい塩分と脂分でとても食えなかった。ベーコンなんて少し入っている程度でちょうどいいのだ。何が言いたいかというと、フランシス・ベーコンも、何とか美術館展で一枚あるぐらいがちょうどよく、まとめてたくさんなどではもうええわいとなってしまうのではないかと思ったのだが、別にそういうことはなく、ベーコンワールドに浸れる企画。さすが日経文化事業部が関連情報をバカスカツィートして宣伝するだけはある。点数も多すぎないのが返っていい。それぞれの作品にじっくり対峙できるぞ。

冒頭から既に30代の作品(それより前のが無い理由は現場で読んでね)、「人物像習作Ⅱ」おおおこれこれ、このどこにあるともない口を開けてるの。叫んでいるのか。いいね。こりゃ女だね。でも私はこの2つ先の「肖像のための習作」の方が好みね。男だ。ネクタイだ。叫びだ。顔がよく分からないが目があるのがいい。最初の作品は女の体と口の位置関係がちょっとズレている感じがしたが(それはそれでいいんだが)、こっちはちゃんと体の上に乗っている。しかしベーコンの異様な人物というか人体って、ネクタイ姿がよく似合うな。それにしても「習作」って書いてあるけど全然習作らしくない。完成品みたいなのだが。それで、叫びものでは少し先の「叫ぶ教皇の頭部のための習作」がある。これはストレートだ。あと「座る人物(枢機郷)」。ううむ絶妙ですな。暗い背景から浮き上がるでも背景に溶け込むでもない。そうかこの感じがベーコンなのだな。

さらに進んで、ゴッホのための作品を描いたそうで、「ファン・ゴッホの肖像のための習作Ⅴ」で思わず「ぬおっ!」と声をあげてしまった(心の中でだが)。ベーコンには違いないが、こういう色合いは初めて見る。こりゃ確かにゴッホだ。ゴッホか? いや、ある意味ヴラマンクよりもゴッホに迫っている感じがするね。しかしこのゴッホ像はいいのか? ゴッホものはもう1枚ある。それからスフィンクスものが4枚。やっぱネクタイ男のがいい。なので「スフィンクス―ミュリエル・ベルチャーの肖像」が普通に見える。

それから顔の3連作が2つあるが私的には普通。それより全身像の方がいい。「横たわる人物像No.1」ううむ……いいな。なぜいいのだ? そうだ背景だ。私が思うにベーコンがベーコンなのは人物描写だけではない。巧みにして無駄のない背景が人物を……うーん何て言うかな、その存在を際だたせる。この作品の床のカーペット(?)はどうだ。よく見ると凝っている。なぜこうなっているのか? こうあらねばならないからだ。しかし「歩く人物像」の簡素な背景もいい、そこに人物が出現する。思うに、背景と人物は相反するものであるが、それを分離させることなく納めるのがベーコン技ではなかろうか。我々は神秘の定番「コインシデンティア・オポジトルム(相反するものの一致)」をそこに見るのだ。背景無くしてベーコン無し。してみると、展示されているベーコンリスペクト作品は、土方巽の舞踏であれペーター・ヴェルツ/ウィリアム・フォーサイズのインスタレーションであれ、ベーコンを全て捉えたとは言い難いと思うのです。身体表現に比重がかかり過ぎて背景が無いからだ。

はい、最後の部屋。三幅対が多い。でもとりあえず「三つの人物像と肖像」がいい。下の小さいヤツがイカす。口と歯が付いた肉塊みたいなの。三幅対では闘牛を題材にしたのがいいが……うーん、傷口使っちゃうのはちょい安直かな。とてもいいんだけどね。それよりこの感じあれだよあれあれ「花札」。ベーコンは花札見て描いたのか。そんなことないか。ここの作品群でも背景が気になる。人物を隠して背景だけでもそれなりの作品になっているではないか。

めちゃくちゃ混むとも思えないが、絵が好きなら行って当然。ベーコンを浴びに行くのだ。
http://bacon.exhn.jp/index.html

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