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2013年4月22日 (月)

牧野邦夫―写実の精髄(練馬区立美術館)

去年の中村和義、一昨年の磯江毅、たまに驚異的な発見がある練馬がまたやった。牧野邦夫、いや知らなかったが凄いぞこの人。磯江毅もそうだし、来週からBunakmuraでやるアントニオ・ロペスもそうだけど、写実がここんとこ再評価されてる雰囲気だ。写真があるから写実なんてもう意味ないじゃん、と思うのは甘い。それは写実の凄いのを見たことないのじゃ。最近私は思うのだが、写真はやはり機械で撮ったものなんだよね。光にあくまで忠実だしピントの合う合わないもある。写真をそのまま拡大して絵にするとそういう光学的に忠実な部分がなんとなく分かっちゃう。ああこれ元は写真なんだなって。写実絵画はそういうのを超えて現実が見える様が迫ってくるのだ。ここが凄いところなんだよ。でも牧野邦夫って写実だけではなくて、写実の手法を使って幻想絵画にしたのも少なくない。これがまた技術力と相まってかなりのもんだ。
牧野邦夫はレンブラントを師と仰ぎ、世間の流行とは離れてひたすら自分の道を進んでいった。いや、こういう人の作品を見るとさ、村上隆の言う、西洋美術の潮流に対するプレゼンテーションで評価されてこそ芸術、なんていうのがバカみたいに見えるんよ。村上隆のドバイ(じゃなかったドーハだ)の個展が玄人筋で絶賛だったようだが、多分オレが見ても感動しないと思う。

さて、最初にあるのは「未完成の塔」というのも、10年で1層を描く予定だったが、50代の1層しかできなかった。61歳で亡くなったのね。絵は幻想風。それから年代順。レンブラントリスペクトみたいな自画像も多い。特に後半にある。「黒い布をつけた自画像」はまんまレンブラントだ。幻想的ながらも写実ベースなので、主体ががっちりしている。「邪保」のとんがった耳とかね(こう書いても何だかわからんな)。「複製のある部屋」の写実的な和室の一角から幻想が湧いてくる様が面白い。「ひん曲がった部屋」というシュールレアリスム絵画みたいなんのもある。「食卓の自画像」の写実的自画像を飾る幻想的静物の独特の描き方がいい。
2階に上がり、「虫の墓」は小さいながらも凄い。「近衛師団司令部隊」これ今の近代美術館工芸館の建物らしいが、廃墟。「白い静物のある裸婦」の存在感よ。裸婦は結構あって、やっぱ礒江も描いてたが写実裸婦はエロい云々を除いても存在感の発揮できる血の通った造形には違いない。「ジュリアーノ吉介の話(芥川龍之介作品より)」これは話を元にしたそうだが大作。いや人間が多い大作も結構ある。それこそ「人」というタイトルのものも。あと「天守物語Ⅰ(泉鏡花作品より)」「天守物語Ⅱ(泉鏡花作品より)」これは色鮮やかで遠目に見てもイケる。「インパール(高木俊朗作品より)」は戦争の死屍累々もの、かなり凄惨な描写で。これはもう一つの「人」の天国と地獄の地獄部分にも通じる感じ。「セロ弾きのゴーシェ(宮澤賢治作品より)」ゴーシュじゃなくあえてゴーシェだって。このネコ女の解釈はなんか凄いぞ。

まあとにかく、今年見た中でナンバーワン美術展の勢いだ。コンセプトやプレゼンテーションのアートにうんざりしている人にも贈りたい。会場空いてたな。もったいない。マジで観た方がいい。
http://www.city.nerima.tokyo.jp/manabu/bunka/museum/tenrankai/makinokunio2013.html

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