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2013年6月29日 (土)

浮世絵 Floating World-珠玉の斎藤コレクション(三菱一号館美術館)

斎藤さんのコレクションだって。浮世をFloating Worldとしている時点で、なんか勘違いしてんじゃねーかと思ったりするが、三期に分けて見せる気合いの入りっぷり。なんたって三菱一号館だから、まあハズれはあんまりないだろうと思った。今回は第一期で「浮世絵の黄金期」とか「江戸のグラビア」とか書いてあるもんで、美人画系が多い。特に歌麿と春信が充実。あと浮世絵に影響を受けた洋画の版画とかたまに出てくる。

順を追っていくと、展示はとりあえず時代順。最初は菱川師宣のモノクロ版画。うむ手堅いな。西村重長のキテレツ浮世絵も一枚「げんじ五十四まいのうち 第二十番 朝顔」。いつもはおバカパース(線遠近法)が炸裂するが、今回は雪だるまを作る八頭身子供だぞ。子供ではなくコビトだな。絵画手法が発達していなかったとはいえ、何かおかしいとは思わなかったのか? さて奥村政信「風流久米仙人」は縦長画面でなかなか技を感じる。うまい。鈴木春信「唐子と硝子の瓶」は、なんか春信には珍しい題材。それから春信の美品「風流やつし七小町」が拝める。春信は他にもいくつかあるが、どれも見立て絵とかやつし絵なもんで、元ネタが分からないと百%エンジョイはできない。当時のインテリの遊びだからさ。でも普通にかわいい系美人の絵として見ても見れる。あと「菊見の男女」はちゅーちゅーしてるから春画の一部か? ここで唐突にボナールが一枚。次、湖龍斎がいくつか。「雉と牡丹」といった花鳥画もイケる。湖龍斎の美人画もあるが、ガンダムのジオン軍のモビルスーツでいうところのグフのポジションで「ザク(春信)とは違うのだよ。ザクとは!」という台詞が聞こえるぜっ……ってそうだよ何度も書いてるよこれは。そうか地上も宇宙も万能のドムが北斎で、普及型のゲルググが広重だな。エルメスはもちろんニュータイプ浮世絵師の国芳だ。じゃあズゴックは歌麿か? まーそれはどうでもいいんだけど、オレの前世の春重(司馬江漢)はおらんのだな。そのあとは肉筆浮世絵のコーナー。ほとんど懐月堂や菱川など初期の肉筆美人画で、やや単調な印象を受けるかも、でも西川祐信の「きせるを持つ遊女」とか宮川長春の「遊女立姿図」はいいよな。あと版画かと思ったが肉筆で作者不明の「吉原賑之図」は、初期っぽいけどパースがちゃんとできてるよ。

版画に戻る。鳥居清長の登場。八頭身美人が勢ぞろい。今回は「女湯」なんてヌードもあるぞ。しかーし、着物を着てると流れるがごとき描線が優雅なんだけど、ヌードはイマイチだ。あと「江ノ嶋」を見ると遠近もやや苦手らしい。位置と身長が合ってねえだ。でも「子宝五節遊」を見ると、子供の描写はうまいですな。窪俊満が1枚。ううむ、この巨匠が一枚だけかよ。偏ってるぜコレクション(企画者か?)。その後は歌麿がずらっと。自信があるらしく、かなりの量だ。最初の「松葉屋 粧ひ 代々春 初船」の美女の背後にある鳳凰とかいいだろ。あと揃いものが揃っている。「青楼十二時」がちゃんと十二枚見れる。「女職蚕手業草」のつながった十二枚続きが一気に見れる。壮観だぞ。あー、これ左から右に見てるヤツはシロートな。右から左に見るんだよーん。蚕を育てて、布にするまで。全部美女がやってる。で、時々ロートレックの絵があるが……うーん、なんか合わねえな。歌麿は遊郭の生活を描いてたってそこは彼の理想美女なんだし、一方ロートレックはムーランルージュのリアルだしなあ。

階段を下りて、テーマ別になって美人画コーナー。鳥文斎栄之とか栄昌とか。栄昌の「丁子屋昼見世」というのが、さっき見た歌麿のに似てるんだが……なんか美人も鳳凰も劣化コピーみたいだ。それだけ歌麿が洗練されてるって感じかな。武者絵コーナー。湖龍斎のがイケる。金太郎四連発。おなじみ歌麿もいる。それから役者絵コーナー。勝川春章登場……って、春章はぜひ肉筆美人画が一枚ぐらいほしいね。まあいいや。春章がいくつか。春好があるが、惜しいことに極太線大首絵がない。一枚ぐらいほしいね。写楽が三枚。状態はイマイチ。むしろ豊国。特に「初代市川男女像の蘇我五郎」大首絵だ。思うに写楽第一期の黒雲母役者大首絵が異端な作風ながら結構なブームになってしまい、悔しい正当派。「やっぱり売れる大首絵はこうだぜ」という気合いの一枚。隣に国政の大首絵もある。あとロートレックのおなじみ役者絵風ポスター。これはさっきと違い。バシッと一致してる感じだ。それから忠臣蔵コーナー。北斎の「新版浮絵忠臣蔵」これが忠臣蔵の場面を全部「浮絵」つまりパースを駆使した絵で表現する意欲作。さすがの北斎。国芳の陰影を使ったものも一枚。

この展示は第二期、第三期と続く。第二期は北斎と広重。第三期は江戸から東京だって。うーん、行くか分からないや。
http://mimt.jp/ukiyoe/

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2013年6月14日 (金)

エミール・クラウスとベルギーの印象派(東京ステーションギャラリー)

ここを訪れるのは2度目。「新生」東京ステーションギャラリーでござる。エミール・クラウスは確かどっかで見たんだよね1枚ぐらい。ともあれベルギーのアートは好きだから何でも行くぞってなもんで、行ってみた。
印象としては、ごくまっとうな「印象派」……じゃどういうのがまっとうでないのかとか、言うかもしれんが、まあ印象派好きなら納得のクオリティ。なんたって「屋外」だし「自然」だし「外光」だし筆跡も巧みだしね。クラウスが影響を受けたのはフランスの「印象派」はもちろんだけど、その後の「新印象主義」も大きいって。つまりスーラとかシニャックとかの点描の連中ね。

展示は最初にベルギーの印象派。どってことないんだけど(……っていうか印象派なんて散々見たからよほど凄くないと何とも思わんの)。そうだなモデスト・ハイスって人の「レイエ川でのお祭りと嵐」なんかいいね。海とか空とかの色がね、ヴラマンクみたいで。それからフランスのおなじみの人達が並ぶが、モネの「霧の中の太陽(ウォータールー橋)」おお、この太陽が水面に映り込む感じ。モネの得意技じゃの。あとは、シニャックが3つぐらいあるけど、オレあんまりシニャック好きじゃないんだよね。点描からオタク臭放っているみたいで(ひどい形容だが)。ただシニャック風でもイポリート・プティシャンの「髪をすく裸婦」はちょっといい。細身の裸婦の感じが。あとシダネルの「黄昏の古路」おお、いいな。ま、これシダネル展で見たけど。シダネルもまとめて見ると飽きるが一枚だけとかすげーいい画家だな。

で、いよいよクラウス御大登場。ポスターにもなっている「野の少女たち」それから「昼休み」いずれも逆光処理の屋外作品。印象派よりもっと自然光を際立たせた感じかな(ルミニスムっていうんだって)。階を移動して、「魚捕り」は点描作品……なんだけど、シニャックみたいな不自然感が無くてかなりうまい。「レイエ川の水飲み場」の緑色もいいですね。印象派のポイントの一つは、屋外の緑をいかに鮮やかに描くかってとこにあるだろうね。それから「日の当たった木」は逆に落ち着いた秋の感じかな。あと「ウォータール―橋、黄昏」なんてのがあり、モネのと比較できる。全体に数はまずまず。刺激は少ないが、奇をてらわず非常に手堅くいいヤツを鑑賞できる。

それから最後はクラウスの日本への影響。ベルギーでクラウスに学んだ太田喜二郎「乳屋の娘」これを見ると、いかにクラウスがうまかったかが分かる。いや学習中だからしょうがないけど、ほとんどクラウスの「劣化コピー」。でもまあ3年後に描いた「麦秋」になるとだいぶマシになってくるな。それから児島虎次郎「和服を着たベルギーの少女」これも遠目ではまずまずだが、近くに寄って見ると何か筆の描線がバッチイ。まあ勉強中ですから。

印象派が好きなら「行き」だ。印象派好きが見たい印象派絵画を見ることができる。
http://www.ejrcf.or.jp/gallery/

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2013年6月 8日 (土)

ファインバーグ・コレクション展 -江戸絵画の奇跡-(江戸東京博物館)

アメリカのファインバーグ氏のコレクション。評判がよさげなんで行ってきただ。最初に虎の絵があってね、なんかにゃーにゃーしてるんで応挙かと思ったら宗達ですって。

最初のコーナーが「琳派」だぜ。いやぁ通ですなファインバーグさん。そうだよ日本美術の様式で世界に通用するのはまず琳派なんよ。といってもボク腐るほど琳派見ちゃったんで、相当なモノじゃないと驚かないの。例えば酒井抱一の「十二ヶ月花鳥図」いいですね。キマってますね。でももうボクには普通なんだよこれ。それより宗達の「楓図屏風」。おお、宗達でもうここまで様式ができてたのか、という驚き。レベル高いぜっ。それから鈴木其一「大江山図」もいいが普通だ。それよりも其一は「山並図小襖」これは山々が連なっているんだけど、手前のが大波のようなデザイン。其一ちゃんはこれくらいケッタイでないとおもろない。

えー次は「文人画」。文人画ってイマイチ意味が分からなかったんだが、要は中国のインテリのマネっこなんだって。うん、あまり興味ある分野じゃねえだ……と思ったが、結構イケてるのもある。巨匠池乃めだかじゃなかった池大雅「雪竹図」竹に雪を墨だけでバシッと描いてる。レベル高っ。紀梅亭(きのばいてい)って人の「蘭亭曲水図」は、画面を埋める仰々しい感じが迫ってくる。なんかミヅマアートあたりが好きそうな感じだな。岡田米山人(おかだばいさんじん)って人も同じくうねうねの木が目を惹く妙な絵を描いているタイトル「蘭亭曲水図」って梅亭と同じか。今日はこのくらいにしといたる。

次は「四条丸山派」丸山応挙を中心としたヤツラだ。応挙の「鯉亀図風炉先屏風」ううむ、うまいですな。リアルですな。「孔雀牡丹図」もそうだけどやっぱ写実入ってますな。フォロワーがいるわけすな。でもなんで虎だけにゃーにゃーだったんだろう、虎を見たことなかったのかな。ちなみに応挙の虎は今回ありませんがね。しかし四条派って、うまいけどそうおもろないのね。鈴木松年って人の「月に雲図」みたいに月が球体っぽくて遠目で見て愉快だ、なんてのはあるけどさ。

さて「奇想派」うむ、期待できますな。伊藤若冲、キタ――――――(゚▽゚)―――――――っ! 「菊図」うわこれ、枝が細っ。どう見ても菊が乗らんでしょう。でも、そこが面白い。葉も変だし。いやそれより「松図」に衝撃。なんじゃこりゃ若冲八十歳の作品。「旺盛な創作意欲で描いた」とか解説にはあるが、これはもう変わった松の絵なんかではなく、抽象画だと思って鑑賞した方が普通に見れる。晩年のモネもそうなんだけど、対象を変わった感じで描いてるつもりが、意図せず抽象画に足を突っ込んでいる場合が少なくない。それにしても若冲恐るべし、以前見たモザイク画もそうだけど、現代アートとして展示されてても全く違和感が無い(ちなみに例のモザイク画を調べたら若冲じゃないんじゃないかって説もあるのね。うーん、分からんでもない。印象が今風過ぎるんよ。空の感じとかさ)。さてさて、曽我蕭白が3つぐらい。お約束だね。うん、いいよ。長沢芦雪「梅・薔薇に群鳥図」うむ普通だな。「富士に群雀図」雀三羽が同じ格好で降りてきている。

「浮世絵」うーん、南蛮屏風にはじまり、初期の肉筆とかがあり、目に留まったのは東燕斎寛志「見立孟宗図」うーむ「萌え」ですな。それから磯田湖龍斎の「松風村雨図」は在原行平が海女にどうたらとかいう話らしいんだけど、海女の顔が「当世風」だって。要するに今でいう時代劇アニメに出てくる娘を今時の萌え萌え美少女にした感じだわな。江戸浮世絵なんてそんなもんなんだって。なーにが「浮世絵は江戸庶民の生活を描いた」だバカタレがっ。美人画なんて今のアキバに並んでいる萌えイラストと大差ないんだよ。なーにシミジミ鑑賞してんだぶゎ~か。さて初代豊国の美人画「見立松風村雨図」がある(あれ、さっきと同じテーマか)。うーん、豊国はもっとうまかったはずだが、なんだこのシャクレアゴは。当世風か。終わりの方、祇園井得「化粧美人図」よっ、京都系のエグいヤツ。最後は北斎の「源頼政の鵺退治図」でキメだ。鵺を描いてないで、赤い光線で存在を表すニクいヤツ。八十八歳卍の衰え知らずでナイスなヤツだ。

前期後期で展示替えが結構あるようだ。
http://edo-kiseki.jp/highlight.html

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2013年6月 2日 (日)

オディロン・ルドン展(損保ジャパン)

サブタイトル「夢の起源」だそうです。前にBunkamuraでやり、三菱一号館でもやったしなあ。チラシがおなじみの顔付き蜘蛛だしなあ。あまり期待もできまいよ……と思いつつ行く。まあ収穫もちらほら。

最初はボルドーの紹介で、ルドンが版画を教わったロドルフ・ブレスダンが並んでいるのが収穫。「死の喜劇」なんかは、まっとうな幻想モノクロ版画として妖しくイケている。ルドンのブレスダン風の版画が並び、クラヴォーって人の博物画みたいなのが並ぶ。これもルドンが参考にしたようだ。それからルドンの初期の風景画とかが並ぶが別に面白くなくて、ドラクロワの模写があるがドラクロワはもう少しうまかったんじゃなかろうかと思い、おなじみ「黒」の時代に突入。ここは見慣れてるが何度か見ても安定して面白い。「幻視」の目玉やら、「皿の上に」首が乗ってるとか、『エドガー・ポーに』での目玉気球とか。進化論にインスパイアされた『起源』の非科学っぷりが冴えている。生命の誕生から人類の出現までを、科学風の言い回しをいじくってヘンな生物を作り上げる「不格好なポリープは薄笑いを浮かべた醜い一つ目巨人のように岸辺を漂っていた」これはクラゲの幼生ポリープの詩的描写に違いないが、それを言葉通りの絵にする。つまり薄笑いを浮かべた一つ目巨人を描くのだ。万事この調子で、恐らくウニだろう生物が棘付きセイレーンになっていたりする。それからおなじみ「蜘蛛」があり、魚の体に人間の頭を付けたヤツとか、頭を持たない目とか、モンスター多数。でもグロくてキモいというよりモノクロで品がいいもんで、割とサクッと見れてしまう。

その後、色つきの絵が並ぶのだが、どうもイマイチ感が拭えない。なぜだ? 黒の時代が優れているからか? いやいや、これは描き方のベクトルがずいぶん違うので、黒と同じ調子で見ると何じゃこりゃになってしまう。黒の時代は形体やイメージが明確だったが、色彩時代は形体よりも色の調和に比重がかかっているので、抽象画を見るモードに変えなきゃならん。「何が描いてあるか」ではなく「何を感じるか」なんだ。その例として、「アポロンの戦車」と「アポロンの馬車」では、現実的色彩の「馬車」の方が先に描いたものなのね、「戦車」における空に飛び立つ馬は妙な色彩と形体なんだけど、馬という象徴のオブジェだと考え、全体を見てみれば、ふむ、こっちの方が絵としてよく見えないかね? こういう目で見ると、色彩時代も悪くないだろ。「オルフェウスの死」とか。あと「眼を閉じて」はいいマチエールをしているな。

思いのほか出店数が多いぞ。
http://www.sompo-japan.co.jp/museum/exevit/index_redon.html

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