« 浮世絵 Floating World-珠玉の斎藤コレクション(三菱一号館美術館) | トップページ | 谷文晁(サントリー美術館) »

2013年7月 6日 (土)

「LOVE展」(森美術館)

「愛」だよ「愛」! 十周年記念だからといって、こういうテーマでは、まかり間違えるとクソみたいな企画になりかねない。そして、その危惧が当たったところもある。期間も長いし、物量質ともに充実している。各作品のテーマはどれも愛に関するものだ。しかし、だからといって見えてくるのは小賢しい企画者のドヤ顔と、各作品に対する「愛」の無さだ。そう「愛」がテーマでありながら、ここには愛が無いのさ!
ところで入口がえらい混んでいる。何かと思ったら「ハリー・ポッター展」をやってるのね。

入るとまずデミアン・ハースト。ハートだけど蝶の死骸を使う毒はちょっといい。ジェフ・クーンズのデカいハートはまるでバブルだな。ロバート・インディアナの「Love」は定番。澤柳英行のインスタレーションは一発芸みたいで見事だ。西山美なコ「ザ・ピんくはうす」……うーん、こういう安っぽい路線をあえてやりました、みたいなのはよく見る。えー、次に4人ぐらいのコラボで、言葉を言うと、それをタイトルにした「愛の歌」を歌ってくれる機械がある。音声合成や人工知能を使ってるんだ。面白いけど……歌ってくれるテキストはイマイチだ。

次、マグリットやら、キリコの絵が並ぶ。ちょっと変わったところでピカビア。いずれもカップルの絵な。プランクーシのおなじみ「接吻」も、ロダンの「接吻」もあるぜ。シャガールのカップルもある。ここにカップルで来れば、お互いの距離がググっと縮まりますぜ……って言ってもらいたいんだろうなあ。次に杉本博司の文楽の写真とかあるが、よく分からん。チャン・エンツーって人の汚い刺繍があり、ナン・ゴールディンって人の写真と、荒木経惟の新婚旅行だかの写真があり、なんか源氏物語の模写があり、その奥に江戸浮世絵の春画コーナーがある。十八禁。……やりたいことは分かるんよ。んじゃ、ここで一つ性愛をテーマに何か一発。そうだ春画だ。春画はそこらのエロイラストと違って美術品としても重要じゃけんのう……ってなところだ。でも愛をテーマにした浮世絵は春画じゃなくたってあるだろう。なぜ浮世絵イコール春画なんだよ。てめーら江戸浮世絵に対する「愛」はあるのかーっ! いや、春画がいかんと言ってんじゃなくて、イコールこれ、みたいな扱いがムカつくんじゃ。それにしても金箔とか使ってて、豪華に作ってるな春画は。

次の部屋、ソフィ・カル「どうか元気で」。あーなんか疲れてきたよ。ここで唐突にジョン・エヴァレット・ミレイ「声を聞かせて」。周囲が騒々しい上に、トレイシー・エミンのネオン作品の光がじゃまするため、およそ鑑賞環境じゃない。要するに「ここでミレイを出しちゃうなんてオレってセンスいい~」とかいうイヤらしいドヤ顔しか見えてこない。あのオフィーリアを描いたミレイだぞ。貴様ミレイに対する「愛」はあるのかーっ! アーデル・アービーディーン「愛を確実にする52の方法」。なんだ普通しゃべってるだけかよ。もう一ひねりしてくれ。

家族愛のコーナー。我がフリーダ・カーロが出ている。家系図の下に描いてあるのは「青い家」だ。行ったぞ。キリコにホックニー。唐突にコンスタブル。写真がいろいろ。浅田政志の浅田家シリーズ面白いですな。しかし次の折元立身の作品で少なからず衝撃を受ける。顔にパンを巻いてパフォーマンスする「パン人間」は何となく知っていたが、ちゃんと見てなかった。「アート・ママ+パン人間 息子」ということで母親と競演している写真。しかしこの母親アルツハイマーと鬱だそうだ。衝撃を受けたのは「ヴェートーベン・ママ」である。折元がヴェートーベンの「運命」を口ずさみながら、アルツな母親の頭をモシャモシャいじる、というのを延々やっている。もちろん要介護なのだ。若い人にはこれが面白パフォーマンスぐらいにしか見えないであろう。現に笑っているだけの人もいたしな。でもこっちは、いつ自分が介護する側にならんとも限らん年齢である。狂気をはらんでこそアーティスト。しかし愛する者が生活に支障が出るほど狂気に落ちたら、こっちは狂気でいられない。常に正気を保って日常を過ごすしかない。しかし、自らの狂気を封じられることは表現者として極めて恐ろしい状態だ。かくして、恐怖からの脱出を目指し、狂気に狂気をぶつける折元のパフォーマンスが始まる。若くない者は、この心の叫びを聞くがよい。これは叫びだ。これは母親に対する愛ではない。芸術とそして自分に対する愛といえる。

ローリー・シモンズの、秋葉でゲットしたラブドールを着飾った写真。よくできてるなおい。ジョンとヨーコの平和活動とか、唐突にダリとか。梅沢和木ってカイカイキキの一派かと思ったらカオスラウンジか。うん、よく見分けがつかん。それから、なんか染めた布があったがよく覚えておらぬ。終盤、草間彌生の部屋がある。作品「愛が呼んでいる」……おなじみ水玉のオブジェが灯る部屋。ここは写真オッケーだから記念に撮ってね……ってちょっと待ったぁ! 草間の声で詩の朗読が流れているではないか。それも死を前にした愛についてだ。写真撮ってないでみんな草間の言葉を聞かんかい! ここで企画者の「愛」の無さに苛立つ。記念写真コーナーで無音が寂しいならチャラいBGMでも流してりゃいいじゃないか。言葉を届けたかったら写真なんかアウトにしろよ。つまりこうだ「詩は聞きたい人は聞けば」そう、企画者にとって草間の言葉なんてその程度なんだ。客寄せの水玉がありゃいいんだよ。てめーら草間作品に対する「愛」が無いんだよ「愛」が!

最後から2番目の部屋にChim↑Pom「気合い100連発」あとなんだ、忘れた。そして最後の部屋は「初音ミク」コンサートの様子とか。うーん……かつてヴォーカロイドを使っていた身からすると、デビュー当時を知っていたアーティストがビッグになっちゃった感じ。それにしてもオレは人間がもう古くなっちまったのか、ノリ切れないのだよ。あれは「ヴォーカルを聴く」というものじゃなくて、ヴィジュアルとネットでの繋がりと発展と云々を楽しむというものなんだろうけど……どうもあの声と存在を「鑑賞」できない。でもまあ電通も成し得なかったヴァーチャルで唯一成功したアイドルだ。今なら展望台にミクカフェもあるぞ。

そんなわけで、まあ鑑賞ではなく「愛」をダシにノリにいくことだ。カップルも多かったしな。
http://www.mori.art.museum/contents/love/index.html

|

« 浮世絵 Floating World-珠玉の斎藤コレクション(三菱一号館美術館) | トップページ | 谷文晁(サントリー美術館) »