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2013年7月25日 (木)

福田美蘭展(東京都美術館)

おお、あの福田美蘭をまとめて見る機会が来ようとは。トリックアートのような作品を描くグラフィックデザイナーとして有名な福田繁雄の娘。父親譲りのユーモアセンスと、和洋画をこなし、具象から抽象までイケる実力と、社会的な視点も手がける。うむ、分かりやすい。面白い。素晴らしい……うーん、しかしなんとなくイマイチ感があるのはなぜだ? まあ多分好みの問題で、ほとんどがサブカルチャーというか、元ネタをいじって作品にしているからだろうなあ。オレはあまり二次創作みたいなのは好きじゃないんよ。逆にオレの好きじゃない二次創作系で、ここまで楽しませるんだから凄いということじゃ。しょーもないコンセプトも手を抜かず高い技量を駆使して見せるってのも好きだしな。尚、都美の企画展示室ではなく、ギャラリー三つ分を使うのね。そのためか入場料はチョイ安だった。

最初は「日本への眼差し」コーナー。日本画をネタにしている。「湖畔」は黒田清輝の作品の画面外を描くもの。山水画に白雪姫がいたり、日の出の太陽がハートだったり、西洋画の死んだ獣に対抗して死んで浮いた魚の日本画を描いたり、浮世絵風の画面にちゅどーんみたいなマンガ表現を入れたり、特に面白いと思ったのは、鑑賞だけを許された着物「志村ふくみ《聖堂》」を、やっぱり着物は着なきゃあねってんで、それを着た自画像を描く。いいね。あとは象牙でできたファストフードのマドラーとか、企業ロゴがいくつも描いてある風景とか、扇をレイアウトしたのでよく見る「扇面流図」を広告団扇でやるとか、商業世界をテーマにした作品も面白いぞ。

「現実への眼差し」コーナーでは国際あるいは社会事件をテーマにしたものが並ぶ。ここで何があったか書いちゃうと実際に見た時のインパクトが減るかな。サリン事件の写真をメトロカードにするとか、きれいなハンカチの中心に「O-157」と書いてあるとか。そういえば、ほとんどの作品に解説があって、意図が分かるようになっている。普通の美術作品とちょっと違うのは、意図を分かってナンボのものというのがほとんど。そして作品を見ただけで意図が分かるのは結構少ないかもしれない。うーん、そこがね……そういうものなんだけど、イマイチ感のもとかもしれない。このコーナーで最もインパクトがあったのは「噴火後の富士」これも解説を読めば分かるのだが、いかに自分達が……か実感できるのだ(なんか書かない方がいい思うので。ぜひ現地で見られたい)。

「西洋への眼差し」コーナー。割とおなじみの福田美蘭作品がこのあたり。宗教画などにいきなりティッシュだのティーバッグだの持ち込んだり、絵を折り畳めるようにしたり、冷蔵庫の中に描いてみたり、モナリザのモデル休息中とか、遊び心満載だ。「床に置く絵」というのがあって、床に置いてあって歩いていいと書いてはあるが、すさまじく躊躇してしまう(結局歩けなかった)。美術品は触れないもの、ましてや上など歩けないという刷り込みの大きさに自分で驚いちゃうぞ。「毎日新聞2000年4月30日」フェルメールの青ターバン来日時の記事(絵が映っている)を拡大コピーして、絵のところをきれいに仕上げる。新聞記事に載っている絵は本物なのに、ここにあるのは複製画という面白コンセプト。「カラヴァッジョ”果物かご”」はCMYKの一色分が額ごとボロッと外れてしまっている。このセンスはちょっと父親似かな。セザンヌ「リンゴとオレンジ」に添削したのにも再会。初めて見た時は、まだセザンヌの良さが分からない頃だった……ううむ、きりがないな。一番面白かったのは、「レンブラント-パレットを持つ自画像」元絵の背景に描いてある二つの円が実は……ええええっ! という面白作品。何かは書かないから現地で見てね。

「今日を生きる眼差し」コーナー。宗教画などの動きを連続させて描いちゃう未来派みたいなことをしている作品とか。祖父の童画を使った「涅槃図」はちょっと感動的。「風神雷神図」はあの絵の印象を抽象化させようとした作品……だけどちょっとうまくいってないかな。ここでの圧巻は東日本大震災をテーマにした四季作品。春の新聞の見出し、夏の海底のアサリ、秋の悲母観音と冬のゴッホ風の花が泣かせる。どれもコンセプトが書いてあるので、理解はしやすいはずだ。

普通の美術鑑賞とはちょっと違う、解説も作品のうちで、それを読みつつ楽しむという感じだ。大いにおすすめはできる。
http://www.tobikan.jp/museum/2013/2013_fukudamiran.html

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