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2013年9月27日 (金)

モローとルオー(パナソニック汐留ミュージアム)

またパナのルオーコレクションばかりかと、実はそんなに期待してなかったのだが、これがかなりよかった。最近行く先々、地味に当たりが続くぜっ。

何しろ、出だしの若きルオー「自画像」これが、おおっ! な感じ。木炭メインでモノクロだったが、うまい。他にも「ヨブ」なんかも、おなじみのルオー節とは全く違う。こんな風にも描けたのか。ルオーはモローの教え子の一人で、優秀だったし熱い師弟関係があったそうな。「死せるキリストとその死を悼む聖女たち」なんかはモロー風。「人物のいる風景」も凄いですな。木炭とパステルだけで描かれたモノクロだが、コローみたい、というか静かで深い風景。油彩では「石臼を回すサムソン」がモロー風の傑作。これについては習作もいくつか出ている。これらはなんかモローに勧められてコンクールに出したものとか何とか書いてあったがメモってねえ。

モローは油彩「ユピテルとセメレ」がいい。何がいいって……裸女がいいよな。いや、優美にしてなんか着てないのが普通みたいな感じがするしな。しかしどうも、モローって雑な絵も多いのね。いや、緻密なのはマジ絶品なんだけど、結構雑な感じのままでも完成にしちゃうのかね。いや、マティスなんかが好きな君は(マティスもモローの教え子でしたな)、色彩だけキマっていれば満足かも知れないが、オレはどうも、線がザザッとしたままで顔がぐちゃっとなってるのとか好みじゃないんよ。そういう意味だと裸体画の「メッサリーナ」とか「ピエタ」とか「油彩下絵」いくつかとか……あかん。顔がこれじゃあかん。むしろ人物が目立たないで風景メインの「ゴルゴタの丘のマグダラのマリア」や「トミュリスよキュロスまたはトミュリス女王」は雰囲気を楽しめるから見れる。あと、ドン・キホーテの絵があるじゃん、と思ったらモローの「パルクと死の天使」ですって。

一方ルオーは、途中からはおなじみルオー節「聖顔」「我らがジャンヌ」など、こういう印象のはもう飽きるほど見てしまったが、もちろん見てない人は見た方がいいよ。

4K映像の「国立ギュスターヴ・モロー・美術館」がある。パリにあるのだ。ドヤ顔で書かせていただくが、オレは現地に行ったことがあるんだぜっ……うむ、映像きれいだな。現地はもっと暗かったと記憶しているが。あと、絵画の映像ヤベエな。所詮映像だとバカにできない密度があるぞ。

それから油彩の特集。モローの「ピエタ」は……傑作だがどこかで見たぞ。「一角獣」これは裸女だしイメージも割と明確でオレが見たいモローに近い。ちなみにモローが一角獣を描くようになったのは、例の十五世紀のタピスリー「貴婦人と一角獣を見たからだって。「ヘラクレスとレルネのヒュドラ」これも油彩の傑作。なんたってヒュドラがうまくてキモいぞ。「セイレーンたち」は雑系だけど、風景の雰囲気がいいもんでそんな気にならない。「聖セバスティアヌスと天使」は小さいけど見事。それからルオーが何点か出ているが、うん、いつものやつだから、ちゃんと見てないや。

途中に往復書簡が紹介されてるが、LEDの面発光を使っていて大変きれいだ。さすが電機メーカー。

とにかくルオーの初期とモローの油彩で十分イケる。行くべし。
http://panasonic.co.jp/es/museum/exhibition/13/130907/

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2013年9月22日 (日)

宮芳平展(練馬区立美術館)

森鴎外の短編小説「天龍」の主人公「M君」のモデル。ただ、美術教師として生涯を過ごしたもので、ほぼ無名なんだそうです。しかし、あえてこの「目が高い」練馬区美術館が企画するんだから、やっぱりそれなりの理由がある。

解説を読むと、村山槐多なんかと交流があったとか何とかで、そう見ると出だしの「庭の花々」なんか槐多っぽい、ただ槐多みたいな情念にまみれた感じじゃなくて、ソフトな感じ(?)。応募したが落選し、落選の理由を審査長だかの森鴎外に聞きに行って、交流のきっかけになった「椿(旧題「愛」)」も出ている。これは大きな力作だけど、惜しいことにライティングのせいで画面のほとんどが反射面になっている。「ガウンをまとった女」や「歌」など画面が暗いのね。作風は点描っぽいから後期印象派か。「ドント・オープン」というのはきっちりパターンが見える。これは結構明るい。「風景(原っぱ)」は点描きっちりの新印象主義でこれも明るい。あと象徴主義っぽい「意味ありげな感じ」の絵もあるぞ。「聖夜」2つ。「無題」という男女(アダムとイヴ?)が、塔みたいなのを見上げているのも面白い……はて? これどこかで見たな……前にもここでやったような気がするぞ宮芳平(※2011年にやって行ってた)。ただ、ここまでで、手堅くはあるが、そう面白いものではない。しかしお楽しみはこれからなのだ。

上の階に行き、まずペン画の作品群。絵葉書用だったが、結局は絵葉書にならなかったそうな。印刷コストを節約できるようにペンのパターンで濃淡を描いたという努力……あと画題がね、そうかこれが彼がウケると思って描いてたもんなのね。まあ、彼が好きだった竹久夢二みたいな感じ。それからまた油彩になるが、描画か荒くフォーヴみたいになってくる。「山」「茜さす山」とか、少し離れないと何描いてあるかよく分からない。次の部屋に行っても山々とか静物のフォーヴ風(原色ではない)が続く。うーん、あまりおもろないなあと思っていると「海 その1」「海 その2」これが結構いい。木とか山など、対象物があるよりも、むしろ無いところに何かを描いていく方がイケる。ここで鑑賞モードを「抽象」に切り替えると、新しい絵の魅力が立ち上がってきて、むしろ分かりやすくなる。「きざはし」なんていうのも、抽象画のようにゲシュタルトを壊して印象だけをボケーっと見るとよい……ん、待て今面白いこと書いたぞ。抽象画は対象物のゲシュタルトを壊して見るべきものだ。それが「抽象」モードだ。おお、そうだったのか。「富士」も半抽象でどこかディープだ。しかし、おたのしみはまだまだだ。

聖地巡礼の旅に出て、キリスト教的な絵画を多く描いた。それが展示されている。これがいい。フォーヴな感じで。待てよ、フォーヴ+キリスト教……うむ、これはルオーではないか。そう、ルオーに近いものがあるが、色遣いも描画もルオーとは違う。ここらへん、ルオーを多く見て親しんでいる人ほど、ここで受けるインパクトは大きいだろう。ルオーと並べて見た~い。宗教性を帯びると、絵はひと味違うし、深い。よって、そのあとの「太陽 その1」「太陽 その2」「白い太陽」「黒い太陽(絶筆)」なんてもの、意味深いものに見えてくる。

空いているから五百円でじっくり楽しめる。ルオー好きなら行きだ。あと時々書いてある彼のポエムはなかなかナイスだ。
http://www.city.nerima.tokyo.jp/manabu/bunka/museum/tenrankai/miya13.html

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2013年9月21日 (土)

トスカーナと近代絵画(損保ジャパン)

あんまり期待していなかったんだが、これが意外とよかった。フランス美術なら新古典主義、ロマン主義から印象派、後期印象派と派手に知れ渡っているが、じゃあその間、美術大国のイタリアは何してたんだよ、というのを意外と知らない。君は知っているかい「マッキアイオーリ」を、フランスの印象派と同じ頃、イタリアで起きた現実写生主義で斑点を使って描くんだぜ。それが主に紹介されている。トスカーナっちゅうのは、まあフィレンツェだからな。

最初はダヴィッドやアングルの影響を受けたロマン主義……ってなんやねん。えー。ドラマチックな一場面みたいなやつ。展示の中ではアンドレア・ビエリーニの「煉獄におけるダンテとベアトリーチェの出会い」がいいね。ルネサンス前の宗教画みたいな雰囲気だけど、描画が当世風で、なんか面白いだろ?

それからいよいよマッキアイオーリ絵画の登場……で、その巨匠のジョヴァンニ・ファットーリ「従姉妹アルジアの肖像」が今回の目玉……いや、これはマッキアイオーリって感じじゃなくて、写実っぽくきっちり描いてあるんだが、小さいながら、かなり凄い。うむっ、一見男だし、フェルメールほど光オタを感じさせないが、存在感では青ターバンに負けてないぞ。この絵はチラシやポスターにもなってて、それで見ると「なにこれ? これが今回の目玉?」って感じの地味さなんだけど、本物はかなり印象が違う。目の光の点々とかも見事なんだ。現場に行けば、なぜこれが広告に使われたか分かるであろう。

さてこのマッキアイオーリなんだけど、印象派が外光と原色で明るい画面を作ったのに対し、マッキアイオーリってのはあくまで対象物のそのものの色を使うのね。で、太いヤツでペタペタ描いていく。どうなるか? ……暗い。そう、リアルに近いんだけど、全体に暗いんだよね。おおっ、なんじゃこりゃ?って感じで、印象派を見慣れていればいるほどインパクトが大きい。このインパクトを受けるためにわざわざ足を運ぶ価値はある……が、同時に「こりゃ日本の大衆にゃウケないよなあ」という感じもする。印象派は日本の浮世絵の影響を彷彿とさせるのもあるが、マッキアイオーリはやはりイターリア。西洋画の発展系なんだ。テレマコ・シニョリーニの「フィレンツェ旧市街の通り」や「モンマルトル」なんてのも、暗い印象派絵画みたいだし、ジョヴァンニ・ファットーリもいくつも並んでいるが、原色っぽいものはない。

それからトスカーナの一九世紀二十世紀絵画だ。アントニオ・チゼーリ「キリストの埋葬」ううむ、リアルさがすげえな。ルネサンスだな。いやー、初めて聞くような名前だが、イタリアってなんだかんだ美術大国で、無名のヤツでもレベル高いのね(日本で無名なだけかもしれんが)。ウルヴィ・リエージ「ひと気のない通り」うむ、暗いな。アルフレッド・ミュラー「リヴィエーラ海岸」これは妙に明るい。透明感が冴えている絵だ。

次は二十世紀絵画。有名どころのデ・キリコ登場「南イタリアの歌」おなじみマネキンなんだけど描写が柔らか系の珍しい雰囲気だ。フィリッポ・デ・ピシス「グァスコーニャの風景」これがマッキアイオーリの発展系みたいな半抽象んーまあ、根が暗いみたいな。しかしだ、ここでスゲエのがいるんだアルベルト・サヴィニオ「オルフェウスとエウリュディケ」。誰だ? なんとデ・キリコの弟だって。キリコが兄弟で絵を描いてたなんて知らなかった。で、この絵がなかなか面白い。色がちょい妙だし、左の男(オルフェウスか?)がロックンローラーみたいな雰囲気だ。やるじゃんキリコの弟。

そんなわけで、この企画は来年群馬と鳥取に巡回するんだって。そこではもう少し多く出るようだ……多く出るんかい! しかし行って損は無い。空いてるから穴場だぞ穴場!
http://www.sompo-japan.co.jp/museum/exevit/index.html

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2013年9月14日 (土)

竹内栖鳳展(国立近代美術館)

Say! Ho!な感じで(何だ?)行ってみた土曜の午後。結構混んでるじゃん。わし、あんまりこの人のこと知らんのよ。名前はよく聞くけど。京都の四条派とか狩野派とかの技法を吸収し、洋画も吸収して、弟子に土田麦僊とかが弟子だって。

最初の方に若いころ描いた絵。普通にうまい。「寒林帰牧図」の炭の描線で描かれた木々は新鮮だ。それからいろんな画風をまぜこぜで描いて「鵺派」なんて呼ばれちゃったらしいんだけど、そういう絵……って、実感できねえ。「百騒一睡」がスズメわんさかと、赤塚不二夫じゃなかった丸山応挙風の犬な。なにげに写実重視なもんで、「観花」は正確な骸骨を使って描いた。「獅子」は普通にライオン。「虎。獅子図」も虎がリアルな写実風。いや、この虎はマジいいな。「象図」これも結構すげえ。描線と濃淡で強力に描かれた象だぞう。これらは金地に墨で描かれているんで、結構な迫力なのね。それから染色のコーナーとやらがあり、「ベニスの月」これがビロード友禅だとかで、いやそれよりこの洋画風の表現がイケる。

それから人物があり名作「絵になる最初」これは裸婦モデルが脱ぐ時の恥じらう一瞬を描いたんだ。だから裸婦じゃないんだけど……しかしいいのかYoこういうの描いて。解説に名作「アレ夕立に」と関係あるとかないとか描かれるが、その「アレ夕立に」は10/8-14にしか出ないんだって……ってこんだけ解説で煽っといて期間限定でしか出てないのかよ。それから「喜雀図」は金地に、雀が点々と描かれる。ここでなぜか、全然関係ないけど、フランシズベーコンとか思い出しちゃった。地のきれいきれいなところに、何か生々しいもんをボトッと配置して目と意識を惹くのがベーコン流。ちょっと似てるだろ。同じく「蹴合」というあ軍鶏バトルもなかなかいい。軍鶏ってのがなんか絵になる鳥だよな。

それから旅もの。「羅馬古城図」これローマなのね。「羅馬之図」も。西洋風景を日本画技法で。なかなかいいだろ。「千山万?之図」これは山水画……うーむ、山水はアウェーだ。よさがちょっと分からん。
それから最後いろいろ。「蛙と蜻蛉」ううむ、蛙なら河鍋暁斎ぐらい生き生きしてほしい。「爐邊」(『ろべ』だって読めんわい)は応挙犬。「夏鹿」はバンビだな。「二龍争珠」は、一応龍が二匹争っているようだが、むしろこれは抽象画モードで鑑賞した方がいい。最後の方の「渓流(未完)」もそうですな。

えーと、あれ、ポスターチラシにデカく出ている「斑猫」がおらんぞ。なんとこれ9/25-10/14だけ出るんだと。ケチだなあ所有者の山種よ、期間中ずっと貸してくれよ……っていうか、そういう期間限定をチラシにデカく使うのはいかがなものか。展示期間書いとけよ……と思ったら裏にマメツブみたいな字で書いてあったよーん。ふん、どーせおめーらは前期も後期も行けるリッチマンだから問題ねーんだろ。こっちは時間も金もねーんだよコンチクショー。
http://seiho2013.jp/

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2013年9月 8日 (日)

ミケランジェロ展(国立西洋美術館)

えーあの大ミケランジェロでどんだけのもんが来るのよ。と、さほど期待はできないししてないが、でもミケちゃんだから行ってきた……まあ、あんなもんだろ、という内容でしたな。

最初に誰かさんの描いたミケランジェロの肖像。それから何か記念品みたいなヤツがいくつかあり、ミケランジェロの「食べ物のスケッチと3種のメニュー」っていう食ったものメモみたいなのがあり、ミケから誰それさんへの手紙があったりして、なんだかどうでもええなあ……で、ここで目玉の一つ「レダの頭部習作」ふむふむ、まあこれはそこそこの、リアルさが光る逸品と言ってもいい感じ。これをもって「これええやん、ミケランジェロ展イケますやん」と企画者が言ったかどうか知らんが、そのくらいのもんではある。まあ、所詮習作なんだけどな。隣に誰かが描いた模写というか油彩カラーの「レダと白鳥」があるけど、比較するとやっぱ顔がうまくねえな、ミケうめえよなとか感じちゃう。

えーそれからシスティーナ礼拝堂の天井画の、習作の習作の習作みたいなゴミ箱に入ってそうなメモが何点も出てまんねん。いや、そりゃあさ「大天才の創作のプロセスを垣間見る」とかいう言葉を添えりゃあそこそこ見れるんだろうけどさ……「ああこれって素晴らしい!」と感じるほどオレはおめでたくねえよ。それから印刷の悪いカラーコピーが……えっ? リストを見たら模写か? 分からんちゃんと見てなかった。それから模写したモノクロ版画。まあ、これは一応デキはいいよ。

地下に行って、ここに陶器での複製でおなじみの大塚国際美術館(一度は行きたいねえ)にあるシスティーナルームの原寸大複製から一枚。うおおデカい……すげえな。これはバチカンで本物を全部見たら失神しちまうな。隣の映像コーナーではシスティーナの4Kカメラで撮った映像。あー今回これが一番よかったね。きれいだじょ。でも4Kで映し出すのは9月13日からで、それまでハイビジョンに変換した映像だって……って、間に合わせろよバカヤロー! まあハイビジョンでもきれいだったけどな。

えー上に行って建築図面とか(なんかどうでもいいや)。最終章は「ミケランジェロと人体」というコーナー。ここで15歳で作成した「階段の聖母」という浮き彫り……ごめん、なんか普通だわ。当時としては何か画期的なのかもしれんが。それから「最後に残したかったもの」ということで、ものは言い様だけどな、晩年の彫刻作品「キリストの磔刑」ううむ、未完成な上に小さいもんで、これ見て何かを感じてくれってのは無理があるんでないか。それから最後が「クレオパトラ」という肖像の習作か、これ裏にも絵があったって新発見! ……見ると確かにある、あるってだけの顔の絵な。あーこれ失敗しちゃったからこっちにクレオパトラでも描くかあ……みたいな。

こないだのラファエロやダ・ビンチの展示レベルにも行ってない。まあミケランジェロならこれが限度か。がんばっている美術館の人を応援したい人は行ってみて。あと4K映像でも見て楽しんでくれ。あー、あと常設のコルビュジェ特集はなかなかいいぞ。
http://www.tbs.co.jp/michelangelo2013/

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