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2013年9月22日 (日)

宮芳平展(練馬区立美術館)

森鴎外の短編小説「天龍」の主人公「M君」のモデル。ただ、美術教師として生涯を過ごしたもので、ほぼ無名なんだそうです。しかし、あえてこの「目が高い」練馬区美術館が企画するんだから、やっぱりそれなりの理由がある。

解説を読むと、村山槐多なんかと交流があったとか何とかで、そう見ると出だしの「庭の花々」なんか槐多っぽい、ただ槐多みたいな情念にまみれた感じじゃなくて、ソフトな感じ(?)。応募したが落選し、落選の理由を審査長だかの森鴎外に聞きに行って、交流のきっかけになった「椿(旧題「愛」)」も出ている。これは大きな力作だけど、惜しいことにライティングのせいで画面のほとんどが反射面になっている。「ガウンをまとった女」や「歌」など画面が暗いのね。作風は点描っぽいから後期印象派か。「ドント・オープン」というのはきっちりパターンが見える。これは結構明るい。「風景(原っぱ)」は点描きっちりの新印象主義でこれも明るい。あと象徴主義っぽい「意味ありげな感じ」の絵もあるぞ。「聖夜」2つ。「無題」という男女(アダムとイヴ?)が、塔みたいなのを見上げているのも面白い……はて? これどこかで見たな……前にもここでやったような気がするぞ宮芳平(※2011年にやって行ってた)。ただ、ここまでで、手堅くはあるが、そう面白いものではない。しかしお楽しみはこれからなのだ。

上の階に行き、まずペン画の作品群。絵葉書用だったが、結局は絵葉書にならなかったそうな。印刷コストを節約できるようにペンのパターンで濃淡を描いたという努力……あと画題がね、そうかこれが彼がウケると思って描いてたもんなのね。まあ、彼が好きだった竹久夢二みたいな感じ。それからまた油彩になるが、描画か荒くフォーヴみたいになってくる。「山」「茜さす山」とか、少し離れないと何描いてあるかよく分からない。次の部屋に行っても山々とか静物のフォーヴ風(原色ではない)が続く。うーん、あまりおもろないなあと思っていると「海 その1」「海 その2」これが結構いい。木とか山など、対象物があるよりも、むしろ無いところに何かを描いていく方がイケる。ここで鑑賞モードを「抽象」に切り替えると、新しい絵の魅力が立ち上がってきて、むしろ分かりやすくなる。「きざはし」なんていうのも、抽象画のようにゲシュタルトを壊して印象だけをボケーっと見るとよい……ん、待て今面白いこと書いたぞ。抽象画は対象物のゲシュタルトを壊して見るべきものだ。それが「抽象」モードだ。おお、そうだったのか。「富士」も半抽象でどこかディープだ。しかし、おたのしみはまだまだだ。

聖地巡礼の旅に出て、キリスト教的な絵画を多く描いた。それが展示されている。これがいい。フォーヴな感じで。待てよ、フォーヴ+キリスト教……うむ、これはルオーではないか。そう、ルオーに近いものがあるが、色遣いも描画もルオーとは違う。ここらへん、ルオーを多く見て親しんでいる人ほど、ここで受けるインパクトは大きいだろう。ルオーと並べて見た~い。宗教性を帯びると、絵はひと味違うし、深い。よって、そのあとの「太陽 その1」「太陽 その2」「白い太陽」「黒い太陽(絶筆)」なんてもの、意味深いものに見えてくる。

空いているから五百円でじっくり楽しめる。ルオー好きなら行きだ。あと時々書いてある彼のポエムはなかなかナイスだ。
http://www.city.nerima.tokyo.jp/manabu/bunka/museum/tenrankai/miya13.html

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