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2013年11月22日 (金)

カイユボット展(ブリヂストン美術館)

当日券1500円という強気の価格設定。カイユボットって、オレも名前ぐらいっきゃ知らなかったし、印象派はなんかもう飽きてきたんで、さほど期待せずに行ってみたのだ。うん、そうね、悪くないよ。印象派が好きなら行った方がいい。

最初は自画像とかでね、横向いてるやつとか、よくここで見るセザンヌの絵が混ざってたりする。ここではまず「昼食」ガラス器の描き方うめえな。それから「ポール・ユゴーの肖像」はマネみたいな感じですな、ってそのマネの絵が隣にあったり。「ジョルジュ・ロマンの肖像」なんかの部屋が寒色で暗い感じがいい。そう、クールな感じかな。「室内-読む女性」なんぞを見ると、結構写実っぽい描き方もできる。

それから近代パリの風景。ここはまあ、ああパリだな、程度。でも「ペピニエールの兵舎」なんかの明るい街角の描写を見ると、ああ印象派だなと思う。それより出品リストの字が見づらい。なんかもうローガンなんよ。ショックだじぇ。

次の部屋の「イエール、ノルマンディー、プティ・ジュヌヴィリエ」が正統派印象派の本領発揮。まさに外光。マグロワール親父の絵2枚(タイトルが長くて書き写すの面倒)は日当たりがいい。「ペリソワール」という一人乗りボートの絵は、水面の光を一筆で見事キメている。色を混ぜないから明るく澄んだ光になる。「ジュヌヴィリエの平野」3つは、これぞ印象派、一面の花びらを原色の黄色で鮮やかに描く。「向日葵、プティ・ジュヌヴィリエの庭」も向日葵の花びらの鮮やかなる黄色い花びら。他の部分は割と写実っぽく描いているので、花びらが生き生き輝くのさ。まさに印象派好きが飛びつきそうな絵だ。

次のコーナーが資料展示というか、近代パリの地図が床に描いてあって、どこで何が行われたか(印象派展とか)をタブレットで解説。うむハイテクだ。それよりこのコーナー、群れで来てるヤツラのパリ話がうぜーんだよっ! 俺だってまたパリに行きたいけど行けないんだぞっ。そういえば、弟のマルシャル・カイユボットが撮った写真がかなり並んでいる。うん、写真はアゥエーだからほとんど見てないんだが。

次の部屋にセーヌ川辺を描いたもの3つ。これも素晴らしい。印象派のお手本のような絵だな。そうえいばカイユボットは印象派コレクターでもあったんで、印象派が何なのかは十分わかっているのだな。次の「静物画」のコーナーに進んで、「鶏と猟鶏の陳列」……ちょっとグロいぞ。鶏は羽を全部むしりとられて死んでいるし、骨を出してるヤツもいる。ムゴイ。隣の「猟鳥とレモン」も死んだ鶏でまた羽毛の描画が結構うまかったりする。最後の「ひな菊の花壇」は装飾ものだが、見事だ。これも白い花びらがいい。

印象派ってなんだ? という疑問の人も行ってよし。
http://www.bridgestone-museum.gr.jp/

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2013年11月 9日 (土)

アンリ・ルソーから始まる―素朴派とアウトサイダーズの世界(世田谷美術館)

明日で終わりなんで、あまりこまごまと書いてもしょーがない。正規の美術教育を受けていない作者から生まれた優れた作品を「アウトサイダー・アート」(もしくはアールブリュット)と呼ぶ。趣味でやってる独学の日曜画家もそうなんだけど、むしろ精神を病んでいて、病院などで生み出されたパワフルな(マッドな)表現を持つ者に対して言ったりする。というか、そういうのが一番見ていて面白いから。

ルソーは一応日曜画家なのね。ちゃんと仕事も持ってたし、他にも仕事しながらとか、人生の終わり近くになって初めて絵画作品を残し始めた人、なんてのも紹介されていた。

日曜画家は「素朴派」なんて呼ばれているが、これにゃ注意が必要で、決して素朴な印象を与えている絵を描いているわけではない。それだけじゃ後世に残りませんや。ルソーは確かに、遠近とか人の大きさとかが適当で狂っていたりするが、絵が持っている印象はかなり「超現実絵画」なんかに近い。あと今回、カミーユ・ボンボワもよかった。デブ専みたいな絵しか見たことなかったんだが、風景、光と影の表現が結構うまいと知る。ルイ・ヴィヴァンはやっぱりダメだ。空ぐらいしか褒めるところが無いや。あと英国のチャーチル首相も、政界引退後に絵を描いてたって。日本の細川護煕もそうでしたな。それから人生終盤で絵筆を取った人達。おなじみグランマ・モーゼスとか、60,70歳で初めてなんて当たり前。中には85歳で絵を描き始めたとかいる。ビル・トレイラーって人だって。しかし見てると結構みんな長生きしとるね93歳とか、95歳とか。やっぱり描かなきゃいかんという情熱が寿命を延ばすんだな。北斎も90歳ぐらいまで行ったしね。しかしここの一番の山場は、「絵にして伝えたい 久永 強」戦争に行き、終戦後カメラの修理などをやっていたが、香月泰男のシベリア抑留の絵を見て、自分も描き残さねばならないと思い立ち、40数点残したうちの30点が出ていた。文章と共に展示される作品群は切実にして悲壮。もう絵がうまいとかどうとかは問題ではなくなってくる……というのも美術鑑賞的にどうなのよという問題はあるんだが。

バスキアみたいなのがあるなと思ったらバスキアだった。それからシュルレアリスム関係。マッジ・ギルというアウトサイダーの巨匠の作品。トランス状態で描かれたんだって。あと草間彌生なんかも出ていた。あとはよくある精神病系。グギングという精神病院の中にあって、アートの才能を持つも者を自立させる施設とそこのアーティストの紹介。

そうえいばこういう場所に必ず出てくるヘンリー・ダーガーがいなかった。まとまってコレクションされてしまったか、あるいはもはやおなじみになってしまったからか。
http://www.setagayaartmuseum.or.jp/exhibition/exhibition.html

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2013年11月 2日 (土)

バルビゾンへの道(Bunkamura ザ・ミュージアム)

これは山寺の後藤美術館コレクション展なのだ。なもんで「バルビゾン」なるタイトルを真に受けて風景画がたっぷり見れるかと思ったら間違い。バルビゾン派のごとき風景画はあまりない。そこに至る……というか無理矢理「至る」ことにされちゃったアカデミック宗教画や肖像画や静物画が並ぶ。しかし私的にはむしろそっちの方が面白かった。

最初は「神話・聖書・文学」コーナー。ムリーリョの「悲しみの聖母」がかなりいい。あの「無原罪の御宿り」のムリーリョだもんな。しかしあまりにいいんで、これはここにあるのは間違っている。教会にあるべきものだと思ってしまうな。ロココ三人衆の一人ブーシェ「聖ヨセフの夢」ブーシェにしちゃユルさもイマイチかもしれないが、天使がおなごであるぞ。さすがロココ。それからロランみたいな理想風景っぽいのが並ぶが、こうなると先日のターナーがまた見たくなるな。ヤーコブス「ディアナ」出たぜ裸のテーマ。水浴中のディアナ一行を覗くアクタイオンが鹿に変えられるが、そんなのどうでもよくって女神どもの裸描くんじゃ。タッセールって人も「水浴する女たち」なんてのを描いてるが右の女死んどる。アカデミック代表アレクサンドル・カバネル「デスデモーナ」、マネとか印象派どもの引き立て役の「つまらんアカデミック絵画」ではない。ちゃんとグッとくる絵を描いているんだぞ。女がこっちを見てる。

「美しさと威厳」のコーナー。肖像画がずらっと並ぶが。肖像画って、そんなおもろないのね。ペクリュってヤツの「貴婦人と犬」の銀の衣装が面白いな。エヴァレット・ミレイがあるぞ「クラリッサ」なんだミレイにしちゃヘタだな……と思ったがどうもこれモデルが悪いらしい。ちゃんと描いてるよ。カバネル「エコーの声を聞く」アカデミックをバカにすんなよ。コンスタブル「少女と鳩(グルーズの模写)」女の子の絵や。コンスタブルらしくないがうめえじゃん。でも本人はこの画風嫌だったらしい。しかしこれどこかで見たな。ブーグロー「愛しの小鳥」これも再会だな。ヒックス「孤児」。貧しい姉妹で姉が病気の妹をだっこしている。しかし……なんか孤児萌えってあるんじゃないか。貧乏な風采のかわいい子描いて萌えちゃうヤツ。パリエイのキレイキレイな「夜会」とは再会。ううむ、再会が多いんだがいつどこで見たんだろう……

「風景と日々の営み」コーナー。やっとバルビゾンに至るような至ったようなところの風景画。ロイスダール「小川と森の風景」は安定。ミレー「庭にて」イマイチ。コローもそんないいのがない「サン=ニコラ=レ=ザラスの川辺」が及第ぐらいか。バルビゾンおやじのテオドール・ルソー「ノルマンディーの風景」は普通。デュプレ「月明かりの海」暗くて月をはらんだ雲がいいんだけどライティングがよくない。ううむ、しかし、やはりやってくれるぜクールベさん。「波」おなじみのテーマだが、夕刻の空だよ。そして見よこの何かが潜んでいるかのような暗い海原をそして水平線を。演出も理想化もせずに、自然の脅威を描かんとするクールベさんには毎度脱帽する。もちろん今回この絵がナンバーワンだぜ。あとシャルル=エミール・ジャックとかエメ・ペレって人がミレーのパチモンみたいな絵……いや、もちろんミレーとは一味違うように描こうとしてはいるんだけどさ。

「静物ー見つめる」コーナー。あんまし見るもんがない。何しろ死んだ鳥とかほ乳類とか、狩猟民族じゃないとグッとこないべ。

そんなわけで、バルビゾンとは関係ないところで見るもんがあったりする。面白いと言えば面白い。
http://www.bunkamura.co.jp/museum/exhibition/13_yamadera/index.html

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