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2014年2月26日 (水)

プライベート・ユートピア(東京ステーションギャラリー)

こないだの日曜に行ったのです。ブリティッシュカウンシルのコレクションで、英国の現代美術のいろいろ。いや、そう飛び抜けたもんはないけどいろいろで面白いぞ(そりゃいろいろだからな)。ただ、映像ものも多いんで全部まともに見ると結構時間がかかる。オレはまともに見てないが(……って、こないだからそんなんばっかり)。

3階から始まって2階へと続く。3階で目に付いたのはマーカス・コーツって人のビデオ作品「ヒューマン・レポート」っての。アホ鳥が人間をレポートするってもんで、モンティ・パイソンばりの知的バカ炸裂かと思い激しく期待しちゃったら、うん、結構普通で残念だった。ロジャー・ハイオンズって人の硫酸銅の結晶で固めた花がなかなか面白い。ポール・ノーブルって人の鉛筆画作品。ちょいヒワイでいいね。鉛筆画って時にすごいパワーを持つんだよね。河原温の「浴室シリーズ」を思い出しちゃう。あれに勝てるのはそう無いけどな。

2階に降りて、ジェレミー・デラーって人のビデオ作品でね、女装レスラーのドキュメンタリーがあって、面白いけど全部見る時間がなかった。ポスターになっている宇宙人みたいなのは、ライアン・ガンダーって人の架空の鳥なんだって。遠目ではなんじゃこりゃなんだ。あとマーティン・クリードって人の作品がシンプルながら面白かった。メトロノーム3つが鳴ってるだけなのに、奇妙な印象をも与えてくる。あと、プラストテープを切って重ねて2.5cmのきれいな立方体を作るもの。それからディビッド・シュリグリーって人、「I'M DEAD」のプラカードを持っているのは……おっとこれは現場で出くわした方が面白いぞ。モダンな建物で自動ドアが開かなかった状況の絵や、野獣に出くわしたという人が描いた絵の紹介とか、一コマ漫画として見てもなかなか面白い。あと、終わりの方のウッド&ハリソンのビデオ作品。短くて面白い。オレは時間があまりないから、アートビデオはこうありたいもんだな。

ちょいと楽しい時間を過ごせるぞ。
http://www.ejrcf.or.jp/gallery/exhibition/now.html

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2014年2月23日 (日)

ハイレッド・センター:「直接行動」の軌跡展(松濤美術館)

松濤美術館がリニューアルしたぞっ……といってもエレベータの中ぐらいしか違いが分からんかった。
今回の企画は50年前のアート、ハプニンググループ、「ハイレッド・センター」。名前は聞いてたし、試験に(この場合美術検定だが)出る。メンバーが高松(ハイ)、レッド(赤瀬川)、センター(中西)なんだけどさ、赤瀬川以外思い出せないし、イヤらしいことに試験も赤瀬川以外で出るのね。まあいいや。その活動の紹介(写真とか)であり、イベントで使ったモノが展示されていて、説明も充実してる。うむ素晴らしいな。でもあんまり見てて面白くないのは、やっぱり「現場」じゃないんだよね。こんなに面白いことをやってました、というのを見せられれば見せられるほど、なんかカヤノソト状態になってくる。この企画で心底楽しめるのは同時代体験者か、勉強好きか、チョウチンモチだけであろう。

赤瀬川の有名な1000円札模写も出ている、というかあれはハイレッド・センターでの活動なのか。時々見るドアに影が映っている絵が、高松次郎。そうかそうだったんだ。中西夏之はアルミの洗濯バサミいっぱいの作品。これ、自分の体に付けたりもしている。あと、電車の中で白塗りのパフォーマンスがあったり、帝国ホテルでシェルターの販売をしたり、それで小野洋子が来ていたり、町を掃除したり、屋上から物を落としたり。1000円札裁判の経過があったり……ってのの記録。いずれも面白くてまた現場でないが故に面白くない……だから実はそんなにちゃんと鑑賞してないのじゃ。すまん。

今、目立って「行動」しているグループとしては日本じゃChim↑Pomぐらいだろうか。アレをロクデナシ集団と見る向きも多いようだが、でも世の中にインパクトを与えるべく行動していることには違いない。今回の企画の中に、「敗戦記念晩餐会」の記録があって、誰かが自分の体に焼き印押しちゃうって内容があったんよ。自分の体で二度と消えないものを一イベントのために刻印しちゃう。これがなんかゾクッとするが(まあそう珍しくないのかもしれないが)、そういえばChim↑Pomに、体の上で入れ墨マシンでコックリさんをやって彫っちゃうってのがあったのね。あれを思い出した。

きっと当時も「あいつらはバカタレども」なんて言われていたことは想像できる。しかし同時代体験ってのはすげー貴重なんだから、今時のアーティストでも色々バカにせずに味わっておきたいもんだ。終わったあとで企画展を見て後悔せんようにな。
http://www.shoto-museum.jp/index.html

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2014年2月 9日 (日)

葛飾応為「吉原格子先之図」(太田記念美術館)

北斎の娘で父親譲りの高い画力がありながら、なんと世界で十点ぐらいしか確認されていない、知る人ぞ知る絵師。この応為を全面に出した企画ながら、出ているのは肉筆「吉原格子先之図」と、本となっている「女重宝記」とそのパネル。あとは解説。あとは同時代の他の絵師。さながら「フェルメールと何たら展」で、フェルメールが一点みたいな状態。でも点数からすればフェルメールより少ないし致し方ない。面白いことに、応為が晩年の北斎の代筆をしていた説があり、さながら今流行のゴーストライターだな。

その「吉原格子先之図」であるが、私は何度か見てはいる。夜の光に浮かび上がる遊郭の光景は、後の清親あたりの光線画を彷彿とさせ、同時代からの抜きん出ている印象があり、企画として一点押し「できる」完成度だ。見たことない人は、このフェルメールばりの光のこだわりを見るとよい。

他の絵師の作品は、この「吉原格子先之図」のエッセンスを分類して、それに合わせたセレクション。「洋風画」では線遠近法を使った北斎や豊春。嬉しいことにマニアックな昇亭北寿が結構並ぶ。洋風技法オタ。キュビズムとも三角メッシュともつかぬ技法で山の立体を表現。遠近はややボンクラだ。線遠近法に関しては葛飾派より歌川派の方がうまい感じがするね。「夜と美女」で選ばれたのは国貞と広重。さすが太田。粗製濫造と言われて世間じゃ不当に評価の低い国貞だが、実は当時のナンバー1。浮世絵界の小室哲哉。提灯の光が広がる演出も冴える。名所絵の広重も、実はそれなりに美人画を描いている。背景が月夜の夜景だったりして演出は巧みだ。月明かりでの影も落ちている。「夜の風景」ではそれを得意とする広重。広重は線遠近法が北斎より自然だ。あと洋風画を得意とする国芳もいる。「シルエット」では、障子に映る影を扱ったもの。「閃光」はピカッと光る演出を、光の筋で表す。「新時代」では清親の光線画、この中で「池の端花火」というのは、先週見たホイッズラーの「ノクターン」を彷彿とさせるね。どっちも花火が落ちてくところだよな。小林安治の夜景、小倉柳村っていう初めて聞いた人。

こうして並々ならぬ技法と絵師と一緒に並んでいても、なお応為の「吉原格子先之図」が光るってのは驚きだ。まあ肉筆ってのもあるが、それにしても夜を描く光の絵は見事だぞ。
http://www.ukiyoe-ota-muse.jp/H2602-katsushikaoi.html

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2014年2月 1日 (土)

シャヴァンヌ展(Bunkamuraザ・ミュージアム)

だいぶ前に行っててブログアップしてなかった分。

「我が青春のアルカディア」じゃなかった「水辺のアルカディア」だって。シャヴァンヌは試験に出る「貧しき漁夫」を描いたフランスの画家で、象徴派のはしりとか言うんで、期待しちゃうじゃん。でも、どうも本領は壁画だったようで、この企画には、その壁画の縮小版やら、習作やらが山ほど出ている。なんとなく煮え切らない感があるのはそのせいか。

最初の方にある「漁夫」は古典的にたくましく描いてある。のちのアルカディアとだいぶ雰囲気が違いますな。「労働」も壁画縮小版ながら、まあまあな感じで(どんな感じだよ)。それから、うん、「瞑想」という女性が一人立ってるの。これは線画の習作を最初に見て、ほう、なかなかいいな。こういうのは得てして習作のが良かったりしてな、と思ったらなんかその通りだった。とはいえ着色ものも縮小版だったけどな。なんで習作のがいいのかな。そうだケツが大きいからだ……いやいやいや、なんかキレがある感じ。ミュシャなんかも習作の方がいいってのあるしな。モデルが女性だから、作者の萌えポイントがダイレクトに描線に現れるんじゃね? それから「幻想」という絵は大原美術館が持ってるモノホンの大きいヤツが来てた。そうか、大原は一度行ったはずなんだけど、駆け足で見ちゃったからなあ。なんも覚えてないや。

ここからいよいよアルカディア関係。楽園っぽいけど、ゴーギャンのタヒチみたいな南国じゃなくて……うーん、なんだ気候の穏やかな国の、やっぱ水辺っぽい。ポスターにもなっている「諸芸術とミューズたちの集う聖なる森」は、最高傑作……の壁画の縮小版……まあ、壁画ならそれなりの迫力かもしれんが……やっぱ公共物というか、なんかこう「イッてない感」があるんだなあ。インパクトを求めるよりも、品良くしみじみ鑑賞するもんかな。
あとはシャヴァンヌの指導を受けた黒田清輝とかも並んでた。
http://www.bunkamura.co.jp/museum/exhibition/14_chavannes.html

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ザ・ビューティフル(三菱一号館美術館)

私は「新人類」と呼ばれた世代である。いいですか? 新・人類よ。新しい人類なんだってよ。今となっては概ね誰も普通の中年なのだ。つまり要するに。ちょっとした時代の変化が、その目新しさゆえに何か普遍的な価値の変化みたいにカテゴライズ名付けられちゃったわけだ。ほれ「アール・ヌーヴォー」だって、自然界の模様装飾の意味じゃなくて「新しい芸術」って意味だったわけよ。
そこでだ、当企画の広告にある「唯美主義」、「唯、美しく」そしてムーアの美女なんぞを見て、何か普遍的理想美を追求した英国の美女軍団に逢えると思ったら肩透かしを食うのだ。いや、いないわけじゃないけどさ、そんな多くはないよ。その実態は「唯美主義」と名付けられた一連の装飾的英国美術運動に関する、絵画だけじゃなくて工芸とか家具とか建築図面まであり、オイ貴様どこが「唯美」なんだよとか思ったり、果ては「そんな運動本当にあったんか? オレは騙されてんじゃないか?」と思ったりする。なにげに先週の「ラファエル前派展」よかったなあ。あっちより100円高いんだぜ。

最初にもう大皿とか出てくる。バーン・ジョーンズの「ヘスペリデスの夜」が一応装飾に凝った美女画なんだけど、顔がちょい画一的で惜しいな。一応美女のコーナーがあり、ロセッティの西美で何度も見たヤツがあり、他にも習作みたいなのがあるが、興味深いのは解説に「ラファエロ前派」と書いてあった。そうだよ! やっぱラファエロ(Raffaello)以前だから「ラファエロ前派」が正しいよな? なんでみんな「ラファエル前派」って言うんだ? ラファエル(Raphael)は大天使だぞ。君たちはやっぱ間違っているんだ! ありがとう三菱一号館。……えーとしばらくメモが無いな。ジャポニズムのコーナーがあって、鉢とか置いてあった。ん、広い部屋に出てな、やっとそれっぽいものがいくつも並んでいるな。アルバート・ムーア3連発。特に立っている美女の「花」はいいですね。フレデリック・レイトン「母と子」カーチャン美人だな。ジョージ・フレデリック・ワッツ「プシュケ」青くて裸でいかにも象徴主義的美女だ。うむ、こういうのが「それっぽい」な(なんだよ「それっぽい」ってのは? わかんねーよ)。

廊下を移動してホイッスラー「ノクターン:黒と金 輪転花火」夜の花火を描くが、解説にゃ高い抽象性が云々とか書いてあったが、ターナーと比べると鼻で笑っちゃうレベル。あとゴドウィンの建築図面が並んでたりして「唯美」の広告を真に受けてキレイなねーちゃんをギョーサン見たいと思っていた客(オレ)の神経を逆なで。ホイッスラーのエッチング群はまあまあ。それからも装飾だの家具だのガラクタが並び(ひでえと思うだろうがそういうものが並んでいるとは思わなかったんですもの)やっと絵画っぽいのはバーン・ジョーンズの刺繍の下絵「弓を持ち鳩の群れの下で子供達に囲まれて立つアモル」。カッコイイ天使様……じゃないんだよアモルだから。愛の神キューピッドさ。でもポジションとしては天使みたいだよな。デカい翼がたくましい。モリスのタイルパネル……いいんだけどさ、それはそれとしてみたいな気分。ビアズリーがいくつか。おなじみのヤツ多数。「唯美主義におけるデカダンス」となっているが、別に唯美ではないと思うぞ。最後にワッツの象徴美女「内奥の世界の住人」。あと目玉のムーアの「真夏」で概ねおしまい。

解説には英文もあったが「The Beautiful」なんて言葉はなくてね、「唯美」は「Aesthetic」だって。なんか企画展のタイトルを付ける際の苦しい事情が分かる気がする。「Aesthetic」ってなんて読むのだ? 「エステテック」? 「エステテック展」じゃ美容関係の展示だと思われちゃうよな。かといって「英国唯美主義美術展」じゃ堅い。何がいいべ? 唯美だから「ビューティフル」かな?
http://mimt.jp/beautiful/

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