« 2014年2月 | トップページ | 2014年4月 »

2014年3月31日 (月)

イメージの力(国立新美術館)

国立民族学博物館のコレクション……なんだけど、その存在を初めて知った。大阪にあるんだって。世界各国の、お面やら、神像、精霊像からトーテムポールから棺桶、玩具などなど、何かをイメージして作られた実用物が集結。そもそもあ美術なんてそういうところから生まれたわけなので、アウトサイダー・アートとはまた違うプリミティブ(原初的な)衝動に満ちたアール・ブリュット(生の芸術)に山ほど会えるというわけだ。面白くないわけがないだろう。

最初にパプアニューギニアの神像付き椅子が出迎える。デカい顔の造形だ。次の間で各国のお面がずらっと並び、横には獅子やらナマハゲやら、要は着ぐるみだ。次の間で、人型の造形つまり神像、精霊像が並んでいて、その「何かある」感が凄い。アボリジニの精霊「ミミ」の彫像の奇妙さ、ホノルルの戦闘の神は戦う気にさせられる。釘がびっしり刺さったコンゴの呪術用の人形の凄味はどうだ。インド、コルカタの派手目な女神像。それにしても、どれもつくづく「実用品だなあ」と思わせる「何か」を持っている。

次に時間の表現だけど、ここで曼荼羅などの絵が登場する。アボリジニの樹皮画を見ると、アウトサイダー・アートにテイストが似ている。いずれもプリミティブなベクトルのアート表現に違いない。ペルーの箱型祭壇のゴチャゴチャ感がイカす。

次の間は衣装とかだけど、さすがにこれは展示ではなく、人が着て動いている方がいい。見たいねえ早変わりお面使ったところ。それから「高みにつながる」ということで高い天井を生かして、トーテムポールなどをいくつも並べている。カナダの集会所のトーテムポールなんて、持ってきちゃったんかいこれを。

それから小物がいくつもあって、「イメージの翻訳」というコーナー。ここで「なんじゃこりゃ」みたいなのが連発。中でも仰天したのがガーナの棺桶である。ベンツや飛行機やイカ、各故人の生前の仕事などを偲んで作るらしいが、ビックリものである。メキシコの木彫の龍は、ヘンリー・ダーガーのブレンゲンを思い起こさせる。ここで反戦のため、使用済みの武器で作った自転車が紹介される。いい話だなあ。でも同時に出ていた武器でできた椅子は、なんか軍神の座る椅子みたいで、あまり反戦気分にはならないな。それからベトナムで売られている空き缶で作った玩具。面白い。中には「一番搾り」の缶とかもあるぞ。

最後の部屋に、エピローグとして、民族の実用品を現代美術のインスタレーションっぽく展示した空間がある。これは現代美術を見慣れていればいるほど、その違和感のなさに驚くはずだ。マダガスカルのはしごがミニマルアートのように見えたり、トルコの脱穀機の、石をたくさん埋め込んで作る歯などは一種のアート的表現として読み替えができる。

プリミティブなものはある種の力強さを持っているので、私はなかなか好きである。してみると、なぜ私が村上隆に魅力を感じないのかが分かる。村上のは西洋美術文脈に組み入れるためのプレゼンテーションとしての作品であるため、プリミティブとは対極にある。どんなに凄いと言われても、そこには力強さが無い。私がよく分からないマティスやロスコも、そうなのかもしれない。プリミティブではない産物なのだ。ところで、私の言う「プリミティブ」は多分一般的な美術用語のそれとは違うように思う。私は写実画もプリミティブだと思う。なぜなら「本物そっくりに描きたい」というのも原初的衝動だからだ。

あーそれから、展示物にその場の解説は無いよ。あくまでイメージで勝負だ。この点もポイント高いね。知りたければデジタルビューアのコーナーがあって、そこに丁寧な解説がある。
まあとにかく、行ってみてほしい。得るものはきっとあるだろう。
http://www.nact.jp/exhibition_special/2013/power_of_images/

|

2014年3月23日 (日)

VOCA展(上野の森美術館)

何か目新しい人でもおらんかなと、こういうところに行くのはなかなか好きだ。「新しい平面の作家たち」だって。VOCA賞って賞があるんだよ。

目についたのを並べると、徳山太郎の二つの顔がキモくて面白い。佐藤春菜のシカのケツはよく分からんけど目にはつく。田中望の「ものおくり」というのがVOCA賞。うむなるほど、賞取るだけある。中央で踊るウサギ達が面白い。それを囲むクジラと、うーん、なんだ、何かだ。日本画のマチエールもいい。寄って見てよし引いて見てよし……ただ引いた時の全体印象は今一つのところはある。中央がどうも整ってないのだ。踊るウサギの群れを描いてるんだから致し方ないんだけど。しかしこう見ると遠藤彰子の大画面の描き方ってやっぱ凄い。全体構成から何百枚も描いて入るんだもんね。阿部未奈子。グラフィックな風景にはスタイルがある。なんかオペラシティで見たような気がするな。炭田紗季のリアル洋風七福神。普通に面白い。大小島真木。図象というんですかねこういうの。曼荼羅? とも違う。いやでも、なかなかいいよこれ。

2階へ行って臼井良平。結露とティッシュ。これはなんじゃ? 紙に陰影をつけてティッシュのように見せたってことか? 平川恒太。黒のわずかな濃淡というか若干の質感の違いだけで絵にする。死屍累々。これ元ネタはフジタの戦争画? 橋本聡。携帯番号だけを提示するコンセプト技。こういう場所でいきなり携帯番号だけを突き付けられた時の君の反応そのものが作品だ。これってかけていいの? いかんの? かけたら誰か出るの? この番号について考えている間は、君はこの作品の一部なのだよ。大橋秩加。うん、いいよ。塔と女の子達。顔を見せないのはあえてだろうけど。あーあと、ポエムが無ければもっとよかったな。 

500円だからふらっと寄ってみてもいいですよ。
http://www.ueno-mori.org/exhibitions/main/voca/2014/

|

2014年3月21日 (金)

UNDER THE BOX, BEYOND THE BOUNDS(オペラシティアートギャラリー)

さわひらきという人の個展。ビデオインスタレーションが多いんだけど、実はそれ苦手なんだよね。だって時間取ってずっと見てなきゃいかんでしょ。ある瞬間を見てそうかこういうもんかと思っても、違う時間には違う部分が映ってて違うもんになっている、ということがしばしば。いい瞬間を見落とす可能性も大だ。とはいえ、今回のはモノクロ主体でセンスがいいので(「センスがいい」という形容は安易だから好きじゃないんだけどさ)、そうですな、どんな瞬間取ってもいかにも「アートって感じ」(この形容もイヤだなあ)。分かりやすいのでは「Dwelling」という家の中にミニチュア旅客機が飛び交う作品。あとドーム状のスクリーンに、プラネタリウムっぽく映し出す作品も見て楽しい。あと、大きな鏡を使って一つの映像を違う向きからも見れるようにした「Envelope」という作品があってね、観客はメインスクリーンを見たり、鏡の方を見たりして静かにしている。そうすると観客まで作品の一部みたいに見えてくるから面白いし、多分作者もそれを狙ってるんじゃないかな、と思ったりする。あと、月の満ち欠けをクレーターまで丁寧に描いてドローイングする作品「WAX 1-24」こういう手間のかかる力技は結構好きだぞ。
https://www.operacity.jp/ag/exh160/

|

2014年3月12日 (水)

アンディ・ウォーホル展(森美術館)

アンディ・ウォーホル美術館から大量に持ってきたもので構成され、写真も山ほどあり、本人のコレクションもあり、出品リストをもらったが、あまりの文字の小ささに、もはやローガン初級には一文字も読むことができない。いつもやってる出品リストにメモるのはあきらめた次第である。
ウォーホルはだいぶ見たしなあ……とはいえこれまでになく大規模みたいだし、入口に見たこともなウォーホルデザインのBMWの車があってな、なんか期待しちゃうわけよ。

最初は自画像が並んでいたが、あとは年代順。やはり美術館で鑑賞するとなると、いかにもポップアートみたいなものより、初期のデザイナー時代の作品の方が似合うな。「ブロッテドライン」という、転写してわざと滲ませた描線の作品群。特に屏風なんて大型のものは初めて見たぞ。あと「足とキャンベルスープ」という黒い線描写だけのものは、カラーのキャンベルスープを見慣れている目には新鮮だ。

それからおなじみのポップアート群。「死と惨事」という一連の作品に目を付けた展示はポイント高いね。ウォーホルをおしゃれなポップアートだと思ったら実は違うぞ。死をめぐる事項(死者や電気椅子)さえも量産メディア的に切り出せることを示した、実にクールで冷徹な作品群だ。有名なマリリンもその一つ。「病院」や「電気椅子」。うむ、これがウォーホルだ(というと本人はそんなものはないというかもしれんが)。しかしある意味、キレがいい作品はこのあたりまで。ウォーホルは量産メディアの海に埋没するが、展示はそれについていかず、あくまで「アンディ・ウォーホルさんの展覧会」をやろうとする。え? それは何かって?

「銀の雲」っていう有名な、銀色でフワフワ漂うヘリウム風船があってな。その部屋があるんよ。でも風船に触っちゃいかんのね。説明を見ると、当時の本物を持ってきたみたいだね。そりゃ触っちゃまずいよな。でも、これ再現してポンポン弾いて遊べるようにした方がよくね? 少なくともウォーホルが生きてたらそっちを選ぶと思う。
もう一つ、シルバーファクトリーの一部を再現ってのがある。当時、ビリー・ネームが撮った写真を基にしてデジタルハリウッド大学(だっけ?)で作製したそうな。うむ、なかなかの力作……なんだけど、壁が銀紙だったはずなのに、当時の写真での再現だから灰色なわけよ。でもここは「当時の写真を利用」という価値よりも、本来の銀色で埋め尽くす方がクレイジーでよかったんじゃね? 灰色じゃグレーファクトリーだ。どうもこういう点が「ウォーホルらしくない」感じがする。つまりね、「かつて生きてたウォーホルさんの展覧会」なんだ。いわゆるコレジャナイ感。

セレブの注文肖像画は、単にウォーホル印が付いているだけ。もちろんそれがウォーホルだが、誰を描いたのか以外に大した魅力はない。絶滅動物も収益を寄付したぐらいでまあ同じ。しかし、ふと鉛筆画があったりする。これが意外といい。ミッキーやドナルド、ボッティチェルリのビーナスとかの写しなんだが。ここにだけ生身のウォーホルが顔を出す感じだ。それからバスキアとのコラボがある。あと、ウォーホルが出たTDKのビデオCMがリピート中。これが映像コーナーのすぐそばにあるもんで、映像を見ていると、このCM音声を何度も何度も聞くことになる。ある意味ウォーホルらしいが、ウザい。
終盤にもキャンベルスープなどカラー作品が並んでて、これがまあオリジナルなんだな。しかし大量生産と大量消費に乗ってアートで遊ぶウォーホル作品は、悲しいことにオリジナルだから凄い、という印象がまず無いのね。そりゃそうさ。ウォーホルだもん。

映画の部屋がある。大きな部屋で同時並行上映。好きなのを見てくれ。おなじみ「エンパイア」などもが流れているぞ。あとは本人のコレクション「タイムカプセル」と称して何でもかんでも保存。日本に来た時に買った浮世絵(パチモンというか観光土産)もあるぞ。

それから大きな売店。ある意味、ここが一番ウォーホルらしいな。でもみんな高え。キャンベルスープ缶マグカップがあるぜ。三千なんぼで。自慢じゃないが(自慢だが)、スーパーのキャンベルスープのキャンペーンでもらったキャンベルスープのマグカップ持ってるぜ(使ってる)。見かけはほぼ同じだぞ。

何点かは納得しがたいが、でもまあ質量ともに十分といえる。よく集合させたもんだ。
http://www.mori.art.museum/contents/andy_warhol/

|

2014年3月 2日 (日)

野口哲哉の武者分類図鑑(練馬区立美術館)

なんか若くて才能のあるヤツの企画展はないかなあと常々思っているわけだが、さすが練馬。よくぞ紹介してくれた。期待以上の面白さで満足じゃ。
武者や甲冑にこだわる野口はそればっかり作っているのだが、戦国時代でなく、今時のネタを入れてくるところが面白い。いや別に、時代劇にあえて今時のものをねじ込んで面白がるのは、そんなに目新しいもんじゃないが、なにしろこの人、うまいのよ。あと、江戸時代とかの武者絵や甲冑ものの絵、子供の頃の怪獣プラモデルなども出ている。

展示で最初に目に付いたのは「The Old Man Who Smoke」(英語タイトルが多いぞ)。老人がタバコの最中。小さい人形……っていうか、フィギュアですかい? フィギュアと人形って違いはよく分からんが。まあいい樹脂とかで作ってるのよ。でもこの老人の表情が実にいい。あと「サンタクロース侍」これは絵だけど、そう、サンタなんだよ「三田黒州守出陣騎馬影」だってHAHAHA。「海の幸」という絵もおもしろ系。兜の上に乗ってるのがエビ、カニ、ホタテだっ。これには人形バージョンもあって、コビト武者みたいなの。海の幸だけじゃなくて「インスタント・アーマー」というのでは、缶コーヒーのボス缶を巻いてるのがおる。「ポジティブ・コンタクト」は大きめの人形だけど、「よろしく」とか書いてあり……うーん、この面白さは実物見ないと分からんな。「Thing of the operation」というのはなんか疲れている武者。オレが会社から帰ってきた時の顔しとる(と同行していた妻が言う)。「Red Man」は赤いソファに座る赤い武者。赤はエリートなんだって。うむフェラーリも赤だしな。

二階の廊下にある「smann & Giant」がいいね。鍛えられて屈強な武者と、足軽みたいな弱いのと、体格や装備の差だけじゃなくて心理的な大小を表現して……まあ要は強いヤツの隣にいると、自分が極めてちっちゃく感じるんだな。展示室に入ると、今度はSFに影響されたコーナーで、「THE EGG MAN」はメタルフィギュアのオモチャ。箱も作ってるぞ。「Taling Head」は耳が付いた動物風の兜とおしゃべりしてる武者人形。互いの顔が最高だ。「Rocket Man」は背中にロケットを装着して飛ぶ武者。ジョーク人形みたいだけど、極めてリアル。なんたって歯を食いしばる顔がよい。「白虎」は白い虎用の鎧だ。天明屋尚とのコラボだったらしい。うーん、ちょっと犬に見える。体型に精悍さがやや欠ける感じがするのだが。そういえば題材は武者でも全体にあのバサラの天明屋とはずいぶんテイストが違う感じがする。天明屋は軟弱な野郎など蹴散らすような気迫があるが、こっちはなんか雑兵や足軽にも目を向けるような優しさと哀愁がある感じだ。
シャネル紋が入ったのがいくつか。「紗練家伝来兜」とか。うーん、架空の話も付いてて面白いけど、シャネルのマークは意外と甲冑とかに似合わんのね。三日月が左右に重なっている方が家紋風になるが。それより「着甲武人視力検査図」が面白い。文字通り視力検査をしている武者。見えないのか弱った表情がいいな。猫用の鎧であるところの「猫鎧」。これはエピソードがよい。愛猫用の鎧を作って着せようとしたところ……。まあ現地で読んでくれ。昔の絵である「本田忠勝像」や「伝吉良頼康像」パネル紹介……甲冑姿だけど弱そう。もはや当時からしてファッション甲冑だったのか。「澤村大学肖像」あーこれも弱そう、と思ったらなんと九十歳まで生きた武士の晩年の姿だって。そこを野口は「武士の満ちたる姿」ということでリスペクトしていて「サムライ・スタンス」という人形の作品となっている。これは真っ当な路線で見事にできている。

武者というが強さだけではない、立場による弱さ、哀愁、ユーモアも感じさせる作品群。この武者の生き様を見て感じて楽しく鑑賞されたい。これはおすすめだ。
http://www.city.nerima.tokyo.jp/manabu/bunka/museum/tenrankai/noguchi14.html

|

« 2014年2月 | トップページ | 2014年4月 »