« プライベート・ユートピア(東京ステーションギャラリー) | トップページ | アンディ・ウォーホル展(森美術館) »

2014年3月 2日 (日)

野口哲哉の武者分類図鑑(練馬区立美術館)

なんか若くて才能のあるヤツの企画展はないかなあと常々思っているわけだが、さすが練馬。よくぞ紹介してくれた。期待以上の面白さで満足じゃ。
武者や甲冑にこだわる野口はそればっかり作っているのだが、戦国時代でなく、今時のネタを入れてくるところが面白い。いや別に、時代劇にあえて今時のものをねじ込んで面白がるのは、そんなに目新しいもんじゃないが、なにしろこの人、うまいのよ。あと、江戸時代とかの武者絵や甲冑ものの絵、子供の頃の怪獣プラモデルなども出ている。

展示で最初に目に付いたのは「The Old Man Who Smoke」(英語タイトルが多いぞ)。老人がタバコの最中。小さい人形……っていうか、フィギュアですかい? フィギュアと人形って違いはよく分からんが。まあいい樹脂とかで作ってるのよ。でもこの老人の表情が実にいい。あと「サンタクロース侍」これは絵だけど、そう、サンタなんだよ「三田黒州守出陣騎馬影」だってHAHAHA。「海の幸」という絵もおもしろ系。兜の上に乗ってるのがエビ、カニ、ホタテだっ。これには人形バージョンもあって、コビト武者みたいなの。海の幸だけじゃなくて「インスタント・アーマー」というのでは、缶コーヒーのボス缶を巻いてるのがおる。「ポジティブ・コンタクト」は大きめの人形だけど、「よろしく」とか書いてあり……うーん、この面白さは実物見ないと分からんな。「Thing of the operation」というのはなんか疲れている武者。オレが会社から帰ってきた時の顔しとる(と同行していた妻が言う)。「Red Man」は赤いソファに座る赤い武者。赤はエリートなんだって。うむフェラーリも赤だしな。

二階の廊下にある「smann & Giant」がいいね。鍛えられて屈強な武者と、足軽みたいな弱いのと、体格や装備の差だけじゃなくて心理的な大小を表現して……まあ要は強いヤツの隣にいると、自分が極めてちっちゃく感じるんだな。展示室に入ると、今度はSFに影響されたコーナーで、「THE EGG MAN」はメタルフィギュアのオモチャ。箱も作ってるぞ。「Taling Head」は耳が付いた動物風の兜とおしゃべりしてる武者人形。互いの顔が最高だ。「Rocket Man」は背中にロケットを装着して飛ぶ武者。ジョーク人形みたいだけど、極めてリアル。なんたって歯を食いしばる顔がよい。「白虎」は白い虎用の鎧だ。天明屋尚とのコラボだったらしい。うーん、ちょっと犬に見える。体型に精悍さがやや欠ける感じがするのだが。そういえば題材は武者でも全体にあのバサラの天明屋とはずいぶんテイストが違う感じがする。天明屋は軟弱な野郎など蹴散らすような気迫があるが、こっちはなんか雑兵や足軽にも目を向けるような優しさと哀愁がある感じだ。
シャネル紋が入ったのがいくつか。「紗練家伝来兜」とか。うーん、架空の話も付いてて面白いけど、シャネルのマークは意外と甲冑とかに似合わんのね。三日月が左右に重なっている方が家紋風になるが。それより「着甲武人視力検査図」が面白い。文字通り視力検査をしている武者。見えないのか弱った表情がいいな。猫用の鎧であるところの「猫鎧」。これはエピソードがよい。愛猫用の鎧を作って着せようとしたところ……。まあ現地で読んでくれ。昔の絵である「本田忠勝像」や「伝吉良頼康像」パネル紹介……甲冑姿だけど弱そう。もはや当時からしてファッション甲冑だったのか。「澤村大学肖像」あーこれも弱そう、と思ったらなんと九十歳まで生きた武士の晩年の姿だって。そこを野口は「武士の満ちたる姿」ということでリスペクトしていて「サムライ・スタンス」という人形の作品となっている。これは真っ当な路線で見事にできている。

武者というが強さだけではない、立場による弱さ、哀愁、ユーモアも感じさせる作品群。この武者の生き様を見て感じて楽しく鑑賞されたい。これはおすすめだ。
http://www.city.nerima.tokyo.jp/manabu/bunka/museum/tenrankai/noguchi14.html

|

« プライベート・ユートピア(東京ステーションギャラリー) | トップページ | アンディ・ウォーホル展(森美術館) »