« イメージメーカー展(21_21 DESIGN SIGHT) | トップページ | 「楽園としての芸術」展(東京都美術館) »

2014年8月16日 (土)

「魅惑のコスチューム:バレエ・リュス展」(国立新美術館)

実は別の企画展に行こうとしてて都美が会場だと知っていたにもかかわらず、なぜか間違えて新美に来てしまい、うむ困ったな。それならまあ行こうかどうしようか迷っていた「バレエ・リュス展」に行こうかと乗り込んだ。ちなみに「オルセー展」もやってたけど、もう行っちゃったし階が違うから混み具合は知らない。で、行った結果……うーん、やっぱ行くんじゃなかった。いや、悪い企画ではないんです。いいです。例のディアギレフのバレエ・リュスの衣装がタップリ(サブタイトル「魅惑のコスチューム」だもんな)見れる。しかも衣装展示は前から後ろから360度見れる工夫がなされている。衣装好きにはたまらんであろう。うん、でもね、他はあんまりないのよ。舞台背景とかちっこいのしか無いし、動画も……最初の方にデカいスクリーンの部屋はあるけど概要紹介だし、途中にある舞台動画も画面が小さすぎる。まーなんにせよバレエに親しんでねえと衣装だけ見たってつらいよなあ……いや待てよ、バレエ好きでも衣装だけ見て満足するんか? まあそりゃ分からん。

バレエ・リュスといえば、ピカソとかマティスとか当時の前衛芸術家を起用したことで有名だし、それが広告にも書かれているけど、ピピピピカソの作品なんかねえだよ……確か衣装じゃなくて舞台美術かなんかやったのかな。衣装で展示してあったのはマティス、ドラン、キリコぐらいかな。それについては後述。(さっき気がついたが、出品リストによるとピカソのデザイン画があったらしいな。じぇんじぇん気がつかなかった。目立たなかったんだ)

入ると最初にコクトーのデカいポスターがあって、絵画好きとしてはそこでテンションが上がるが、そういうのはそこだけじゃ。デカい紹介動画があって、あとはほとんど衣装じゃい。いや、壁に衣装の構想絵とかニジンスキーの写真とかあるけどね、どう見たって扱いは添え物だよなあ。

衣装は演目ごとに分けて展示されているので分かりやすいぞ。衣装デザイナーとしては、レオン・バクストってのと、ナタリア・ゴンチャローワって人がメインらしいな。前半のエキゾチックなヤツから後半の前衛っぽいのまでうまくこなしている。が、しかし、オレには「ザ・アウェー」の世界なんで、これ見てどうこう言えるもんじゃねえだ……あー、ジ・アウェーか……まあどうでもいいや。うんしかし、そうそう、海の世界のだな、タツノオトシゴとイカの衣装は面白かったな。ん、あと、まるっきりナニひとつサッパリ分からなかったのかというとそうでもなくて、ラヴェルの「ダフニスとクロエ」の衣装ね、いや、この曲は結構好きだったな。最近聴いてないけど。そうかこの曲はバレエ・リュスであってこういう衣装だったのか、と感心する。

後半になって、前衛芸術家の登場となる。マティスが「ナイチンゲールの歌」(戦場の看護師の話ではない)で衣装をやっている。ええと、あの中国風のね……マティスちゃん舞台衣装は初めてなんだって。見るといやあマティスだなあというのは分かるんだけど、衣装というか衣装風の布地に描いただけに見えるんよ。まあ、中国風のアレなんだからそうなんだけどね、「こいつ衣装デザイナーじゃねえな」感にあふれている感じ。同じのがデ・キリコのね、これもキリコが背広に落書きしてるような感じがどうにも抜けない。やっぱり餅は餅屋ってのをつくづく感じる次第です。

ところで今回も「舞台は総合芸術で……」みたいな記述があったように思うが、どうもこの「総合芸術」って言い方に抵抗がある。「総合」だからなんなのよ。「うちらは『総合芸術』だーらね、役者だけじゃなくて、歌手や演奏家、舞台美術家、ファッションデザイナーまで揃ってるんだーらね、すごい集団だーらね、偉いんだーらね」っていうような極端な思想をしているヤツはさすがにいないみたいなんだけど、なんかそーいうドヤ顔するヤツが出てきそうな雰囲気がこの「総合芸術」って言葉にはあるような気がする。総合芸術とはなんぞや? 普通に考えるとまあ、歌あり踊りあり芝居ありのミュージカルかなあ。でも映画だって「総合」だぞ。舞台空間はなくてもキャメラワークがあるからな。ネットで検索したら、ゲームも茶の湯も、果ては会社経営まで「総合芸術」呼ばわりしている。なんかもう……どうだっていいじゃん。どんな要素があるかよりも、概ね「一人ではできなくて多くの人(専門家)の協力が要る」というのもあるようだ。そうなると対極にあるのが、個人の世界だけを突き詰めていく世界だな。一人黙々と深く静かに構築する芸術世界。芸術たるものどっちのベクトルも「あり」だ。自分も例えば詩の朗読と音楽を組み合わせた作品を作ることがあるが(これはまあ総合に近い感じかな)、そうではなくて音楽を排除して朗読だけで挑みたい時もある。この場合、音楽は付けることができたとしても「余分な」「削ぎ落としたい」要素になるのだ。だから要するに、なんか総合総合言ってる人には、だからなんなのよ、と言いたいわけだ。

今回の舞台衣装にしても、印象としてはあくまで「舞台の衣装」なのね、「芸術的衣装」ではあっても「衣装芸術」ではない感じだ。まあそんなところで、舞台衣装が好きなら行ってみよ。
http://www.tbs.co.jp/balletsrusses2014/

|

« イメージメーカー展(21_21 DESIGN SIGHT) | トップページ | 「楽園としての芸術」展(東京都美術館) »