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2014年9月27日 (土)

チューリヒ美術館展(国立新美術館)

オルセーもまだやってる中、1600円という強気価格。チラシも豪華で巨匠の大作がドッカンドッカン来てるのかと思ったら……うーん、なんか微妙だ。

作家あるいはテーマ別のエリアになっていて、習作や素描がないのが売り……なんだけど、これいったい誰に対しての売りなんだ? いや、習作で水増しすんじゃねーよとか思ってるオレにはその方がいいんだけどね、ドシロートはそれがないというのが何なのかが分からず、クロートは習作や素描こそが画家の真価を堪能できるもんと思ったりしてんだから、それがないのを売りにするなんてアヒャヒャヒャって感じか。まあいいや。最初はセガンティーニ。スイスの美術館だからスイスの画家でスタートだ。そおっ、あのっ、損保ジャパンこと現ジャパン日本で見たヤツだな。新印象主義とはひと味違う細かい描線の集積には好感が持てる。2点出てるが、いずれも象徴主義的主題でいいな。もっと評価されていい。次はモネ。また積み藁があるよ。いくつ描いてんだ。「睡蓮の池、夕暮れ」また睡蓮の池かよ……と思ったら夕暮れ色。しかもデカい。しかも何描いてるんだかよく分からないので、抽象画の域に突っ込んでいる。「国会議事堂、日没」ぼんやり建物。もう飽きた。でもこれの夕日はなかなかいいな。次、ポスト印象派。ゴッホ「タチアオイ」……ゴッホらしくない普通の絵だな。「サント=マリーの白い小屋」ゴッホらしいが小さい。セザンヌ「サント=ヴィクトワール山」例の画題。例のラフさ加減。アンリ・ルソー「X氏の肖像」ポスターにもなってるが……これも小さいのう。というか余裕を持って展示してあるので、ことさら小さく見えるのか。次はホドラーの部屋。デカい「真実、第二ヴァージョン」がいきなり目に入る。これは……いいね。象徴派好きにはナイスな感じで。全体のシンメトリーっぷり。中心の全裸女性の姿が、ゴーギャンのあれであり、デルヴォーの「ポンペイ」の女性であり、要するに神秘的なヤツである。「遠方からの歌」もなかなかいい。顔がオトコマエで。いや女性なんだけどね。風景画はまあまあ。ホドラーもスイス。ホドラー展が西美であるので楽しみなのだ。次はナビ派のコーナー。ボナール……うん。おお、近頃流行りのヴァロットンだ。この人面白いね。クールなデザインっぽい絵画と、お尻を中心としたボリューム感あふれる絵画に分かれる(ヤツは尻フェチなんだぞ)。「訪問」「日没、ヴィレルヴィル」は前者。「トランプで一人遊びをする裸婦」「アルプス高地、氷河、冠雪の峰々」は後者だ。風景なのにお尻を感じさせるな。ムンクのコーナー……4つ出ているが、イイのは最初の「冬の夜」だけだなあ。寒々した中に狂気がぼんやりみたいな。肖像画2つは別にヘタではないが、なんかそつなく仕事しやがって、という感じ。表現主義……ううむ、ベックマン。なんか初めて見るがルオーっぽくあるな。

えー次ね。オスカー・ココシュカ。ここが一番印象に残った。なんつーか「ヤバい」。「プットーとウサギのいる静物画」この赤ちゃんみたいなのは何だ? 「恋人と猫」んんんんなんちゅーか全身にデカい蛆が這ってるような感じじゃね? 「アデル・アステアの肖像」目がヤバい。マッドなヤツの目をしている。へー、ココシュカってこんな愉快な絵を描いてたんだな。しかし最も驚いたのは「モンタナの風景」なんだな。この風景画……キタナイ。思うに、ありのままを描いた結果汚くなったわけでもない。これはなんか、汚いのが好きなヤツが描いた汚さなんだな。あのほら、汚い絵が好きな人がいてさ、それは真実が汚さの中に表現されているからだという主張をするんだが、逆は真ではなくて、実は真実もなにもない汚さも汚いが故に愛してしまう。そんな感じの絵だ。ふむふむ、と思いつつ解説を見ると「粗く軽妙な」とか形容してある。軽妙? 軽妙なのかこれが? 次、フォーヴィズムとか。ヴラマンク「シャトゥーの船遊び」悪くはないが、もっとイイのがあるのよ。オレはヴラマンクが好きだ。もっと評価されていいんだこの人は。マティス「マルゴ」ほほう、珍しく普通にカワイイ系ではないか。ブラックとピカソ。デカいけど定番。次はクレーのコーナー小ぶりなのが4つほど並んでいる。つかみどころのないクレーの作風。抽象絵画のコーナー、カンディンスキー、レジェ、モンドリアン、ジャコメッティ。いずれもサイズもぼちぼちなもので極めて手堅く展示。「らしい」のが並んでいるがそれだけに意外性がない。シャガールのコーナー。ここはなかなかイイのが並んでいる。「戦争」「パリの上で」など。「婚礼の光」の青い色はなんかシャガールブルーとでも呼びたいですな。次、シュルレアリズムコーナー。キリコとミロあり。エルンスト「都市の全景」これは結構有名な絵だよな。月が光っている感じがいい。ダリ1点は小さいが緻密なので満足できそうだ。マグリット「9月16日」も木を通して三日月が見える名作。最後、ジャコメッティ。彫刻はそんなに興味ないんだが「立つ女」「森」の人物デフォルメっぷりは好きだ。面白い。

有名どころはそれっぽい中~小品を並べて手堅く展示。流れはカバーしてるものの、この画家ならもっとイイのいくつも知ってるぞ、というのが多くて、なんとなく不完全燃焼感がある。何より……1600円は高いよなあ。あと、会場内えれえ寒い。
http://zurich2014-15.jp/

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2014年9月21日 (日)

「印象派のふるさと ノルマンディー展」(損保ジャパン日本興亜美術館)

損保ジャパンと日本興亜損保が合併したのら。「損保ジャパン日本興亜損保」じゃさすがに「損保」がダブるんで「損保ジャパン日本興亜」にしたものの、「ジャパン」と「日本」はいかんともしがたく両方残し、かくして「なにこれ『ジャパン日本』じゃんHAHAHA」というツッコミが入っちゃう事態に。オレだって「ジャパン日本美術館」って言いそうだっちゃ。
しかしサブタイトル「近代風景画のはじまり」なーんか期待できねーなー……でもデュフィがあるみたいなので行った。結果はまあまあよかった。

ノルマンディー地方の絵画を年代順に見ていくといったもんなんだけど、最初がね、なぜか英国画家でね、なぜかターナー。ターナーが来るとは思わなかっターナー……まあ小さい版画なんだけど。えーとその部屋はあと、どうということなくて、ロマン派だとかがあって、次の部屋のウジェーヌ・リザベイが理想の港風景みたいなヤツで、次はロマン主義から写実主義に行くってコーナー。カミーユ・コロー「オンフルール」! おおコロー……なんか小せえぞ。もっとデカくなくちゃコローらしくない。んんんん、もしやこの展示は全編この調子かと不安になる。ガキの頃のモネに屋外射精じゃなかった写生を教えたというブーダンがいくつも出ている。んんんん、大したことねえ。モネも1枚「サン=タドレスの断崖」。ちょい写実? あー、まああんましおもろない。なんかもっとズガッとクるのはないんかい。ここでやっとクールベさん登場。嬉しいことに3枚あるぞ。「海景、凪」うぉういいじゃん。この黒い、なんかよく分からん描画が印象派的にして印象的。次の「波」はストレート直球のクールベさん。見たことないヤツは見とけ。「海」もなかなか。その隣のブーダンの風景画と比べて見りゃあサルでも分かるな。ブーダンは印象派風の描画でがんばっているが、なんか印象に残らない。つまりこれ、自然を驚異と感じているか、ただの素材として扱っているかの違い。料理に例えると、自分の好きな味を追求するために素材を選んでいるか、素材そのものに驚異と魅力を感じつつ自分の味を追求するかの違い。前者ブーダン、後者クールベさん。格が違う。でもクールベさんとブーダンは親交があったらしい。そうなのか。

海辺のレジャーのコーナー。風俗入り風景みたいな感じの。概ねどうでもいい感じだけど、コルコスってヤツの「別れ」は女性像で、思い切り栗のれんじゃなかったクリノリンで、腰をぎゅっと絞って苦しそうだよ。あとルネなんたらとかいうヤツ「波」このヘタッピーが! 人物がいるからまあ描く目的が違うんだろうけど、クールベさんの描画を見習うっちゃ。えー、それから近代化に対する印象とかいうコーナーで、要は港? ブーダンの「ル・アーヴルの港、青空」……ってまだ理想風景やってんのかおめーは……え? 別に年代順の展示じゃないって? それから珍しく写真が色々。分からんからスルーだ。それからポスト印象派からフォーヴィズムのコーナー。シャルル・フルションとかいう人の「一日の終わり」、点描ではないが感じとしては新印象主義っぽい。ロベール・パンションとかいう印象派っぽい人の絵がいくつも並ぶが、どってことないもんで、見てると亡きじいちゃんが趣味でやってた油彩なんかを思い出しちゃう。あれも今思えば印象派だったな。次に、何これルソーの絵か? と思ったらなんとフェリックス・ヴァロットン「オンフルールの眺め、夏の朝」おお、なんか面白いな、この木々の絵は。シュールってほどではないが。ヴァロットン展での尻とワニと中年ヤンキーアンドロメダしか覚えていないが、いい絵を描くじゃにゃいか。そんで最後いよいよにデュフィだっ。11枚あるぞ。うーん、広い屋外ものもいいが、意外と屋内がいいのね。「ヴィレルヴィルのヴェランダ」とか。あとなんといっても「黒い貨物船」3つが強力。中でも一番デカいのは、もはや貨物船ではなく、黒いエリアとなり、街などの形を表す線は入り乱れ、ほとんど抽象画に近い。あとは、オリヴィエ・メリエルって人の写真がいくつも並んで常設展示があっておしまい。

しかし金券屋で安くなかった。なぜだ? 
http://www.sjnk-museum.org/program/current/2139.html

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2014年9月13日 (土)

進化するだまし絵(Bunkamuraザ・ミュージアム)

勤め先から近いもんで、週末の仕事帰りに行こうと思ってたが、忙しくて一向に早く帰れず、やっと行けた次第である。
各地の観光地で「なんでどこに行ってもそれがあるんだよ!」というのに「テディベアミュージアム」と「エミール・ガレ、ガラス美術館」があるんだけどさ、最近そこに「トリックアートミュージアム」が加わったんよ。そりゃーまーパネルいくつかと解説員何人かを置いときゃあ大人1200円、子供700円ぐらいは取れるよなあ。かく言ううちも熱海でお世話になりましてん。だって子連れで秘宝館にゃ入れないし、文化財見せても退屈するし、トリックアートならまあ写真撮って親子で盛り上がれますわな。で、まあ今回のこの企画はやっぱり本物の美術館のじゃけん、モノはなかなかイイし楽しめるぞ。写真は撮れん。

最初は古典の「トロンブ・ルイユ」なんかのコーナー。棚の絵とか、物が引っかけてあるように見える絵とか。デューラーの「アイリスの聖母」という絵があって、どこがだまし絵なのかというと、絵の表面に蝿がとまっているように見えるとか見えないとかなんだけど、なんかどうでもいいや。おなじみアルチンボルドが2点。でもそれよりその前の作者が分からない「風景/顔」の方が面白かった。風景が顔になってんだぜ。

それから一気に現代へ。チャック・クロースって人の指紋で描いた絵とか、杉本博司の写真があってなんでこれがだまし絵と思ったらジオラマ(だよな。動物とかいるの)を白黒で撮って本物っぽく見せてんだって。ヴィック・ムニーズって人の「『裏面』シリーズ、星月夜」。これ、有名なゴッホの星月夜の絵の裏側を忠実に再現したんだって。木枠とか、そこに貼ってあるシールとか。へー、面白いなー……なんか表を見ちゃいかんと言われてるみたいでちょっと虚しいけどな。福田美蘭。「婦人像」これ、眼が動くぞ。愉快だぞ。もっと静かに動いてくれたらいいと思うんだが、まあ、あえて音出してるんだろうなあ。あとは明らかにディズニーの何かなんだけど、肝心なものは写っていないというもの。著作権に引っかからないラインで。福田美蘭ってすごく冴えてる人だと思うし好きなんだが、何かほとんどの作品が元ネタの加工なので、オリジナル至上の価値観を持つオレにはちょっと肌が合わないところもある。

次の影とかイメージのコーナー。美蘭の父である福田繁雄「アンダーグランド・ピアノ」やっぱおもしれえ。とてもピアノにゃ見えない置物があるが鏡の向こうにピアノがあるじょ。ミケランジェロ何たらって人の、鏡を見たらカメラマンに撮られてるみたいってのもなかなか。ラリー・ケイガンの、オブジェに当てる光により、蜘蛛やトカゲのシルエットを映すヤツ、いいね。マルコ・パニョーリのこれも影ものなんだが……あーもう説明がめんどくせえや。ダニエル・ローズの「木の鏡」がハイテクにしてナチュラルなので面白い。カメラで撮った濃淡を縦横に並んだ木の板の傾きを変えることで表現、あたかも木の板の鏡があるような不思議な感じのする作品だ……って説明が難しいな。

オブ・イリュージョンとかいうコーナー。例のキネティックアートみたいなヤツ。パトリック・ヒューズ「広重とヒューズ」これ、おなじみトリックアートミュージアムによく出てくる手法の。自分が動くと絵も動いて見える。初めて見る人には相当のインパクトがあるヤツ。遠近と凹凸の目の錯覚を利用しているのさ。「生き写し」も凹凸と目の錯覚を利用した秀作。しかしここではアニッシュ・カプーアの「白い闇IX」というのが、何とも言えない意外とヘンな気分になる。単に白くて丸い窪みみたいなんだけどね。

アナモルフォーシスとかのコーナー。ルネ・マグリットがあるぞ「白紙委任状」という森で馬に乗ってるのがきれいな傑作だが……うん、なんか「光の帝国」を見たくなったな。あれぞマグリットの至高だ。ダリがある。おなじみダブルイメージもの。そうか人の顔だけでなく犬もいたのね。ハルスマンの「官能的な死」ダリの女体が集まってドクロってのを写真でやった力作……なんだけど、裸のモデル達と4時間も苦闘した割にはなんかイマイチじゃね? エッシャーがある。お約束で。レアンドロ・エルリッヒのインスタレーション「ログ・キャビン」窓の外の雪景色と外から見た中の暖炉とかの映像が裏表になっていて、窓と壁を丸太で組んである。やや大がかりながら……これもイマイチだなあ。トニー。アウスラー「ピンク」出たぁ! 名前は忘れてたけど、この手法は忘れん。立体人形みたいなのに顔を映してしゃべってるヤツ。キメエよキメエ。オレが子供なら泣いちゃう。エヴァン・ペニー「引き延ばされた女 #2」文字通り、立てに引き延ばされた女の上半身のリアルな立体。これ、チラシにもあって「ふーん」って感じだったが、実物を見るとものすごく奇妙な、なんか自分の目がおかしくなったような、そこの空間が歪んでいるような妙な気分になる。ある意味これが一番インパクトがあった。

売店にも騙しグッズがいろいろあって面白いよ。
http://www.bunkamura.co.jp/museum/exhibition/14_deception/index.html

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2014年9月 6日 (土)

 「種村季弘の眼 迷宮の美術家たち」(板橋区立美術館)

思えば渋澤龍彦はそれなりに読んでいるが、種村季弘はほとんど読んでない……いや「錬金術とタロット」という本が種村だったはずだ(と思ったが種村訳の本だった)。「日本におけるマニエリスムブームの火付け役」と書いてあるが、どうもこの「マニエリスム」というやつにゃあうまい定義がない。もちろん美術用語集などには、後期ルネサンスだの知的だの技巧だの奇想という言葉が並んでいるが、なーんかしっくりこないんだな。スポークンワーズにおける「ドープ」と同じで、ある種の何かを形容するんだけど、なんとなく説明が難しい。まあマニエリスムはオレ流に言うと「生理的にちょっとヤバい感じがする芸術」といったところかねえ。
現代日本で最もマニエリスムな造形というか存在は。私は「エヴァンゲリオン」だと思う。そうだなぁ、今回の企画でも入ったところのホールに吉野辰海のデカい犬の造形があって、なんかエヴァっぽい。「違う」というかもしれないが諸君、あのエヴァンゲリオンに性器が付いていたら立派な、というかごくまっとうな(?)マニエリスムアニメになると思わないか? 私としては、エヴァの作り手は絶対あれに性器を付けたかったと思う。子供も見るアニメだからやってないだけで……ってな指摘もまあ別に目新しくなかろう。

全体が種村季弘の世界なので、個々の作品云々を書くのも何だが、有名どころじゃエルンストやクレーがある……ちと小さいけど。鈴木慶則による「高橋由一風鮭」は……まんまじゃないか。これの意図は何だ? 模写みたいだけど模写じゃないヨってヤツ? 金子國義の油彩がある。あと展示室正面に中村宏の「円環列車 B-飛行する蒸気機関車」がドーン。これ、いつもは国立近代美術館にあるヤツね。セーラー服と機関車の。いつ見てもすごくイイんだけど、女子の手がゴツいな。それよりその隣の桑原弘明の「Scope」という箱もの2つ。これはちょっと驚きだ。そうかこの手があったか。ドールハウスみたいな部屋を穴から覗くものなんだが、スイッチでライティングを切り換える。面白いぞ。池田龍雄ののぞき穴タンスもなかなか。

作品はテーマごとに区切られているが、その説明は略……なんだけどまあ「没落とエロス」のコーナー。アルフレート・クビーン「死と舞踏」。昔からあるテーマね。そして、おおゾンネンシュターン! 絵が本業じゃなかったらしくアールブリュットなんかでも出てくる人だが、こういうところでは一層光るよな。怪奇的で派手でそして「ヤバい」。そしておなじみベルメールの人形バラし再構成した「人形遊び」いくつか。それからホールにあるのが現代日本、真島直子「地ごく楽」の造形もの。ミミズいっぱい(そう生々しくはないが)と魚ワサワサ。

……にしても、思うに近々現代日本にマニエリスムが息を吹き返すであろうと想像する。BPOにホネヌキにされたテレビが面白いはずもなく、ネットで全てを悟ったような気になり、絵も動画もニュースも人の死も全て「ネタ」として消費するだけで、そこにゃあシャレでキメる二次創作以外の創造もなく、かといって何かの世界にどっぷり浸かって鑑賞することも許されない虚無的ツッコミ至上主義社会。脳髄がイライラしないわけがない。そこでマニエリスムの再登場ですよ。世界は再び妖しく輝き始め、誘蛾灯に誘われる蛾のごとく密やかに人は集うであろう。まあ勝手な想像だが。

さて後半、あーそうそうホールにまた土方巽の「肉体の叛乱」映像があったよ。あしたのジョー展でも見たが、美術館は土方巽が好きだねえ。展示室に入るとおなじみ四谷シモンのシモン・ドール。球体関節。それからホルスト・ヤンセンのドローイングを久々に見た。北斎に心酔してた人だっけ? ここで衝撃の作品に出くわす。トーナス・カボチャラダムス「にこにこ元気町」……ぬぁんじゃこりゃあ! ごりゃすげえ! 女体町ってんですか、でも顔がエグいな。何よりも人がうじゃうじゃいてほとんどブリューゲルだ……っていうか色調もブリューゲルだな。隣の「バオバブが生えたカボチャの方舟」もいい。こいつぁどっちも「ヤバい!」……っていうか、なんで俺は今までこの人を知らなかったんだ? ちなみに日本人ね。ネットで見たらカボチャの「バベルの塔」を描いてた。やっぱりブリューゲルか。次、井上洋介「食事A」。食ってるぜっ自分の足を……しかし、こういう手合いを見るに、河原温の「浴室」って、あのシリーズだけであの人マニエリスムをやり切ったんだな。あの不気味で気持ち悪い洗練を思い出す。だから相当のもんじゃないと「ヌルい」と感じてしまうのだ。エルンストがまたあったと思ったらエルンスト・マックスだって。

しかしここはアクセスが悪い。都心から遠い西高島平からはさらに歩くし、成増からのバスも1時間に1、2本。でも行くべきじゃ。君の脳髄が乾いているなら死なないうちに行っておいで。
http://www.itabashiartmuseum.jp/main/exhibition/ex140906.html

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2014年9月 1日 (月)

ボストン美術館 華麗なるジャポニズム展(世田谷美術館)

今回は特別展なので用賀駅から百円バスが出ている(いつもやってほしい)。もちろん乗ったのだが、それにしてもこの辺の街は、通りがきれいに縦横に並んでいて、ド山の手の畑道まんまのウネウネ道に慣れている身としては奇妙な感じがしてくる。

開館ほぼ同時に行ったら結構混んでるのね。夏の企画があちこちで終わってるからなあ。残るはここと文化村ぐらいか。入って最初のホールに例の「ラ・ジャポネーズ」がドカーンとあるのかと思ったらそうではなくて、広重の浮世絵版画だった。人が鈴なりだったけど、見たところ初摺りじゃなさそうだなHAHAHA。有名な「大はしあたけの夕立」の橋にグラデーションかかってないだろ。浮世絵見たけりゃ浮世絵展に行った方がいいってんで適当にスルーじゃ。でもその部屋にあったブシュロン社の「インクスタンド」というケッタイな造形物は目を惹くものがある。なんちゅーかヘンテコジャパンみたいな込み入った置物。まあいいや。それからやっと外人が日本を描いた絵いろいろ。同じ傾向の浮世絵と並べて展示されているんで、その影響が分かりやすい。ルイ・デュムーランの「京都の鯉のぼり、端午の節句」とか写真を基にしてて普通に面白い。「女性」のコーナーがあって、美人画でよくある、物思いに耽る女性、とそれをモチーフにした絵。アルフレッド・ステヴァンス「瞑想」うむこれ、当時にあってなかなか萌え系じゃね。浮世絵界のグフ(←ってまだ言ってやがる)であるところの磯田湖龍斎が遊女とその連れの小娘を描いているが、小娘が大人の縮小コピーなもんで、なんちゅーか子供に見えん。子供は頭デカいんよ。ルノワールの「花飾りのある帽子」はリトグラフだがなかなかいい。一人がもう一人に花を付けてあげてるようなとこなんだが、女の子同士でヒソヒソやってる感に萌えルノワール。もっとも「あのオトコサイテーね」とか、そういうヒソヒソはやめていただきたい。えー次、歌麿の母子像「たらい遊」と並べてメアリー・スティーブンソン「湯浴み」ほほう、どっちも母親と赤ちゃんだがよろしいですな。確かにこういう母子像って、洋画じゃあんまし見ないような。ゴッホが一枚「子守歌、ゆりかごを揺らすオーギュスティーヌ・ルーラン婦人」背景が装飾的とは言うが、んーまあまあかな。ゴッホは浮世絵に憧れてはいたが、結局は浮世絵のあの雰囲気は描けず、独自路線になった、と思う次第である。

それからいよいよ次の部屋に目玉のモネの「ラ・ジャポネーズ」着物着て扇子持って振り向くパリのねーちゃん(パリジェンヌ)だぜ……結構でけえ絵だな。着物の柄であるところの武者絵の凹凸感が見事ね。それにしても、なんか着物っちゅーか、裾が厚ぼったい感じなもんで、ほらあのなんだっけ布団に袖の付いたヤツ、あれに見えるんよ。

さて次は「シティライフ」のコーナー。ここではジョン・エドガ・プラットの「ジャイアント・スライド」があまりに「浮世絵版画」なので嬉しい。そりゃ木版画ってこともあるけれど、なによりその躍動感とアクション。そうさ自然とか女性だけがジャポニズムじゃないんだぞっと。あと「最後の浮世絵師」楊洲周延の版画が出ているから忘れないでくれ。これで終わりかと思ったら、今回はまだ2階があるのだった。

2階「自然」のコーナーから。チャールズ・キャリル・コールマン「つつじと林檎の花のある静物」まあその、鉢植えの木で、リアルなんだけど……しかしこういうのを見ると「琳派ってすげーな」と思ったりする。名高い琳派の緒作品は、ここで「ジャポニズムに影響を与えた」と言われるあらゆる作品よりも高度な描写と装飾性を持っていると思う。従って、いかに当時のあちらの有名画家達が「ジャポニズム」ってガンバっても、琳派芸術を見てきた目からすると、何か不足気味なのさ。ポール=エリー・ランソンの「密林の虎」も、テオドルス・ファン・ホイテマの「三曲刺繍衝立」もコレジャナイ感満載じゃい。でもベンソンの「早朝」の鳥はいいね。それからアンソールの「貝殻のある静物」。うーんいいねぇこの妖しい色。この辺まで来ると疲れちゃって見落としがちなんだけど、これ見落とすなよ。アンソールの油彩はあんまり来ないんだぞ。

最後は「風景」のコーナー。浮世絵なんぞの影響を受けたので有名なホイッスラーなど。あと北斎の波の影響を受けた、ヤコビュス・ヘラルデュス・フェルデールの「波」……って、あんましうまくないな。いや、いかに北斎の描写がスゲエかってものになっておる。北斎の波に対抗できるのはクールベさんの波ぐらいだが、今回出てないや。まあジャポニズムじゃなくてリアリズムだもんな。それから画面を樹木などで区分けする「格子」という演出の影響でムンクの「夏の夜の夢(声)」んんんんジャポニズムかどうかよりも、この絵そのものがヤベエぜっ。月の光が下にびろーんと伸びた超現実感といい、女の顔がはっきりしないところといい。ムンクの不安で不気味な感じが冴えている。それからピサロの雪景色とか、あとモネの「積わら(日没)」おお、これまで浮世絵の影響なのか。

普段常設展示をやっている2階まで会場でスペースに余裕があるせいか、売店スペースが大きい。グッズいっぱい。
http://www.setagayaartmuseum.or.jp/exhibition/exhibition.html

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