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2014年11月22日 (土)

デ・キリコ(パナソニック汐留ミュージアム)

デ・キリコは私が初めて魅了された画家の一人なのだ。実家にかつてのキリコ展の図録があり、何かと見ていた。高校で机に落書きしたのはイタリア広場であり、建築学科の設計課題でイタリア広場の塔を使い、卒業設計でアリアドネを用いた。いずれもキリコのモチーフであった。人生何度目かのキリコ展だが、何か原点に帰る気分がする。会場が狭い割に点数が多いぞ。

形而上絵画(メタフィジカ)の絶頂期は早かった。今回の展示では序章に当たってしまうのだが、1915年から1920年ぐらいかな、あとはオワコンだった……というのが定説。でも実際のところ、どの時代もなかなかに面白い。序章では4作品。「謎めいた憂愁」のヘルメス像の顔がよい。異様な空間にいい味がつく。

次の章は古典への回帰。一応マチエールなどにこだわってたようだが、やはり初期のキレのある空間が好きな人にゃあ退化した印象を受けるかもしれないし、多くのシュールレアリストもそう感じていたようだ。しかしなんとなーく分かる気もするのは、オレだって一応創作者だからな。なんか奇をてらった天才的アプローチばかりしていると、何かあえてセオリー通りの、正攻法でやりたくなるんよ。なもんで、ちょっと異様な古典風がむしろ面白い。逆に「谷間の家具」みたいな、今までの延長っぽいものはむしろつまらん。あとは習作が並ぶが、あんまし見てない。

ネオバロックの時代。古典風とちょっとシュールがいい感じで融合していて、私は嫌いじゃないがね。「海岸の二頭の馬」がいい。まるで光と影が並んでいるかのようだ。普通の光景を描いていても、どこか超現実を感じさせるのはキリコ以外ではバルテュスぐらいか。「秋」が意外と面白い。一見普通の裸婦画なんだけど、背景を見たまえ。木があんなに小さく、道がうねっていて、あえて遠近を狂わせた。なんとこの裸婦が「進撃の巨人」に見えてくるではないか(こねーよ)。メインモチーフが何やら巨大になっているのでは静物も同じで「赤いトマトのある風景」や「田園風景の中の静物」もちょいシュールになっている。風景画「ヴェネツィア、パラッツォ・ドゥカーレ」はさすがに普通すぎ。「ノートルダム」はまあまあだな。

その後、キリコは再び形而上を極め始める。やっぱ自分はこれだな、という感じで。「イタリア広場」はいかにも正当キリコワールドで、塔、二人、建物、汽車(丸い煙がキュートだぞ)と、嬉しいモチーフがいっぱいだ。あと輪回しの少女とか、アリアドネとか、煙突とか、出てきてほしいね。煙突は隣の絵にあったかな。「古代的な純愛の歌」や「不安を与えるミューズたち」は昔のリメイクで、それ以上でも以下でもないな。いや、悪くはないけどね。「ユピテルの手と9人のミューズたち」こういうの結構好きだね。何だったっけな、真ん中に「ごちゃごちゃ」っとあるやつ。逆にマネキンものはオレあんまり好きじゃないの。

最後に永劫回帰のコーナー。うん、ニーチェですな。ここでオレの好きなモチーフ。「太陽の寺院」このひもで結ばれた太陽と黒太陽。こんなにイメージが明確で妙ちきりんで、愉快なものはないよな。何だよこの触手の生えたような太陽と黒い太陽ってシロモノは。でも好きだ。うーんすげえ好きだこれ。隣の「鴨のいる神秘的な水浴場」の水面のギザギザも好きなんだよね。街が集まって馬の顔、も悪くない。

絶頂期の初期は少ないが、キリコワールドは堪能できる。
http://panasonic.co.jp/es/museum/exhibition/14/141025/

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