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2015年1月11日 (日)

小山田二郎(府中市美術館)

期間が分かれていて、1部と2部がある。1部には行けなかった。気づいた時には終わってたのだ。だから2部のはじまりに行った。府中はちょっと遠いのだが、何しろ気になる。ポスターにもなっているのは「愛」だ。ま、それはあとに書く。

最初が「はりつけ」で、痛いというより暗い。なんとなくベルナール・ビュッフェを彷彿とさせる。あー、まあ描き方はずいぶん違うけどね。ビュッフェほどトゲトゲしてないかな。でも印象は近いものがあるよ。それから「小さき者」という女の子の肖像があるが、目が落ちくぼんでてなんかヤバい。「狂女」もね、なんか怖いね。描き方だけしてみれば、デ・クーニングを暗くしたみたいな感じなんだけど、うーん、対象に対する恐怖感がありあり……って感じかな。「月に吠える」はまんまピカソな感じ。で、山場がもう来るよん「ピエタ」と「愛」が並んでいる。「ピエタ」は確か前に……見たよな練馬かどっかで。なんとなくリアルさのあるキリストの死体は聖人って感じじゃないし、なんたってマリア様の顔がなんかこう……怖い嘆きのサルみたいな感じか。ラファエロやアングルみたいに描いてほしい向きにはうぎゃああなんじゃこりゃみたいですな。なんでこうなのか? 解説読んでも分かるような分かんねーよーなー感じ、なんだけど、隣の「愛」で同じマリア様が出てくる。背後にそびえる巨人のごときマリア様。中で怯えたような苦しんでるような飢えているような人々。左にマリア様の足がドカン。これも強烈な絵なんで……なんかイロイロ考えてしまう。と、優等生ならここで何を考えたかというのは書かないでおくんだが、オレはあえて書いておくよ。

年末年始に渋谷の公園が閉鎖されたんだってさ。火を勝手に使うヤツラがいるからって。で、正月のホームレスの炊き出しを計画していた団体は役所に猛抗議。命にかかわるとか、役所は人間じゃねえとか、果ては自民党が悪いとか。それはツイッターで拡散されオレも怒りの声の数々を目にしてた。で、公園は利用申請があれば火が使えるイベントもできるらしい。じゃ、その団体は利用申請をいつ出したのか? それが12月26日だと。もう休みギリギリ。許可なんぞ出せない。なぜもっと早く出さなかったのか? 一説に、わざと不許可をもらって、悪政をPRする手段にするためだと。つまりホームレスの命を利用して体制を攻撃する材料にしてたんよ。まあこの説、明確なことはなんも調べてもないもんで、本当はギリギリじゃなかったかもしれないし、余裕をもって出したって無駄だったのかもしれない。ただ、オレは「愛」という絵でこの手合いを思う。弱い者達に「愛」を。私達は愛で包み込む存在です。みんなが飢えることなく幸せに生きてほしいです。そのために戦います。敵は絶対に許しません。戦いに勝つために、あらゆる手段を尽くします。渋谷の件の団体がどうだかは分からないが、自分じゃ「愛」を持っているつもりが実は戦争をしている連中は存在するだろう。中の弱い人が疑問を感じでも、ドカンと立ちふさがる足から外には出られないのさ。マリア様の顔は、あの「戦う連中」そのものだ。あんたらはあんなにも醜いのさ。小山田二郎はそれを知っていたし、身にしみて味わっていたんだろう。

山場は越してしまったが、あとは「手」という作品がなかなかいい。折り曲げられた指。手のひらの中央に、目のような穴。自分をこうした連中を見ている目だ。あと「コンポジション」という死体みたいなのもイケる。あと有名な「鳥女」はうまいんだけど、普通に見えてしまう。

水彩画も並んでいて、結構テクニックがある。「太陽をくれ! イプセンの幽霊より」なんかイイね。多磨霊園あたりを描き始めた頃から少し明るくなる。もうビュッフェじゃなくて、シュールレアリスムの、エルンストみたいなのを描いてる。そういえばエルンストも鳥人間みたいなの描いてなかったかな。終盤、妻子をほっぽりだして逃げて、別の女と安らぎの隠遁生活(なんかヒデエ話だが)、ここで絵は完成し、「とりで―ポオ『黄金蠹』に於けるアナロジイ」や「火のモニュメント」はエルンスト的な完成度がある。うまい。うまいんだけど、なんか角が取れちゃって、オレは前半の方が好きだ。あと本の装丁なんかも紹介されてる。

前も見たなあと思ってたら、このブログの一番最初が何と2005年6月の東京ステーションギャラリーで見た小山田二郎展なのね。しかも「ピエタ」も見ていて、マリア様が「嘆きの動物漫画みたい」などと書いてある。10年変わってねえな。でも「ピエタ」さらに前にも見ているようだ。
http://www.city.fuchu.tokyo.jp/art/kikakuten/kikakuitiran/oyamadajiro.html

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