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2015年3月 8日 (日)

グエルチーノ展(国立西洋美術館)

この人は今まで知らなかったが、バロックの画家なんだって。バロックってのは何かというと、当時キリスト教じゃプロテスタントが出てきて、偶像崇拝はダメだとか言い出したんで、対抗するカトリックが、そこまで言うなら偶像(絵画とか)の底力見せたろかってんで陰影とか使いまくってドラマチックにやりだしたのがバロック。まあ概ねそんなとこだべ。ところで今回の企画何がいいかって、素描や習作で盛ってないで、全部油彩で大作も多い。あと、キリスト教絵画としてのドラマチックな演出の分かりやすさってのが、キリスト教徒じゃないオレにも何となく感じられる。これがまさにバロックなんだよなあ、と思う次第である。

展示はのっけからデカいのが並ぶ。「祈る聖カルロ・ボッロメーオと二人の天使」なんてほれ、天使だなあ、聖カルロさんだなあ、って分かりやすいだろ(?)。「聖カルロ・ボッロメーオの奇跡」では、奇跡で目が見えるようになった赤ん坊を子供が指さす。分っかりやす~い。それより赤ん坊、布でグルグル巻きなのね。これ、あっちの育児じゃああやってるらしいですよ(なんか聞いたことがある)。「聖母子と雀」これは、いいね。光と陰での演出なんだけど、カラバッジョほどコントラスト強くないからまったり見れますな。

階段を下りて、なじみ天井の高い部屋ね。「聖三位一体」。この主題ではベルギーのレオン・フレデリックのものが最高だと思ってるのだが(時代もずいぶん違うが)、精霊が鳩だけってのがちょい物足りないよな。レオンのは鳩の下に思い切り天使描いててそっちがメインだったりするけどね。あとキリスト教絵画の大作がドカドカ並んで、特に「キリストから鍵を受け取る聖ペテロ」がひときわデカい。しかしまあ、ここまでやられると、これは荘厳な教会に置いてあってしかるべきであって、美術館にあっていいのかな、という気分になるな。キリスト教じゃない絵もあって「マルシュアスの皮をはぐアポロ」おおギリシャ神話か。マルシュアスはアポロと音楽対決して負けたんで生きたまま皮はがされたんだって。残酷ぅ……なんだけど、絵は「やりはじめたところ」で、そう生々しくない……んだけど、じゃあ依頼主はなんで依頼したんだ? この程度の刺激でいいのか?

階段を上がって、また「アポロとマルシュアス」がある。今度はちょっと小さい絵でバストアップ、対決前の二人の表情……なんだけど、既にマルシュアス負けてるやん。勝負直後にも見える。「今の勝負ちょっとなしにしようよぉ。皮はぐとかやめようよぉ」って言ってるみたいだぞ。それからまたキリスト教画が連発。「聖母被昇天」は下から見上げた構図。頭の周囲で浮いてる星がチャームポイントよ。「放蕩息子の帰還」これ、よくあるテーマだけど、後悔して戻ってきたとはいえ、さんざんっぱら遊んで帰ってきた息子を祝宴開いて招くってのはなあ、真面目に生きてきた向きにゃあ面白くないよなあ。それから「聖母のもとに現れる復活したキリスト」も傑作。おお、キリスト様光ってるよ。ちなみにこの絵は窓っぽい枠を通して遠くからも見れるようになっている。

次は女性像のコーナーなんだけど、同時代のグイド・レーニって人との比較コーナーでもある。ここが結構面白くて、単にスケベなだけの依頼主に何とか対応している画家という感じで想像すると愉快だ。「クレオパトラ」は、毒蛇に胸を噛ませて自害したらしいが、その絵で、胸を出してるのはいいんだが蛇がえらく小さい。依頼主「んな、蛇が大きかったらオッパイが見えないじゃねーかよ。小さく描けよ小さく」。「ルクレティア」は夫の不在中に陵辱され、その後自害。あるべき女性像として絵に描かれる機会も多かったらしいが、依頼主は単なるスケベである。しかし体裁もあって「裸の女を描いてくれ」とストレートに言えないもんだから、依頼主「自分の胸を剣で刺したルクレティアを描いてくれ」。グエルチーノ「へえ、わかりやした」。依頼主「あ、あと、痛そうな顔とかやめてね、なんかかわいそうだから」。グエルチーノ「あーはいはい」できた絵を見たら、剣を刺そうとしてるがしっかり服を着てる。依頼主「なんで服着てんだよっ!」。グエルチーノ「いけませんか?」。依頼主「だって、おまえ、服の上からじゃちゃんと剣が刺さるか分かんねーじゃん。脱いでやるだろ普通」。グエルチーノ「そうかなあ……」。依頼主「いいよもう、グイド・レーニんとこ行くから」それでレーニに同主題を依頼。剣で刺した後の様子で望み通り上半身裸で顔はまったく普通。しかし、依頼主「あのう、この傷痛そうだから消してくれない」。レーニ「……(こいつ主題なんかどうでもいいのかよ)」以上は解説をもとにした想像だが、そんなレーニの「ルクレティア」も展示してある。このやりとりに疲れた依頼主は別の主題を発見「スザンナと老人たち」。美女スザンナは水浴中偉い老人二人に言い寄られたが拒否。裁判にかけられたが救われた。真実はお見通しだぞってな主題なんだが、要するに女の水浴が描きたいだけのもの。これで老人だけ描いてスザンナを描かなかったら依頼主にブチ殺された(かどうか分からないが、まあそうだろう)。

最後にまた宗教画のコーナー。「父なる神」で老賢人たる神様をしっかり描いているんだが……やっぱ神様っていうより偉そうなジジイだよなあ。こう言うのを見ると、プロテスタントや、あるいは偶像を完全拒否しているイスラム教の方がまっとうな感じもしてくる。

点数は多くないが、なかなか見応えあるぞ。
http://www.tbs.co.jp/guercino2015/

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