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2015年4月30日 (木)

橘小夢展(弥生美術館)

今こそ再評価が求められる、妖美の画家。弥生美術館でやるってことは美術系の画家というより、挿し絵画家系統なんだけどね。「幻の画家」なんて言われているようなんで行ってきた。出品リストを手にしてないんでメモ程度で。

最初に女の影が狐になっている、なんて絵がいくつかあって、これのテーマは「玉藻前」。これ、何かの話だったよな。解説も読んだはずだが覚えておらぬ。ともあれ、狐面持ってるのが一番よかった。あとは「唐人お吉」とか「お蝶夫人」(普通「蝶々夫人」って言うよな。「お蝶夫人」だとエースをねらえだもんなあ)とか、挿し絵系のものはビアズリーっぽい雰囲気。小夢は日本じゃなくて海外のもので画風を学んでいったそうだ。

日本画の展示があり、「火桶」うーん、顔が濃い。祇園井特みたいな京都系かと思ったら、この人、秋田出身だって。「花魁」を見ると、うん、なんか明らかに江戸末期に流行った「国貞美人」っぽいね。でも衣装が美しく見事である。あと「水妖」とか「水魔」とか水もの、「水魔」は女がカッパに沈められちゃうヤツ。死を恐れつつ死に惹かれてしまうデカダンなテーマ。それから挿し絵画家から出発した時の絵があって、それはもうストレートに夢二風。そうか、夢二スタイルって、こうも流行ったんだ。

2階に上がって「牡丹灯籠」の挿し絵。十等身国貞みたいな感じ。「江戸から東京へ」の絵とか、あと泉狂歌や江戸川乱歩の挿し絵。こいつぁお似合いだねえ。谷崎の「刺青」の挿し絵もあって、刺青の蜘蛛が何とも妖しい。あと衣装のデザイン。それからまた日本画。最後の方の「地獄太夫」これが非常によいですな。地獄絵の描かれた着物をまとう美人。その顔を見てふと思ったが、おお、なんかロセッティっぽいな。美女なんだけど、なんとなく、あれ、これって男の顔じゃないか。そんな両性具有な感じで。「地獄太夫」といやぁ暁斎だが(今芸大美術館に出てたかな?)、暁斎のと並べても引けはとらない魅力があるぞ。

3階はいつもの華宵。隣の建物はいつもの夢二だ。
http://www.yayoi-yumeji-museum.jp/

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2015年4月25日 (土)

マグリット展(国立新美術館)

前に今は亡き三越美術館でやった回顧展が1995年。そん時図録も買ったぐらいであった。今回はそのレベルのテンコ盛りだゾ。

一応年代順っぽい展示。初期はアール・デコ風のポスターなんかを仕事で描いてて、絵といやぁ未来派っぽかったりする。それからシュールレアリズムの影響を受け、明らかにデ・キリコの影響みたいな室内とか描いてる。「桟敷席」ってのがね、面白いね双頭の女なんか描いちゃって。あとは「風の装い」ってのは、多分画集なんかだとただの白いエリアみたいに見えるだろうけど、本物はちゃんと「板」っぽく見える(と描いたところでなんのこっちゃら分からないよな)。「狂気について瞑想する人物」は普通に人を描いてるだけなのに、なんかシュール絵っぽく見えるのが不思議だ。「恋人たち」の顔を布で覆ったキスのヤツ。面白いというより、なんか生々しいは見せないぞって感じか。「発見」は女の肌の一部が木目。「深淵の花」でおなじみ鉄鈴が出てくる。鈴が花になってるんだぞ。「出現」は空に出た妙な不定形。エヴァンゲリオンの「使途」に使えそうじゃん。「不穏な天気」は……待てよ「不穏」って「ふおん」って読むのか。ずっと「ふいん」って読んでて、なんで今変換できないんだと思った。ま、とにかく典型的なデペイズマン(無関係な物を並べて楽しむ)作品。「呪い」は、そう、これが呪いなんだってよーおらおらおらなんかすげーよな、って感じで楽しんでくれ。「透視」は卵から鳥を透視したぜ。「新聞を読む男」あ4つ並んだ同じ部屋の一つに男がいる、それだけでもう、妙な雰囲気。待てよ、これ別バージョンの、なんか不定形生き物が出てくるヤツなかった? あれパロディか。誰が描いたんだったかな。「美しい虜」風景を切り取る絵を描いたキャンバスの絵。マグリット「らしい」定番。「野の鍵」も窓ガラスに映った風景が、窓ガラスが割れたら、風景が映ったまま割れとるというヤツ。定番。「巨人の時代」これは男女物の傑作じゃね。「哲学者のランプ」鼻パイフがはなはだ愉快である。「陵辱」はおなじみ女体顔。キメエ。なお、このあたりは女体コーナー。「旅人」広大な海に浮かぶ何かゴチャッと集まった球体。海の広大さがミソな。「占い」鼻がドン! の絵。マグたんってばなんか鼻にこだわりがあるんじゃね? でも鼻って面白いよな。「アルンハイムの地所」おなじみ山脈が鳥の翼。鳥のちっちゃい頭つき。「人間嫌いたち」巨大カーテン群、いいね。「絶対の探求」オレが一番好きな絵の一つ。夕日とそして葉脈の形をした樹。詩情もありあり。「禁じられた世界」一応人魚。なお、この辺は戦争中で印象派っぽい描き方をしている。「不思議の国のアリス」ある意味、今回これが一番驚いた。なぜか? このタイトルでなぜアリスを描いてないのだ? 樹に顔があるのと、空に浮かぶ変な洋なしのオバケみたいなヤツだけ。アリスはどうした? 「アリス」という極めて象徴的存在をなぜ描かずに済ませられるのか? そういえば……おお、そういえば、マグリットが子供を描いた絵って無いんじゃね? 一応今回「ジロン家の肖像」に子供はいるけど、これは肖像だしなあ。女描いても大人の女ばかりだ。おお、これは発見だゾ。アリスを描かないのはアリスが子供だからだ。何らかの理由でマグリットは子供を描かんのだ。

ここで会場のだらだら書きをいったんやめて、なんでマグリットが子供を描かないのか勝手にだらだら考えてみようぢゃないか。いや、そんなにこれ、難しくないぞ。それはね、子供の世界だと思われるのがイヤなんだ。会場の解説にもあるように、マグリットは極めて哲学的なアプローチで主題を描いてる。これで子供を出して、「なんだこの子の無邪気な夢想かぁ」などと思われては困る。「不思議の国のアリス」にしても、アリスを出したら「アリスちゃんの夢の世界」になってしまい、「割と普通に」見れてしまうのだ。それはイヤだ。あくまで我が世界は「大人の愉しみ」である。ガキの普通では困るのである。この場合「アリスが見た不思議の国とはいかなる仕様の世界であるか」である。だからアリスは出さんのじゃ。絵に子供も出さんのじゃ。調べもせず勝手なことを考えるなと言うヤツもいるかもしれないが、調べもせず勝手なことを考えてこそ楽しい美術鑑賞なんだぜ。

さて会場に戻る。「観光案内人」顔が大砲で火を噴いてるヤツ。あと戦争中、フォーヴみたいな作風にも挑む(「ヴァージュ」とか言ったそうな)。その作品2つ「飢餓」「絵画の中身」確かに……うむ、ラフだ。一応面白いが全く「らしくない」。あと「快楽」印象派風の地味な作品だけど狂ってて好きだな。鳥食っちゃってるの。あと、この辺写真いろいろ。さてヴァージュもしっくりこなかったのか、さっさとやめちゃって、元の作風に戻る。「会話術」の海の感じがいい。「自然の驚異」出たぞっ! 人魚ってさー、上半身人間で下半身魚だけど、逆もアリなんじゃね、という定番ギャグを1953年にかましたマグリットです。そして「光の帝国Ⅱ」広告で見た時はどうかと思ったが、やっぱ本物はええなぁ。我が愛する「光の帝国」シリーズ。夜の町と昼の青空、相反するものの一致による神秘をここまでさりげなく描いた驚異の絵画よ。「ゴルコンダ」は男雨(降ってるのか?)。そういえばその昔、コピーのミタのCMで車が降ってくるのあったな。あんな美しいCMもう無いよなあ。「白紙委任状」は樹と馬に乗る人が……ああもう説明がめんどくせえや。「大家族」。海を飛び立つ青空の鳥。マグリットの代表作……なんだけど、これ持ってるの宇都宮美術館なんだよね。すげえ日本にあるんだ。「レディ・メイドの花束」うまく活用ボッティチェリ。

ってなわけで目に付いたものだけでもこんなある。書いてないのもまだまだあるんだな。初めてマグリットを見る人は長時間を覚悟。
http://magritte2015.jp/

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2015年4月20日 (月)

高橋コレクション展(東京オペラシティアートギャラリー)

サブタイトルが「ミラー・ニューロン」だそうで、前の「ネオテニー」ん時もそうなんだけど、またわけのわかんねー横文字持ってきちゃって~ とはいえ、高橋コレクションは今時のウケのいい、インパクトも十分な現代アートが揃っているんで、現代アートはつまらんし難しいんじゃねーかと思って敬遠している向きにも、とりあえずコレってことで楽しめるはずじゃの。

最初に草間彌生の部屋。ブツブツの気持ち悪いのが多いんだけど、「カボチャ」はデザイン的にも割と普通に見れる。「シャロン・テイト」という題の絵があって……はあ、あのシャロン・テイトかい。あと「森の中に立つ女」というのが結構ビョーキっぽさを感じさせるね。それから、おお、世界の村上隆だ。初期の「ポリリズム」とか出てるんだけど、これはあんまりパッとしないんだよね。でも、何でコレクションで持ってるんだろう。有名になってから所有したのかな。もし、後の活躍を見越して持ってたんならそりゃスゲエ。「ルイ・ヴィトンのお花畑」がやっぱり「らしく」ていいよな。Mr.って人のマンガ少女の絵があり、ああ、これカイカイキキ一派の人かな。ちょい病みな感じ。それから……そうそう、有名な奈良美智がある。これは普通っていうか何度も見てる「あの」感じ。それから、鴻池朋子があるね、エロい脚だね。でも足以外は狼(?)に包まれてて見えないのね。オンナの絵だなあ。森村泰昌のモナ・リザに扮した自分撮り。中に赤ちゃんがいたりしてちょっとキモい。「Doublonnage Dancer」とかいう花をまとった自分撮り、これ、もっと花をゴテゴテと悪趣味にやってほしい。そうだ、レオン・フレデリックのあの絵みたいにさ。小沢剛……どうもその、この人名前よく見るけど何が凄いのかよく分からんの。あと、なんだこりゃなんでこんなもんがあるんだ、と思ったら横尾忠則で。横尾作品もなんか自分と肌が合わない。あと、有名どころもいくつか、やなぎみわの女性集団写真とか、山口晃とか、おお、そうそう会田誠。そおっ、あのっ、「ジューサー・ミキサー」に何度目かの再会。もう見慣れてる。でも初めて見る人はきっとショーック! それより「美しい旗」ってのがね、私はつくづく、芸術家だからってサヨクになってほしくないんだよね(まあウヨクもだが)。会田誠はこういうのを描いても、右にも左にもちょっと距離置いてる感じで、そこがいいのだが。あとは、ポスターにもなっている。名和晃平「PixCell-Lion」。なんか凄い評価されてるみたいだけど、オレはどうも……あかん。透明ガラス玉も無数に組み合わせて動物を作る。ガラス玉一つ一つは透明できれいなんだけど、無数の集合体になるとブツブツにしか見えんの。お、舟越桂だ。それから加藤泉……立体人物も不気味だが、絵画がなんかより不気味人間みたいで怖い。束芋の、日本の部屋の模型とそこに映る動画の組み合わせ作品がある。うん、面白いよ。次の部屋…………う、う、うわあああっ。うぎゃーーーーーーっ!(そうだ、これから見に行く人はここに何があるか知らない方がいい。見えないように色を変えるから、読みたい人はカーソルで選択せよ) 巨人が襲ってくるうっ! 主題とか意図とか出来がどうこうよりプリミティブに怖い。西尾康之「Crash セイラ・マス」ってあのガンダムのセイラさんかい。ひでーなおい。でもちゃんとサンライズの許可も取ってある。が、どう見てもいろんな意味で「進撃の巨人」。腹もアレだもんなあ……それより素材の匂いらしきものも作品の一部みたいで香りもヤバい。さて、部屋を出て荒木経惟の写真、待て、どこかに蜷川実花の写真もあったな。それから池田学「興亡史」何度目かの再会で見慣れてるが、恐るべき緻密な構成の絵画。これも初めての人はガツーンとクるはず。町田久美の不気味絵もキモチイイよな。

有名どころも揃っている。みんなで楽しく行こう。
https://www.operacity.jp/ag/exh175/

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2015年4月18日 (土)

「若冲と蕪村」(サントリー美術館)

どーせ若冲目当てだろうという声もあるが、どーせ若冲目当てであり、結果的に若冲マジスゲーという印象っきゃない。アート通ならしっかり蕪村のよさも感じ取れるであろう。オレはアート通ぢゃないんだ。君ならきっと大丈夫だぜ。にしても、展示替えが多いな。

最初に寄合膳という何人かで描いた膳があって、その中に若冲も蕪村もあるはずだが、蕪村が出てる期間は決まってる。まあいいんだ。次からいきなり若冲の連打。「花卉双鶏図」(←なんて読むんだ?)の緻密鶏、「隠元図、玉蜀黍図」(←?)の水墨の草、その他が並ぶ。こりゃええわい。対する蕪村も負けずに「晩秋飛鴉図屏風」はカラス数匹。離れて見ろよ。「十二神押絵貼屏風」うん、がんばったね。このあたり「出発と修行の時代」コーナーなのね。若冲もうデキ上がってるじゃん。

「画風の確立」というコーナーで、若冲の「枯木鷲猿図」でいきなりブッ飛ぶ。ぬぁんじゃこりゃあ!? こんなフラクタルみたいな幹の描き方なんて見たことないぞ。何か異様な視覚効果を狙っているとしか思えない。若冲ってヤツの頭ん中はどうなっているのだ? 他にも「梅花小禽図」なんて琳派も驚く画面構成。「河豚図」は鯉を描きかけてやっぱ変えたみたいなヘンな魚。「魚みたいな何か」になっている。対する蕪村……蕪村どうした? 「鯉図」「柳江遠艇図」に現場チェックが入っているけど覚えてねえ。「猛虎飛瀑図」は虎だよ。力作だけどなんか普通だ。いや、一応うまいんだけど、相手が若冲じゃインパクトにおいてかなわない。

「新たな挑戦」コーナー。若冲は水墨の「筋目描き」というテクニックを持っている。墨の間に白い筋を浮かび上がらせる高等技術。「四季花鳥押絵貼屏風」は水墨テクを堪能できる。「双鶴・霊亀図」で2度目ブッ飛んだ。こ、これはっ……亀の甲羅は筋目描きで丁寧だが、その後ろの毛が激しくマックロに塗りつぶされた炎のごとく、鶴は体がシンプルな楕円、そしてその脚が草間彌生だ。いや、そうなんだ。草間が描いてた「あれ」を若冲がやってるとしか思えん。結果、極めて現代的な抽象にも見える。若冲ヤベー。隣の「烏賊図」もイカの本で紹介したかったイカす絵だ。あと若冲、達磨とかも描いてる。「乗興舟」は「拓版」とかいう版画で今時のイラスト風。蕪村は……蕪村はどうしたんだ? 「『学問は……』自画賛」とりあえすこういう五七五が描いてあるマンガ風のものは楽しめるじゃ。あと「奥の細道画巻」はおなじみ「奥の細道」を写して絵を付けたもの。ガンバレ蕪村。

「中国、朝鮮絵画からの影響」コーナー。ここでやっと蕪村の山水画が登場。「倣銭貢山水図」(←だからなんて読むんじゃ)。ぐぁんばれ蕪村。「双馬図」よし、うまいぞ蕪村。リアルじゃねーか。元ネタというか、こっからの影響みたいな絵が隣にあって「秋渓群馬図」沈銓って人だって。……いや待て、その前に、階を移動したんだ。階段を降りたところに大作3つ、目玉の若冲「象と鯨図屏風」これもケッタイな絵だ。右の象はなんちゅーか餅オバケみたいなヘンなヤツだし、左のクジラは潜水艦みたいだし(ま、これは普通か)、でもなんか普通の屏風じゃねーよ。対面に、若冲が影響を受けたとか受けてないとかの誰それさんの屏風。それから若冲の隣に蕪村の「山水図屏風」晩年作らしいけど、うん……普通だ。いや多分、中国の山水のお約束をきっちりやってると思う。仕事きっちり。でも、だから普通なんよ。それから展示室へ。若冲の「仔犬図」が犬のくせにモチモチ。隣の「箒に狗子図」もモチモチモチ。いやカワイイんだけどさ。

「隣り合う若冲と蕪村」コーナー。交友関係だって。いろんなヤツが出てるが、ま、どーでもいいや。若冲の「蟹図」なんちゅーか、抽象なの? みたいな。「海老図」も筋目テク炸裂……と、なんとなく妙なところが。蕪村もいろいろあったが覚えてねえ。

「翁の時代」要は晩年。ここで蕪村の反撃。「富嶽列松図」で文人画タッチを極め(たのか?)、他にも力作いろいろ……なんだけど、最後の若冲「菜虫図」であっけなく撃破される。そうだ、これが3つ目のブッ飛びだぁ! これは、これはどうみてもシュールレアリズムだ。何かミロの絵みたいだ。違う? いや、もちろん違うよ。抽象じゃないんだけどね、葉の描き方がどうも何かのオブジェなんだよね。どれも同じ感じでしょ。時代を200年先取りだぜ。次の「石峰寺図」も同じような抽象的な人を空間に配置していく面白さよ。最後の「托鉢図」も遠目で見て妙な現代性を感じずにはおれない。やっぱ若冲スゲーや。若冲と同じように時代を超えたオーパーツみたいなのを描いたのは、あとはターナーぐらいかな。

やっぱ土日は混むだろうねえ……
http://www.suntory.co.jp/sma/exhibit/2015_2/

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2015年4月12日 (日)

小林清親展(練馬区立美術館)

練馬区立美術館と図書館がある建物に隣接する緑地が改装され、美術の森緑地とかいう、アートっぽい動物のデカいオブジェが並んでいるようになったじぇ。
小林清親といやぁ、「最後の浮世絵師」と解説にあったが、私はそうは思わないんだなあ。「最後の浮世絵師」はやはり楊州周延としたいねえ。清親はどれかというと明治新時代の木版画の第一号、という感じ。

珍しく鑑賞順が上の階から。いきなり清親の魅力が最も炸裂する「光線画」の版画が存分に堪能できる。コーナー分けがされていて、「橋」のコーナーでは名作「東京新大橋雨中図」の橋が映る広い水面がいい。「元柳橋両国遠景」の遠くにかずむ橋も魅力。それから「街」のコーナーになる。明治の街だ「萬世橋朝日出」の逆光の建物なんて、自然に描くなんて結構難しいんじゃね。汽車が走っている「高輪牛町朧月景」はいかにも文明開化、だけど、これ実際走ってた汽車とは違うんだって。参考にした外国の本が展示されてるよ。「夜」のコーナーでいよいよ光線画の本領発揮。「今戸橋茶亭の月夜」等の夜景の魅力。「川崎月海」の船、月の光、海面、う~んいい。「日本橋夜」は暗い絵だけど、街灯なんて無い時代だから、多分実際の夜はこんな感じだったんだろうなあ。それから「水」のコーナーも清親得意の水面表現。あとは雨だな。「梅若神社」は白い線での雨表現。これ、白い顔料であとから摺ったんじゃないんだな。線のところだけ摺らないように彫ってる努力もの……だけど、そこまで効果あるかなぁ。「橋場の夕暮」の虹はイマイチ。「不忍池畔雨中図」は凄い。版画でここまで「水たまり」を表現できるとはっ! それからなんだっけ「武蔵百景之内……」とか「日本名名勝図合……」とかのシリーズがあるんだけど……あれ? 光線画じゃないと結構普通に江戸浮世絵っぽいぞ。夜景や水面のキレとクォリティに感激していると、このあたりから「?」が出始める。「火事」コーナーと「動物」コーナーでやや持ち直す。特に「猫と提灯」。これ、こないだ藝大美でも見たが、版画でありながら、まるで水彩。今回この秘密が明かされている。この絵の「順序摺り」が出ているのだ。版画で少しずつ色が加わっていくのだが、その摺りの数はなんと三五回だってよ。順序摺りは全部は出ていないが、ビデオで全部を確認できるぞ。

風刺画や戦争画のコーナー。清親は風刺画家としても有名で、「清親ポンチ」なるポンチ画も描いている。しかし、当時の世相の何とかなもんで、何をどう風刺しているのかイマイチ分からない。いや、絵そのものは面白いんだが。あと、風刺といえば反権力だと思うかもしれないし、私もそうなんだが、清親はこの後戦争画を描いているのね。戦争なんて思いっきり体制側じゃん。とはいえ清親の戦争画は、光線画のテクニックを使用した力作だね。他に肉筆画の掛け軸がいくつかあるが……んん? あの巧みで詩情あふれる光線画に比べると、なんじゃこりゃ系が多いぞ。「富士図」はラフすぎるし、「弁慶・牛若丸図」はなんだ、ヘタウマか?

階を下がって、肉筆画とスケッチ。なんか上の階で肉筆に疑問符が付いちゃったけど、始めの水彩何作かがなかなかうまい。「人参、いりこ、里芋」もうまっ。「四季幽霊図」は、ちょっと怖いね。特に一番右の顔だけちょっと見えてるやつ。あと目玉は「獅子図」思いっきりライオンだ。解説によると清親は本物のライオンを見たこと無かったらしい。でも、このデキは見事ですな。

にしても、清親はどこでこれらの洋画テクニックを学んだのか、一応、横浜に来てたワーグマンに学んでたらしいが、はっきりしたことは分からないんだって。
五〇〇円で価格的にも魅力だぞ。
http://www.shizubi.jp/exhibition/future_150207.php

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2015年4月 5日 (日)

ダブル・インパクト(東京藝術大学大学美術館)

ぬおぉ! みたいなポスターと、モノモノしいタイトルで、なんかイメージだけのチャラい企画なんじゃねーかと思ったりするが、これがなかなかどうしてタイトル通りの展示内容なんだな。文明開化で西洋から受けたインパクトと、西洋が日本から受けたインパクトを、藝大美術館とボストン美術館の収蔵品から見ていくのさ。ベティさんと源さんのマンガコメントもあって分かりやすいように工夫されてるじょ。

3階から始まり。最初は黒船が来た、ってことで、ベリーの上陸図……よりも次の河鍋暁斎の錦絵「蒙古賊船退治之図」がいかにも文明開化の爆発じゃぁ!みたいな感じだな。しばらく開化もんの錦絵、あと洋画の技法が入ってきて鮭でおなじみの高橋由一がある「浴湯図」……女湯覗いたんかい。ま、それはいいとして、「花魁(美人)」……おお、日本人が洋画技法で描いた日本の花魁じゃい……び、美人なのか? なんかイカツイ感じがするんだが。慣れない技法のせいか、あるいは今の美人と基準が違うのか。

次の不思議の国JAPANコーナー。あっちが驚いた日本の工芸だじぇ。鈴木長吉「水晶置物」が見事だ。うん、水晶玉が。いや土台もいいすけど。蒔絵の硯箱とかは手堅い。あと外人が驚いて弟子になっちゃたのもいた画鬼こと河鍋暁斎がいくつか。名作の「地獄太夫」もいいが、「風神・雷神」はその迫力では宗達にも決して負けてないぜ。それから「人体骨格」これチラシで見て等身大かと思ったら、鹿の角でできた精巧なミニチュアなのだ。全部の関節が動くんだど。すげえ。あと、おなじみ自在置物の「竜自在」これがかつて見た自在置物の中では一番デカい……が、自在置物ってのは小さい方が緻密精巧の脅威をより感じちゃうので、なんか実物大の蛇とかの方がなんか好きだなオレは。

それからまた文明開化の錦絵とか。最後の江戸風浮世絵師で再評価が望まれる楊州周延の錦絵が何枚か。しかし天才井上安治(探景)がやはりいい。「霊岸島高橋の景」の夜の鉄橋が美しいじゃあないか。あとおなじみ小林清親もいくつか。「猫と提灯と鼠」……これ錦絵つまり木版ですってよ。どうみても水彩。彫りと摺りのバカテク。それから西洋美術で西洋技法の風景とか。高橋由一の「司馬江漢像」が嬉しい。油彩の先駆者としてリスペクトされてるぜ江漢。当時は蘭学者にボロクソ言われてたけど、やっぱスゲエんだ。あとラグーザの日本人リアル彫刻に驚く。

地下2階へ。西洋崇拝じゃなくて日本美術も発展せにゃあいかん、とフェノロサが言ったのさ。そういう方向の作品。藝大自慢の収蔵品、狩野芳崖「悲母観音」が出ている。まだ見てないヤツは拝んでおけ。今回ボストンが持ってた岡倉秋水の模写バージョンも展示。オリジナルを至近距離でじっくり見て写した……はずなんだけど、なぜかコントラストが強くてパチモン感が出てしまった。そうか、難しいんだな模写って。あと狩野芳崖なら「谿間雄飛図」前景の鳥が引き立つ背景のテクニックが実に文明開化だ。いやそれより驚いたのは横山大観「滝」「月下の海」「海」、線で輪郭を描かない「朦朧体」。言葉は知っていたが、おぉ、これほどのもんだったとは。時代をぶち抜く表現に驚きだ。この頃の大観はマジスゲエな。なんで富士山にお日様みたいなしょーもないもん描くようになったんだ? ポスターにもなってる小林永濯「菅原道真天拝山祈祷の図」劇画タッチ。あまりに劇画なんで、かえって普通に見れちゃう。菊池容斎「九相図」。女が死んで腐って骨になるまでの九段階の絵。命の無常を表現するものだが、普通にキモチワルイ。こうして見ると、死体よりも骨の方がスッキリしてて気分よさそうだ。九相図ってよく聞くけどまんま展示されることはあまりないよな。

最後は天皇ものとか日清・日露戦争とか、あと留学生の洋画もあるぞ。黒田清輝は解説にバッチシ書いてあるのに、展示してねえ。名古屋会場だけだと。ケチだな。あとはデカい「神武天皇立像」とか、明治天皇の肖像やら正面奥の賑々しい「戦勝万歳図」やらを見て、さらに源さんがドヤ顔しているのを見ると、これで締め括っていいのかって気にもなる。なんたってこの辺からもう軍国主義真っ盛りになるもんなあ。やがて世界大戦になり敗戦になるんだ。こういいところで終わらすなんてやっぱ右傾化しとる、と感じないでもないが、まあこの企画とは関係ないよな。

分かりやすくて驚ける。君にもインパクト。
http://double-impact.exhn.jp/

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2015年4月 2日 (木)

ボッティチェリとルネサンス(Bunkamura ザ・ミュージアム)

こないだの日曜に半日出社したんで半日代休よぉ。だから行けたんだぜド平日に。

最初になぜかフィオリーノ金貨の話。この国際通貨ができたんでルネサンスが繁栄したんだって。もちろん金貨そのものも展示しとる。で、その金貨コーナーの最後にあるのがボッティチェリの「ケルビムを伴う聖母子」。この額縁んとこに金貨が描いてあるんだな。その筋からの依頼による絵だったみたい。しかし、なかなかいいね。マリア様の顔が、あの、ほら、イタチ系のカワイイ動物みたいで。絵もきれいだしな。

そんなわけで繁栄の証の銀行関係の金庫とか鍵とか、なんかガラクタみたいな展示品があって、金融関係の絵もある。あと、ん、世界地図があるな。日本は島2つという表現なんだけど、どこをどう訪問したらこうなるんだ? ボッティチーニって人の「大天使ラファエルとトビアス」って絵がある。大天使と美少女らしき人物が描いてあるが、こういう場合美少年なんだよなと思ったらやっぱりトビアス少年よぉ。その隣がボッティチェリの「受胎告知」。受胎告知シーンの後ろに大天使とトビアスが描いてあるというもの。全然別のところから持ってきた2つの絵が、こう関連づいて並んでいるってのが企画の妙だ。それよりこの受胎告知のガブリエルが天使らしくなくて妙に腰が低い(なんか意味があると思うが)。「あーすんまへん、ガブリエルでおま」「なんでっか?」「あんた、子供できよったで」「んなアホな、子供できるようなことしてまへん」「そない言うたかて、できたもんはできてまんのや」まあそんなところか(どんなところだよ)。それからフィレンツェの繁栄。フラ・アンジェリコ「聖母マリアの埋葬」「聖母マリアの結婚」。おぉフラ・アンジェリコって……ほとんど見る機会無いよな。レアだ、レアもんだ。隣はロレンツォって人の「バーリの聖ニコラウス伝」。少年が大人のまんま縮小で描かれているので、ほとんどコビトですな。そうかこの時代もこの程度か。それから愛と結婚コーナーで、「スザンナの物語」の櫛。これは、例の「水浴のスザンナ」のヤツか。確かに水浴シーンもあるようだが。あとスザンナ物語のテンペラ画もあるね。これも水浴シーンがあるんだが、どっちもそれ以降の話もちゃんと描いている。詳しくは覚えてないが、全体を通して、結婚のためのなんか縁起物の話なんだな。後のスケベな画家どもが水浴シーンだけ喜んで描いてまんのや。

で、次のコーナーが「銀行家と芸術家」なんだけど、そんなんもうどうでもよくて、なんとボッティチェリだけで部屋が埋まっている仰天もの。おいおいスゲーじゃないか。正面にデカい「受胎告知」のフレスコ画……よくまあこんなのまで持ってきたな。この絵の天使は天使らしく颯爽と登場している。マリア様もいい顔。そのマリア様の寝室も描いてあるが、当時のフィレンツェ風だって。ほーそうか、宗教画でも当世風にしちゃうんだな。それから部屋の右側は聖母子が並ぶ。左側には「聖母子と洗礼者ヨハネ」……有無を言わさねえな。これ、なんでかっていうと構図が三角形でバッチシキマっているからだな。隣の「キリストの降誕」も面白い。赤子のキリストをマリア様と……誰かと、あと牛とか馬とか……ロバか、あと天使も見守っている。楽しいねえ。しかしキリスト様貫禄ありすぎ。赤ちゃん社長みたいじゃないか。それから「ヴィーナス」があって、これ超有名な「ヴィーナスの誕生」のヴィーナスだけ抜き出した工房作。なんか上に薄いの着てるやん。これじゃ誕生じゃねえし。さすが適当な工房作。

あとフィオレンチーノの聖母子とか、ストロッツィの金ピカな受胎告知とか、うーん、うまくねえなぁ。こういうの見ると、ボッティチェリってやっぱすげえな。あーでもボッティチーニって人の聖母はなかないいですな。顔がね。それからあとはなんか肖像とか、ボッティチェリ工房のとか。

しかしよくこんだけボッティチェリ持ってきたもんだな。貴重なもんが見たい人はダッシュでゴーだ。
http://botticelli2015.jp/

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