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2015年4月12日 (日)

小林清親展(練馬区立美術館)

練馬区立美術館と図書館がある建物に隣接する緑地が改装され、美術の森緑地とかいう、アートっぽい動物のデカいオブジェが並んでいるようになったじぇ。
小林清親といやぁ、「最後の浮世絵師」と解説にあったが、私はそうは思わないんだなあ。「最後の浮世絵師」はやはり楊州周延としたいねえ。清親はどれかというと明治新時代の木版画の第一号、という感じ。

珍しく鑑賞順が上の階から。いきなり清親の魅力が最も炸裂する「光線画」の版画が存分に堪能できる。コーナー分けがされていて、「橋」のコーナーでは名作「東京新大橋雨中図」の橋が映る広い水面がいい。「元柳橋両国遠景」の遠くにかずむ橋も魅力。それから「街」のコーナーになる。明治の街だ「萬世橋朝日出」の逆光の建物なんて、自然に描くなんて結構難しいんじゃね。汽車が走っている「高輪牛町朧月景」はいかにも文明開化、だけど、これ実際走ってた汽車とは違うんだって。参考にした外国の本が展示されてるよ。「夜」のコーナーでいよいよ光線画の本領発揮。「今戸橋茶亭の月夜」等の夜景の魅力。「川崎月海」の船、月の光、海面、う~んいい。「日本橋夜」は暗い絵だけど、街灯なんて無い時代だから、多分実際の夜はこんな感じだったんだろうなあ。それから「水」のコーナーも清親得意の水面表現。あとは雨だな。「梅若神社」は白い線での雨表現。これ、白い顔料であとから摺ったんじゃないんだな。線のところだけ摺らないように彫ってる努力もの……だけど、そこまで効果あるかなぁ。「橋場の夕暮」の虹はイマイチ。「不忍池畔雨中図」は凄い。版画でここまで「水たまり」を表現できるとはっ! それからなんだっけ「武蔵百景之内……」とか「日本名名勝図合……」とかのシリーズがあるんだけど……あれ? 光線画じゃないと結構普通に江戸浮世絵っぽいぞ。夜景や水面のキレとクォリティに感激していると、このあたりから「?」が出始める。「火事」コーナーと「動物」コーナーでやや持ち直す。特に「猫と提灯」。これ、こないだ藝大美でも見たが、版画でありながら、まるで水彩。今回この秘密が明かされている。この絵の「順序摺り」が出ているのだ。版画で少しずつ色が加わっていくのだが、その摺りの数はなんと三五回だってよ。順序摺りは全部は出ていないが、ビデオで全部を確認できるぞ。

風刺画や戦争画のコーナー。清親は風刺画家としても有名で、「清親ポンチ」なるポンチ画も描いている。しかし、当時の世相の何とかなもんで、何をどう風刺しているのかイマイチ分からない。いや、絵そのものは面白いんだが。あと、風刺といえば反権力だと思うかもしれないし、私もそうなんだが、清親はこの後戦争画を描いているのね。戦争なんて思いっきり体制側じゃん。とはいえ清親の戦争画は、光線画のテクニックを使用した力作だね。他に肉筆画の掛け軸がいくつかあるが……んん? あの巧みで詩情あふれる光線画に比べると、なんじゃこりゃ系が多いぞ。「富士図」はラフすぎるし、「弁慶・牛若丸図」はなんだ、ヘタウマか?

階を下がって、肉筆画とスケッチ。なんか上の階で肉筆に疑問符が付いちゃったけど、始めの水彩何作かがなかなかうまい。「人参、いりこ、里芋」もうまっ。「四季幽霊図」は、ちょっと怖いね。特に一番右の顔だけちょっと見えてるやつ。あと目玉は「獅子図」思いっきりライオンだ。解説によると清親は本物のライオンを見たこと無かったらしい。でも、このデキは見事ですな。

にしても、清親はどこでこれらの洋画テクニックを学んだのか、一応、横浜に来てたワーグマンに学んでたらしいが、はっきりしたことは分からないんだって。
五〇〇円で価格的にも魅力だぞ。
http://www.shizubi.jp/exhibition/future_150207.php

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