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2015年4月 5日 (日)

ダブル・インパクト(東京藝術大学大学美術館)

ぬおぉ! みたいなポスターと、モノモノしいタイトルで、なんかイメージだけのチャラい企画なんじゃねーかと思ったりするが、これがなかなかどうしてタイトル通りの展示内容なんだな。文明開化で西洋から受けたインパクトと、西洋が日本から受けたインパクトを、藝大美術館とボストン美術館の収蔵品から見ていくのさ。ベティさんと源さんのマンガコメントもあって分かりやすいように工夫されてるじょ。

3階から始まり。最初は黒船が来た、ってことで、ベリーの上陸図……よりも次の河鍋暁斎の錦絵「蒙古賊船退治之図」がいかにも文明開化の爆発じゃぁ!みたいな感じだな。しばらく開化もんの錦絵、あと洋画の技法が入ってきて鮭でおなじみの高橋由一がある「浴湯図」……女湯覗いたんかい。ま、それはいいとして、「花魁(美人)」……おお、日本人が洋画技法で描いた日本の花魁じゃい……び、美人なのか? なんかイカツイ感じがするんだが。慣れない技法のせいか、あるいは今の美人と基準が違うのか。

次の不思議の国JAPANコーナー。あっちが驚いた日本の工芸だじぇ。鈴木長吉「水晶置物」が見事だ。うん、水晶玉が。いや土台もいいすけど。蒔絵の硯箱とかは手堅い。あと外人が驚いて弟子になっちゃたのもいた画鬼こと河鍋暁斎がいくつか。名作の「地獄太夫」もいいが、「風神・雷神」はその迫力では宗達にも決して負けてないぜ。それから「人体骨格」これチラシで見て等身大かと思ったら、鹿の角でできた精巧なミニチュアなのだ。全部の関節が動くんだど。すげえ。あと、おなじみ自在置物の「竜自在」これがかつて見た自在置物の中では一番デカい……が、自在置物ってのは小さい方が緻密精巧の脅威をより感じちゃうので、なんか実物大の蛇とかの方がなんか好きだなオレは。

それからまた文明開化の錦絵とか。最後の江戸風浮世絵師で再評価が望まれる楊州周延の錦絵が何枚か。しかし天才井上安治(探景)がやはりいい。「霊岸島高橋の景」の夜の鉄橋が美しいじゃあないか。あとおなじみ小林清親もいくつか。「猫と提灯と鼠」……これ錦絵つまり木版ですってよ。どうみても水彩。彫りと摺りのバカテク。それから西洋美術で西洋技法の風景とか。高橋由一の「司馬江漢像」が嬉しい。油彩の先駆者としてリスペクトされてるぜ江漢。当時は蘭学者にボロクソ言われてたけど、やっぱスゲエんだ。あとラグーザの日本人リアル彫刻に驚く。

地下2階へ。西洋崇拝じゃなくて日本美術も発展せにゃあいかん、とフェノロサが言ったのさ。そういう方向の作品。藝大自慢の収蔵品、狩野芳崖「悲母観音」が出ている。まだ見てないヤツは拝んでおけ。今回ボストンが持ってた岡倉秋水の模写バージョンも展示。オリジナルを至近距離でじっくり見て写した……はずなんだけど、なぜかコントラストが強くてパチモン感が出てしまった。そうか、難しいんだな模写って。あと狩野芳崖なら「谿間雄飛図」前景の鳥が引き立つ背景のテクニックが実に文明開化だ。いやそれより驚いたのは横山大観「滝」「月下の海」「海」、線で輪郭を描かない「朦朧体」。言葉は知っていたが、おぉ、これほどのもんだったとは。時代をぶち抜く表現に驚きだ。この頃の大観はマジスゲエな。なんで富士山にお日様みたいなしょーもないもん描くようになったんだ? ポスターにもなってる小林永濯「菅原道真天拝山祈祷の図」劇画タッチ。あまりに劇画なんで、かえって普通に見れちゃう。菊池容斎「九相図」。女が死んで腐って骨になるまでの九段階の絵。命の無常を表現するものだが、普通にキモチワルイ。こうして見ると、死体よりも骨の方がスッキリしてて気分よさそうだ。九相図ってよく聞くけどまんま展示されることはあまりないよな。

最後は天皇ものとか日清・日露戦争とか、あと留学生の洋画もあるぞ。黒田清輝は解説にバッチシ書いてあるのに、展示してねえ。名古屋会場だけだと。ケチだな。あとはデカい「神武天皇立像」とか、明治天皇の肖像やら正面奥の賑々しい「戦勝万歳図」やらを見て、さらに源さんがドヤ顔しているのを見ると、これで締め括っていいのかって気にもなる。なんたってこの辺からもう軍国主義真っ盛りになるもんなあ。やがて世界大戦になり敗戦になるんだ。こういいところで終わらすなんてやっぱ右傾化しとる、と感じないでもないが、まあこの企画とは関係ないよな。

分かりやすくて驚ける。君にもインパクト。
http://double-impact.exhn.jp/

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