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2015年4月25日 (土)

マグリット展(国立新美術館)

前に今は亡き三越美術館でやった回顧展が1995年。そん時図録も買ったぐらいであった。今回はそのレベルのテンコ盛りだゾ。

一応年代順っぽい展示。初期はアール・デコ風のポスターなんかを仕事で描いてて、絵といやぁ未来派っぽかったりする。それからシュールレアリズムの影響を受け、明らかにデ・キリコの影響みたいな室内とか描いてる。「桟敷席」ってのがね、面白いね双頭の女なんか描いちゃって。あとは「風の装い」ってのは、多分画集なんかだとただの白いエリアみたいに見えるだろうけど、本物はちゃんと「板」っぽく見える(と描いたところでなんのこっちゃら分からないよな)。「狂気について瞑想する人物」は普通に人を描いてるだけなのに、なんかシュール絵っぽく見えるのが不思議だ。「恋人たち」の顔を布で覆ったキスのヤツ。面白いというより、なんか生々しいは見せないぞって感じか。「発見」は女の肌の一部が木目。「深淵の花」でおなじみ鉄鈴が出てくる。鈴が花になってるんだぞ。「出現」は空に出た妙な不定形。エヴァンゲリオンの「使途」に使えそうじゃん。「不穏な天気」は……待てよ「不穏」って「ふおん」って読むのか。ずっと「ふいん」って読んでて、なんで今変換できないんだと思った。ま、とにかく典型的なデペイズマン(無関係な物を並べて楽しむ)作品。「呪い」は、そう、これが呪いなんだってよーおらおらおらなんかすげーよな、って感じで楽しんでくれ。「透視」は卵から鳥を透視したぜ。「新聞を読む男」あ4つ並んだ同じ部屋の一つに男がいる、それだけでもう、妙な雰囲気。待てよ、これ別バージョンの、なんか不定形生き物が出てくるヤツなかった? あれパロディか。誰が描いたんだったかな。「美しい虜」風景を切り取る絵を描いたキャンバスの絵。マグリット「らしい」定番。「野の鍵」も窓ガラスに映った風景が、窓ガラスが割れたら、風景が映ったまま割れとるというヤツ。定番。「巨人の時代」これは男女物の傑作じゃね。「哲学者のランプ」鼻パイフがはなはだ愉快である。「陵辱」はおなじみ女体顔。キメエ。なお、このあたりは女体コーナー。「旅人」広大な海に浮かぶ何かゴチャッと集まった球体。海の広大さがミソな。「占い」鼻がドン! の絵。マグたんってばなんか鼻にこだわりがあるんじゃね? でも鼻って面白いよな。「アルンハイムの地所」おなじみ山脈が鳥の翼。鳥のちっちゃい頭つき。「人間嫌いたち」巨大カーテン群、いいね。「絶対の探求」オレが一番好きな絵の一つ。夕日とそして葉脈の形をした樹。詩情もありあり。「禁じられた世界」一応人魚。なお、この辺は戦争中で印象派っぽい描き方をしている。「不思議の国のアリス」ある意味、今回これが一番驚いた。なぜか? このタイトルでなぜアリスを描いてないのだ? 樹に顔があるのと、空に浮かぶ変な洋なしのオバケみたいなヤツだけ。アリスはどうした? 「アリス」という極めて象徴的存在をなぜ描かずに済ませられるのか? そういえば……おお、そういえば、マグリットが子供を描いた絵って無いんじゃね? 一応今回「ジロン家の肖像」に子供はいるけど、これは肖像だしなあ。女描いても大人の女ばかりだ。おお、これは発見だゾ。アリスを描かないのはアリスが子供だからだ。何らかの理由でマグリットは子供を描かんのだ。

ここで会場のだらだら書きをいったんやめて、なんでマグリットが子供を描かないのか勝手にだらだら考えてみようぢゃないか。いや、そんなにこれ、難しくないぞ。それはね、子供の世界だと思われるのがイヤなんだ。会場の解説にもあるように、マグリットは極めて哲学的なアプローチで主題を描いてる。これで子供を出して、「なんだこの子の無邪気な夢想かぁ」などと思われては困る。「不思議の国のアリス」にしても、アリスを出したら「アリスちゃんの夢の世界」になってしまい、「割と普通に」見れてしまうのだ。それはイヤだ。あくまで我が世界は「大人の愉しみ」である。ガキの普通では困るのである。この場合「アリスが見た不思議の国とはいかなる仕様の世界であるか」である。だからアリスは出さんのじゃ。絵に子供も出さんのじゃ。調べもせず勝手なことを考えるなと言うヤツもいるかもしれないが、調べもせず勝手なことを考えてこそ楽しい美術鑑賞なんだぜ。

さて会場に戻る。「観光案内人」顔が大砲で火を噴いてるヤツ。あと戦争中、フォーヴみたいな作風にも挑む(「ヴァージュ」とか言ったそうな)。その作品2つ「飢餓」「絵画の中身」確かに……うむ、ラフだ。一応面白いが全く「らしくない」。あと「快楽」印象派風の地味な作品だけど狂ってて好きだな。鳥食っちゃってるの。あと、この辺写真いろいろ。さてヴァージュもしっくりこなかったのか、さっさとやめちゃって、元の作風に戻る。「会話術」の海の感じがいい。「自然の驚異」出たぞっ! 人魚ってさー、上半身人間で下半身魚だけど、逆もアリなんじゃね、という定番ギャグを1953年にかましたマグリットです。そして「光の帝国Ⅱ」広告で見た時はどうかと思ったが、やっぱ本物はええなぁ。我が愛する「光の帝国」シリーズ。夜の町と昼の青空、相反するものの一致による神秘をここまでさりげなく描いた驚異の絵画よ。「ゴルコンダ」は男雨(降ってるのか?)。そういえばその昔、コピーのミタのCMで車が降ってくるのあったな。あんな美しいCMもう無いよなあ。「白紙委任状」は樹と馬に乗る人が……ああもう説明がめんどくせえや。「大家族」。海を飛び立つ青空の鳥。マグリットの代表作……なんだけど、これ持ってるの宇都宮美術館なんだよね。すげえ日本にあるんだ。「レディ・メイドの花束」うまく活用ボッティチェリ。

ってなわけで目に付いたものだけでもこんなある。書いてないのもまだまだあるんだな。初めてマグリットを見る人は長時間を覚悟。
http://magritte2015.jp/

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