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2015年5月 5日 (火)

石田尚志 渦まく光(横浜美術館)

はてこの人は誰だろうと思って、紹介写真なんか見ただけで、ああ、あれか、あの人かってなる。彼の作品は一度出くわしたらまず忘れないインパクトがあるのだ。簡単に言うと抽象画がアニメーションになっている。今回初の大個展だぞ。

まず1階のエントランスに作品があって「海の壁ー生成する庭」豪華3面使っている。
2階の会場に入ると、若い頃の水彩作品「渦」があるが、この時点でもう「こりゃただもんじゃない」感がありあり。抽象というか、マーブリングを手描きでやってる感じか。とにかく有機的で複雑なパターンをいくらでも描けるんだなこの人は。普通の絵だけではなくそれはすぐにアニメーションという表現手段に変わる。有機パターンが生まれては消える。さらにはそれを長い紙に絵巻状に描いていって、移動カメラで描くのを追うという絵巻スタイルが誕生……いや、待てその前に、展示では次の部屋になるんだけど「フーガの技法」という19分のアニメ作品がある。数年もの製作期間と1万枚の原画を使って、とんでもなく凝った抽象アニメーション。バッハの音楽に合わせて、複雑なパターンで絵が動く。その上映と、原画が展示されている。多重露光も使っているような感じだけど、基本全部描いてるんじゃないか、という労力としても驚異的なものだ。原画を見ると、アニメーションのために部分的に変化した抽象画を何枚も描いてるのだ。こりゃすげえ。

次の部屋というか、部屋に入る前のところには道路に水で延々と描いていくパフォーマンス映像。元々ライブペインティングとかやっていたようで、次の部屋にも本人が出てくる作品がいくつか。身体を使った表現だ。うーん、でも膨大な労力を感じさせないあたり、抽象画アニメーションほどのインパクトがないなぁ。

次の部屋には……「部屋」にこだわった作品群。「フーガの技法」ではあくまで平面だけだったのが、今度は部屋という空間を使い、その3次元的なところを意識させることで、より非現実感がアップする。「REFLECTION」では窓から差し込んでくる太陽の光が、部屋にいろいろ描いていく、みたいに見える。「光の落ちる場所」は壁に立てかけられた大きなキャンバス上がいろいろ変化。そのキャンバスそのものも展示。それから、ライブ関係の前のところにも「燃える机」という作品があって、部屋と部屋の模型とか、シンクロしているようなしていないようなインスタレーション。最後はまたカラーの絵巻でシメる。

全部労力がかかった力作なんだけど、その中でも超力作の「フーガの技法」を見てしまうと、あとは全部これの応用というか延長というか、主題の変奏でしかないような感じがしないでもない。でも「部屋」という空間の発見は何か新しい突破口という感じがする。この先どうなっていくのかな。今度は立体を映した映像で、立体表面にアニメーションが展開、って感じになるかな。いやそんな予想できるようなことはやらないだろうなあ。

なんかぼーっと見ててもいい感じ。おすすめ。
http://yokohama.art.museum/special/2014/ishidatakashi/

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