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2015年7月26日 (日)

画鬼暁斎(三菱一号館美術館)

北斎に匹敵する巨匠、河鍋暁斎。暁斎展はだいぶ前に、東京ステーションギャラリーと……今は亡き三越美術館でもやったかなあ……ありゃあ芳年だったか。まあとにかく錦絵が多くて、うーん、なんじゃこりゃ、だったんだけど。今回は肉筆が多くて、そのただならぬ実力が分かる。うむ、こりゃ結構満足できるぞ。

最初は明治の日本のお雇い外国人建築家であり、暁斎の弟子のジョサイア・コンドルの特集……なもんで、暁斎を期待してきたら、ちょっとアレ? と思ってしまう。旧三菱一号館もコンドルの設計だって。ちなみに展示にゃ何があるかっていうと。……いや、まず暁斎の「枯木寒鴉図」がある、これは内国勧業博覧会の妙技二等賞を取ったんだって。なんていうかいい感じのカラス……に目が行くんだけど、それがとまっている木にも注目されたい。いや、いいでしょこれ。これをコンドルが見て気に入って弟子にもなった。で、コンドルの鹿鳴館の図面とか、どこそこの建築図などなど。コンドルは日本研究もしていて、自ら描いた日本画もある「霊照女・拾得図屏風」ガイジンが描いたにしちゃうまいじゃないか……ちょっと表情固いかな。「梅花図」も筆さばきグッド。ちなみに暁斎の弟子としての名前は「暁英」なんだよ。

暁斎とコンドルの交流を中心に展示が続く。暁斎の絵日記とかあって「コンデール君」が出てくる。んで、ここから先はいよいよ暁斎炸裂。肉筆の掛け軸やら屏風やらが多くて嬉しいぜっ。「二羽の泊鴉に山水図」ではカラスが「カー」ってやってる。「蝦蟇仙人・鉄拐仙人図」もいいカオだ。「大和美人図屏風」は美人画の屏風なんだけど、コンドルの目の前で描いたんだと。コンドルはそれを詳細に記録していったそうな。にしてもすげえもん描いたものだ。しかし、どれもレベルが高いのに、こうたくさん並んでいると、ありがたみが薄れっちまうなあ(←そんな鑑賞でいいのかよ)。

このあと、暁斎の画業を一通り紹介する流れ。まずメトロポリタン美術館所の動物画など……これも写実的でうまい。グッドモンキー。「蛙をつかまえる猫図」で猫に捕まえられた蛙がグワッとしている表情がいいね。それから「栗と栗鼠図」というのがあって……ぬぁに? いや本当にあるんだこれが。別に文字通りの絵なんだけどさ。男性諸氏は(女性も?)、このタイトル見て、うむっと思ったかどうか分からんが、みんな何も気にしてないふりしてるのがいとおかし。いや、オレもだけど……っていうかオレだけだったりして。え? なに書いてる意味が分からない? 別にいいんだ気にするな。それから続けて観音とか仏像とか。神様系(?)。「風神雷神図」いいよ。表情オッケー。「布袋の蝉採り図」では、禅画のユルいヤツみたいな感じ。「中国神仙図」はカッコいい男だ。写真も撮れるコーナーがあり、それから階段を下りて「九尾の狐屏風図」が文字通り9つのしっぽの狐の化け物。それから九相図や卒塔婆小町という、人が死んで腐って骨になるまでを描いた絵……なんだけど、巻物でね、展示で見せてる部分はあまり生々しくないところで抑えてるかな。

それから動物画があって、どれもいいんだけど特に「月に狼図」がよい。なんたって人間の生首を口に持ってるんだぜ。その首がヤバい。山水画はセオリー通り。得意の戯画・風俗画では、おなじみ「放屁合戦図」と「群猫釣鯰図」これ猫が相談しあって鯰をつり上げようって絵。楽しいぞ。「風流蛙大合戦之図」は蛙づくし。「蛇を捕まえる蛙」もがんばっている。それからなんと今回、春画がいくつか出ている。うむ、もうすぐ春画展があるからな。春画公開勢いづいているよな。春画の「はなこよみ」は、当時春画が「笑い絵」と呼ばれていた通りの楽しくめでたい雰囲気だ。男のナニが不必要にデカく描いてあるもので、誰が見ても笑っちゃう。だから「わ印」だ。男女が共にエンジョイしていて、そこに福の神がおーやっちょるねえと来ちゃうような感じ? うん、多分春画にゃあ現代にはないような招福の意味があると思える。もちろん、そうでないのも多いんだろうが。えーあと「大井山図」は普通の山なんだけど、そこらじゅうにナニを彷彿とさせる形状がある。あと「若衆物語」は、よく分からないがこれ若衆が女3人相手にして死んじゃったってこと? 死んだところの、そのう、アレが……すげー長い。それから、最後のコーナーは美人画。「横たわる美人に猫図」「美人観蛙戯図」の2つがやっぱしイイ(再会だけど)。いずれも猫や蛙といった、引き立て役があってこそだ。猫のねむねむな表情と、蛙の相撲大会、いずれも美人を食っちゃう魅力があるぞ。

土曜の昼に行ったけど結構混んでて、オレが出る頃には入場制限してた。すいてる時を狙ってGO。そうえいば8月2日までが前期だと。どんだけ入れ替わるんだ?
http://mimt.jp/kyosai/

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2015年7月21日 (火)

蔡國強展(横浜美術館)

世界的に有名な火薬アーティストの個展。自慢じゃねえが、いや完全に自慢なんだが、オレはこの人がそんなに活躍をしてない頃から知ってるのじゃ。それは1991年。そおっ、あのっ、四谷三丁目のP3で「原初火球」という蔡國強の企画展示があったのです。P3はバックミンスター・フラーを知った場所でもあり、何かと通っていたんだけど、思えばすごい先見性あった場所なのね。まだ活動しているみたいだけど。

さて建物にはいると、いきなり大作「夜桜」がどかーんとある。もちろん火薬での絵画作品。撮影可能。遠目で見るとちゃんと「絵」になっている感じがする。

エスカレーターを上がって、最初の部屋。中学生以下は保護者、引率者の同伴が必要です。だって、ぬぁに? 蔡國強がその手のものを作ったのか、と思いきや確かにその手のもの。「人生四季:春~冬)。月岡雪鼎の肉筆春画(!)をモチーフに、色付きの火薬でやらかした作品。男女の絡みっていうか、男だか女だかどっちもみたいな感じの人物なんだけど、肝心の結合部分(春画ではよくバッチリ描いてあるの)は、火薬爆発で判然としないようになっている。まあ、この辺が十八禁でない理由ですかね。十八禁にすると、それ以下の者どもを排除するうまいステムを考えないと企画する方も手間かかるしね。この部屋(部屋ったって展示室めいっぱいだからデカい)を出て、次の部屋に行くと、今度は白磁の花のパネルをこれまた爆薬を破裂させて、陰影をいい感じで入れちゃった作品。制作過程のビデオがあるか……なんか爆発現場の方が楽しそうなんだな。部屋を出て、ビデオが二つ。今回の企画の制作過程と、過去の作品を紹介しつつ時間を遡るもの。今回のは横浜美術館のあの空間が「現場」だったわけね。過去作品では、やっぱり花火や火薬を使ったパフォーマンスが魅せる。面白い。美しい。花火も夜のはもちろん、昼のもあるんだな。黒煙で虹の形状を作る、赤と緑で花畑みたいにしちゃうのとか……先日ワタリウムで見たヤツもあったな。ううむ、なんかー、やっぱりー爆発現場が一番楽しそうだよなあ。展示されているものは確かに「作品」なんだけど、こういうダイナミックなビデオを見ていると、なんとなく展示してあるものが残骸でしかない感じもしないでもないの。

最後の部屋に、今度は火薬を使っていないけど、すげえ作品がある。「壁撞き」これが壮観で、狼の剥製九十九体……いや剥製じゃなくて羊毛を使った精巧なフィギュアらしいが、それが遠くからジャンプしてきてベルリンの壁をなぞらえたガラス壁に激突して撤退するまでをコマ送りみたいにずらーっと並べている。展示室をめいっぱい使うスケールの大きさ、一体ずつのしぐさまで十分魅せる。火薬じゃなくても「イケる」。

ううむスゴいアーティストじゃ。でも、それだけに、爆発現場に立ち会いたい(オレ突然のデカい音ってのが苦手だけど)。そんな悶々とした気分を味わいつつ撤収。
http://yokohama.art.museum/special/2015/caiguoqiang/

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2015年7月12日 (日)

ボルドー展(国立西洋美術館)

ボルドーといやぁワインだけど、それより今回の話題としてはドラクロワの大作が出るんだってよ。ドラクロワって意外と日本で拝む機会無いんだよね。いや、ショボいのはちょこちょこ見るっちゃあ見るが、大作は滅多に来ないのじゃ。だから行った。

行って分かった。ボルドーってフランスの南西部ですって。展示はボルドー25000年の歴史を俯瞰するっ……ってことで、最初いきなり下の階に行って、その部屋には……石を削ったプリミディブな像とか石器とか、要するにオレにとっちゃあゴミガラクタ石コロに過ぎんもんが並ぶ。いや、オレはその場で感じられるものっきゃ興味ないのよ。まあ一応だんだん文明的になっていって、早くも「ワイン用のアンフォラ」とかいう容器いや壺いや瓶が登場したり、ちなみに出品リストを見ると、ワイン関係ものにブドウとグラスのマークが付いているんだぜ。ボルドー展なんだからワインのこと忘れてくれるなってか。ついでに会場出たらショップでワイン買ってくれ。えーと古代から中世に進み、柱頭や紋章なんて見てると、うむ、だいぶ細工が凝ってきますな。でもフムフムそうかってレベル。ここで上の階に上がって、「18世紀、月の都ボルドー」ってコーナー。あるのは肖像とか地図とか街並みとかで、おいつまんねーよ。フリゲート艦の模型があってそれはそれでまあいいけど……なんかこう、芸術的にズガッとくるものはないんかい。テール・ド・ボルドー磁器製作所ってところの皿とかティーポットとかあって、これはなかなかきれいではある。あとはやっぱしワインクーラーとか。

やっとこのあたりから絵画が本格化。ありますよ見逃すなよシャルダン「肉片のある静物」チャラいロココ時代にあって渋い静物を描いた通好みの画家だゾ。次、ナトワール「化粧するヴィーナス」絵は普通だが、この人、かのロココのブーシェのライバルだったんだって。ほほーロココってヴァトー、ブーシェ、フラゴナールって三人以外大したのがおらんのかと思っていたが、一応いたのかライバル。ベンジャミン・ウェストの2品が象徴派っぽくてイイ。分類は新古典らしいが。他にも新古典の作品がチラホラ。新古典主義ってのは、ロココの軽薄さにブチ切れたダヴィッドみたいな画家が、強くたくましくシャープに描いたものなんだ。ルネサンスよりもパワフルだし具象で描写もうまいし、なんかええもん見た気になるから、企画側とすりゃあこの辺見せてりゃ無名のヤツでもオッケーだぜ。その後もっとドラマチックにロマン派に突入。ここでゴヤが登場。このスペイン人は晩年ボルドーにいたんだと。版画の「闘牛」がなんかスゲエ。モノクロだけど、なんか血みどろ感がハンパネエぞ。スペイン人が大好きなエンタメの闘牛が、これじゃ陰惨な血の見せ物ではないか。続けてルーベンス「聖ユストゥスの奇跡」。オホホホホホこれもマジヤベエわ。ボルドー展だってんでワイングラス片手にオシャレかつお上品にキメようとしたジャップを血もしたたる肉食のフランス人がぶん殴る感じ。これどんな絵か黙っていよう。現場で見ろ。面白いぞ。もちろん解説にゃこれがどうしてこういう絵なのか書いてあるが。そんなの関係ねえっ! これはこういう情景にウェッとなるためのもんだい。ええと次は、いよいよ目玉のドラクロワ大作「ライオン狩り」。おおっ……なるほど、人ライオン馬が入り乱れた確かに力作だ。迫力もある。一応万人そう思うであろう。が、しかしこいつは火事で上の部分が消失しているのだ。そして、隣にボルドー生まれのルドンが完全版をラフに模写したものがあって、それを見ると……あ、完全版ってもっとスゲエいいんだ。構図もまとまってるし、上が無いってことは結構致命的じゃねーかよ! なに? そんなに変わらない? おめーの目はフシアナかい。そんなわけで何とも言えない気分でドラクロワの鑑賞を終える。

ボルドーの肖像ってことで、ここで結構ワインものの展示が増える。終盤でショップも近いしな。ルドンの黒がいくつか。あと有名どころじゃロートレックもいる。アンリ・マルタンの点描もある。ワインのエチケットがある……ってこれラベルのことか? モネの落書き風のもある。アンドレ・ロートって人のキュビズム風ボルドー風景あい。

最後はボルドー風景ってことで、ジョルジュ・ルースって人が、どこぞの倉庫の落書きを撮った写真作品。落書きが労働者の嘆きっぽい社会派の雰囲気。この人、東日本大震災も撮ってんだって。

点数が多いんで見応えあるよ。鑑賞後はもちろん肉とボルドーの赤ワインで。おフランス的お上品にじゃなくてガツガツガブガブとやりゃあ、君もボルドーの仲間だ。
http://www.tbs.co.jp/bordeaux2015/

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2015年7月 5日 (日)

古今東西100人展(ワタリウム美術館)

ワタリウム好みのアーティストを集めたベスト企画。あのスペースに100人分も展示できるのかと思ったが、結構デカい壁一面にだだだだっと並べて数をこなしてるあい、100人あるんだ。人気投票もやっているぞ。

目に付いたものメモメモ……って有名どころばっかでナンですが。いきなりキースへリング。うーん、悪くはないが、今時ブラックライトでの演出ってちょっとありきたりなんだよなあ。これから現代アートやろうって人は、ブラックライト使用はよほどセンスよくないといかんぞ。それからおなじみナムジュンパイクがおなじみビデオインスタレーションみたいな……なんかガラクタにしか見えなかったりしてすいません。社会派JRが、気仙沼だっけな復興企画の写真。日本人の心にクるんで投票で上位。岡本太郎のちょい小さめの置物。あまり見ないルネ・マグリットの写真作品。草間彌生のファッションショーでのハプニング映像。ギルバード&ジョージの面白ダンス……うむ、こういう真面目っぽい背広を着てヘンな振る舞いをするのは、古くはモンティ・パイソンのシリーウォーク(バカ歩き)とか、Mr.ビーンにも見られるいかにもイギリスだよなあ、と思ったりする。チン↑ポムの大震災でブッ飛んだ原発にレッドカードを出す写真。おおっ、これ意外とイイな。現場だから当たり前だがリアルで凄惨な「現場の感じ」と、レッドカートという「虚構的オフザケ」の同居は結構作品として迫る。イケる。メンバーの女がいかにもチャラい雰囲気なんでパーな若造のアート集団じゃねーかと油断していると、実は結構まっとうな路線で勝負してくる。河原温の日付絵画があるぞ。火薬の使い手、ツァイ・グオチャン(蔡國強)。アフリカで建物全体を使った火薬パフォーマンス映像。やる。やってくれる。オレの一票はこれ。

上の階へ。バックミンスター・フラーの映像とダイマクションハウス、ジオデシックドーム、ウォータークラフトの図面と写真を重ね合わせたもの。嗚呼時にバブル華やかなりし頃、オレは建築学科の学生で、周囲はポストモダンでおっしゃれーな代官山アパートとかがもてはやされていた。そんな中、P3というアートスペースで知ったバッスミンスター・フラーに衝撃を受け……いや待てよ、社会人になってたかな。とにかく「形が美しいだけで音の出ないピアノなんかダメだ」という思想を得る……そういえばP3ってまだあるのかな? 蔡國強を知ったのもP3だしな。ま、とにかく、ジオデシックドームというのは、人類の頭脳が生み出した最も美しい建造物の一つであることは間違いない。君も見てみよう。フラー博士は20世紀のレオナルド・ダビンチと呼ばれていたが、そういえばダビンチの図面も同じように、「展示して絵になる」もんなだなあと思う次第である。あと建築者ではブルーノ・タウトのガラス積み木なんかあったぞ。確かどこかで売ってて、欲しかったけどめっぽう高かった記憶が。それからシュタイナーの黒板ドローイング。いやーワタリウム好みだなあ。確かシュタイナーの企画2度ぐらいやってるよな。ジョン・ケージもあったが、ちょっと地味だった(派手だからいいってもんでもないが)

その上の階。さわひらきの家の中で旅客機が飛びまくる映像。分かりやすくて面白いので、これ人気投票一位。あとダイアン・アーバスのプエルトリコ女の顔の写真がキてる。マン・レイの元祖シュール写真。ホックニーの作品。映画監督園子温のドローイング……うーん、映画一つも見てません。寺山修司の写真作品……ってどうも澁澤龍彦の亜流にしか見えん。

あとで作家一覧を見ると、ありゃ、この人いたっけな、ってのが少なくない。それにしても原宿から歩いてきたけど、表参道の裏あたりのこじゃれたオープンカフェってどこも満席なんだねえ。池袋人間のオレにはあまり縁のない施設だよなあ。
http://www.watarium.co.jp/exhibition/index.html

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