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2015年9月13日 (日)

風景画の誕生(Bunkamura ザ・ミュージアム)

風景画の「誕生」ですからね。バルビゾンとかね、コンスタブルとかね、そういうのよりもっと前なのね。ウィーン美術史美術館からマニアックに持ってきたのさ……って、なんか知らん奴ばかりなんだけど、通好みな切り囗にみんなエキサイトだぜっ。

てなわけで、そもそも聖書とか、神話とか、そんな主題を描いていたところの背景でしかなかった風景が、それだけで独立した主題になるまでだ。だからしょっぱなから宗教画だぞ。イェルク・ブロイ(父)ってやつの「五色鶸(ヒワ)と聖母子」その背景はともかく、母子の顔が怖いな。フランドルの画家の「キリストの誘惑が描かれた風景」は風景画っぽく左下に小さく人物、ヤン・ブリューゲル(父)も「キリストの誘惑が描かれた山岳風景」これは色がキレイだな。アドリアーン・イーゼンブラントとヤン・ブリューゲル(子)がいずれも「エジプトへの逃避行上の休息」を描く。聖母子が森みたい中で休んでいるところ。アドリアーンのほうにはヨセフらしき人がいるが、ブリューゲルのほうにゃいないね。ブリューゲルのほう、色がキレイだな……ってなにさっきの父のと同じような空の色で、ブリューゲルブルーか(そんなのあるのかよ)。有名なピーテル・ブリューゲルはヤン(父)の父で、ヤン(父)の母がヤンママだからよく覚えておけよ。しばらく適当に見ていくと、おおっ、小さいけどボッスがあるぢゃないか。あの有名な「楽園」の妙なアイテムが描かれているボッスだぞ。なになに作者が「ヒエロニムス・ボスの模倣者」……ニセモンかい。パチモンかい。パクリかい。でも時代は同時代だから古い。次の「聖アントニウスの誘惑」もボッスパックンで、でもよく描けている。この主題「なんでもあり」なんだよな。画家の奇想能力が試される。次のルーランド・サーフェリー「冥界のオルフェウス」もダークで幻想的な風景だ。それからそれなりにデカい絵があり、パオロ・ファミンゴ「風景の中の古代の神々」やサルヴァトール・ローザ「アストライアーの再来」うーん、雲がモクモク。

「月暦画」という月ごとの絵画があって、そこの背景に注目ってコーナー。大きめの絵がバンバン出ているんだけど、作者が同じだったり主題が同じだったりで、全体にそう変化がない。レアンドロ・バッサーノって人の「1月」から「8月」「11月」がずらっと並ぶ……が、まあ背景付き1年の風俗画ってところかな。画面は暗い(陰気ではないが)。空にはその月の星座の実体化が浮いててUFOみたいで面白い。にしても、女も子供も栄養がよくて貫禄がありますなあ。マルテン・ファン・ファルケンボルフになるとさらに風景に力が入っている。「夏の風景」の景色を見下ろす感じは……まてよ、ふと絵本「ちいさいおうち」を思い出したぞ。

おお「ちいさいおうち」な。あれまさに風景で語る絵本だよ。一応昼夜や四季の自然を愛し、自然を破壊する文明批判になってはいるのだが……諸君、諸君は子供の頃、あの本をストレートにそう受け取ったであろうか。オレは、なんかあのダイナミックな風景の変化にワクワクしたものだぞ。きっとそういう人もいたに違いないし、また、単にビルはひどいですねおうちがかわいそうですね、というだけじゃないなんかアンビバレントな感情が、みんなにもなくはなかったと思うんよ。

話を戻して、なんか「時禱書」というのが出てるが、よく分からん。それから「牧歌を主題とした作品中に現れる風景」ということで、なかなか風景のうまいのが並ぶが、傑出した個性みたいなのはないよね。ニコラース・ベルヒェム「水道橋の廃墟のある風景」で、JR水道橋駅が廃墟になっている絵……のわけなくて、読んで字のごとしなんだけど、一応理想風景っぽい雰囲気がある。

次は「風景画の展開」ってことで、ここでイイのがヘイスブレヒト・リテンス「宿営する放浪の民のいる冬の風景」で、白く細かい枝の枝ぶり最高よ。マルコ・リッチの「修道士のいる嵐の風景」うむ嵐かい。なかなかであるが、まだ甘いな。こうなるとクールベさんのハードな自然描写が見たくなる。まあ時代はずいぶん違うんだが。ルーカス・ファン・ファルケンボルフ「盗賊の奇襲が描かれた高炉のある山岳風景」は文字通り。盗賊からあわてて逃げていく男が左端に描かれてるが、それ以外は風景画でもある妙な絵だ。ヤーコブ・ファン・ロイスダール「渓流のある風景」でやっと有名どころが出てきた。うーんでも普通。以降はいかにも風景画が並ぶ。あと都市風景もあり、イアサント・ド・ラ・ペーニュの「パリのメジスリー河岸からのポン=ヌフの眺め」は超うめえ。パースの遠近感がイイよな。

クールベさんはともかく、クロード・ロランぐらいおらんのか? ウィーンは持ってないのかな?
http://www.bunkamura.co.jp/museum/exhibition/15_wien.html

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