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2015年10月10日 (土)

春画展(永青文庫)

土日は混んでるだろうから必死で仕事を早く片づけた会社帰り、巨大な期待を込めて行ってきたぜっ。どんくらい期待してたかっていうと、駅から現地に行くまでPerfumeの「未来のミュージアム」を聴いてたんだぜっ(それがなんなんだよ)。
江戸浮世絵の春画はほとんどの絵師が描いてた。しかも割とマジで。しかも画料が普通より高いし、大名の贈答用とかもあるので、超絶技巧豪華極まりないものもある。がしかし、内容が内容なんで普通の美術展じゃ展示されない。まあ、たまーに一部だけ春画コーナーがあったりするが(こないだの暁斎展とかね)。しかーし今回、細川お殿様の尽力で、日本での春画展が実現したんだぜい(先に大英博物館でやってたの)。当然、オレなんぞは全部初めて見るものじゃ。まあ、一部知ってるのはあったが。

まず入って早速「あぶな絵」のジャブ。いきなりストレートじゃキツいもんな。何枚目かで磯田湖龍斎「色道取組十二番」というのがあって、目が点になる。……なんじゃこりゃ? 湯屋の様子で全員裸……なんだけど、人体としてどうもおかしい。解剖学的にヘンだ。中央の女性なんぞ下半身が女陰くっつけたカエルみたいな感じ? 湖龍斎は優れた絵師でオレは結構好きなんだけど、これはどうも彼のよさがあまり出てない。菊川英山の「あぶな絵 衝立」あたりは構図もキマってていい感じだ(別にあぶなくもなかったが)。

肉筆の名品コーナー。ほー、等伯の弟子らしい長谷川等仙「花園春画絵巻」外人ウケしそうなエキゾチックな感じですな。菱川派「衆道図巻」ほうほう男同士ですかい……って絵からは全然、髪型からして普通の男女にしか見えんのだが。局部も描いてないしな(というかよく分からん)。絵師不詳「狐忠信と初音図(春画屏風)」これおもろいね。武者絵なんだけど、一部をめくると結合してます。遊郭とかに置いてあったらしい。絵師不詳「耽溺図断簡」男女絡まる傑作と見るが、なんか体がどうなってんだかよく分からない。局部はちょいグロなもんで、フランシス・ベーコンの絵みたいにも見える。結構こういう、絡んでいるんだが体がどうなっているのか分かりにくいものも多い……というか描いてるほうもなんかよく分かってないんじゃないかって気がしなくもなくもない。歌川国政「好色十二図」ええっ? 国政ですと? あの役者絵で写楽以上と言われた国政ですかい? 春画は肉筆のこの画帖だけらしい。こりゃ驚き&結構うまいぞ。なかなか豪華で、こういうのを手がけられたってことは、実力がそれなりに評価されてたんだな。しかし……展示している一ページだけしか見れないのはもどかしいよな。全部見てえよ。歌川国貞「金瓶梅」。江戸浮世絵絶頂期に最も売れた絵師。他の国貞の作品もそうだが、豪華絢爛超絶技巧だったりする。春画が単なるエロ画でないのはこういうポジションの作品があるからだあね。

版画のコーナーへ。初期はモノクロで、やっぱり稚拙な感じがある。鈴木春信「風流座敷八景」座敷にある何かを風景に見立てる作品……の春画バージョンなんだね。普通のバージョンのは何度か見てるよ。勝川春章「会本拝開夜婦子取」……あかん。春章は肉筆美人画でめちゃキレイなのを描くのに、これは……これはなんか胴長過ぎだよなあ。ここでいくつも見ていて、なーんか男女の絡みに変化がない、体位ってんですかね、それが割と決まっていることに気づく。要するに男女の顔が見えて、男女両方の局部も見えて(この辺は局部における男女平等と見たい)、合体も見えてなきゃいかんってえと、だいたい体位が決まってくる。……思うに春画ってのは男女和合、招福の縁起物の役割も強く、どっちかの顔が見えないとかダメで、局部は男女バッチシ描いてあって結合してるのがいいんで、どっちかが見えないんじゃメデタクないからダメとか、そんな性質なんで体位が似てくるんじゃないのかな(もちろんそうでないのもあるけどね。歌麿のとか)。あと、着物着たまま局部だけ見せてるのも多い。これはマッパよりも服着たままの方がヴィジュアル的にエロい……んじゃなくて着物に摺りの派手な色や柄を使えて美しい……だけじゃなくて、オレが思うに、解剖学的ヌードが難しかったから着物でごまかせる、と考えたんじゃないか? 実際ごまかしてるだろ春章ちゃん他。当時の人も、例えば先の湖龍斎のを見て「なんかこの裸おかしくね?」とか思ったんじゃないだろうか(いやおかしいねワハハの「笑い絵」とも言うんだが、そういう点で笑うんじゃないと思うなあ)。

さて次、葛飾北斎「喜能会之故真通」これは有名なアレです。タコと絡んでいるヤツ。おお、本物を見たぞっ。結構キレイな絵だ。肌色もちゃんと摺っているではないか。セミヌードなんで、さすが北斎先生、人体描画にも自信があると見える。喜多川歌麿「歌まくら」これも豪華かつキレイだ。この二つはパネルで全部の絵を紹介している。歌麿の凄いのは男の方も手を抜かずに描いてるぞ。単なる若造じゃなくてな。あとキャンタマが……いや、あの、男の局部はポールだけ立ってるわけではないのだが、結構それしか描かないヤツも多い。しかし歌麿先生はちゃんとキャンタマもリアルに描いてるぜ。あとは……鳥居清長「袖の巻」、八頭身美人画描きよ。春画は横長構図。よくできている。それから階を移動し、また歌川国貞「花鳥叙情 吾妻源氏」「正写相生源氏」いずれもカラー艶本(版画の本)だが、江戸浮世絵絶頂期のバカテクが感じられる。まじこれ木版画? こんな細かいの彫ってたんかい。こんな色数使ってたんかい。

豆判の世界、コーナー。大名の携帯、贈答用に。小さいサイズのヤツ。絵は大きいのとそう変わらない。最後のエピローグとして永青文庫所蔵品。狩野派の「欠題十二ヶ月」巻物だが大名家に伝わってるものらしい。春画なんだけど、いかにも縁起物的招福な雰囲気がいい。女の顔オカメだしな。あと男のナニもデカい太いイコールめでたいだしな。

解説が豊富……というかこの豊富な解説のために茨の道を歩んできた研究者諸氏には敬意を表したい。「え~春画研究ですかぁ~? ダンナもスキモノですなぁあひゃひゃひゃ」などという偏見に耐えつつ研究を続けてきたのである。おお、それは報われようとしている。見よ、観客の多くは女性ではないか。いや、オレが行った時も六割がた女性だった。
展示替えがあるから、君が行ってもここに書いてあるのが見れるとは限らない。まあ、でも、どれもそんなに変わらないと言えばそうなんだが。
この機会に行くべし。
http://www.eiseibunko.com/shunga/

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