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2015年12月30日 (水)

「英国の夢 ラファエル前派展」(Bunkamura ザ・ミュージアム)

前も書いたかもしれないが、ラファエロ以前に戻れという運動が、なぜ「ラファエル」前派なんだろうか? ラファエルは天使の名前だよなあ、と思って調べたら、英語では「ラファエル」なもんで、英国のこの会派名を「ラファエル前派」と訳し、そもそもの画家の名前はイタリア人の「ラファエロ」だって。
まあそれはそれとして、解説にゃ小難しいことがイロイロ書いてあるのだが、ラファエル前派ってのはよーするに、今の英国の絵は萌えないべ、だからラファエロみたいな萌え萌えなヤツ描きましょうよ(ラファエロは萌え聖母を描き、アングルなんかが真似をした)というもんです。多分当たっている。なんたってそういう絵ばかりだからな。

最初はオフィーリアで有名なジョン・エヴァレット・ミレイ、「いにしえの夢-浅瀬を渡るイサンプラス郷」。幼女趣味のジジイが子供を誘拐するところ……ではないんだけど、まあどこかの物語風なところ。全体を通して美女ものが多いもんで、こういうのは逆に目立つな。ミレイの「良い決心」は美女画……うんうんそうだよなあ。デブの絵じゃ良い決心ったって「間食を控える」とかだもんなあ。ミレイ「ブラック・ブランズウィッカーズの騎士」戦いの前の恋人との悲しい別れのシーン。これも騎士のお相手はもちろん美女。しかも銀色にドレスアップ。許せ恋人よ、私は戦いに行かねばならんのだ、と美女との悲しい別れに萌えちゃう。ダニエル・マクリース「祈りの後のマデライン」。祈りの後に寝るために服脱ぎかけで、クローゼットに恋人が潜んでいるとか何とかだけど、光差す中で浮かび上がる美女はイイですね。アーサー・ヒューズ「聖杯を探すガラハット郷」これもガラハットのところに飛んでくる天使が美女三人なんだから分かりやすっ。巨匠ダンテ・ゲイブリエル・ロセッティ「シビラ・パルミフェラ」得意の美女画……なんだけど、どこかでロセッティの描く女性の顔は両性具有だとかいうのを読んで、そういえばそうだなと思って以来、男にも見えてきちゃうんで素直に萌えられません……っていうか、この時代の他の画家も結構似たようないかつい女性の顔描いてるんだが。あー、あとフレデリック・サンズの「トロイアのヘレネ」もいかついっていうか、顔がこええよ。

次は古代世界とか何とかのコーナーだが、傾向はあんまり変わらん。というかエスカレートしておる。ジョージ・オーウェン・ウイン・アパリーって人の「プロクリスの死」は女が裸でキレイに死んでいる。リアルな死体じゃダメだよなHAHAHA。アーサー・ハッカー「ペラジアとフィラモン」も女の裸を鑑賞する以外の何の目的でもないような絵だなあ。いや、うまいんですけどね。フレデリック・レイトン「ペルセウスとアンドロメダ」おお、出たよ定番テーマが。「水浴のスザンナ」「聖アントニウスの誘惑」と並ぶ裸女を思う存分描けるテーマじゃい。しかーも、このアンドロメダ嬢は常に裸で岩場にくくりつけられてるのが相場なんで、実にヘンタイ的描画ができる。助けに来るペルセウスはとりあえず描いときゃいい。もちろんそういう絵である。しかし諸君、極めつけは次の絵だっ! ハーバード・ジェイムズ・ドレイバー「イカロス哀悼」もちろん蝋の翼で飛んで落ちちゃったあのかわいそうなイカロスである。落ちて死んでるんだが、なんで周りに裸女をはべらせねきゃならんのよっ! イカロスだけ描きゃあいいじゃねーか。なんか笑いがこみ上げてくる。これはヒドイよなあ(もちろん褒めている)。どこぞの町おこしの女性キャラが胸が出てたケシカランとか言うのあったけど、あんなのカワイイもんじゃぁねーか。これらはイイのかよ。っていうかこの四連発をまじめに「芸術における女性美をテーマにした格調高い絵画」と思って見ているオメデタイヤツいるのか? アルバート・ジョセフ・ムーア「夏の夜」さすがムーア先生、裸女四人だけど格調高いです。絵が大きくてイイです。あとは裸じゃないんだけど、チャールズ・エドワード・ペルジーニ「ドルチェ・ファール・ニエンテ(甘美なる無為)」これはカタツムリを鑑賞している美女二名。曰く、「絵画は美しくあるべきで、特別な出来事とか何かではない……」云々なんだけど、よーするに「萌えられればそれだけでよい」ということじゃ。ペルジーニ「シャクヤクの花」萌え系、エドワード・ジョン・ポインター「テラスにて」「愛の神殿のプシュケ」これも萌え系。

ここで少し風景など。どうというものはないが、ジェイムス・ハミルトン・ヘイ「流れ星」はちょっと抽象風味があって面白い。あと宇宙ロケットみたいなヤツがあったが忘れた。

さて、さすがに萌え萌えばかり描いているとアホだと思われるのがイヤなのか、もっと深い意味を持たせてインテリジェンスに描きましょうよ、という連中が現れた模様。それが次のコーナーで象徴主義者達だそうで。確かにフレデリック・ワッツ「これをこそ、女と呼ぼう」とか裸だけどよく分からん。「十字架下のマグダラのマリア」は萌え系で描きたいがもちっと何とかしようぜ、みたいなところが分かるような分からないようなところが好感が持てるね。ジョン・ロダム・スペンサー・スタナップ「楽園追放」うむ、追放している側もきれいどころですな。有名どころエドワード・コーリー・バーン・ジョーンズ「フラジオレットを吹く天使」フラジオレットって木管楽器だって。これも女性像だけど、服も着てるしあまり性的でない感じがうまいですな。「スポンサ・デ・リバノ(レバノンの花嫁)」これは大作です。はい大きいです。ジョン・メリッシュ・ストラドウィック「おお燕よ、燕」「聖セシリア」いずれも緻密な描画がイイですな。ジョン・ウィリアムス・ウォーターハウス「デカメロン」話を聞いてるのが皆女性、「エコーとナルキッソス」定番。いずれもキレイな大型絵画ね。最後、エレノア・フォーテスク=ブリックデール「小さな召使い(少女エレン)」はい、男装しかけの娘に萌えたかったのね、はいはい分かります。

かようにヴィクトリアン英国紳士の萌え美女絵画がいっぱいなので、深く考えずに鑑賞して良いと思う。解説には「絵画美」「女性美」「唯美主義」「切望な夢想」とかいろいろ用語が踊って小難しく考えさせようとしているが、全部「萌えたい」でよい。もちろん「英国美術における美とはなんぞや」などと考えながら格調高く鑑賞してもいいですけどね、オレはやんないけど。
http://www.bunkamura.co.jp/museum/exhibition/15_raffaello/

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