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2016年2月 7日 (日)

サイモンフジワラ ホワイトデー(オペラシティアートギャラリー)

ギャラリートークがあったので、珍しく聞いてきたのです。というのも、しばらく見てもなんかとっつきどころがよく分からなかったので。ギャラリートークはキュレーターの熱の入ったヤツがタップリ1時間半。作品はもちろん、企画過程の話まで聞けた。私は美術展というものはその場で見ての印象だけのもので、分からんものは分からんままでいいという方針なのだが、まあ、たまにはこういうのもいいものです。

入り口が普段は出口側の長い通路で、そこから白いカーペット敷になっている。これは展示空間を一つのバーチャル空間として統一感を持たせるという意図があるそうな。もう一つトークで言ってたのがあるがあえて書かない。最初の作品は「ホワイト・ギフト」という紙袋に毛皮の入ったのが置いてあるだけ。元々リボンつきのギフトボックスだったらしいが、この袋はギャラリー所有の、英国のこじゃれたデパートので荷物預かりに使っているもので、サイモンがそれを見て即興的に変えてしまった。キュレーターは、この企画のテーマは「システム」なのだと言う。そもそも「ホワイトデー」ってタイトル、欧米のバレンタインデーの風習を、日本の菓子メーカーが商売のために持ってきて流行らせ、さらに元々の意味とは縁もゆかりもなく商業的おまけを付けた「ホワイトデー」。資本主義的なシステムにどっぶり浸かっていて気づかない我々なのだ。
二番目の作品「無題(梅の木)」。これは桜がなかったから梅にして、ついでに賽銭を置いてしまうというこれも即興的決定。以降、お金に関するシステムを提示する作品が続く。メキシコのプランテーション内だけで使える通過や、日本占領下のフィリピンで発行した軍用手票……んーまあ紙幣だね、それが戦後紙クズになったんで、土産品の扇子にしたというもの。という感じで、ほとんどレディメイドだな。それを並べて、その背後にあるものを意識させようというもの。あとバーナード・リーチの陶器を壊したのとか(なぜ壊したかはハンドアウトつまり受付でもらう資料に書いてある)、北朝鮮のプロパガンダ美術工房に、北朝鮮には存在しない新鮮な牛乳の絵をオーダーしたものとか(これがまた酪農王国のイスラエルで展示されたと)、スターリンのアンティークマスク(土産用のお面?)とかある。レディメイドながら一癖ある意味内容で、じわっとくる感じだな。
「フェニックス三部作」というのがあり、一つはドイツの軍事学校にあった飾り板で、そこにあったはずの鷲の文様が削られている。鷲はナチスのファシズムの象徴だったもんで、戦後削られた。でもこの飾り板自体はナチスが出る前にできていたんで、ファシズムとは関係ないの。うーん、これって一部の人たちが騒ぐ日の丸と同じだよなあ。もう一つベルリンの地下鉄駅に飾ってあった鷲の彫刻。これも同理由で撤去。そしてオペラシティ所蔵の須田国太郎「松鷲」を即興的に加えた。かくして、どう感じるかは個人個人違うし変えるべきではないという作者の方針ながら、なんとなくシステムというものが何か普通と違うことや、普通じゃ考えられないことをやらかすという様が浮き上がってくるではないか。
次に「驚くべき獣たち」というのがある。毛皮のコートから毛を刈ってしまうと、下地が見えるが、その下地は結構複雑なのだ。この下地をピンと張って展示。一枚に見える毛皮でも、実は何匹もの動物の皮を継ぎ合わせて作られている。動物愛護的視点で憤りつつ見てもよし、コート作りの高度な手業を見てもよし、毛皮のコートは高いのにもったいねえなと思ってもよし、あるいは私なぞは下地が結構抽象絵画だな、という目で見てたりする。ちなみにこの作品は現在進行形で、作業場がそのままあって作業している。
キュレーターの女性の五歳の時の絵と、それを母親がそのままぬいぐるみにしてプレゼントしたものが出ている。絵は幼稚園というシステムで描かされた。それがもっとも近い関係である親子の間に入ってきている。即興的追加。
「ミラーステージ」というビデオ作品。初めて出会った美術作品でアーティストとゲイに目覚めたことを対話で見せる。本人が登場しているが長いもんでほとんど見ていない。
デカい名刺がある。遊び心的展示かと思いきや、これも「システム」という視点で見ると、むっ、と思ったりするであろう。
「レベッカ」という作品。ロンドン暴動に参加して逮捕され更正プログラムで中国に行き、そこで工場と兵馬俑を見て兵馬俑っぽい石膏像を大量に造られたという、どこまで本当か分からない物語。この石膏像が兵馬俑よろしくずらっと並んでいる。普通に見てなかなか壮観。
最後の方になり、新国立競技場のプロポーザル模型がある。どってことないんだが、いぜんこのギャラリーでザハ展があって、決まっていたはずのザハ案が金儲けをしたい連中のシステムでブッ潰されたことを考えると、システムがテーマのサイモンが出したい、ここにあってしかるべき作品だ。
最後はビデオ作品だけど、ゴミ拾いで生計を立てる女性と、3Dアニメのアーティストのインタビューを並列で見せる。女性は手でゴミを拾い、アーティストは手が不自由であり、CGの手で女性のインタビューをもてあそぶ。手がテーマか、幸せがテーマか、感じるところはいろいろ。

ギャラリートークを聞いちゃったんで、かえって好き勝手な印象を書けなくなっちゃったな。全体にコンセプチュアルなもので、情報がないとちょっと苦しい。ハンドアウトの紙を読んで挑もう。
https://www.operacity.jp/ag/exh184/

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