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2016年3月27日 (日)

国芳イズム(練馬区立美術館)

国芳もメジャーになったものです。先日の春章よりも早く注目を浴びた。武者絵や洋風表現や戯画で今や大人気の江戸浮世絵師になった。オレはもう散々見たんで、そうテンションは上がりません。ただまあ、行けば新しい発見もあるであろう。
今回は国芳とその系列。うむ、「イズム」って書いてある限り、まさか水野年方とか持ってこないでしょうな。一昔前は、国芳の系列は、国芳→芳年→年方→清方とつながっていくんだぞって書いてあったが、国芳と清方では全然、ぜんっぜん、じぇんじぇん違う。特に年方で国芳らしさがゴッソリ落ちてしまった感じなのよ。

で、入るとまず国芳で。ブレイクしたおなじみ武者絵で開始。入れ墨バッチシの豪傑どもの武者絵でみんなもエキサイトしちくり。ブレイクが一段落した時に描いた、ちょっと抑えめの、水に潜ってる絵が新鮮でしたな。デリケートでな。これも水滸伝だけど、あー名前写すのめんどくさいや漢字ばっかりで。えーそれから「鬼童丸」は全体がシンメトリーで面白いね。「国芳もやう」という当時人気の任侠の徒を描いたシリーズ三枚。これはファッションも当時流行のヤツを使っていて、特に猫が集まってドクロの模様なんて今でも超クールでガッチリ通用する。うむ、この柄のバンダナとか無いかな。ちなみに渋谷でも国芳&国貞をやってて、まあそっちも行くつもりなんだけど、渋谷にゃこの猫ドクロ(ネコスカルってチラシに書いてある)の缶バッチがあるらしい……前売り券用だからもう無いのか。えーと、それからおなじみ大判三枚続きのガイコツのデカいヤツ「相馬の古内裏」。これ子供に人気の「妖怪ウォッチ」では「ガシャドクロ」として登場するんだぞ。そういえば出品リストにひらがなの読み方が書いてあるのね。これ、他で意外とやってないしやってほしいし、ホントマジ読み方分からないの多いので助かります。さすが練馬すごいぞ練馬。「そうまのふるだいり」だってボクずっと「そうまのこないり」って読んでたわ。そりから潜水艦の浮上みたいな金属光沢の巨大ワニザメもおなじみね。初めて(じゃないかもしれんが)見た「大江山酒呑童子」は、デカいヤツが半分鬼になっていて「進撃の巨人」テイスト。やっぱこういうところが今時に通じる「国芳イズム」だと思うんだな。

それから群衆(モブシーン)というコーナー。まあ、これは群衆だな、と。いや一人一人見てると面白いけどね。次が得意の戯画のコーナー。落書き風は散々見ちゃったし、あとのもだいたい見てるし、しかし「妙名異相胸中五十三面」のすかしっ屁して知らん顔してる、の顔は爆笑もんですな。当時もいたんだなこういうヤツ&こういうのにツッコミ入れるヤツ。他の顔も面白そうだなあ。でも解説があるのこれだけだし、古語読めねえし。あと「両面相 奇異上下見の図」。これは顔がいくつか描いてあるけどひっくり返しても別の顔になるというナイステク。見たことあるけど、あらためて見るとやっぱスゲエな。中に横向きの絵があるか、これ外国の本から取ってないか?

それから猫の絵。猫のなんたらとか、猫で文字書くのとか。あと猫好きによる猫好きのためのおなじみ「鼠よけの猫」あり。次は江戸ににぎわいとか。「東都名所 佃嶋」国芳が他でもやってる水面のゴミ描写……いや、別に汚く描いてあるわけじゃないんだけどね……っつうかこれじゃ名所じゃないじゃないか。あとはいろいろあったな。

で、次の部屋に行って国芳の弟子とか。でも最初は国芳「勇国芳桐対模様」これは本で見て知ってたけど本物は初めて……だよな。ナイスな着物で背中を見せてる粋な江戸っ子国芳と、その弟子の一行。それから弟子の絵いろいろで、中には知らんヤツもいる。芳艶ってのは知らんかったが、武者絵がイケる。これ国芳ですと言われたらはいそうですねと言えるくらいイケる。龍の絵もイケる。芳女ってのが国芳の次女ですって……うーん、こいつぁちょっとイマイチかな。それから芳なんとかがいろいろあり、一時入門してた巨匠河鍋暁斎登場。「象の遊技」なんか国芳風。あとおなじみカエルものなど。次の巨匠は弟子の芳年。残酷なヤツから美人画まで。この辺までは、ああ国芳イズムだなあと思うんだが、この後どうなるかというと小林永濯……知らん。鐘馗図とかはまあいいけど。尾形月耕、山本昇雲……え、どっちも知らん。いずれも明治の人か。しかし年方、清方ラインと同じで、こっちもコレジャナイ感がヒシヒシ。実際のところ、この辺客もまばらって感じだったしなあ。
やっぱり弟子や関係者その後のつながりで国芳イズムの継承をプレゼンするのは難しいと思うなあ。どうしても普通の「日本画」とか「日本美術」の方向になっちゃうんだよね。国芳ってテクニックはアートでも、その良さとか影響ってなんか違うじゃん。まあ、かといって今時のあれこれを持ってくるとあれもこれもというか、ヤバいサブカルまでカバーしないといけないんで、とっちらかってしまうかな。

下の階行って、肉筆いろいろ。国芳の肉筆は珍しい感じだが、戯画っぽい「舌切り雀図」があるけど、あとの絵は普通。やっぱ国芳って印刷メディアに向いてるんじゃないかな。他の人の肉筆もあるよ。
http://www.neribun.or.jp/web/01_event/d_museum.cgi?id=10276

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2016年3月20日 (日)

村上隆のスーパー・フラット・コレクション(横浜美術館)

村上隆の作品はそう好きではないのだが、やっぱ研究者やコレクターとしてはダテじゃないよなぁ……っつうか、こんな持ってんのかよ金持ちぃ~♪ 展示はこだわりの個人美術館みたいで、なかなかいい。点数が多いもんで、どうも出品リストがないっぽい。

エントランスにアンゼルム・キーファーのデカいのがいくつか。はい、今はなき池袋のセゾン美術館。年間会員だったぜっ、キーファー展行きましたよ。あの時以来な感じだなあ。展示品の中に「生命の木」があった。オカルトでは有名な、最新物理学の超弦理論の10次元を遙か昔に10のセフィロトで予言していた(?)恐るべき図像! なぜ10次元かというと、1+2+3+4+……=-1/12だからです。なにぃっ!

ってなことはさておき、エスカレーターで上に上がって入ると、最初は古美術で……じゃないその前に、奈良美智のワゴン……なんちゅーか、馬のいない馬車みたいなヤツ? がある。中がバーのカウンターみたいになっていて、絵がいろいろ。ああぁ、こういうこぢんまりした空間って奈良の一番いい見せ方なんだよなあ……と思ったがその割にあまり中を見てなかったなそういえば。なんかどれ見ても同じような感じだからな。一瞬見て安心しちゃうんだな。はい、それから中の古美術に……いや待てまだその前に、Mrって人の絵があります。あのぅ萌えない萌えキャラみたいなアートの人。それよりその下にカワイイエレベーターの入り口があって、ちゃんと動いてる。面白い。マウリ・ツゥオ・カテランって人だって。

で、古美術は、いきなり簫白ってスゲエ。白隠もある。ええと得意の達磨和尚だったな。それから弥生土器とかあって、あとお茶の茶碗とかあって(これがまた何がいいのかオレにはよく分からねえ)。あといろいろあるのだが、あー漱石の手紙がある。本物……だよな。そうだ魯山人がね、いっぱいあったね。なんか趣味がいいな。あ、それから仙涯の絵、これも白隠と同じ禅画ですね。点数多いよ。

それから古美術が終わって、次の部屋が「村上隆の脳内世界」これがまた雑多にいろいろゴチャゴチャ置いてある空間。こういうのが好きな人もいるけど、私はあんまし好きではない。いろんなジャンルの人が出てくるイベントなんかでも、その場の多様性に思わず鼻息荒くしちゃう人がいるんだが、多様性自体は素晴らしいと思うが、多様性の同居そのものってそんなに素晴らしいことかなあ。そうだね、私があんまり好きではない理由ってのが、そんなんで鼻息荒い人達をよく見かけるもんで。あと、自分もパソ通の文章書きフォーラムに属していた時に、そんな認識を持っていたもんでね、うん。世界に多様性はあって当然。それよりも我々が多様に足を運ぶべきなのじゃ。

それからスタディルームという(作品?)があって、誰でも男のヌードデッサンできますぜ。男ったって人形だけど。時々シッコ発射するけど。あとミカ・ロッテンバーグって人の真珠を使ったインスタレーションと映像。映像が不思議世界で結構面白いんだけど、いつまで続くか分からず、途中で切り上げちまった。

後半「1950-2015」。現代美術いろいろ。ウォーホルから始まり、篠山紀信や荒木経惟、なんとヘンリー・ダーガーがある。あのアウトサイダー・アートの巨人の作品を持っているとは。しかも、女の子達がハラワタ裂かれてるんじゃなくて結構品のいいヤツ。しかし、近くで見ると、ダーガーってなんだかんだでアーティストなんだな、と感じさせる技量があるね。作品は死の寸前まで誰にも見せなかったんだが。それから平面作品いろいろ。おっとBOMEがある。村上の著作にも出てきたフィギュアのカリスマ原型師。クラリスとかラムちゃんとかあったが、アニメの雰囲気をそのままに立体化していて確かにスゲエ。奈良美智の陶器作品、ダミアン・ハーストのチョウチョ作品、マルセル・ザマの不気味人形……この辺で村上好みの傾向が分かってくる。カワイイとかキレイとかと不気味や残酷のハイブリッドが多い感じだ。まあ村上作品も、カワイイキャラがゲロ吐いてたりするのあるしな。

灰原愛の人形(というか人物彫刻)が普通にいい感じ……っていうか、普通にいいってなんなんだ。JR(鉄道会社ではない)と村上のツーショット。フランク・ベンソンの「ジュリアナ」って人形(これも彫刻だよな)が艶めかしい。國方真秀未の絵がダーガー風にヤバい。最後は原発事故の指さし作業員。

スーパーフラットといいつつ立体もの多いんだけど、その立体は日本独自のフラット性を発展させたものって感じか。いずれにしろ、アニメやマンガに終わらない「クールジャパン」をガッツリプレゼンできる知識と技量と情熱を持ってるのが分かるぞ。
http://yokohama.art.museum/special/2015/murakamicollection/

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2016年3月13日 (日)

勝川春章と肉筆美人画(出光美術館)

しかし今や勝川春章で客を呼べる時代になったもんです。遙か以前MOA美術館展を見た時に、春章の美人画の高いクオリティに驚き、恐らく同じような印象を他の企画でも受けた人が多いのかもしれないが、結構客が入っている。
それにしても場内が暗い上にガラス面から展示品まで1メートル近くあり、視力がそれなりに無いと細かいところが見えない(と書いている以上私は見えません)。なもんで、単眼鏡は必須(とはいうものの、単眼鏡は部分的に見えるだけなんで、全体の印象にはちと苦しいんだが)。

さて、最初にいきなり完成形の「美人鑑賞図」。これ美人群像図なんだけど、元絵が栄之であることがこのたび分かったそうです。あと、春章が肉筆美人画をやり始めたのは、晩年になる頃らしい(それまでは役者絵とか錦絵で有名だったの)。この企画は春章ばっかりかと思ったらそうでもなく、春章に至るところと、同時代の絵師などで構成。

で、最初のコーナーで春章以前の美人画など。全体的にスタンダードで師宣とかあるが、やっぱし宮川長春だな。「読書美人図」の寝ている姿とかはなかなか。あと作者は分からないが、「邸内遊楽図屏風」というデカいのがある。

次はいよいよ春章につながる美人画。最初にあるのが西川祐信かなと思ったら西川祐信だった。上方の影響も受けてたみたい。あと、月岡雪鼎など。で、いよいよ春章登場。最初に描いたらしい美人画「遊女と禿図」は磯田湖龍斎風だそうで、うん、確かに要するに鈴木春信っぽいあの感じ。で、「立姿美人図」これが初期なんだけど、思いっきり「コレジャナイ」感満載のデブ、いやふくよかな感じの美人画。そうか最初のうちは春章もこんなの描いてたのか。でも次からはたちまち調子づいて、うーん、でも顔がまだちょっとなってない感じで。春章の、あの、なんとなく甘めの美人顔がやっぱりイイからね。あの印象は鏑木清方に受け継がれていく感じがするんだなあ。流派は違うみたいなんだけどね。あと「桜下美人図」では後ろ姿などもあり。

それから同時代もので。湖龍斎と春章が同じ「石橋図」で並んでる。湖龍斎は少し前の時代なんだが同じテーマってことで、どっちもそれぞれの美人の特長が出ています。あと窪俊満とか出ている。「芸妓と嫖客図」男女のいい感じでイイネさすが春章と思ったらこれ豊春ですか。はあはあ。酒井抱一もいる。春章は「遊女と達磨図」美人とむさ苦しい男(!)を一体化させコントラストの強い傑作じゃん。

で、円熟期。ここはさすがに春章がずらっ。象に乗っている「見立江口の君図」が面白い。「婦人風俗十二か月 正月」の立ち美人は完璧だ。すらっと美しいぞ。いや、こういうのが見たかったんだな。「婦人風俗十二か月 端午」の鐘キ図も面白いね。「雪月花図」は舞台が平安なんだが、どうも春章美人は平安にはあんまし合わないような。

最後はその後、栄之が3つほど。春章がやりたかったみやびな美人画、みたいに紹介されているが、しかし栄之の美人ってなーんか長身すぎるんだなあ。やっぱり春章の方が私は好きなんだが。あと歌麿とか、北斎の美人画もあります。

悪くはないが、もちっとガラス面に近い展示をしてほしいものだなあ……
http://www.idemitsu.co.jp/museum/honkan/exhibition/present/index.html

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2016年3月 6日 (日)

魔女の秘密展(ラフォーレミュージアム原宿)

なんか結構混んでた。あと場所柄魔女コスプレした人をチラホラ見かけたんだけど、それが結構年輩の方だったりして驚く。

お楽しみはもちろん魔女裁判の拷問道具ダヨネ! あと「火あぶりの刑」のインスタレーションがあるってんで、ホラー好きと怖いもの見たさの諸氏は期待しちゃうぜえ。えーと……実はオレ怖いのはちょっと苦手で……と言いつつ怖いもの見たさもありありで……ホラー映画は見なくてもホラー映画評だけ読んでるヘタレなんです。まあ、でも行ったのは歴史を追って昔のあれこれも展示されてるってさ。

冒頭は現代のマンガにおける魔女があって、いにしえ気分はぶち壊しだが、まあここは前座だと思って。で、進んでいく。混んでてしかも解説も多いしイヤホンガイド(魔女の帽子付き?)もあるもんで、まともに並んでいるとこれが遅々として進まない。えー、昔のものもいろいろ置いてありました。なんかメモってないんですけど。そうだな……あー、ミイラがあった。本物の頭の部分。不気味よ。魔女除けの一種だったかな。昔は魔女って悪者側だったから。もちろんお札みたいな魔除けお守りもあった。モグラの足の魔除けもね。赤ちゃんのゆりかごに護符のペンタグラム付きとか。あー、あと澁澤だったか寺山だったの本で見た、奇形に関する古書(本物?)。それから錬金術の金属フラスコがあったな。中世の魔女狩りに至るまでに、飢饉とかペストの流行とかあって、病原菌なんて知らんわけだから全部魔女のせいにされた。まあ、こういう悲惨な時代の状況がカトリック批判のプロテスタントを生むきっかけにもなったようです。まあプロテスタントも魔女は殺してしまえってのは変わりなかったようですが。で、プロテスタントが広まり、そのイメージ的逆襲をもくろんだのが、前日見たカトリックのバロック、代表の一人がカラヴァッジョですね。えー、それから魔女裁判の資料として魔女の見分け方の分厚い書籍など。ヤバい時代に雰囲気も盛り上がる。

さていよいよお楽しみの魔女裁判残酷コーナー。まず尋問のインスタレーションがあって、これ、尋問してくる役人がモニターに映っているのに対峙していくつか見るんだけど、いやが上にもバッドな気分が盛り上がってくる。そこで次に拷問道具がずらっ……ってほどでもないが、いくつか並んでて使い方も書いてある。うん、説明なんで生々しい絵はないんだけど、別に無くてもジュウブン。うーん、これ、どこだっけ明治大学だっけな、あそこで見たヤツラの方が数があったな。まあ、あれは魔女だけじゃなくて拷問全般だもんなあ。でも針のある椅子は初めて見た。

そうそう「魔女の布」ってのがありました。熱した鉄を布に包んで握らせて(だったかな?)、3日経って傷ついて膿んでいたら魔女で、変化がなければ魔女じゃない……んだって。オイオイそれ逆じゃねえかよというツッコミがそこらじゅうで入るが、実際そうだったらしい。怖いねえ。布には血のような跡が…… あと、死刑執行人のマスクあり。それから火あぶりのインスタレーションは……(ネタバレしていいのかな、まあいいだろ)……いや、別に人が火にあぶられてるわけじゃなくて、火の映像はあるけど、火あぶりを見ている人々の映像が主体。嘆くヤツ、喜んでいるヤツ、無表情な役人。これらの表情を見て想像してもらおうってわけだ。役人にとっちゃ拷問も処刑も毎日の仕事なんだよね。

最後の部屋でなんかいくつか展示品があって終わり。出ると針付き椅子の座れるヤツがあった。えっ? 座れるの? はい、針がゴムなんで。そりゃそうだな本物なんか置けないっすよ。
ラフォーレミュージアムって、場所柄チャラいようで、意外と本物の美術品を置けるほど温度管理とかちゃんとできるっぽいね。前もヘンリーダーガーの展覧会とかやってたし。
……にしても期間が結構短いな。……と思ってサイトを見たら、全国巡回してて、東京はもう終わりのほうなんだな。
http://majo-himitsu.com/

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2016年3月 5日 (土)

カラヴァッジョ展(国立西洋美術館)

だいぶ前に庭園美術館でカラヴァッジョ展があって……混んでてサンザンな目にあったもんです。だから昨日、午後に用があって会社を半休。用は三時に終わったんで早々に行ったーっ!

展示はコーナーに分かれている。最初は風俗画の酒場とか。最初にカラヴァッジョ「女占い師」……う? カラヴァッジョワールドは光と影だと思っていたもんで、これは至って普通だな。うん、女の顔はナカナカいいけどね。隣にゃ表情のナイスな絵がある。その次には見事な光と影の絵が。ほほー、さすカラヴァッジョ。いやいやいや、これカラヴァッジョじゃないっじょ。そう、さすがに全部カラヴァッジョじゃないんだな。同時代のパチモンもといフォロワー……ええと「カラヴァジェスキ」もイパーイなのだ。で、表情のナイスな絵はシモン・ヴーエ「女占い師」なんかオランダの風俗画みたいな雰囲気です。光と影のは「蝋燭の光の画家(ジャコモ・マッサ?)」の「酒場の情景」。うん、これなんてカラヴァッジョだって説明されても、おお、そうだな、とか、なりそうなくらい光で浮き上がる感じが見事。次のジュゼペ・デ・リベーラもなかなか大きくてイイ。が、次のクロード・ヴィニョン「リュート弾き」……あかん。顔があかん。いや、顔と体のバランスもあかん。ピエトロ・パオリーニ「合奏」……顔あかん。かように、フォロワーもいろいろで、分量水増しのために来てるようなヤツも少なくない。あと西美が持ってるヤツもある。

風俗画の五感とかいうコーナー。カラヴァッジョ「トカゲに噛まれる少年」あ? ……悪くないがピンとこない。こりゃもしかして期待しすぎたかなーと思ったら、来ましたよスゲエヤツが。「ナルキッソス」わおぅ! 教科書にも出るであろう代表作じゃん。これのポイントは、誰かも指摘してるけど、水面に映る姿の上下対象によって作られる円形なんだな。画面がまとまるだけじゃない。円というのはそれだけで完結している。出口がない。まさに、自分に恋しちゃった神話のナルキッソスを象徴するにはもってこいじゃん。なかなかテクニカルな演出をするカラヴァッジョ。えーと他の三つはフォロワーでパチモンレベル。いや、うまいのかもしれないがカラヴァッジョと比べるとそう感じちゃう。

静物のコーナー。カラヴァッジョ「果物籠を持つ少年」。ポスターなんぞで見ていて、その段階ではどってことない絵じゃないかと思っていたが……実物を見るとなんかこれスゲエ。パネエぜカラヴァ! まず果物籠がバキバキの写実。バカテク。それだけならそれだけなんだけど、背後の少年がちょっとぼやけ気味に描かれている。そのため果物籠がただならずのっぴきならず迫ってくるぜっ。うむむ先のナルキッソスといい、テクニシャンじゃないか。次のパンフォロ・ヌヴォローネ「果物籠」……アウト。「アクアヴェッラの静物の画家」の「桃の入った籠と少年」ダメだダメだダメだーっ、このパチモンどもがぁ! そんで次が目玉の一つ。カラヴァッジョ「バッカス」おおーっ……なんか頭にいろいろ乗ってるんで、酒飲んで酔っぱらってゲイシャの真似してる少年みたいだ。血色がイイよね。しかし……バッカスが少年ってのもなんだかなー、酒の神バッカスに踊らされて女どもがついて行ったりするんで、もちっと大人っぽい若者のほうがいいような(ほんとは赤ら顔のおやじがイイ)。でもこういう酒飲み少年でやっちゃうところがカラヴァッジョなんだな。

肖像のコーナー。普通なんでつまらんので飛ばす。いや、誰かか描いたカラヴァッジョの肖像があるよ。

光のコーナー。えええええええいきなり来た―――――――――(゚▽゚)―――――――――――っ! カラヴァッジョ「エオマの晩餐」これも教科書級の傑作。光が左から差してる。でね、こういう演出は別にカラヴァッジョ以外でもやってるんだよな。しかし、演出効果によりちゃんとキリストをイイオトコにオトコマエにナイスガイについでに神々しく描けるのがカラヴァッジョなんだな。エブリバディ見入ってしまうぞ。で、次の絵からしばらくパチモン。概ね顔がダメだ。でもヘリット・ファン・ホントホルスト「キリストの降臨」ほう、こいつはナカナカだ。例の蝋燭の光の画家(ジャコモ・マッサ?)「聖ヒエロニムス」もまずまず。ジョルジュ・ドゥ・ラ・トゥール「煙草を吸う男」。これはかつて西美でも個展やった人だね。これも光の使い方うまいよ。

斬首のコーナー……ぬぁに? そうっ、首切りの絵が集まっているのです。そのブームを作ったのが他ならぬカラヴァッジョなんだって。で、最初にあるカラヴァッジョ「メドゥーサ」。神話でおなじみ蛇頭のメドゥーサの盾を作った。これがまたウメエ。コエエ。目力あり。オラツィオ・ボルジャニ「ダヴィデとゴリアテ」うぎゃあああああ。シモン・ヴーエ「ゴリアテの首を持つダヴィデ」これはイイセンいってんじゃん。グエルチーノも「ゴリアテの首を持つダヴィデ」。おお、これも西美で個展やったよ去年。スゲエよかったヤツだよ。さりげなく置いてあるなグエルチーノ。

階段を降りて、天井の高い地下室。聖母と聖人の新たな図像のコーナー。要するにバロックというのは、地味ながら教えを地道に実践することで実力を付けてきたプロテスタントに対抗して、戦略的イメージを刷新して派手に挽回しようぜって運動でもあったんで、カラヴァッジョはその方面の絵画も描いてるの。天井の高い地下室。カラヴァッジョ三つ「洗礼者聖ヨハネ」「仔羊の世話をする洗礼者聖ヨハネ」「法悦のマグダラのマリア」。特に「法悦の……」は、最近発見されて今回世界初公開。カラヴァッジョが最後まで手放さなかったヤツだって。うむむむ……生気がねえ。もちろんこれ、ないように描いてるんだろうが、能面みたいな顔と、変色したような指先。この指先から死が蝕んでいく感じか。しかしこれが法悦だってのはどういうことかな。殺人までしてしまったカラヴァッジョの生きることに対する、ある種の諦念というか達観というかみたいなものに見えなくもない。他にマグダラのマリアはパチモンが二つ。特に一つ目ヤツはハダカ目的じゃねーのか俗人が。グエルチーノ「手紙に封をする聖ヒエロニムス」、ジョルジュ・ドゥ・ラ・トゥール「聖トマス」とがんばっている。最後は「エッケ・ホモ」の画家対決、カラヴァッジョ対チゴリ。これは「このホモを見よ」ではない。「この人を見よ」とキリストを指し、これが悪い人に見えますか、と人々に訴えたが、人々は磔を望んだ、というもの。カラヴァッジョはストレートに思い切り「見よ!」とやってる。キリストは普通。チゴリは抑え気味に弱って痛々しいキリストを見せている。もともとカラヴァッジョの作品が気に入らずチゴリにも依頼したらしいが、これは……チゴリの勝ちだって感じがしますな。

そんなわけで、カラヴァッジョそのものの作品数は決して多くない(っていうか、そもそも現存する真筆が60作だそうで、展覧会で一度に見せる数としてはかつてなく多いようなんだが)が、名品がガッチリ来ているので、見応えは十分。これは混むぞぉ。混まないうちに行けっ。
http://caravaggio.jp/

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