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2016年3月 5日 (土)

カラヴァッジョ展(国立西洋美術館)

だいぶ前に庭園美術館でカラヴァッジョ展があって……混んでてサンザンな目にあったもんです。だから昨日、午後に用があって会社を半休。用は三時に終わったんで早々に行ったーっ!

展示はコーナーに分かれている。最初は風俗画の酒場とか。最初にカラヴァッジョ「女占い師」……う? カラヴァッジョワールドは光と影だと思っていたもんで、これは至って普通だな。うん、女の顔はナカナカいいけどね。隣にゃ表情のナイスな絵がある。その次には見事な光と影の絵が。ほほー、さすカラヴァッジョ。いやいやいや、これカラヴァッジョじゃないっじょ。そう、さすがに全部カラヴァッジョじゃないんだな。同時代のパチモンもといフォロワー……ええと「カラヴァジェスキ」もイパーイなのだ。で、表情のナイスな絵はシモン・ヴーエ「女占い師」なんかオランダの風俗画みたいな雰囲気です。光と影のは「蝋燭の光の画家(ジャコモ・マッサ?)」の「酒場の情景」。うん、これなんてカラヴァッジョだって説明されても、おお、そうだな、とか、なりそうなくらい光で浮き上がる感じが見事。次のジュゼペ・デ・リベーラもなかなか大きくてイイ。が、次のクロード・ヴィニョン「リュート弾き」……あかん。顔があかん。いや、顔と体のバランスもあかん。ピエトロ・パオリーニ「合奏」……顔あかん。かように、フォロワーもいろいろで、分量水増しのために来てるようなヤツも少なくない。あと西美が持ってるヤツもある。

風俗画の五感とかいうコーナー。カラヴァッジョ「トカゲに噛まれる少年」あ? ……悪くないがピンとこない。こりゃもしかして期待しすぎたかなーと思ったら、来ましたよスゲエヤツが。「ナルキッソス」わおぅ! 教科書にも出るであろう代表作じゃん。これのポイントは、誰かも指摘してるけど、水面に映る姿の上下対象によって作られる円形なんだな。画面がまとまるだけじゃない。円というのはそれだけで完結している。出口がない。まさに、自分に恋しちゃった神話のナルキッソスを象徴するにはもってこいじゃん。なかなかテクニカルな演出をするカラヴァッジョ。えーと他の三つはフォロワーでパチモンレベル。いや、うまいのかもしれないがカラヴァッジョと比べるとそう感じちゃう。

静物のコーナー。カラヴァッジョ「果物籠を持つ少年」。ポスターなんぞで見ていて、その段階ではどってことない絵じゃないかと思っていたが……実物を見るとなんかこれスゲエ。パネエぜカラヴァ! まず果物籠がバキバキの写実。バカテク。それだけならそれだけなんだけど、背後の少年がちょっとぼやけ気味に描かれている。そのため果物籠がただならずのっぴきならず迫ってくるぜっ。うむむ先のナルキッソスといい、テクニシャンじゃないか。次のパンフォロ・ヌヴォローネ「果物籠」……アウト。「アクアヴェッラの静物の画家」の「桃の入った籠と少年」ダメだダメだダメだーっ、このパチモンどもがぁ! そんで次が目玉の一つ。カラヴァッジョ「バッカス」おおーっ……なんか頭にいろいろ乗ってるんで、酒飲んで酔っぱらってゲイシャの真似してる少年みたいだ。血色がイイよね。しかし……バッカスが少年ってのもなんだかなー、酒の神バッカスに踊らされて女どもがついて行ったりするんで、もちっと大人っぽい若者のほうがいいような(ほんとは赤ら顔のおやじがイイ)。でもこういう酒飲み少年でやっちゃうところがカラヴァッジョなんだな。

肖像のコーナー。普通なんでつまらんので飛ばす。いや、誰かか描いたカラヴァッジョの肖像があるよ。

光のコーナー。えええええええいきなり来た―――――――――(゚▽゚)―――――――――――っ! カラヴァッジョ「エオマの晩餐」これも教科書級の傑作。光が左から差してる。でね、こういう演出は別にカラヴァッジョ以外でもやってるんだよな。しかし、演出効果によりちゃんとキリストをイイオトコにオトコマエにナイスガイについでに神々しく描けるのがカラヴァッジョなんだな。エブリバディ見入ってしまうぞ。で、次の絵からしばらくパチモン。概ね顔がダメだ。でもヘリット・ファン・ホントホルスト「キリストの降臨」ほう、こいつはナカナカだ。例の蝋燭の光の画家(ジャコモ・マッサ?)「聖ヒエロニムス」もまずまず。ジョルジュ・ドゥ・ラ・トゥール「煙草を吸う男」。これはかつて西美でも個展やった人だね。これも光の使い方うまいよ。

斬首のコーナー……ぬぁに? そうっ、首切りの絵が集まっているのです。そのブームを作ったのが他ならぬカラヴァッジョなんだって。で、最初にあるカラヴァッジョ「メドゥーサ」。神話でおなじみ蛇頭のメドゥーサの盾を作った。これがまたウメエ。コエエ。目力あり。オラツィオ・ボルジャニ「ダヴィデとゴリアテ」うぎゃあああああ。シモン・ヴーエ「ゴリアテの首を持つダヴィデ」これはイイセンいってんじゃん。グエルチーノも「ゴリアテの首を持つダヴィデ」。おお、これも西美で個展やったよ去年。スゲエよかったヤツだよ。さりげなく置いてあるなグエルチーノ。

階段を降りて、天井の高い地下室。聖母と聖人の新たな図像のコーナー。要するにバロックというのは、地味ながら教えを地道に実践することで実力を付けてきたプロテスタントに対抗して、戦略的イメージを刷新して派手に挽回しようぜって運動でもあったんで、カラヴァッジョはその方面の絵画も描いてるの。天井の高い地下室。カラヴァッジョ三つ「洗礼者聖ヨハネ」「仔羊の世話をする洗礼者聖ヨハネ」「法悦のマグダラのマリア」。特に「法悦の……」は、最近発見されて今回世界初公開。カラヴァッジョが最後まで手放さなかったヤツだって。うむむむ……生気がねえ。もちろんこれ、ないように描いてるんだろうが、能面みたいな顔と、変色したような指先。この指先から死が蝕んでいく感じか。しかしこれが法悦だってのはどういうことかな。殺人までしてしまったカラヴァッジョの生きることに対する、ある種の諦念というか達観というかみたいなものに見えなくもない。他にマグダラのマリアはパチモンが二つ。特に一つ目ヤツはハダカ目的じゃねーのか俗人が。グエルチーノ「手紙に封をする聖ヒエロニムス」、ジョルジュ・ドゥ・ラ・トゥール「聖トマス」とがんばっている。最後は「エッケ・ホモ」の画家対決、カラヴァッジョ対チゴリ。これは「このホモを見よ」ではない。「この人を見よ」とキリストを指し、これが悪い人に見えますか、と人々に訴えたが、人々は磔を望んだ、というもの。カラヴァッジョはストレートに思い切り「見よ!」とやってる。キリストは普通。チゴリは抑え気味に弱って痛々しいキリストを見せている。もともとカラヴァッジョの作品が気に入らずチゴリにも依頼したらしいが、これは……チゴリの勝ちだって感じがしますな。

そんなわけで、カラヴァッジョそのものの作品数は決して多くない(っていうか、そもそも現存する真筆が60作だそうで、展覧会で一度に見せる数としてはかつてなく多いようなんだが)が、名品がガッチリ来ているので、見応えは十分。これは混むぞぉ。混まないうちに行けっ。
http://caravaggio.jp/

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