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2016年4月24日 (日)

高島野十郎展(目黒区美術館)

高島野十郎といえば、三鷹で見て以来ですね。蝋燭(ろうそく)の絵で知る人ぞ知る孤高の写実画家です。没後四十年ということでひっそりとしかし熱烈に個展をやっているのだ。

初期の中3で描いたれんげの絵があるが、既にウマー。最初は自画像いくつか。「りんごを手にした自画像」の眼光がナイス。「断崖の上」の木の枝のウネウネっぷりが野十郎の魅力。あとは初期の静物。これはなかなか手堅い。「けし」も茎のウネウネがウネウネしててウネウネだ(何だよ)。それにしても……なんかライティングがおかしいぞ。絵のガラス面にうしろの白い壁とか映っていて、特に画面が暗い絵だと絵の手前に壁とオレが映り込んでいるのが目立って絵が分からんではないか。なんだよー ……と思ったがライティングじゃなくて、どうも絵によるようだ。ガラス面が低反射式になっていて、ほとんど映り込みがないものもある……っていうか、全部低反射使ってくれよ。

えーそれから野十郎は世界をいろいろ訪問。「ノートルダムとモンターニュ通」は再会。そうそう三鷹でもこれは一番印象に残っていた。このパリの石造りの雰囲気、空気遠近法を使ったリアルな空間、手前の赤い花がアクセントね。「梨の花」はちょいゴッホ風の道。それから海上の風景なども。「イタリアの道 キオッジア漁村」は、船なんだけど、帆を休めてくたっとした感じがいいね。「帆船」も夕日に照らされた帆だ。

それから風景いろいろ。写実の実力満載。「すいれんの池」は大きめで、睡蓮一つ一つ丁寧に描いているぞ。「萌え出ずる森」は木々の林が……って言い方も変だな。要するに木々が立ち並ぶ風景が実にリアルにあるある。「御苑の春」は一本の木のオバケっぽいが、いや、これもあるよこういう木。見たような気がする。「林径秋色」もあるある林道。「れんげ草」は花いっぱいの大地と背後の山が広大でパノラマである。「春の海」は干潟が実に干潟の魅力。「流」はいい作品なのにガラス反射でブチ壊し。「古池」も池のほとりの枯れ草の群が魅力的なのにド反射ガラスが痛い。「海岸風景」はクールベさんを思わせる海辺……野十郎って岸田劉生の影響とか書かれていたが、自然をありのままにってことじゃクールベさんの影響を受けないわけはないと思うが。「秋の花々」はなんとなくトロピカル。「寧楽の春」は花に隠れる五重の塔のこじゃれた演出。「雪の山辺」村を見下ろす大山脈の雪景色。「法隆寺塔」は凄い。まるでそこにあるかのような、というか設計図から起こしたかのような正確無比な描画……不思議なことに、いや、そう感じるだけなのかもしれないが、写実画ってのは、時に写真よりもリアルに迫ってくるんだな。

静物のコーナー。全編マジ写実。中でも「煙(夜の)」の、暗闇に上っていく一条のたばこの煙。この静けさや。「割れた皿」の割れっぷりは見事。「葡萄とリンゴ」の迫る写実性。他にも果物は瑞々しく、時にいたんでいるところも正確に書く。これぞ仏の慈悲……なんだってさ。

光と闇のコーナー。太陽が描かれているもの。写実画家が太陽を描くってだけですごい。さすがにギラギラ太陽は無理で、まあ夕暮れ時とか、ですな。あと「月」もある。月の周囲のにじんだ光がポイント。1枚すばらしいものがあったが……惜しいことにガラスでアウト。
最後はいよいよ蝋燭コーナー。いっぱい並んでいるぞ。今回気がついたのだが、炎の周りに赤い絵の具で輪郭っぽく描いている。蝋燭の炎の写真とか見ても、そうなっていないんだよね。でも赤い輪郭が妙にリアルなのは、もしかして人の網膜に映った感じがそれに近いのでは? そう、これが写真とは違う写実画のすごさだっ(と勝手に解釈しているが)。あと今回、科学的に分析して、縦線を微細な線で強調してたとか、蝋燭の周囲にキラキラ結晶があったとか、紹介されています。

ひさびさに優れた写実画家の展覧会だ。写実画の魅力に触れるべく行ってみよう。
http://www.tnc.co.jp/takashimayajuro40/

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