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2016年5月 3日 (火)

「黒田清輝 - 日本近代絵画の巨匠」(東京国立博物館)

5/2 上野に突撃~っ! ……ったって若冲じゃないです。いや~、一応若冲展の様子を見てみたら、都美前が阿鼻叫喚になっていたんで、ありゃ酷いよ。

黒田展は年代順と、あと、影響を与えたヨーロッパの画家とかで構成され、黒田本人よりええもん見せてもろたりしたようなしてないような。

冒頭はおなじみ「婦人像(厨房)」。それからフランスに行って画業修行してたそうで、「田舎家」とかいうミレー風のから、レンブラントの自画像を模写したのとか。あと裸婦習作いろいろ。日本じゃまだまだ裸婦画なんぞは受け入れられてなかった時代だったが、あっちじゃ当たり前だったのだ。「祈祷」という絵があり、女性が祈っているけどなかなか初々しい感じで。「アトリエ」はラファエル・コランの教室らしいんだけど、光あふれる感じがいいね。やっぱこういうのコランだよな。「枯れ野原(グレー)」なんか正当印象派っぽいけど、師のコランはアカデミックだからちょっと違う路線だよな。「編物」は外光と窓辺という黒田定番。ポスターになってる「読書」も「針仕事」もそうだけど、私は「針仕事」が一番よかったね。全体が水色っぽくて。色合いがいい。「赤髪の少女」も外光。あとこの人後ろ向き。「白き着物を着せる西洋婦人」は一生懸命コラン風にやろうとして……これ、あんましうまくいってない。

ここで、じゃあラファエル・コランって何者じゃいということで、コランの絵がいろいろ。「フロレアル(花月)」は自然風景の中の裸婦というファンタジックながらコランの定番。「思春期」は、裸婦というかほとんどロリコンが喜んで、おまわりさんこいつですとか言いそうなヤツ。「孤独」も裸婦後ろ姿ながら、こういう心情を表すような意味深のタイトルが黒田の中二病魂を直撃したのは想像にかたくない。それであとで「智・感・情」なんてムダに気合いの入ったものを描いたりするんです。それからまだ他の人で、カバネルで「フランチェスカ・ダ・リミニとパオロ・マラテスタの死」うんドラマチックだ。ミレー「羊飼いの少女」OHキターッ! オルセーから特別出品だと。「晩鐘」や「落ち穂拾い」と並ぶミレーの一番ウケそうなヤツ。黒田だけ期待していた人には思わぬお得だぞ。あとはジュール・ブルトンって人の「朝」外光降り注ぐ感じのもいいな。これはいかにも黒田が喜びそうなやつ。

売店を挟んで後半の展示。「舞妓」は日本に帰ってきた黒田が見つけたクールジャパン。日本における西洋画はいかにすべきか、と悩んで描く。いろいろ描いてるが、展示は小物が多い。「菊圃」は地味ながら、モネのエッセンスが詰まってる感じ。「昼寝」がちょっとポイント。)(後期?)印象派風の原色を織り交ぜた描画で迫る人物画だ。うん、これは新鮮だな。あとは超有名な「湖畔」。有名なんだけど、他のと大きな違いがあるかというと無いような。品のいい画題で技法も抑え気味に使っているので、無難でおとなしい印象だ。「木かげ」は外光もの。女性が横たわる。うむ「湖畔」よりもこっちのほうが黒田らしいとうかコランの弟子らしい。やっぱこれ裸婦で描きたいよなあ黒田君。「裸体婦人像」は日本髪の裸婦画で、公序良俗と乱すとか何とかで最初は腰巻き付けて展示されたらしい。そんなのかえってイヤラシイだろ。「春」「秋」はコランの劣化コピー風味。コラン過ぎるもの描いちゃいかんよ。

それから黒田君は日本洋画のアカデミズムを形成すべく、政治家にもなったそうです。「花野」は三人裸婦ながら未完。「赤き衣を着たる女」はヨーロッパ定番風の横向きのヤツ。この辺からなんか忙しくて絵もなかなか描けないので、小品ばかりになってくるし、新しいものをやってる感じもしない。「雲」の五枚組はそれぞれの雲の表情があっていい感じだが。そんで「梅林」が絶筆。

近代洋画のコーナー。黒田に関わった人の。ここでは黒田に学んだ中沢弘光の「裸婦(霧)」がいいですな。裸婦というか裸体少女だが。それから黒田の失われた大作「昔語り」の下絵とか、いろいろ。そして最後に「智・感・情」三人の裸婦による、日本人の理想の体型を表現したとかなんとかかんとか、なんだけど。要するにこれ裸婦画がイヤラシーとかバカにされるのにキレた黒田が、じゃあ裸婦使って意識高い系の小難しい表現しようじゃんって描いたもんだと思う。しかし思うに、現代は「春画展」などもあり、春画でさえもその芸術性が評価されてきているもんで、今こういう気合いの入ったものを見るとなんとなく微笑ましいというか微苦笑を禁じ得ない。黒田は「智・感・情」の裸婦画をキバって描いたが、足下の日本の春画が芸術だなんて思ってもいなかったろうなあ、と思う次第である。まあ今でも思わん人は少なくないかもしれんが。

黒田の有名どころが一通り見れるしミレーなんかお得なんで、みんなが若冲に押し掛けている間に行こう……って、これ5月15日までか。
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