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2016年5月 8日 (日)

若冲展(東京都美術館)

「乗るしかない、このビッグウェーブに!」
というのはかつてiphoneなんたらで並んで買った人の名言だけど、まさに流行りものに乗る気分を的確に表している。そおっ、あのっ皇室の至宝「動植綵絵」の全てが並び、代表作も一堂に会す、夢の「若冲展」わずか一ヶ月だが、まさにこんな気分。おお、なんという魅惑的で、そして残酷な企画であることよ。しかも連日テレビの特集番組で煽ること煽ること。聞こえてくる情報は入場まで数十分。中は大混雑で会場内に飛び交う怒号罵声悲鳴絶叫咆哮爆笑殴打乱闘惨劇いやいやいやそんなことないにせよ、少なくとも若冲をゆっくり鑑賞なんて状態じゃないらしい。いつ行ってもダメじゃん。なんでこんな企画をしやがったクソが。なんで一ヶ月だけなんだよっ(文化財保護の借用展示可能期間の関係であることぐらいは分かっているが)。「動植綵絵」なんて一ヶ月しか出しちゃダメなら半分ずつ出して期間を二ヶ月にしたっていいじゃないか。2回来てやるぞ。その方が儲かるだろうに。一ヶ月でいいから全部いっぺんに出したいなんて、客の動向を考えていない企画者の夢というかエゴでしかなかろう。だからさー、夢は夢のままであったほうがいい場合もあるってもんだよなあ……
で、いつ行けばいいのだ? GW明けの金曜(5/13)夜間開館狙いを考えた……いやいや、きっとこれみんな考えるぞ。なので、GW合間の平日金曜(5/6)夜に挑んだ……が、同じこと考えているヤツも多く、6時頃で110分待ちだとかの情報を得て断念。もう裏の裏をかくしかない。土曜午後閉館間際狙い。まともな鑑賞など期待できないが覚悟の上。結果的には、まあ悪くなかった……いや、結構よかったところもあるんだが、それは今から説明する。

2時50分に上野に着いた。その時点で70分待ちという情報(ツイッターを使っている)。4時過ぎに入ることを狙って、上野駅の本屋で時間をつぶす(この段階で5時閉館と思っていた。また「動植綵絵」と「菜蟲譜」のみを狙っていた)。3時5分、上野駅を出る。3時15分、まだ70分待ちだが並ぶ。これが外で。日傘とか貸している。日差しはそこそこ(炎天下だったらキツい)。3時30分、屋外からテントへ。3時45分、建物内へ。その途中なんと給水サービスあり。水を一杯いただき。ありがてえ。大型扇風機があったり、スタッフが誘導したりと、少しでもこのクソッタレな企画を快適にしようと努力が見られる。4時5分に会場に入れた。50分待ちである。うん、まあ悪くないな。

中はもちろん混雑。最初のほうの「鹿苑寺大書院障壁画」は水墨のせいかスルー気味だが、実はこの筆さばきは相当なもんだと分かる。あとはもう混んでいる。「孔雀鳳凰図」と「旭日鳳凰図」はかなりのもの。細かく美しい。単眼鏡を持って行って見たが、倍率がそう高くないせいか、これでも描線がよく見えない(最前列は無理な状態)。見たことありそうなヤツはそこそこにして、一気に上の階の「動植綵絵」と「釈迦三尊像」へ。

「動植綵絵」は三の丸の展示で見たと思ってたが、思えば30幅全部ではなかった。今回全部見れる! ……が、当然のように会場内は人ごみ。最前列は難しい……が、流動的なので、少し粘っていればなんとなくチャンスも巡ってはくる。まあ概ね3、4列目ぐらいで上半分と、人の隙間から下半分も見るって感じ。で、見比べていくと、鳥だけが他と違ってえらく気合いが入っている。いや、気合いというか、何か描く悦楽というか、いや、もちろん鳥以外だって全体的にうまいし細かいし贅沢なんだけど、鳥、特に鶏の描画はなんというか密度が高く執拗で、描いてて性的快楽でもおぼえているんじゃないかというくらい艶めかしい印象が強い。「向日葵雄鶏図」と「芙蓉双鶏図」がとにかくスゲエ。羽一枚一枚というかその羽の一本一本というか、ちまちまと描いている。ポスターになっている「老松白鳳図」もハート模様の尾をなびかせ、エクスタシーな感じがする。鶏は他にもいくつもあって、はあ、「動植綵絵」ってこんな鶏率が高かったのかと驚く。やっぱ若冲、鶏好きなんだねえ。あとは草花は普通に綺麗どころ。「釈迦三尊像」は悪くはないが、やはり「動植綵絵」に囲まれると、ちょっと普通なもんで印象が薄い。ここで、閉館が5時じゃなくて5時半だと知る。そうか閉館間際狙いだったが早かったな。でもそれならそれでもう少し見れるもん見てみるか。

その上の階に行くと、前半しか出ていない「百犬図」があったが、これはどこかで見た。「菜蟲譜」は巻物を全部広げている。これ見たいが結構な列なんでどうしようかと一旦他へ。鶏の絵がある。結構いいんだけど、「動植綵絵」の鶏が強烈なんで、それと比べるとちょっと力不足に感じちゃう。鯨と象のはサントリーで見たっけと思いスルー。時代を超越したモザイク画で驚かせた「鳥獣花木図屏風」には人が大量に群れていたが、オレはさんざん見たんでスルー。売店を通り抜け(なんも買う気なし)。また最下階へ。

「孔雀鳳凰図」と「旭日鳳凰図」に見とれ、また上の階に行き鶏と白鳳を見て、時間がまだあるので。その上の階「菜蟲譜」をまともに並んで鑑賞。うむ、色使いが独特。観察鋭い昆虫ものは後半だ。さてもうそろそろ閉館だ。最下階へ行き、ここはもう人が少ない。見れなかった「糸瓜郡中虫図」の昆虫を見る。うむ、よく描けているな。そして「孔雀鳳凰図」、「旭日鳳凰図」をじっくり鑑賞。実はこれ、「動植綵絵」の鳥達に勝るとも劣らない素晴らしき鳥達なのだ。その羽の細かさ、金色に光るかのような体を包む描線。羽の細かいグラデーションの美しさ。おお、そうだとも。これが若冲を鑑賞するということだよ。もう一度上に行って、「動植綵絵」を見たりしたが、最後にはまた下に戻ってきた。閉館時間が10分延びた。これらの鳥達を独占。やったぜ。諸君、もし諸君がこの悲惨な混みっぷりの企画で、若冲のすごい絵を、割とじゃまされずに見たかったら、閉館寸前にこの鳥達と対峙するがよい。「動植綵絵」はあまりに目玉なもんで、閉館間際でも人が群れている。だから狙いはこっちだとオレは思う。

というわけで、結果的に堪能できた。闘いは苦しいが諸君の健闘を祈る。
http://jakuchu2016.jp/

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