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2016年5月16日 (月)

人造乙女美術館(ヴァニラ画廊)

ここに行った諸君は当然、ヴィリエ・ド・リラダンの「未来のイヴ」は読んだんでしょうな。俺は読んでるんだじぇ。アート好きだからってアート関係の本ばっかり読んでたってダメダ~メよ(←たまたま読んでるからって偉そうに)。ある男が恋人である人間の女(の内面)に失望して、メンローパークのエディソン博士(!)に人造人間(美女)を作らせるって話で、なんかすげえ冗長でエディソンの愚痴と人造人間の仕組みの話でほとんどだったような気がする。この話の山場は(これから読むって人はここを読まない方がいいが)、男が恋人と別れを切り出したら涙で止められて、男が思いとどまるが、それが実は人造美女だったというところ。『あなた、妾がお判りになりませんの? 妾はアダリーなのでございます、』完璧なデキだった。アダリーは人造美女の、なんか、素になったヤツの名前。

それで、現代における人造美女といえば、ラブドールです。はい、なんか昔ダッチワイフとか言いましたね(今も言ってるのかもしれないが)。皆さんのイメージは空気嫁ってぐらいで、空気で膨らませた女の人形のお化けみたいな、いかにもどうしようもない男がしかたなくどうしようもないヴィジュアルの代用品を寂しく使っているというもんでしょうけど、そこはかつての「未来のイヴ」から連なる男達の秘かな欲望。オリエント工業という会社がハイテク技術と造形センスを駆使して作り上げた一連の人造美女は我らのダサいイメージをブッ飛ばす完成度を持っている。いや写真とか見てると本物だか何だかもう分からない。今回はそれらの美女を用いて、日本画の美女を再現しました。品のいいアートサイトが日本画の再現ってところで食いついたもんで、私もその流れで知ることになったが、この画廊はそもそもエロチックアートみたいな、ちょっと妖しいものを扱うんで名が知れてるみたいです(6月頃には凶悪犯罪者のアート作品展だしな)。私は品はそう良くないけど、この画廊は初めて知った。まあ知る人からすればナニを今さらって感じだと思うが。

行って現場は地下2階。入場料はパンフレット付きとはいえ1000円と結構強気価格。入って日本画再現は3つ。橘小夢「玉藻前」九尾の狐のやつみたい。再現はまあまあ。胸見える。顔の妖しさがなかなかいい。もともとは男を萌えさせるおっとりした感じの顔立ちなんだが、絵に合わせてキツい感じにメイクしてあるよね。次、池永康晟「如雨露」再現は一番よくできている。立ち姿。雰囲気が絵のまんまだ。いいね。橋口五葉「髪梳ける女」再現はまあいいんだけど、うーむ、イマイチだなあ。何がって? はい、櫛を持つ手です。櫛を持って梳かしているように見えない。とりあえずそれっぽく落ちないように人形の手にひっかけましたって感じが残念。思うにこういうのはディテールがものすごく大事で、どんなに顔を精巧に作って、髪の毛も再現して、きれいな着物を丁寧に着せても、「手が櫛を持って梳かしていない」という細かい事実だけでかなり印象が壊れてしまう。……俺だけ? みんないいの? つまり、だから動作ものは難しいね。人間って筋肉があるからさ。

リラダンの「未来のイヴ」に捧げる作品があったが……なんかコレジャナイ感がする。エロチックドールのディスプレイとしては悪くないんだけど、「未来のイヴ」って、もっと、なんちゅうか、そういうところでない部分で迫ってくるべきじゃない? これだと女が見て「あーいーじゃん、あたしもこういう格好して男を誘いたーい」ってな、そうそうあの「エロカッコイイ」倖田來未みたいな感じでしょ? 違う違う。男達が秘かに集い、エディソン氏が作るべき「未来のイヴ」は言うなれば、「カリオストロの城」のクラリスみたいなやつ。女が見て「なにあれ? あんな女いねーよ。男の妄想じゃないペッペッ」ってなもんであるべきです。女に軽蔑されてこその男の妄想です。だからこれをリラダンに捧げちゃダメだっ!

それから実物に触れるコーナー。顔に触ったり揉んだりしないで下さいと注意され、事前にお手拭きを渡される。腕とか腿に触れる。触った。へえ! ……シリコンだね。あの調理道具に使っているシリコンを、もっとキメを細かくした感じ。うーんそうかあ、でも手で触っただけではよく分からんなあ。一緒に寝るとどんな感じなんだ? えー、あとはスチームパンク(なんか蒸気機関とかレトロ真空管とかのメカ)の中に美女がいるって作品。スチームパンクのディスプレイはなんか……悪くないけど飽きてる。この手合い好きなヤツが多すぎ。

ちなみに画廊なんで、全部これ売ってるのね。先の日本画再生なんて百万近くする。

あとショップで妖しいグッズがいろいろ見れる。安くない。でも多分ここにしかない。外に出れば中国人だらけの銀座はすぐそこさ。
http://www.vanilla-gallery.com/archives/2016/20160425ab.html

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