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2016年8月21日 (日)

「現在戦争画展」(TAV GALLELY)

「いかなる戦争も聖戦で始まり惨殺で終わる」ってな言葉を考えた。先の太平洋戦争も恐らくはアジアの平和だか解放だかを目指した聖戦で始まったと思われる。しかし崇高な理念は出だしだけで、戦争が長引くに連れて戦場では長い禁欲的な生活を強いられた兵士達が相手がメスと見れば襲いかかり、じゃまするオスどもを惨殺するという野獣そのものの状態となり、そうした者達の被害者にとっては当然それが戦争の実体であり全てである。要するにその聖戦から惨殺までが戦争の始まりから終わりまでグラデーションのようになっている、というのが私の戦争観です。「そんなことないよ、惨殺で始まり惨殺で終わるのさ」と、自分は絶対に人に流されず過ちを犯さないと確信している平和主義者諸氏には、多分それは間違っていると言いたい。そういうものだったなら戦争は繰り返されないであろう。逆に兵士達は志高く、敗戦とはなったが始めから終わりまで聖戦であったという国粋主義者諸氏にも、んなこたーないと言いたいのです。
で、そういう事前の心構えで行ってみたが、やはり企画者側も慎重なのか、あるいは手堅いのか、想像したようなイデオロギーバキバキの作品群ではなかった……っていうかまあ、会田誠が出ている時点で、そうなっていると予想してもよかったんだが、まあ、なんというか「今の私にとっての戦争」ってなテーマも多い。

その会田誠なんだけど、先日見た弁当箱の一つが出ている。ちょっと血便(!)みたいなヤツで……うむ、これが戦争かと言えばまあ戦争っぽいかな。高名な特殊漫画家の根本敬、出てます。例の暴力的な調子です。光り物入れてちょっと絵が豪華。「佐吉侵藤吉暴行(日本侵華暴行)」ってテーマは戦争っぽいけど、例の「ミクロの精子圏」のアレだ。懐かしいですな。今年作なんだ。あとは、何が目についたかな……桜井貴の「プリキュア大戦絵図(経過観察ver)」。おなじみ女児(小学生未満)向けの戦闘少女変身バトルアニメは、子供向けなんで顔とかぶん殴ったりしないし、血も流さない、というお約束があり、そのお約束を破ったら……という絵を描きたいんで描いちゃった。顔がリアル。線画なもんで色ついてるとよかったかな。ま、変に色ついてると誰か分かっちゃって著作権法に引っかかるのかな。それから、佐古奈津美「また死んでる」の遺影でFuck Youは分かりやすいが、現在の世の中と戦っている自分である模様。テーマは違うもんになるが、太平洋戦争の兵士にしても使えそうだね。谷原菜摘子「I'm not female」服着てるけど乳房を切って服が血まみれ、というもの。これ私は戦場の慰安婦かと思いまして(服装は現代だが)、体を弄ぶ殺人者(兵士)達におっぱいなどやるものか、という反戦の意味かと。顔がえらく怖いもんで、もっと優しい系の顔だともっとメッセージが際立ったかなと……で、実はこれ全く違うんで、テーマはトランスジェンダーの戦い。心は男で体が女という者の、なんというか血まみれの戦いなんだそうです。たまに聞くところによると、えらい苦しいらしいです。そうかあ……やっぱり力込めて描けるのは自分にとっての戦争だよなあ…… 白鳥さえ子「宿命」写実で結構いい。李晶玉「0」も、普通にうまいゼロ戦。笹山直規「戦争の絵~絢音 with サイボーグ三島」これは「子供たちの平和の絵コンクール」での大賞であるところの上絢音さんの絵をもとに大人の視点というか毒というか子供たちがこれから向き合うであろうリアルを込めて描いた作品。まあつまり、人斬ったりしてるの。子供の、その大賞作品も一応写真で見れる。解説では戦争を知らない子供たちにきれいごとを描かせて大人が賞賛するバカバカしさに触れているが、私は別に「あり」だと思う。子供たちなりにちゃんと「平和」のイメージを描き残しておくのも悪くないじゃん(それがたとえ大人ウケを狙ったにせよ)。ウチの娘も環境問題のヤツでそういう絵描いてるしな。ただ、それを大人が平和イベントなんか利用しちゃダメなんだぞ……利用しちゃうけど。この作者、ちょっと右寄りみたいだけど、左が当たり前みたいなアート界で、こういう人もっと出てほしい。

ぐちゃぐちゃっとしたのがいくつかあったんだけど、その印象はあんましよくない。なぜって、「戦争ってさ、結局敵も味方も兵器も人体もグチャグチャになっちゃうんだだよね~」ってなことをよく聞くもので。だから、逆に、シンプルに攻めてほしいのさ。
http://tavgallery.com/sensouga/

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