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2016年10月23日 (日)

速水御舟の全貌(山種美術館)

ブロガー内覧会だお! ……内覧会は3度目で、1回目ブリヂストンで、2回目Bunkamuraの白隠で、もうやめようと思ってたんですけどね、というのも、なんか開催の苦労話なんか聞かされるとつい情にほだされて、大した展覧会でもないのに褒めちゃったりしてさ……いやいや過去2回がそうだってぇわけじゃないんだけども、やっぱり見たものを見たままに評価したいわけですよ。なに色々な情報を得ればそれだけ深い鑑賞ができるって? いやいやいや、情報は雑音と紙一重なのさ。情報に惑わされて何が「美」なのか分からなくなったら、それはもう美術鑑賞じゃないじゃん。とまあ、それでも3回目行ってみようと思ったのは、実はあんまり知らない御舟だし、あの「炎舞」が出ているんだから、まあ間違いはないな、ということです。あと、無料じゃなくて定価、但し和菓子付き。一部写真も撮れるんだけどオレは撮らない主義。

まず会場内でトーク。企画者にしてゲストの高名なブロガーTak氏による簡単な見所案内。速水御舟「展」ではなく「の全貌」というのがミソだそうで、作風の変化を見るべし。同じ作者とは思えないぐらい変化してるぞ、と。はい、うん、まあ、中村正義ほどじゃないですよね。
次に山﨑館長の解説。簡単に言いますと、御舟は14歳ぐらいで画塾に入り、そこは自由な雰囲気で、絵巻とかを模写し、最初は歴史人物画風のものを描き、朦朧体(輪郭がない)のものを描き、風景を描き、青や緑にハマり、物の質感を描く静物画を描き、琳派風のものを描く、という変遷だって。

そんな解説の内容を合わせ、展示物を見ていこう。一番最初は「鍋島の皿に柘榴」という静物。影がなんとなく超現実らしいんdが……まあ普通のうまい写実画にも見えるが。それから年代順で「瘤取之巻」は初期の巻物。色々な物を模した影響があるらしいが確認するヒマがなかった。「錦木」は朦朧体を使った人物……でもまあ、普通かな。「洛北修学院村」これが群青中毒期(青の時代か)の代表作っぽい(11/20まで)。一瞬、あれ東山魁夷かなどと思ってしまう。朝か夕かも分からぬ情景ながら実景らしい。静物期の「茶碗と果実」は文字通りだが、バッチリ写実してる。高島野十郎かなどと思ってしまう。「桃花」は色がなかなかイイが、娘の初節句の絵だって。あと「向日葵」も細かい。

で、今回一番驚いたのが、「炎舞」……ではないんだな。「昆虫二題 葉蔭魔手。粧蛾舞戯」蛾の絵と、蜘蛛の絵。そのうちの蛾! これがまあスゴいよ。こんなに蛾を愛してる。赤く染まった闇の中に浮かび上がる蛾の数々。羽がやや闇に溶けているように描いているので飛んでいるように見えるって。「炎舞」も炎の中に舞う蛾が描かれているんだけど、あっちの主役は炎だよな。こっちは蛾! こっちの方が蛾の数も種類も多い。蛾への偏愛っぷりににしびれるぜっ! こっちの方が後に描かれているんで、蛾が描き足りなかったのでは。蛾は観察やら図鑑なぞももちろん参考にしてたようだが、空想の蛾もあるそうです。次、「翠苔緑芝」というのはデカい屏風なんですけど、琳派風の画面。金箔の背景。いろいろ技法を使ってて、自信作だったらしい。ちょっと遠くから見ないと、全体像がつかめないぞ。隣の「名樹散椿」は山種所蔵の重要文化財。前に、アンリ・ルソーの幹みたいと書いたか書かなかったか。この絵の重要な特徴はですね、金地なんだけど、これ金箔じゃなくて、金砂子の全面蒔きつぶしなんだって。つまりなんていうか、ふんだんに使ってベターっとしてる感じ? 金箔との比較も展示されてるぞ。あと、普通の椿ってボトッと落ちるらしいんだけど、この椿は花びらが散っていくタイプ。しかも1本の木から5色咲く。スゴい。これファンタジーじゃなくて、実際こういう種類があるらしい。

それからローマの日本美術展のためにヨーロッパに行ったが、そこで描いたスケッチとか。「埃及土人ノ灌漑」がシンメトリーな感じでデザイン的で面白い。あとは「花の傍」という、これ美人画なんだな。なかなかきれいどころだな。説明では当時のモダンな感じで、洋風に椅子など使い、模様はストライプを多様したって。うん、確かにそうだ。えも普通に美人だわ。あとは花鳥画いろいろで、「牡丹花(墨牡丹)」というのが人気らしいが……ええとどれだったかな。

そして別室におなじみ「炎舞」。再会。最初見た時は、おお絵が光を放っている……と感じたものだが、うん、今でもそう感じるが、最初見た時の衝撃は無いかな。そうそう、この炎は仏画の「迦楼羅炎」がもとらしいって。あと、元(げん)の草虫図ももとにしているようです。それから、同じ部屋に絶筆があり。

それで一通り見て、上の喫茶コーナーで和菓子をいただきつつスライドトークを鑑賞。へーあれはあーなっていたのか、じゃああとでもう一度見てみるかな、などと思っていたがトークが7時半までかかり、容赦なく閉館時間。
そんなわけでまあ、まず「炎舞」を見たことない人はこの機会にぜひぜひですね。静物の写実っぷりもいいし、金箔と金砂子蒔きつぶしの比較を見てもよし。蛾にしびれてもよい。
http://www.yamatane-museum.jp/exh/2016/gyoshu.html

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