« 朝井閑右衛門展(練馬区立美術館) | トップページ | 速水御舟の全貌(山種美術館) »

2016年10月18日 (火)

「大仙厓展」(出光美術館)

仙厓案外ナイスガイ、解説満開展覧会♪ ……ってなフレーズを考えるのに20分近くを要し、これをビートに乗せて即興でやるフリースタイルラッパーってスゴいですよねえ……ってな話はさておき、「大」仙厓展って書いてあるけど、出光はそんなに広くないからなあ……なーんて思ってたらこれがなかなかマジ「大」だったお。点数も多いし、ほぼ全部に丁寧な解説が付いている。単に見て楽しむもんじゃなくて禅画でもあるんで、こういう時にゃあ、意味を教えてくれる解説はありがたいですね。
仙厓ってそもそも誰かっていうと、江戸時代の禅坊主でユルい禅画が当時から大人気。とはいえ禅画だから何らかの意味は込められているのだ。たまに白隠とゴッチャになるが、白隠はまだユルさの中にも厳しさが見えたりする。

最初に作品で綴る生涯、で何点か。「馬祖・臨済画賛」は「喝!」の馬祖の顔がイイネ。あと道釈人物画で画風の変遷をたどる……ってんで要は当時の有名キャラもの(なのか?)。仙厓四十代で描いた「布袋賛」はなかなか写実っぽいが、その後はヘタウマ一直線みたいになる。四十代って仙厓の絵のキャリアん中ではまだ駆け出しなんだな。その後「寒山拾得画賛」はかなりキてるな。布袋も六十八歳で描いたのがコミカルタッチでホケーとしたイイカオになっている。「滝見観音画賛」は珍しくちゃんと描いてる。最後の方の「達磨画賛」は……なんだこういうの、見たことあるんだが、あのムーミンのさ、トーヤ・ベンソン? いやトーベ・ヤンソンか。あんな感じ? 全然違うか。じゃあ何だっけ。それから作品で綴る生涯の続きで、あまりの人気に嫌になってしまい絶筆宣言したんだって。石碑まで作る徹底ぶり……なんだけど、結局また筆を取っちゃう。その石碑の絵と拓本が出ている。それから「不動明王図」八十八歳作品だけど、リアルな怒りを絵にぶつけた珍しく激しいタッチだ。いや待てこれ亡くなる寸前じゃないかい?

で、いよいよ禅画大会だお。ここまでは言わばイントロだ。「狗子仏性画賛」は世の中のあらゆるものに仏性(ほとけの性質)があるなら、この子犬にもあるのかというシーンだが絵がまるっきり癒し系。「南泉斬猫画賛」これも猫に仏性があるかどうかの言い争いで、あとから来たなんか偉い人が猫を斬ってしまったという酷いシーンなんだが、絵がユルいもんで、単にイタズラ猫ちゃんをとっつかまえているだけにも見える。「自画像画賛」は座っている後ろ姿……なんだけど、どう見てもお餅である。「坐禅蛙画賛」は悟り顔の蛙なんだけど、坐禅やって顔だけだったら蛙にもできるじゃんって話だ。禅はスタイルではない修行じゃ。スタイルだけいくら追ってもその結果は「群蛙図」つまり蛙の子は蛙ってことだ。喝! 「指月布袋画賛」はい3つほどこの画題のが出ている。これも、悟りとは決して手に届かぬものよ。安易に悟りを求める者は月を取ってくれと言う子供に等しいって話だお。布袋もキュートだが、子供はなんか、なにこれもうカワイイ生き物だな。「円相図」がいくつか。円だけ描いてるヤツね。円は悟りの象徴であるが、一つの悟りを開いても、まだまだその先はある。円が一度描けたなら、その円なぞに価値はない。せめて茶菓子だと思って茶でも飲んでくれ、ということで、「これくふて、茶のめ」などと書いてある。喝! 「○△□」という作品。文字通りのものが描いてある。いろいろ解釈ができるようだ。ちなみに英語名は「The Universe」(宇宙)としてある。次の「三徳宝図」にも同じ○△□を使っているので、その意味か、はたまた△の心が□を経て○の悟りへと達するのか、こりゃ禅問答だ。あと「三聖画賛」は神官、儒者、釈迦が鍋を囲んでいて、いずれもそんなに差はないという意味だそうだ。

禅画が過ぎたんで、もう余興だろうと思ったらなかなかどうして、次の動植物など森羅万象の絵も結構クるものがある。「竹画賛」などは普通にうまい……が本人は見て笑ってやってくれ、ぐらいの心意気だったらしい。「犬図」は一筆描きの妙だ。ヘタッピに見えて実はさりげなくテクニックがある。「虎画賛」は虎を見ないで描いたらしいが、さすがにマズいと思ったか、「猫に似たもの」などと書いてある。文字通りほとんど猫だ。「章魚(たこ)図」は唯一、色を塗ってある。タコだな。「文殊師利菩薩図」は、これもどユルい傑作。なんたって獅子の上に乗っているんだけど、なにそれ猫? にゃー というようなゆるキャラの上に乗ってる。「普賢図」もキてます。普賢菩薩はおなじみ象の上に乗ってるお姿ですが……仙厓の描くそれは……一応象……なんだけど、鼻と耳がどっちがどっちか分からないぐらい適当。「鐘馗画賛」もなんか武者絵で豪傑に描くのが当たり前のところ、ガキンチョを捕まえた先生みたいな感じ。

この辺でもう疲れてきて、筑前名所巡りコーナー。いろいろあるがなんかもう流し見な感じで、それでも「花見画賛」のユルさが冴える。昔から花より団子で飲めや歌えやの様子。子供がなんかヒヨコのようだな。それから人生訓のコーナーでは、「頭骨図」のガイコツやら、「堪忍柳画賛」の柳に風と「堪忍」のデカい次やらに目が行った。「双鶴画賛」は二羽の鶴だが、初代出光館長最後のコレクションだそうで、仙厓収集に情熱を燃やしていたそうな。

モノクロの墨絵がほとんどだけど、まあまず皆の者満足であろう。
http://www.idemitsu.co.jp/museum/honkan/exhibition/present/index.html

|

« 朝井閑右衛門展(練馬区立美術館) | トップページ | 速水御舟の全貌(山種美術館) »