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2016年10月 8日 (土)

「ダリ展」(国立新美術館)

かなり前からチラシも出回ってたし、なんかガチャがあって、ダリの札がもらえるだとか企画もいろいろで、こりゃスゲーのをやるんじゃないかと思ってそれなりに期待していたんだが、直前になって不安なウワサを目にして、行ってみたら……うーん、確かに、何か大事なもの持ってくるのを忘れたんじゃねーかと思うような微妙な気分になる。過去の上野の森、その前の今は亡き三越に比べると消化不良な感じがするんだな。いや、出点数は多いし、映像もタップリなんだけどね。

初期からダリがダリっぽくなるまでがなかなか充実しているぞ(別に充実してなくてもいいような気もするところだが)。「魔女たちのサルダーナ」は、14歳で描いたっぽいがマジ天才だお。でも、これのどこがサルなんだ?(猿じゃねーだろ)「ラファエロ風の首をした自画像」これ前に見たよな。この首長族みたいなヤツ。うん、普通じゃないよ。「背後から見たカケダス」はなんか印象派やってんじゃん。誰が駆けだしてるんだか分からないが(わかんねーよ)。「キュビズム風の自画像」で既にキュビズムを消化吸収。これで二十歳そこそこ。すげえ。「アス・リャネーの浴女たち」は点描に手を出す……とまあ、かように当時のいろいろな流行を吸収しては自分で描き、ってなことを繰り返し試行錯誤というか自分探しというか、ダリがダリであるところのダリのものはまだない。「巻髪の少女」で、やっと、あのおなじみの地平線らしきものが出てくるお。「岩の上の人物」も後の感じを彷彿とさせる。「二人の人物」はピカソ風ってとこか。

で、いよいよダリ節が炸裂するシュルレアリスム時代だお。「姿の見えない眠る人、馬、獅子」がいきなりいい感じで、文字通り眠る人とも馬とも獅子ともつかない「何か」が中央に「いる」のだ。そうそうこれこれこれだよ。でもまあこれポーラ美術館の持ち物だから、レアじゃねーよな。それからいろいろあるけど小物が多い。しかし「子ども、女への壮大な記念碑」おお、これはダリらしいディテールまで懲りまくった名品だお。単眼鏡持参でいろいろと見入っちゃうよな。これポスターになってた。あとは「謎めいた要素のある風景」。手前の方にちょこんといる画家はフェルメールらしい。ほう、確かにフェルメールの光への偏愛っぷりは、ダリの姿勢に通じるところがあるよな。作風は全く違うけど。それから映画「アンダルシアの犬」上映部屋がある。前に見たからいいや。っていうかあの目を切るシーンやっぱヤダ。ガラ(奥さん)ものの部屋があるが、あまりズガッとクる絵がない。

アメリカへの亡命とかいうコーナーで、いきなり中央にドカーンと「幻想的風景」の三部作。大作で名作だっ……でもこれ横浜美術館のもんでしょっちゅう出ているヤツで、オレは見飽きてる。それから小物がいくつかあり、映像コーナー。ディズニーとコラボして作ったアニメ「ディスティーノ」これ初めて見たが、イイネ! ダリの絵がちゃんとアニメになってんじゃん。こんなの作ってたんだ。今回の全展示でこれが一番よかった。それから……え? 舞台美術? 何かスケッチみたいなのが数多くズラズラ続く。オイちょっと待てもう油彩終わりかよ。知識と洞察力と想像力のみなぎる諸氏はこれらのスケッチからでもダリの鬼才ぶりを感じ取れるかもしれないが、オレは無理だお。ガツンとくる油彩持ってこいや。宝飾がいくつかある(ダリには違いないがなんかどうでもいい)。あとリトグラフいろいろで、「ドン・キホーテ」や「不思議の国のアリス」。小さく描かれる縄跳び少女のシルエットが一応アリスだってのはおなじみなんだが、こいつが地面をひきずるようなロングスカートでな、跳べる感じがしないんよ。別にどうでもいいのかもしれないが。主題はアリスじゃなくてやっぱりアリスを取り巻く不思議の国だよなあ。マグリットもそうだったが、達人はアリスそのものを中心になんて描かないんだな。次の「ガラの晩餐」これがキモくてよろしい。こいつぁ傑作群だ。でも油彩持ってこいや。そうだ、映画「黄金時代」の部屋もあったが、長いから見てないお。

原子力時代というコーナーでやっと油彩が復活。原爆の使用に結構衝撃を受けたらしく「ウラニウムと原子による憂鬱な牧歌」にはエノラ・ゲイらしき機影(でできた顔)。「ポルト・リガトの聖母」は大作にして傑作の……でもこれも時々見るじゃん。福岡市美術館が持ってるのね。あとダリが仕入れた知識で描いた原子ものの絵が色々あって、パイ中間子がなんたらとかいうんだけど、まあ、やっぱし絵描きによるアート的アプローチだからなあ。SF的なセンス・オブ・ワンダーじゃないよなあ、とか思ったりする。いや、いいんだけどね。オレ一応理科系なんで(ってこないだも同じこと書いたが)。最後の部屋は晩年の作品。「テトゥアンの大会戦」これも大作だ。悪くないが、あんまりダリらしくないな。なんでだろ。「ラファエロ的幻覚」は合板に描いた一見なんじゃこりゃ的な、これもダリらしくない絵だが、よく見ると合板の木目を利用していて、意外と面白い。晩年でもたまにゃあ野心作をやるものだ。で、終わり。

その後売店だお。イマイチ消化不良だからウワサのダリ紙幣ゲットしてガチャやっていくべ~……と思ったら、好評につき本日分は終わりだと(金曜夜よ)。バッキャロー十分な数用意しとけや! ビジネスチャンスを捨てやがって。結局なんも買わなかった。あとさあ、展示してない絵のグッズ売るのやめろよ。こんな大宣伝ぶちあげ1600円も巻き上げてアレもアレもアレも来てないのかよ、というフラストレーションが溜まる一方じゃねーか。いや、もっとヒドいのはダリTシャツ着てたスタッフがいたんだが、それが出てないリンカーンのダブルイメージの名作のヤツでよ、これも出てないヤツじゃんよー そういうTシャツを平然と着てるなバカタレがっ! と、イライラしつつ、最後に有名な部屋と顔のダブルイメージもの「メイ・ウェストの部屋。撮影可能だお。いつもは撮らないオレも撮ってみた……が、ガラケーのせいかピンぼけの失敗をこく。残念だ。総じてついてねえ。

まー初めてダリを見る人にはいいんじゃないか。点数も多いし。あと、あまり目にしたことのない作品も多いから、真のダリ好きにもいいかもしんない。ダリの有名な傑作をいっぱい見たい、という期待には応えられないであろう。
http://salvador-dali.jp/

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