« 鈴木其一展(サントリー美術館) | トップページ | 「ダリ展」(国立新美術館) »

2016年10月 2日 (日)

トーマス・ルフ展(東京国立近代美術館)

写真はアウェー(あんまし興味対象ではなく展覧会があってもほとんど行かない)なんですけど、何か話題っぽいんで行ってきました。でもどういう点で話題だったか忘れてた。それで現場で思い出したのだ……撮影可でシャッター音がウゼエ。いや、撮っていいんだから別に悪いことしてないし、アーティスト側だってこのシャッター音も作品の一要素さとか思ってんのかもしれないけど。いいかね諸君、スマフォだのデジカメだので撮っているシャッター音ってのは、正確にゃシャッター音じゃないんだぜ。撮影時に音がでないと盗撮とかに使われてマズいってんで、シャッター音に似せた電子音をスピーカーからわざわざ出してんだぞ。そんな「音のパチモン」を美の展示空間でバカスカ撒き散らして恥ずかしくないんか~い! 美を享受する者は己の放つものの醜さに少しは目を向けろや……という旧人類的なオッサンの不満はさておき、ん、でも、写真もバカにならんのよ。アンドレアス・グルスキーやニコラ・ムーランみたいに作為的なのは結構好きでね、逆にアラーキーみたいにありのままを撮るのはどうもピンとこない。ダイアン・アーバスは好きだが。

コーナー別で最初はポートレート……のデカいの。知人とかだったら「おっ」とか思うだろうけど、知らん人だと知らん人のデカい写真だね。建物の写真。これもまあ、つまらん被写体をよく「作品」にしたなあという感じ。もちろん人が写ってないんで、それはそれでいい感じでもある。インテリア写真があり、ネガがある。解説にゃネガにすると絵画的に云々とか書いてあったが、よく分からん。ネガはネガだよなあ。新聞記事からセレクトした写真群(ルフが撮ったわけではない)も、ふーんという感じ。次の、夜のデュッセルドルフを高感度暗視カメラで撮った写真群はなかなかに美しい。街灯と木をまぜまぜに撮ったっぽいのは、何か銀河団のように見える。全体に緑の光が滲んでコズミックな感じだよな。え? 解説にゃ湾岸戦争の夜の攻撃画面を思い起こさせる恐怖とか書いてあるぞ……? ……んー恐怖は感じないなあ。

jpegというコーナーで、解像度の粗いjpegを引き延ばしたって写真。あのう、Webサイトを作ったりしていると、この手の粗い画像にゃ結構悩まされるし見慣れてるんで、あーそうですかー という感じ。ステレオ写真がある。最初ふーんって見てた。いや、なかなか面白いよ。特に鳥瞰の風景。建物のちっちゃい箱が並んでいるみたいで。つまり箱庭的な……しかーし、実はこれステレオカメラで撮ったんじゃなくて、わざわざ2つの写真をどれくらい離して撮るか計算して、1台のカメラで撮ったそうな。そう、ステレオカメラだったら、鳥瞰の風景が箱庭みたいに見えることはないんだ……と気づいて、おお、すげえテクニカル~こりゃええわい。プレス写真のメモとの合成。ふむふむ。建築家ミース・ファン・デル・ローエの建物。これも普通。ヌードのコーナーがある! おお、ヌードだど。が、別にルフが自分で撮ったんじゃなくて、ポルノサイトから持ってきた画像を加工……ったって単にボケボケにしたもの。一応何が写ってるかは分かる……が、だからなに? と思わんでもない。いや、解説は読んでるけど。何書いてあったか忘れたけど。次もRGBの抽象模様みたいなのがあるが、これも何か日本のアダルトアニメの画像を加工しまくってほとんど何だか分からなくしたもの。なんとなーく、これはああいうもんかな、と思わんでもない形状であるところがミソらしい。

火星の地表面を宇宙から撮った写真。ルフは大枚はたいて火星まで行った……わけもなく、これも公開されている衛星写真を加工。懐かしの赤青メガネで見る3D写真もあるよ。サイクロイド(Zycles)という数学的な曲線をキャンバスに描いた作品は普通に面白い。うん、美しいじゃないか。このあたり、さすが美的センスあるんだな、と感じさせる。フォトグラムのコーナー。カメラじゃなくて直接感光紙に感光させるとかいうアートっぽいテクの作品……なんだけど、コンピュータ内のバーチャル暗室でやったヤツをデカく出したらしい。大きいことはいいことのようなどうでもいいことのような。次は星の写真。これも自分で撮ってなくて、どこぞの変態もとい天体望遠鏡のアーカイブからセレクトして分類して、トリミングして拡大したコダワリの宇宙フォトらしいんだけど、何か普通の星写真にしか見えない。カッシーニという土星のシリーズも同じで、こっちは画像に色なんか付けちゃって……まあ、でも、こういうのを見るとつい宇宙の神秘というか、天体観測理科系的観点から見ちゃうんで、純粋にアート作品として鑑賞するのは難しい。宇宙なんか興味ないというド文系の人なら面白いアートとして見れるかもしれん…… おっと待てよ、ここで思うに、先の夜の写真で湾岸戦争の云々のくだり。暗視カメラって単なる技術だから、一応理工学系の私には、たとえかの戦争の時にしかその技術を目にしてなくても、技術は技術。別に戦争とは関係ないって認識なんだよね。だからあの写真を湾岸戦争と結びつけることなく見たままに楽しめる。天体写真を見たままに楽しめないこっちのケースと逆になっているのが面白い。そうかー、ルフは……というか解説書いたヤツもド文系じゃないんだろうか。

しかしなんだな、写真展を見終わった後の気分って、絵画展とは何かが違う。何かはうまく説明できんが……写真を見たなあって気分(当たり前じゃねーか)。いや、でも、その、なんというか……
http://www.momat.go.jp/am/exhibition/thomasruff/

|

« 鈴木其一展(サントリー美術館) | トップページ | 「ダリ展」(国立新美術館) »