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2016年11月 4日 (金)

禅 -心をかたちに-(東京国立博物館)

先日ユル禅画の仙厓を見たばかりだし、また私事でも厳しい事態に遭遇し魂とはなんぞやみたいなことを考えたりして、あと禅にもつながる仏教の華厳宗の本を読んでいるが難解なんで進んでなかったりして、それでも禅の世界観みたいなものには興味を惹かれておる。そんなわけで今回の企画は規模もデカいから、期待して行ったんだが……入って数分で東洋文庫と同じ失敗をハデにやらかしたことに気づく。しょっぱなから延々と禅の歴史なのだ。禅の思想を説明するでも美術作品で見せるわけでもなく、禅が成立した歴史の解説と寺の紹介と禅坊主の肖像や書が延々と続く(解説は膨大なのでほとんど読んでない)。
例えば君がギリシャ神話に興味を持ってかじったとしてだな、「ギリシャ神話展」ってものがあったから行ったとしよう。そしたらギリシャ神話の内容は少しもなくて、ギリシャ神話がどうやってできたとか、誰が伝えたかとか、どんな出版物があったとか、そんなもん延々と見せられても面白くないだろうよ。なに面白い? いやいやいや、とにかくそれと同じことをこの手の企画はよくやる。東洋文庫ではイスラム教と儒教とで2回も期待外れを食らっている。思想的な内容を知りたくても、それはかなえられない。なんで企画者側はそういう内容そのものの方向に頭が回らないのだ? 歴史好きがそんなに多いのか? ありがたいお宝だけ見せりゃいいと思っているのか? あるいは鑑賞者が既に知っているものと思っているのか? そもそも内容そのものなんぞに興味ないヤツが多いからのか?
とはいえ、別に手を抜いた企画ではなくて、むしろ逆で、各お寺と地道な交渉をして、貴重品を借用して、機会を揃えて一同に集めて展示しているのである。オレにとってつまらんからと言って金返せなどと言うことは失礼千万であろう。これだけ集めて展示するのは大変だぞ。

とはいえそんなわけで2/3ぐらいはちゃんと見てない。最初に白隠の「達磨像」があって、ここはウェルカムな感じ(?)ですな。狩野元信の「禅宗祖師図」がデカくていいよな。それからは延々と寺と坊主の紹介と坊主の肖像で……いや、中にもしかして重要な物を見落としている可能性があるかもしれんが、んー南禅寺のね、「九条袈裟」……なんかメモってあるけどなんじゃこりゃ自分の字が読めねえぞ。あ、世界観か。そうそうこれ肖像じゃなくて仏とか描いてあるんだが。あとは……一休宗純ってコーナーがあり……これいわゆる「一休さん」ですか? そんで前半終わり。これだけ? はあ、オレはこれだけ。

後半も戦国武将と近世の高僧とかいうコーナー。あ狩野永徳の織田信長だ……弱そう。………………あーなんか面白いもんないのかよ。ここで、やっと白隠があり、エンジンがかかってきたお。「乞食大燈像」おっとギョロ目がイカす。やっぱ仙厓よりも緊張感があるのが特徴ね。「百寿字」は文字通り百の「寿」が書いてあるのだが、デザイン的になかなかモダンですね。仙厓は「南泉斬猫図」。猫斬っちゃうヤツじゃん。これ、こないだ出光で同じテーマのを見たが、こっちのがはるかにユルい。ユルユルだっ。

禅の仏たち、というコーナーになる。やっと美術作品~ってなってきて嬉しいぜっ。「宝冠釈迦如来および両脇侍坐像」うーむ、いいデキの仏像を持ってきてるじゃん。「十大弟子立像」は十人の個性バッチの立像だお。「伽藍神像」は目力がすごいねえ。このあたりみんな鎌倉時代とかそんなもんだな。いにしえですな。あと羅漢像とかもあり、これも年代が古い。

禅文化の広がり、ってことでもう最後のコーナーなんだけど、美術作品が多くて見応え十分。うむ、前半はどうかと思ったが、後半から終盤にかけて俄然いい感じになってきたぞ。茶道具いろいろ、茶なんぞおよそ分からんが、茶碗であるところの「油滴天目」と「玳玻天目」(たいひてんもく)は、シロート目にも、ん? なんかこれってすごくね、って感じがするよな。伝牧谿(もっけー)の「龍虎図」はなかなかだ。雪舟の「秋冬山水図」はおなじみだお。それからデカい障壁画かバカスカ登場。相阿弥「大仙院方丈障壁画のうち瀟湘(しょうしょう)八景図」おお大画面。空間パネエ。長谷川等伯「天授庵院方丈障壁画のうち祖師図」これは、例の猫斬りだよな。海北友松って人の「建仁寺本坊大方丈障壁画のうち竹林七賢図」これもデカい。そしておお伊藤若冲まで「旧海宝寺障壁画のうち群鶏図」墨のモノクロながら得意の鶏だお! ……って喜んでいるけど、これらは要は禅寺にあった美術作品を持ってきたってだけであって、禅が何ぞやとかあんまり考えてないし考えなくてもいいんだが、じゃあオレは何しに来たんだと自問自答したりしてな。最後は池大雅「萬福寺東方丈障壁画のうち五百羅漢図」いいじゃん。池大雅ってこんなの描いてたっけ。文字通り羅漢っていうか人いっぱい。一番最後に坐禅の組み方説明と、坐禅やって写真撮れるコーナーがある。

お宝がゴッソリ来ていてありがてえ貴重な機会には違いないんだから、見逃すべきじゃないと思ったら行きなさい。しかし「禅」展と称するこれが本当にこれでいいのか? お宝を前に考えるのも一興ではないか。喝!
http://zen.exhn.jp/

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