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2017年2月18日 (土)

画と機(オペラシティアートギャラリー)

ファッションデザイナー山本耀司をメインに画家の朝倉優佳のコラボ……といっても既に山本作品で朝倉の絵を使用したのが以前からあったそうで、今回山本は絵も描くもんで、その絵を中心とした美術展にしたというわけだ。……という背景を特に知らなくても(オレも特に知らなかった)、大空間を使った展示で非日常をエンジョイすればいいんじゃな~い。

最初の大空間。入ると目に付くのは、暗い空間ときれいなライトの光線と、山本の彫刻。各作品にタイトルが付いているわけじゃないので、あるがままに見るばかりです。彫刻は男女がくっついてるやつ。あと壁の絵画も男と女で燃えようぜみたいなやつなので、あー、性に積極的というか肉食というか、これぞ生きるエネルギーというか、芸術は爆発というか、芸術家肌の人がよくやる感じというか。小さいんだけど赤いドレスの絵があって、こういうのはやっぱファッションデザイナーだなと。それからガラス面に描いた作品いくつか。山本単独もあり、朝倉と表裏で描き分けたコラボもんあり、といっても作風が結構近いもんで、コラボもんはどっちがどっちを描いているかよく分からんし、そもそも透き通っているんだから混然としている。朝倉の絵は抽象画……というか、近いのはジャン・デュビュッフェかなあ、と思って後で調べたら全然違う。ありゃ、誰だっけホラ、ブリヂストンで見た「女」ばっかり描いてるの。ハイ正解はウィレム・デ・クーニングでした。なんつーかその、ぐちゃぐちゃって描いてあるけど、完全な抽象じゃなくて対象が何となく分かるって感じのもの。クーニングと色合いも近いと思うのです。そんな朝倉の絵も並び、最初の大空間の最後のところに山本のシュールな絵画。シュールったって鳥とか魚とかいたりして、何となく分かりやすい。

次の大空間に、まず右サイドにドレスがいくつも立っている。朝倉の絵を使った山本のドレス。ドシロートのオレには黒い布切ってつなげただけに見えちゃうぜ。ちょっとしたドレスの森で、自然音も流れていて、カラスがカーなんてやると、いやが上にも不思議気分も盛り上がるぜっ。あと、ドレスを着ているのは人間型マネキンとかじゃなくて、なんかよく分からないものでできたよく分からない不気味人体とかで、これもポイント高いっすね。左サイドに朝倉の絵画。クーニング風なのイパーイ。それから山本作アートなつい立て、屏風などなどで空間を構成。んー……しかしなんていうか、良くも悪くもいかにも自分達で空間構成しました、というのが伝わってくる。ファッションデザインを足場に、アート空間を思う存分、がんばって作り上げてる感。逆に行うと、アート空間としては若干の素人っぽさを感じないではない。ぬぁにキサマゴトキがと思うかもしれないが、そう感じちゃったんだからしかたがない。まあ次行こうよ。

次は通路になって、最初に目につく山本の男女もの。ん、悪くないよ。それから山本朝倉の絵が入り乱れて……おっと音楽が鳴っているが、ハイ私思うに、アート空間で音楽鳴らすのは諸刃の剣よ。すごく効果的なこともあるし、音楽で気分盛り上げようとしやがって姑息だなぁ……ってジャマに感じる時もある。もちろん使った方は「音楽も加えた総合性(いわゆるシナジー効果か?)」でやろうとしているのかもしれんけど、総合芸術であればあるほどうまいこと溶け合っていないと印象の格が下がってくるんだぞ。申し訳ないがここはなんだかなあ……いかにもどうです音楽のセンスもいいでしょみたいなのがちょっとジャマなんだよなあ。それでなくとも空間構成に一生懸命な感じがするんで、ここは無音で勝負してほしかった。がしかしまあ、ファッションなど知らぬワタシでも楽しめるし知ってる諸君ならもっと楽しかろう。

えー、で今回はコレクション展が結構すごいんだな「人間 この未知なるもの」。もちろん人物を描いた作品ばかりなんだけど、その多様さというか妖しさ十分で迫ってくる。おなじみ船越桂があり、おや長谷川潔ってこんなキレイキレイに女性を描いてたのか、有元利夫あり、山下清澄という半エロ、山本六三というドエロ……というかヴァニラ画廊にでもありそうな感じ(って一回しか行ったことないんだが)、宇野亜喜良、四谷シモンの人形、金子國義という妖しき定番諸氏、秋吉巒、谷神健二という、エロティックアートみたいなのは、そうそう美術館で見る機会無いんでこれまたいいね。そして、おお智内兄助。日本のバルテュス……って全然違うか。ロリコンだと思ったがなんかモデルが自分の娘らしいと知ってそれも衝撃で、しかし自分も娘を持ったもんで、分かるところは、娘に色気を感じないもんで、逆にそうやって描けちゃうのかと思ったりする次第です。あー知らん人のために書きますと、着物着た幼女のセミヌードみたいなの。着物もキレイなもんでなんかヤバい。内田あぐりもヤバい(そういう形容しかできんのかい)。小山田二郎も、あっ、リスト見たら鴨居玲もあるじゃないか、いや、あったような気はするが意識してなかった。踊り候え。また見たい。相笠昌義、これも人物が迫ってくるような。とにかくクセのある連中を多数集めている。ぜひ感じてくれ。
https://www.operacity.jp/ag/exh193/

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2017年2月 9日 (木)

ティツィアーノとヴェネツィア派展(東京都美術館)

えーいわゆるルネッサンスが、素描を基調として形態をガッツリ描いたのに対し、ヴェネツィア派はいきなりステーキじゃなかったいきなり色彩を用いて描写したんだお。その巨匠がティツィアーノだ。

会場に入るとまずヴェネツィアの鳥瞰の版画。ま、これはイントロで、次がなんとかの肖像で、それからルネサンス時代のヴェネツィアの聖母子像がダダダダダダダダダっと続く。時代的にまだ技法もそこそこなんで、肌が死んでる、表情が硬い、赤ちゃんの体格(および顔)がヘン、と三拍子そろっているヤツが多い。ティツィアーノの師匠であるベッリーニにしても子供の体格がアウトだったりする。そんなこんなで、このコーナーはキバって凝視するほどのもんじゃないよなあ(研究者じゃなければ)。この階の終わりの方にティツィアーノの1枚目が出てくる。「復活のキリスト」うーんさすが、肌が生きてるし、表情もまろやか~(?)……ってことはみんな分かるであろう。

上の階に行くとティツィアーノの時代ということで、ポスターにもなってて目玉である「フローラ」がある。ポスターなんぞで見た限りでは、なんかこう、もっと甘ったるい印象かと思っていたが、結構これが「仕事きっちり」みたいな感じだったね。美人画だからもてはやされている感じで、描き方も手堅いと思います。しかしですな、ワタシとしては、その手前にあるパルマ・イル・ヴェッキオのデブ萌え美人「ユディト」をプッシュした~い! 「フローラ」が手堅く万人受け美人なら、「ユディト」はマニア受けで、より画家のコダワリを感じられる美人だお。死んだ首持ってるのもいい演出ぢゃないか。まー時代的にはフローラから10年経ってるんで、その間にこういうのも描いていいんだぜ、みたいになったのかもしれん。それからいわゆるヴェネツィア派の絵がいろいろだが、ティツィアーノを基準にすると、まーどれもホドホドという感じですかな。肖像画コーナーもあって、最初のセバスティアーノ・デル・ビオンボの「男の肖像」を遠目で見ると、おっ、レンブラントか? なんて思ってしまうほどレンブラント風。あとの肖像はボチボチ。それから神話テーマの裸婦が二つぐらいあるが、裸婦もがんばってるよ的な感じ。そんで次にティツィアーノの傑作「ダナエ」がある。ヴェネツィア派の見本のような柔らかタッチがイケる。うん「フローラ」より、こういう裸婦テーマの方が向いてんじゃな~い。隣に巨匠ティントレットの「レダと白鳥」があるが、うーん、こっちはイマイチだな。ティントレットってこんなんだったっけ?

それから版画コーナー。これはなんか、ぼけーと流して見ていた。「節制」って、あータロットだな、とか。「マルス」ってこれ女神に見えるが、もしや今時のなんでも萌えキャラ化と同じことを当時もやってたんかとか。

それからティントレットとヴェロネーゼ時代とか。本人作と工房作が入り乱れるが、やっぱこれ結構、差がある……よな。ティツィアーノもまだあって「教皇パウルス3世の肖像」いい顔の爺さんじゃないか。「マグダラのマリア」って……これしょっちゅう見るヤツじゃん、と思ったら何枚も描いてるっぽい。ティントレットは「ディアナとエンディミオン」なかなかだー(とメモってあるがよく覚えていない)。ヴェロネーゼもまず工房作が並ぶが、あー? なんだー? あー? という感じで印象はイマイチ、でも最後に本人の「聖家族と聖バルバラ、幼い洗礼者聖ヨハネ」があって、やっぱ本人作はうまいなあ……というのがネームバリュー抜きでも分かる感じだお。赤ちゃんがナチュラルでいいですな。

そういえばパルミジャニーノってヤツいなかったっけ? いや待てそれパスタ料理の名前じゃない? と思ってあとで調べたら、パルミジャニーノって画家おった。マニエリスムだって。食い物ではパルミジャーノってのがあって、でもそれはパスタじゃなくてチーズの名前だった。あれ、じゃあ一昨年あたりに西美で見たこの手合いのヤツいたよな、と思ったらグエルチーノでした。ちなみバロックだった。なんかイタリアンの名前はよく分からんな。
http://titian2017.jp/

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2017年2月 4日 (土)

オルセーのナビ派展(三菱一号館美術館)

ハ~イ、ナビタイム! というわけで昨日(2/3)仕事帰りに行こうとしたが仕事が終わらず断念……したんだけど、なんと今日からだったお。これはナンだ、捨てる神あれば拾う神ありってやつか?
ナビ派というのはですね、ゴーギャンがマジスゲエやつだってんで、みんなで真似しようぜって一派です(だいたい)。ドニとかボナールとかが有名かな……っても実はオレもあまりよく知らんところが多いもんで。この企画見りゃあだいたい分かるというもんですよ。しかしこの美術館はルドンの「グラン・ブーケ」を手に入れてから調子コいてるもんで、今回もお値段は強気の1700円だお。ビンボー人にゃ懐にイタいお。

最初にエミール・ベルナールの「炻器(せっき)瓶とりんご」えーなになに、自然主義や印象派に対する反動だって。印象派と印象があんまし変わんなかったりするが、まあ輪郭とかあるから違うんだけど。まあ、あとセザンヌ風かな(静物見りゃみんなセザンヌだったりしてな)。それからゴーギャンが2つある(ゴーガンって書いてあるが)。「《黄色いキリスト》のある自画像」は、リアルな自画像と平面的なキリストと、なにやらワイルドな面の複合画面。これが概ねナビってる感じのものだお。次の部屋のポール・セリュジエ「タリスマン(護符)、愛の森を流れるアヴェン川」はなんでもナビの方向性をキメた重要作品のようだが、見たところ確かに平面的な感じで、抽象的な感じで……要するに何が描いてあるんだか分からないから考えるな感じるんだってヤツ。

庭の女性たちってコーナーで絵は文字通りなんだけど、この辺からモーリス・ドニが増えてくる。ドニは宗教テーマも書いたんで「美しきイコンのナビ」なんて呼ばれていたんだって。結構理論派だったようで、「10月の宵、若い娘の寝室装飾のためのパネル」……これ、なんかヘンじゃね? いや、輪郭をつけて平面性を強調したいのは分かるが、なんかリアルな顔の絵に卵形に太い輪郭を付けるのはやっぱりヘンだよ。あとの肖像とかで出てくるがドニはいい絵はすげーいいんだけど、理屈こねてるのかナンジャコリャみたいなのも描く。いや、思えばナビ派って総じてそういうの傾向が多いような気がする。えーと、そうそうドニの「ミューズたち」ってね、大きめのがあるんだけど、これよく見るな。西美になかったっけ? ありゃ別のか。それからアリスティー・ド・マイヨールって人の「女性の横顔」これ、いいね。金屏風みたいな雰囲気で。金じゃないけど。あと輪郭ないな。それからボナールが出てくる「日本かぶれのナビ」と呼ばれてたぐらい、平面性とミミズ描き(初期浮世絵の描線)が特徴だよな。「庭の女性たち 格子柄の服を着た女性」は格子柄が正面を向いていて平面的であり装飾的だお。

でもボナールってそれだけじゃなくて「ベッドでまどろむ女(ものうげな女)」の路線は逆にソフトフォーカスというかボヤボヤというか夢のようというか官能的というかエロいというかなんというかいわゆるボナールの裸婦。ここで、スイスからパリへやってきたフェリックス・ヴァロットン「外国人のナビ」と呼ばれシャープな画面で迫るナイスガイだお。「髪を整える女性」彩色は平面的に見えても全体にリアル。江戸末期に出てきた西洋画にハマった浮世絵版画みたいな雰囲気(国芳みたいなヤツね……いや違うか)。

長い通路を移動。先の部屋に肖像とかが並んでおる。ドニの「18歳の画家の肖像」おいリアルでうまいな。エドゥアール・ヴュイヤール「八角形の自画像」は顔が八角形なんじゃなくて(当たり前だ)、額(ヒタイではない)が八角形光と陰を平面的な彩色で。ドニの「マレーヌ姫のメヌエット」うむ、これは上品にしてウマい絵画的な肖像だな。ボナールの「格子柄のブラウス」はいかにもボナールだが絵画的すぎて肖像っちゅうか絵画だ。またボナール「ブルジョワ家庭の午後」は大作だけどこれもやっぱボナールだな(形容詞がないのかよ)。ドニの「フェルカーデ師の肖像」これも絵画的にして顔がナビってる普通でない色のうまさがあります。対して、ヴァロットン「アレクサンドル・ナタンソンの肖像」と「自画像」これがなんかすげー写真みたい。よーく見ると平面的な彩色の所もあるのかなと思わんでもないがやっぱり写真だな。

部屋通って階段を下りて収蔵品からナビ派いくつか。うーん、小品かな。自慢の「グラン・ブーケ」を経て、次の子ども時代のコーナー。ナビ派は子供描くの。ここもドニの振れ幅がデカい。「青いズボンの子供」の、この赤ちゃんの顔、なんか怖い。なんか女児向けホラーマンガに出てきそうだ。ヴァロットンの「ボール」は前も見たっけな、平面性も構図もウマウマ。ヴュイヤールの「公園」シリーズは、ウマいんだか人物が雑なんだかよく分からん(ウマいに決まってるだろと言うかもしれんが、そこは人それぞれの印象よ)。

裏側の世界、ということで宗教や神話やら。そうそう、ナビことゴーギャンにもそういう路線あったっけね。例の最後の大作とかね。ドニの「プシュケの物語」シリーズは、うーん、なんかセザンヌみたい? ここでイケるのは「彫刻家のナビ」ことジョルジュ・ラコンプ。「イシス」は赤い乳が大地の草となるが、乳絞り出してるインパクトが結構クる彫刻。隣の「存在」もウロボロスとデカい顔と女性器と精子が組み合わさったエキサイティングな彫刻。ほう、ナビ派って割とお上品かと思ったが、こういうワイルドなやつもいるんだな。ポール・ランソンの「水浴」は象徴派っぽい。

そんなわけで全体にいい感じで鑑賞できる。ナビ派を知らない人もこれでオッケーさ。
http://mimt.jp/nabis/

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